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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成30年4月|

官民ファンドにおける業務運営の状況について


4 所見

(1) 検査の状況の概要

官民ファンド運営法人は、設置根拠法、交付要綱等に定められた政策目的に沿った支援を行うこととなっており、官民ファンドの業務運営に関して官民ファンド運営法人16法人に対して行われた政府出資等の額は多額に上っている。そして、官民ファンド運営法人が行う支援に失敗が多数発生して損失が生じていないか、政策目的に沿った支援が行われているかなどについて国民の関心が高くなっている。

そこで、会計検査院は、官民ファンドにおける業務運営の状況について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、官民ファンド運営法人に対する官民ファンドの業務運営に関する国の財政支援の状況、官民ファンド運営法人による支援の実施状況はどのようになっているか、官民ファンド運営法人の案件発掘、支援決定、モニタリング等の支援業務の実施状況はどのようになっているか、官民ファンド運営法人における官民ファンドの業務に係る財務等の状況はどのようになっているかに着眼して検査した。

ア 国の財政支援及び官民ファンド運営法人による支援の実施状況

(ア) 国の財政支援の状況

官民ファンド運営法人に対する官民ファンドの業務運営に関する28年度末の政府出資等の額は、合計7812億余円となっており、出資によるものは、一般会計の計1211億余円及び財政投融資特別会計(投資勘定)の計5365億余円、補助金によるものは一般会計の計300億円及びエネルギー対策特別会計(エネルギー需給勘定)の計144億余円、貸付けによるものは財政投融資特別会計(投資勘定)の計790億円となっている。

国が法人に対して出資することにより取得した株式及び出資による権利は、国有財産とされており、国民共有の貴重な財産であり適切な方法により管理する必要がある。官民ファンドについては、一義的には官民ファンド運営法人及び所管府省庁において、政府出資金の価値が著しく低下したり、政府出資金が回収できなかったりする事態が生ずることを回避するよう政府出資金を適切に管理する必要がある。また、財政投融資特別会計(投資勘定)の出資は収益が上がるまで長期的に耐えることのできる資金であるが、投資先から回収したリターンを再投資する仕組みであり、官民ファンド運営法人において業務期間を通じて、対象事業者へ支援のために拠出した出資金等を確実に回収することに加え、官民ファンドの業務運営に要する経費を上回る収益を確保し、出資者である国に納付することが求められるものであることから、同勘定からの政府出資金に係る統制の状況についてみたところ、出資を行う前の段階での審査や出資後の出資者としての議決権の行使等により、政府出資金が回収できない事態等が生ずることを回避するための取組が行われている。

補助金の交付によるものは、交付要綱等に基づき基金事業を実施し、基金事業を完了したときなどには、基金の残余の額を国庫に返納しなければならないこととなっている。また、貸付けによるものは、借用証書に基づき、国が将来回収することとなっている。

政府出資等以外の財政支援について、国は、国立大学法人における研究成果の事業化に向けた産学共同の研究開発を推進するなどのために、国立大学法人4法人に対して、平成24年度一般会計補正予算(第1号)により、運営費交付金計200億円を交付したり、一部の官民ファンド運営法人が金融市場で発行する債券や借入金に政府保証を付して、支援に必要な資金を円滑かつ有利に調達できるようにしたりなどしている(3009_3_1_1リンク参照)。

(イ) 官民ファンド運営法人が実施する支援の状況

官民ファンド運営法人は、それぞれの設置根拠法等において政策目的が定められている。また、ファンド専業法人の多くは、設置根拠法において支援の終了時期が定められており、それぞれの設置根拠法の見直しの時期も定められている。一方、兼業法人についてみると、支援の終了時期は定められていないが設置根拠法等に基づき一定の期間ごとにそれぞれの法人の業務全般や事業の内容について検討を行うことなどとしている。

官民ファンド運営法人が支援を行う際の支援スキームには、直接支援と間接支援があり、設置根拠法等において、両方の支援スキームで行うか、いずれか一方の支援スキームで行うかが定められている。

