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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第1 国会(衆議院)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

使用されていない国有財産について、国有財産法に規定されている原則を踏まえた有効活用が図られていくよう意見を表示したもの


会計名
一般会計
部局等
衆議院
国有財産の分類
(分類)行政財産 (種類)公用財産
衆議院が管理する行政財産に係る平成30年度末現在の国有財産台帳価格
6725億5084万余円
法制局分室の概要
会議等施設として職員の会議、宿泊等に使用するもの
法制局分室に係る平成30年度末現在の国有財産台帳価格
9億4448万円

【意見を表示したものの全文】

国有財産の有効活用について

(令和元年10月29日付け 衆議院議長宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり意見を表示する。

1 貴院所管の国有財産の管理、処分等の概要

国有財産法(昭和23年法律第73号。以下「法」という。)によれば、国有財産は、国の事務、事業又はその職員の住居の用に供し、又は供するものと決定したものなどである行政財産と、行政財産以外の一切の国有財産である普通財産とに分類されている。そして、法に規定されている管理及び処分の原則によれば、衆議院議長、参議院議長、内閣総理大臣、各省大臣、最高裁判所長官及び会計検査院長(以下「各省各庁の長」という。)は、その所管に属する国有財産について、良好な状態での維持及び保存、用途又は目的に応じた効率的な運用その他の適正な方法による管理及び処分を行わなければならないこととされている。また、各省各庁の長は、行政財産の用途を廃止した場合はこれを財務大臣に引き継がなければならないこととされ、各省各庁の長は、その所管に属する国有財産に関する事務の一部を、部局等の長に分掌させることができることとされている。

貴院は、国有財産の事務の一部について、議院事務局法(昭和22年法律第83号)に基づき貴院に附置されている貴院事務局(以下「事務局」という。)に分掌させていて、貴院の行う業務の目的を遂行するために、その所管に属する貴院庁舎、議員会館、公邸、議員宿舎、職員宿舎等の土地、建物等の国有財産を行政財産として管理させている(平成30年度末の国有財産台帳価格計6725億5084万余円)。また、貴院が、行政財産の用途を廃止して財務大臣に引き継いだり、用途を変更したりするなどの場合には、国会法(昭和22年法律第79号)に基づき貴院に設置されている貴院議院運営委員会(以下「議院運営委員会」という。)の協議を要することになっている。このため、事務局は、必要に応じて、議院運営委員会に対して、国有財産の管理等に関する事項について説明を行うなどしている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

国有財産は、前記のとおり、法に規定されている管理及び処分の原則によれば、良好な状態での維持及び保存、用途又は目的に応じた効率的な運用その他の適正な方法による管理及び処分が行われなければならないこととされている。そこで、本院は、有効性等の観点から、法に規定されている上記の原則を踏まえて国有財産が有効に活用されているか、国有財産が貴院の業務の目的を遂行するための役割を果たしているかなどに着眼して、貴院が管理する行政財産を対象として、貴院において、国有財産台帳等の関係書類を検査するとともに、行政財産の現況を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

貴院が管理する行政財産のうち、法制局分室(東京都渋谷区所在。30年度末現在の国有財産台帳価格9億4448万余円)は、国会法に基づき貴院に附置されている貴院法制局(以下「法制局」という。)の職員の会議、宿泊等に使用するとしている会議等施設である。その内訳は、土地(1,243m2)、建物2棟、立木竹等となっており、これらの土地等は、貴院が昭和23年8月に購入するなどして取得したものである。

この法制局分室の使用状況についてみたところ、貴院は、建物等の管理のために管理人の人件費や樹木のせん定等の費用として、平成25年度から30年度までの間に計1400万余円を支払っていたものの、法制局は、24年8月に会議のため1日使用したのを最後に、法制局分室の建物が購入から70年以上経過し老朽化していて使用に適さないなどの理由から、24年9月以降、法制局分室を全く使用していない。そして、事務局は、法制局から法制局分室の使用状況について報告を受けていなかったことなどから、議院運営委員会に対して法制局分室の現状についての説明を行っていない。

このように、法制局分室については、24年9月以降、全く使用されておらず、行政財産として貴院の業務の目的を遂行するための役割を果たしていないと認められる。

(改善を必要とする事態)

貴院において、24年9月以降、全く使用されていない法制局分室について、行政財産として貴院の業務の目的を遂行するための役割を果たしていない事態は、国有財産の有効活用の面から適切ではなく、改善の要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、法制局及び事務局において、法制局分室について、法に規定されている原則を踏まえた有効活用を図らなければならないことについての理解が十分でないこと、事務局において、法制局分室の現状を把握しておらず、そのため議院運営委員会に対して説明を行っていないことなどによると認められる。

3 本院が表示する意見

貴院が管理する法制局分室については、24年9月以降、全く使用されていない状況となっているが、国有財産は、前記のとおり、用途又は目的に応じた効率的な運用その他の適正な方法による管理及び処分を行うことが求められている。

ついては、貴院において、事務局が法制局分室の現状を的確に把握するなどした上で、議院運営委員会に対して貴院が管理する法制局分室の現状についてより一層の説明を行うことなどにより、国有財産の有効活用が図られていくよう意見を表示する。