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  • 平成29年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 防衛省|
  • 平成28年度決算検査報告掲記の意見を表示し又は処置を要求した事項の結果

有償援助調達における防衛装備品の不具合及び計算書の誤りに対する是正措置の要求並びに計算書と受領検査調書との照合の適切な実施について


平成28年度決算検査報告参照

1 本院が求めた是正改善の処置及び表示した意見

防衛装備庁及び陸上、海上、航空各自衛隊は、アメリカ合衆国政府(以下「合衆国政府」という。)から有償援助により、防衛装備品及び役務(以下「防衛装備品等」という。)の調達を行っており、部隊等が防衛装備品等を受領したときは、受領検査官は、品目の相違、数量の過不足等(以下「不具合」という。)の確認を行い、受領検査調書を作成することとされている。また、合衆国政府から出荷した防衛装備品等に係る品目、数量等の項目が記載された計算書が送付されたときは、支出負担行為担当官(分任支出負担行為担当官を含む。以下「支担官」という。)は、受領検査調書と照合することとされている。そして、防衛装備品等の不具合又は計算書に受領していない防衛装備品等が計上されているなどの計算書の誤り(以下「計算書の誤り」という。)が判明した場合には、支担官は、速やかに合衆国政府に対して防衛装備品等の不具合又は計算書の誤りの内容等を記載した不具合報告書による是正措置の要求を行うこととなっている。引合受諾書(注)の標準条項によれば、当該是正措置の要求は、原則として、防衛装備品等の不具合の場合は所有権が移転するなどした日から、計算書の誤りの場合は計算書の送付日から、それぞれ1年以内に行われなければ、当該要求が合衆国政府から却下されることとされている。しかし、防衛装備庁、陸上自衛隊補給統制本部及び海上自衛隊補給本部において、防衛装備品の不具合や計算書の誤りに対する是正措置の要求を速やかに行っておらず、当該要求が合衆国政府から却下されている事態が見受けられた。また、防衛装備庁において、計算書と受領検査調書との照合の過程や結果に関する記録及び保存を行っていない事態、並びに計算書と受領検査調書の品目、数量等の項目において極めて多くの記載内容が一致していない状況となっている根本的な原因を調査し、適切な照合を行うための効果的な方策を講じていない事態が見受けられた。

したがって、防衛装備庁長官に対して平成29年10月に、次のとおり是正改善の処置を求め、及び意見を表示した。

  • ア 引合受諾書の標準条項により、所有権が移転するなどした日又は計算書の送付日からそれぞれ1年以内に不具合報告書を送付して是正措置の要求を行わなければ当該是正措置の要求が却下されることに鑑み、不具合報告書による是正措置の要求を速やかに行うことを、防衛装備庁、陸上自衛隊補給統制本部及び海上自衛隊補給本部の支担官に対して周知徹底すること(会計検査院法第34条の規定により是正改善の処置を求めたもの)
  • イ 計算書と受領検査調書との照合の過程や結果を書面等に記録及び保存するとともに、計算書と受領検査調書の項目において極めて多くの記載内容が一致していない状況となっている根本的な原因を合衆国政府に協力を求めるなどして調査し、適切な照合を行うための効果的な方策について検討すること(同法第36条の規定により意見を表示したもの)
(注)
引合受諾書  日米両政府の代表者(日本側は支担官)が署名する文書で、これに基づき有償援助調達が行われる。この文書には、両政府が合意する防衛装備品等の出荷予定時期、品目、数量、単価、契約額等の条件が記載される。

2 当局が講じた処置

本院は、防衛装備庁等において、その後の処置状況について会計実地検査を行った。

検査の結果、防衛装備庁は、本院指摘の趣旨に沿い、次のような処置を講じていた。

ア 29年10月に関係部署に対して通知を発するとともに、30年3月に当該通知の内容を周知するための会議を開催して、防衛装備庁、陸上自衛隊補給統制本部及び海上自衛隊補給本部の支担官に対して、防衛装備品の不具合や計算書の誤りについて、合衆国政府への不具合報告書による是正措置の要求を速やかに行うことを周知徹底した。

イ 29年12月に計算書と受領検査調書との照合に係る実施要領を定めて、照合に関する台帳を整備することなどにより、照合の過程や結果を書面等に記録及び保存することとした。また、同月に防衛装備庁長官から合衆国政府の関係機関の長に対して調査協力の申入れを行うとともに、累次にわたり合衆国政府に対して調査協力の要請を行うなどして、計算書と受領検査調書の項目において極めて多くの記載内容が一致していない状況となっている根本的な原因の調査を行った。そして、当該調査において、受領検査調書を作成する際の基礎資料となる出荷証書に誤記が多く見受けられるといった原因が明らかになったことを受けて、有償援助調達に係る在米の職員を増員する体制強化を図るとともに、合衆国政府に対して記載内容が一致しない実例を示して照合に支障が生じている状況について説明するなどの直接的な働きかけを行い、合衆国政府の協力を得て、適切な照合を行うための効果的な方策の検討を行った。