資本金等が対象事業者等への支援に活用されているかについてみたところ、資本金等に対する実支援額の割合が100%を超えていたり100%に近い値となっていたりして資本金等が対象事業者等への支援に活用されている官民ファンドがある一方で、設置日等から28年度末までの期間が短いなどの理由により、同割合が50%以下となっている官民ファンドもある。官民ファンド運営法人ごとの資本金等に対する支援約束額の割合と支援実行率についてみると、支援約束が進んでおらず資本金等に対する支援約束額の割合が低い官民ファンド運営法人や、支援約束は進んでいるが実支援が進んでおらず支援実行率が低くなっている官民ファンド運営法人が見受けられた。

また、直接支援の支援実行率は、ほとんどの法人が50%を超えている。

間接支援において、支援決定から28年度末までの経過年数ごとのサブファンドに対する支援実行率等をみたところ、株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、年数が経過したサブファンドに対する支援実行率は年数が経過していないサブファンドと同程度であり、同機構全体としては11.5%となっている。また、支援決定から1年以上経過したサブファンドのうち、4官民ファンドの10サブファンドは対象事業者への出資等の実績がない。さらに、25年度から28年度までに解散して清算を結了したサブファンドの出資等の実績をみたところ、株式会社農林漁業成長産業化支援機構の4サブファンドは、出資等の実績がないまま解散して清算を結了していた。

また、官民ファンドの支援基準等における主な支援対象分野は、対象事業者が実施する事業の内容や特性等により定められており、同一の対象事業者が複数の官民ファンドの支援対象分野に該当する場合には、当該対象事業者に対して複数の官民ファンドが重複して支援を行うことが可能な状況となっている。そして、官民ファンド運営法人が連携して支援を行うことが有効である場合もあることから、①シーズ・ベンチャー支援及び②地域活性化支援の二つの政策課題について官民ファンド連携チーム会合を設けて、関連する官民ファンド運営法人が連携して支援案件の情報交換等に取り組むこととされた。

官民ファンド運営法人の政府出資金から生ずる配当や見直し等に伴う政府出資等の国庫納付等の仕組みとその状況についてみたところ、国庫納付等の規定が定められている官民ファンド運営法人があり、実際に国庫納付等を行っている法人が見受けられた(3009_3_1_2リンク参照)。

(ウ) KPIによる政策目的の達成状況等の評価の状況等

KPIは、個別案件ごとに達成状況を評価するための個別案件のKPIと、法人全体として評価を行うための法人全体のKPIがあり、ガイドラインによると、法人全体のKPIについては、評価結果を公表することとなっている。そこで、官民ファンド運営法人における政策目的の達成状況等の評価の状況について、会計検査院が法人全体のKPIをその設定内容により、政策目的、民業補完及び収益性に分類し、政策目的及び民業補完のKPIの設定並びにそれらの評価の状況についてみた。

28年度下期における政策目的のKPIは、官民ファンドによって1項目から11項目設定されており、それらの評価をみると、全14官民ファンドの計68項目のうちAが50項目、Bが8項目、Nが10項目となっている。

政策目的のKPIごとの内容等についてみたところ、①KPIとする必要性に疑問がある指標を用いているもの、②官民ファンド運営法人の解散時点まで評価を行わないとしているもの、③28年度上期以前に達成済みの成果目標を継続して用いているものが見受けられた。また、官民ファンドごとに総合的にみた場合に、政策目的のKPIの設定、評価及び評価結果の公表がそれぞれの法人の政策目的の達成状況を検証するために十分なものとなっているかについて、設定している法人全体の政策目的のKPIが支援を終了した案件のみを評価の対象とする1項目のみとなっているため、支援中の案件の進捗状況や達成状況を含めた評価結果が公表されていないものが見受けられた。さらに、官民イノベーションプログラムに係るKPIの評価結果として国立大学法人4法人それぞれの評価を政府出資金の割合に応じて加重平均したものを評価結果として公表することにしており、国立大学法人4法人それぞれの評価は公表していなかった。

