経済社会の構造が大きく変化する中、持続的な経済成長を維持、促進するとともに、経済成長を阻害しない安定的な税収基盤を構築する観点から、税体系全般にわたる再構築が進められている。
会計検査院は、前記のとおり、特別措置に係る適用状況等について毎年検査を行っており、近年では、27年次の検査において、法人税関係特別措置等の適用状況等に着目して検査した状況を、また、28年次の検査において、所得税関係特別措置の適用状況等に着目して検査した状況を、会計検査院法第30条の2の規定に基づき、それぞれ27年10月及び28年12月に国会及び内閣に報告したところである。
相続税については、平成25年度税制改正により課税価格から控除される基礎控除額が27年1月1日から引き下げられて、課税ベースが拡大したため、国税庁統計年報及び厚生労働省人口動態統計によれば、25年から27年までの各年分の相続税を納付した相続人の数は、25年分130,438人(納付税額1兆5366億余円)、26年分133,141人(同1兆3904億余円)に対して、27年分は233,255人(同1兆8115億余円)と増加し、また納税割合(相続税の申告をした結果税額があった被相続人数の死亡者数に占める割合をいう。)も、25年分4.2%、26年分4.4%に対して、27年分は7.9%と上昇している。このように、相続税は、以前より広い層に対して課税されることになったことから、国民の関心もより高くなってきている一方で、租特透明化法において適用実態の調査が義務付けられておらず、これまでに調査が実施されたことはない。
そこで、会計検査院は、上記のことなどを踏まえて、有効性等の観点から、①相続税関係特別措置の適用状況はどのようになっているか、②相続税関係特別措置において、特定の行政目的の実現のために税負担の軽減等を行うもの(以下「相続税軽減措置」という。)に係る関係省庁及び財務省による検証状況等はどのようになっているか、③減収見込額が多額に上っている相続税軽減措置について、会計検査院が提出を受けた申告書等から把握した適用状況等を踏まえて、当該相続税軽減措置が適用実態等からみて、課税の公平原則に照らして国民の納得できる必要最小限のものとなっているかなどの指針等により検証が適切に行われているかなどに着眼して検査した。
相続税関係特別措置の適用状況については、25年から27年までの各年に相続又は贈与があり相続税又は贈与税の申告をした結果税額があった全ての者の申告書等のうち、27年4月1日現在で施行されている相続税関係特別措置の適用を受けた25年分543,530件、26年分580,174件、27年分849,429件、計1,973,133件に係る適用状況等を対象として、国税庁が集計した資料により検査した。
相続税軽減措置に係る検証状況等については、内閣府本府等11府省庁(注1)において、22年度から28年度までの間に実施した政策評価に係る関係資料や税制改正要望の際に財務省に提出した要望書等を確認するなどの方法により、また、財務省において、相続税軽減措置に係る検証状況等を確認するなどの方法により、それぞれ会計実地検査を行った。
減収見込額が多額に上っている相続税軽減措置の適用状況等については、会計実地検査を行った73税務署等(注2)において、相続税軽減措置の種類に応じて20年分から27年分までに適用のあったものを対象として、適用金額の高額な申告書等を抽出するなどにより、相続税及び贈与税の申告書等の提出を受けた納税者である相続人(受遺者を含む。以下同じ。)1,152人及び受贈者153人、計1,305人に係る適用状況等を検査した。検査に当たっては、国税庁から提出を受けた資料や、減収見込額が多額に上っている相続税軽減措置を適用している納税者の会計実地検査において提出を受けた申告書等及び計算証明規則(昭和27年会計検査院規則第3号)に基づき会計検査院に証拠書類として提出された申告書等に係るデータを集計、分析するなどした。