リスクマネーの供給は、16年度以降、公団から業務を承継した機構が中心となって行ってきており、原則として開発会社を支援する体制となっているが、前記のとおり、28年11月に機構法が改正されたことにより、開発会社が行う海外の資源会社の買収や資本提携への支援等として資源会社への出資を行ったり、産油国の国営石油企業の株式を取得したりすることができるようになった上、当該出資に必要な資金に、経済産業大臣の認可を受けて機構が借り入れた政府保証付長期借入金を充てることができることとされるなど、リスクマネーの供給に係る業務が拡充されることとなった。また、上記のとおり、会計検査院は14年度報告において、公団がリスクマネーの供給等を行ったことにより取得した公団資産の処理等について引き続き注視していくとしている。
そこで、会計検査院は、機構等によるリスクマネーの供給等について、正確性、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査を実施した。
ア リスクマネーの供給に係る予算は適切に執行されているか、リスクマネーの供給に係る収支や損益はどのようになっているか、また、リスクマネーの供給によって取得した出資株式の売却により損失が生じていないか。
イ リスクマネーの供給は、自主開発比率の向上に寄与するものとなっているか、また、リスクマネーの供給等を行っている権益に係る石油・天然ガスは、緊急時に我が国に持ち込めるようになっているか。
ウ リスクマネーの供給に係る審査は、規程等に基づき適切に行われているか。
エ リスクマネーの供給に係る機構の財務諸表の表示は適切なものとなっているか。
オ 14年度報告の後の公団の欠損金や公団資産の状況はどのようになっているか。
検査に当たっては、国に承継された公団資産に係る契約、16年度から28年度までの間に機構がリスクマネーの供給を行った出資及び債務保証に係る契約等を対象として、資源エネルギー庁、機構のほか、国からの出資を受けている開発会社である国際石油開発帝石株式会社(18年4月3日から20年9月30日までは国際石油開発帝石ホールディングス株式会社、18年4月2日以前は国際石油開発株式会社及び帝国石油株式会社。以下「INPEX」という。)及び石油資源開発株式会社(以下「JAPEX」という。)において、契約関係書類、審査関係書類等を確認するなどして会計実地検査を行った。