民業補完のKPIは、算出方法が法人によって異なっているものの、評価を行っている法人は全てA評価としている(3009_3_1_3リンク参照)。

(エ) 官民イノベーションプログラムにおける政府出資金等の状況

官民イノベーションプログラムの支援の実施状況等をみたところ、政府出資金計1000億円のうち計447億余円が特定研究成果活用支援事業計画の認定を受けていなかったり、政府出資金計1000億円については、国が将来回収することを見込んでいるが、具体的な回収方法は法令に規定されていなかったり、平成24年度一般会計補正予算(第1号)により交付された運営費交付金計200億円のうち、28年度末において93.5%を占める計187億余円が使用されずに国立大学法人4法人が保有していたりしていた(3009_3_1_4リンク参照)。

(オ) 国の監督等の状況

官民ファンド運営法人に対する国の監督、評価等についてみると、政府出資株式会社8法人は、それぞれの設置根拠法において、主務大臣が監督して、監督上必要な命令をすることができるなどと規定されており、主務大臣による評価が6法人において行われている。独立行政法人2法人及び国立大学法人4法人は、設置根拠法等において、毎事業年度終了後の業務実績の評価結果に基づき必要がある場合等には、主務大臣が業務運営の改善等を命ずることができることなどとなっており、また、主務大臣等は、法人の業務実績を事後的に評価することとなっている。基金設置法人2法人において、主務大臣等は、官民ファンドに関する業務の実施について、基金設置事業の交付要綱に基づき、必要な措置を命じ、又は必要な勧告、助言若しくは援助を行うことができることとなっている(3009_3_1_5リンク参照)。

イ 案件発掘、支援決定、モニタリング等の支援業務の実施状況

(ア) 支援基準等における政策目的等に関する基準及びリスク回避の取組

官民ファンドの支援基準等は、官民ファンド運営法人が事業者等を決定するに当たって従うべき基準であり、政策目的、民業補完、収益性等に関する基準が定められている。これらのうち政策目的に関する基準についてみると、成長による富の創出、地域活性化等のほか、中小企業対策、日本企業の海外展開支援等に係る基準となっており、官民ファンド運営法人は、これらの政策目的等に関する基準に沿った支援となるよう案件発掘、デューデリジェンス等の支援業務を実施して支援決定を行っている。

また、官民ファンド運営法人は、リスク回避の取組が求められており、デューデリジェンス等の支援業務における取組のほか、ポートフォリオマネジメント等の取組を行っている。

官民ファンド運営法人が行う対象事業者又はサブファンドへの支援決定に対する主務大臣等の関与についてみると、支援決定を行う場合に主務大臣の認可を受けなければならなかったり主務大臣に意見を述べる機会を与えなければならなかったりするもの、支援決定を行った場合に主務大臣等に報告しなければならないもの、主務大臣に個別案件ごとの報告等を行うこととなっていないものなどとなっている(3009_3_2_1リンク参照)。

(イ) 支援業務の実施体制

官民ファンド運営法人は、おおむね、投資部等の特定の担当部署を設置して支援業務を行っており、その担当者数等は、各法人の事業分野の特性や事業規模等により様々となっている(3009_3_2_2リンク参照)。

(ウ) 支援決定に至るまでの支援業務に係る実施状況

官民ファンド運営法人の直接支援に係る案件発掘についてみると、金融機関からの相談、事業者からの依頼等を受けたり、事業者の訪問等の活動を行うことによって事業化の可能性のある案件を探索したりして案件の受付等を行い、このうち支援基準等に基づいた事業化される確度が高いと判断された案件を支援候補案件としている。また、間接支援に係る案件発掘については、一般的にはサブファンドのGPが行っている。

そして、官民ファンド運営法人の直接支援におけるデューデリジェンスについてみると、官民ファンド運営法人内部において実務経験者等の担当者が事業の実現可能性等についてデューデリジェンスを実施している。また、官民ファンド運営法人は、必要に応じて、監査法人等の外部専門家を利用したデューデリジェンスも実施している。間接支援における対象事業者の選定に係るデューデリジェンスについては、一般的にはサブファンドのGPが行っており、必要に応じて外部委託により行っている(3009_3_2_3リンク参照)。

(エ) 支援決定の実施状況

支援決定機関の人員構成等についてみると、官民ファンド運営法人12法人は、支援決定機関の委員に社外の実務経験者等を加えている。また、独立行政法人2法人は、理事長が支援決定を行うこととなっているが、支援決定に当たっては、提案内容及び出資先としての適格性について総合的に評価等を行う社外の実務経験者等により構成される助言機関の意見を踏まえることとなっている。このように、官民ファンド運営法人は、おおむね、独立した立場の社外の実務経験者等を委員に加えて審議するなどして、執行部を監視・牽制する仕組みを導入している。

各官民ファンド運営法人の支援決定に係る審議体制についてみると、支援決定機関の審議に至るまでに、支援業務の担当部署が審議を行う投資部門会議等、役員等が審議を行う投資委員会等の審議を経ることなどにより、おおむね複数回の審議が行われることとなっている。

また、間接支援を行う場合のサブファンドの業務を執行するGPの選定方法についてみると、株式会社農林漁業成長産業化支援機構は、同機構のGP審査基準等で審査した上で全ての応募者をGPとして選定している。選定されたGPの要件の充足等をみると、応募者52社のうち14社は、GPとしての業務執行の実績がなく運用担当者も過去に運用実績を有していないが、同機構は、LPとの連携等により一定の案件組成力等が期待できるなどとしてGPを選定している(3009_3_2_4リンク参照)。

(オ) モニタリングの実施状況

官民ファンド運営法人は、モニタリングの基準を設定し、支援を行った後、対象事業者の財務情報等を継続的に把握するモニタリングを適切に行うことが重要であるとされている。また、対象事業によっては、事業の開始に当たり、法令上の届出等を要する場合があり、その手続等を確認するために支援決定後から実支援までの間においてもモニタリングを行う場合がある。

直接支援に係るモニタリングを行っている官民ファンド運営法人13法人において、主要なモニタリング項目の一つである売上高を例として、対象事業者の24年度から28年度までの実績値と事業計画値の累計額を対比すると、約半数の対象事業者の実績値は事業計画値を下回っており、その多くは直近の決算期において営業損失を計上している。

そして、営業損失を計上している対象事業者についてその主な理由をみると、製品開発や用地確保等の遅延等によるものであり、このうち、対象事業者が事業の開始に当たり必要となる法令上の手続を行わないまま工事に着手したことなどについて、官民ファンド運営法人のモニタリングが十分に行われていなかった事例が見受けられた(3009_3_2_5リンク参照)。

ウ 財務等の状況

(ア) 官民ファンド運営法人の財務諸表等

官民ファンド運営法人には、ファンド専業法人と兼業法人とがあり、ファンド専業法人の財務諸表等はそのまま官民ファンドの業務の財務状況を示しているが、兼業法人の財務諸表等は官民ファンドの業務とそれ以外の業務との区分経理の有無や区分経理等の方法によって把握できる情報が異なっている(3009_3_3_1リンク参照)。

(イ) 官民ファンドの業務に係る財務の状況

官民ファンドの業務に係る収益及び費用が把握可能な官民ファンド運営法人14法人(全16法人から独立行政法人2法人を除く14法人)の利益又は損失等の状況をみると、24年度以降に官民ファンドの業務を開始した、開始からの期間が短い12法人のうち11法人は、24年度から28年度の各年度で、おおむね損失を計上している。これらの法人で損失を計上しているものが多いのは、主として官民ファンドの業務は支援を行ってから回収までに相当の期間を要するため、事業を開始した当初は株式売却等に伴う収入がない一方で、法人の運営に係る事務費等が先行して必要となることによると考えられる。また、23年度以前から官民ファンドの業務を開始している2法人については、24年度から28年度の各年度で、利益を計上した年度と損失を計上した年度が混在している。

28年度の官民ファンドの業務に係る事務費の内訳は、上記の14法人から事務費の内訳を区分していない株式会社日本政策投資銀行を除く13法人のうち11法人において、人件費が最も多額の費用項目となっているが、人件費を資産規模との対比でみれば、法人によりばらつきがある。人件費の次に多額の費用項目となっている租税公課のほとんどを占める法人事業税(資本割)の各法人の課税状況等は、法人の組織形態等によって非課税であったり、軽減措置が講ぜられたりしているため、法人によって計上額の差が大きくなっている。

また、官民ファンドの業務に係る資産、負債及び純資産が把握可能な13法人(全16法人から株式会社日本政策投資銀行及び独立行政法人2法人を除く13法人)の資産、負債及び純資産の状況をみると、28年度末時点で、7法人は、支援に伴い取得した資産に比べて、その他の資産の計上額が多くなっている。その他の資産には、官民ファンドの業務での支援に充てていない現預金等が含まれている。

そして、13法人のうち11法人は、24年度以降に官民ファンドの業務を開始しており、当初は株式売却等に伴う収入がない一方で事務費等の支出は先行して必要となることなどから、28年度末の時点で純資産の計が資本金等を下回っている。このうち、28年度末時点で、繰越損失等を解消するまでの計画等を策定している官民ファンド運営法人は2法人のみで、他の9法人は計画等を策定していないが、29年12月の第9回幹事会において、全ての官民ファンド運営法人16法人が、官民ファンドの業務終了時までの実投資額、回収額等、運営経費、同時期までに官民ファンドの業務の収支見通しがゼロ又はプラスとなる投資倍率等の見込みを報告しており、その内容が公表されている(3009_3_3_2リンク参照)。

(ウ) 支援案件の損益等の状況

官民ファンドの業務開始から28年度末までの支援案件の損益は、官民ファンド運営法人16法人が運営する14官民ファンドから、支援の実績が直接支援1件のみである1法人を除いた15法人が運営する13官民ファンドの合計でみると、回収額及び保有有価証券評価額等の合計が支援に伴う支出額を1兆5943億余円上回っている(投資倍率は181.8%)。また、官民ファンド単位でみると、9法人が運営する6官民ファンドにおいて損失となっている。そして、28年度末までの必要投資倍率と28年度までの投資倍率の実績とを比較すると、16法人から、支援の実績が直接支援1件のみである1法人並びに官民ファンドの業務に係る諸経費を運営費交付金で賄うことができる独立行政法人2法人及び国立大学法人4法人を除く9法人が運営する10官民ファンドのうち6法人が運営する6官民ファンドは、28年度までの投資倍率の実績が必要投資倍率を下回っている。

また、官民ファンドの業務開始から28年度末までに実行された出資のうち、28年度までに支援を終了した実績があるのは8法人が運営する8官民ファンドであるが、出資(直接支援)では計3679億余円の利益(投資倍率は174.5%)、出資(間接支援)では計136億余円の損失(投資倍率は82.0%)となっている。このうち、出資(間接支援)では、独立行政法人中小企業基盤整備機構において137億余円の損失が生じている(3009_3_3_3リンク参照)。

(エ) 28年度末に支援継続中の出資案件の状況

28年度末において直接支援継続中の出資案件のうち、28年度末の純資産持分相当額が出資額の50%以下の支援件数は、全14官民ファンド合計で151件中69件(全体の45.6%)となっており、そのうち、対象事業者の経営状況が事業計画等から外れているなどとして、減損処理を行ったり、投資損失引当金を計上したりした件数は12件となっている。

また、28年度末に間接支援継続中のサブファンドの28年度決算で計上されている全サブファンドの純資産額の合計をみたところ、サブファンドへの出資がある12法人のうち、当期損益累計額が3法人でプラス、9法人でマイナスとなっている。サブファンドの多くが損失となっている中で、サブファンドから出資を受けている対象事業者が株式公開を果たすなど、出資額を大幅に上回る回収ができた一部のサブファンドが利益を確保しており、これが3法人において当期損益累計額がプラスになっている要因であると考えられる(3009_3_3_4リンク参照)。

(オ) KPIによる収益性の確保に関する評価の状況等

各官民ファンド運営法人の法人全体のKPIのうち、収益性のKPIの設定についてみると、株式会社2法人が運営する2官民ファンドは、出資等回収累計額が出資等累計額を上回るかどうかを基準とした成果目標を設定しており、諸経費の回収を考慮していない。

また、独立行政法人中小企業基盤整備機構は、運営する官民ファンドについて、直近の運用実績を適切に把握し、投資運用方針の妥当性を判断するためとして、当該年度の単年度の損益の実績のみを測定して評価していた。

さらに、支援を終了した案件がないか又は少ないため評価が困難であるとして、設立以来、法人全体の収益性のKPIの評価を実施していない官民ファンドが、11法人が運営する8官民ファンドある。そして、上記8官民ファンドのうち2官民ファンドは、個別案件のKPIの総括的な進捗・達成状況に関する情報を公表しているが、6官民ファンドでは、個別案件のKPIにおいても、収益性の確保が図られているかどうか判断できる情報は公表されていない。しかし、これらの官民ファンドには支援期間として10年以上の長期間を予定しているものもあることから、収益性に係る情報が長期間公表されないおそれがある(3009_3_3_5リンク参照)。

(カ) 支援に係る情報開示の状況

実支援後における情報開示の状況については、支援中の個別案件について評価額の情報開示を行っているのは2法人のみとなっており、また、支援を終了した案件がある官民ファンド運営法人で個別案件ごとの損益額についての情報開示を行っている法人はない(3009_3_3_6リンク参照)。

(2) 所見

官民ファンド運営法人は、設置根拠法、交付要綱等に定められた政策目的に沿った支援を行うこととなっている。また、28年度末における政府から官民ファンド運営法人16法人に対する官民ファンドの業務運営に関する政府出資等の額は、計7812億余円と多額に上っている。そして、官民ファンド運営法人は、所管府省庁の監督等の下、ガイドラインに沿って官民ファンドを適切に運営していくことが重要である。

ついては、支援を政策目的に沿ったものにし、収益性を確保して政府出資等が回収できない事態等が生ずることを回避するために、官民ファンド運営法人及び所管府省庁は、ガイドラインに沿って官民ファンドの運営等を行っていくとともに次の点に留意することが必要である。また、幹事会の構成員である関係府省庁は、幹事会において、従来官民ファンドの運営状況の検証を行ってきたところであるが、統一的に対応すべき問題について、次の点に留意しながら引き続きガイドラインに基づいた検証等を行うことが望まれる。

ア 国の財政支援及び官民ファンド運営法人による支援の実施状況

  • (ア) 官民ファンド運営法人は、その財源の多くが政府出資等であることに鑑み、それぞれの支援対象分野において、収益性の確保に留意しつつ、引き続き政策目的に沿った支援を実施すること。また、支援の実施状況等を踏まえ、支援の実施に必要のない政府出資等が生じた場合、剰余金が発生した場合及び支援を終了した場合には、引き続きこのような政府出資等の国庫納付等を適切に実施していくこと
  • (イ) 株式会社農林漁業成長産業化支援機構等の間接支援を実施している官民ファンド運営法人は、サブファンドに対する支援について、支援の対象となり得る事業者の数や出資等に対する需要を引き続き十分に確認するとともに、支援決定時に見込んだ出資等が進まない場合には、必要に応じて業務運営の進め方の見直しを検討すること
  • (ウ) 官民ファンド運営法人は、官民ファンドの支援対象分野については、同一の事業者に対して重複して支援が実施される可能性があることから、支援の実施に当たり、一層効率的、効果的に取り組む観点から、引き続き官民ファンド間の情報交換、投資手法等の共有等に努めることが望ましいこと
  • (エ) 政策目的のKPIについて、必要性に疑問がある指標を用いていたり、達成済みの成果目標を継続して用いていたり、支援中の案件の進捗状況や達成状況を評価できるKPIの設定を行っていなかったり、法人ごとの評価結果を公表していなかったりするなどする官民ファンド運営法人は、KPIの内容や成果目標について、設定の見直しや評価結果の公表等を検討すること
  • (オ) 国立大学法人4法人は、官民イノベーションプログラムに対する政府出資金のうち、特定研究成果活用支援事業計画の認定を受けていない資金の活用について、既存の国大ファンドの新規投資期間の終了時期等を考慮し、今後の使用見込み等について十分に検討するとともに、文部科学省は、国立大学法人4法人が検討した結果、使用する見込みがない政府出資金が生ずる場合には、財政資金の有効活用の観点から、このような政府出資金を国庫に納付する手段についての規定がない国立大学法人法を改正するなど、国立大学法人4法人が保有する政府出資金の国庫納付が行えるようにする措置を検討すること

イ 案件発掘、支援決定、モニタリング等の支援業務の実施状況

  • (ア) 官民ファンド運営法人は、政策目的を達成するため、支援決定については、独立した立場の社外の実務経験者等の委員を加えて審議するなどにより、執行部を監視・牽制する仕組みを引き続き適切に運営すること。また、サブファンドの業務を執行するGPについて、出資等の需要を十分踏まえた上で、需要が見込める場合には、案件組成力等が期待できるGPの選定を引き続き適切に行うこと
  • (イ) 官民ファンド運営法人は、モニタリングについて、支援決定後から実支援までの間において、対象事業者が事業を実施するために行うべき法令上の手続があるなどの場合には、当該手続等に不備が生じないようその確認を適切に行うほか、支援を行った後においては、対象事業者の財務情報や経営方針等の企業情報を引き続き継続的かつ適切に把握すること

ウ 財務等の状況

  • (ア) 繰越損失等が生じており、純資産の計が資本金等を下回っている官民ファンド運営法人は、最終的に国が政府出資等の額を回収できるように、繰越損失等を解消するまでの計画又は投資倍率等について目標としての妥当性を確保するために必要な見直しを継続的に行い、その目標の達成に向けて官民ファンドを運営し、進捗状況を的確に把握して、必要な施策を講じていくこと
  • (イ) 官民ファンド運営法人は、対象事業者の事業が軌道に乗り財務状況が改善していくように、引き続き対象事業者の事業の状況を適時適切にモニタリングした上で、必要に応じて、業務改善に関する助言を行ったり、取引先や金融機関の紹介を行ったり、専門家の派遣を行ったりするなど、必要な手段を諸経費についても考慮しつつ講じていくこと
  • (ウ) 法人全体の収益性のKPIについて、諸経費の回収を考慮していなかったり、単年度の損益の実績のみを測定して評価していたりするなどしている官民ファンド運営法人は、諸経費の負担を考慮したり、官民ファンドの業務開始以降の出資等累計額を使用したりするなどすることで、政府出資等の全額を国庫に返納できるかを判断できるようにすること
  • (エ) 支援を終了した案件がないか又は少なく、評価が困難であるためとして、法人全体の収益性のKPIについて評価を実施していない官民ファンド運営法人は、情報の秘匿性に留意しつつ、支援実施中の案件の財務状況等を検証報告の収益性のKPIの補足情報として記載するなど積極的に収益性について情報提供を行っていくこと
  • (オ) 官民ファンド運営法人は、国民に対する説明責任を果たす観点から、多額の減損損失や支援を終了した時の多額の損失により政府出資等に重要な影響が生ずるおそれがあるなどの場合には、情報の秘匿性に留意しつつ、個別の案件の損失についても可能な限り情報開示を行っていくこと

会計検査院としては、今後業務の進捗に伴い支援を終了して損益が確定する案件が増加していくことなどを踏まえて、官民ファンドにおける業務運営の状況について、今後とも多角的な観点から引き続き注視していくこととする。