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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣府(内閣府本府)|
  • 不当事項|
  • 役務

遺棄化学兵器処理事業のうち、中国政府に委託した業務について内閣府本府が行う履行監理を支援等させる委託契約において、調理指導業務に係る人件費を実際に支払った額に基づかずに算定していたため、委託費の支払額が過大となっていたもの[内閣府本府](1)


会計名及び科目
一般会計 (組織)内閣本府 (項)遺棄化学兵器廃棄処理事業費
部局等
内閣府本府
契約名
中国遺棄化学兵器の発掘・回収及び廃棄処理事業に関する施設建設支援等業務委託契約等4契約
契約の概要
遺棄化学兵器処理事業のうち、中国政府に委託した施設の運営等の業務について内閣府本府が行う履行監理を支援等させるもの
契約の相手方
株式会社JPM(平成28年6月23日以前は株式会社ジェイピーエム)
契約
平成26年4月ほか 契約4件 一般競争契約
支払
平成26年8月ほか
支払額
1,854,363,965円(平成26年度~29年度)
過大となっていた支払額
47,376,233円(平成26年度~29年度)

1 遺棄化学兵器処理事業等の概要

内閣府本府は、「化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約」(我が国は平成7年9月に批准、9年4月に発効)、「日本国政府及び中華人民共和国政府による中国における日本の遺棄化学兵器の廃棄に関する覚書」(両国政府が11年7月に署名)等に基づき、中華人民共和国(以下「中国」という。)において、中国政府の協力の下で、旧日本軍が第二次世界大戦終了時までに中国国内に持ち込み、戦後も遺棄されたままとなっているびらん剤や嘔吐剤を含む砲弾等の化学兵器の発掘、回収、廃棄処理等を行う事業(以下「遺棄化学兵器処理事業」という。)を実施している。そして、吉林省敦化市ハルバ嶺における遺棄化学兵器処理事業のうち、我が国が直接実施することが困難、非効率又は不可能な施設の建設工事、作業員が宿泊する施設(以下「要員宿泊施設」という。)の運営等の業務については、中国政府に委託して実施している。

内閣府本府は、上記の中国政府に委託した業務について内閣府本府が行う履行監理を支援等させることを目的として、26年度から29年度までの各年度に、株式会社JPM(28年6月23日以前は株式会社ジェイピーエム。以下「JPM」という。)と「中国遺棄化学兵器の発掘・回収及び廃棄処理事業に関する施設建設支援等業務委託契約」等4契約(以下「委託契約」という。)を計1,904,040,000円で締結して委託業務を実施させており、委託費として計1,854,363,965円を支払っている。

委託契約書によれば、JPMは、業務の完了後に、精算報告書等を作成して内閣府本府に提出し、内閣府本府は精算報告書等の提出があった場合には、これらを速やかに審査した上で、委託費の額を確定することとされている。

そして、JPMは、委託業務に要した経費を、作業員に支払う人件費、人件費に一定の率を乗じて算出する間接経費等に区分して精算報告書等を作成して提出しており、JPMが直接雇用している作業員の人件費については、給与等の支払額を基に定めた日額単価に委託業務に従事した日数を乗じて算定している。また、内閣府本府は、JPMが業務の一部を第三者に再委託した場合の人件費については、委託先が再委託先へ実際に支払った額とすることなどにしている。

JPMは、委託契約に基づき、中国国内に所在する要員宿泊施設の運営に係る支援として、調理師の免許を有する者(以下「調理指導員」という。)を長期にわたり現地に派遣して、要員宿泊施設で提供する食事を調理する現地職員に対して日本食の調理方法の指導等を行う業務(以下「調理指導業務」という。)を実施している。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、委託費が適正に算定されているかなどに着眼して、委託契約を対象として、内閣府本府及びJPMにおいて、業務の実態を聴取するとともに、精算報告書等の関係書類を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

JPMは、調理指導業務に係る人件費については、JPMが直接雇用している作業員と同額の日額単価に調理指導業務に従事した日数を乗じて、26年度から29年度までの間で計34,462,658円と算定していた。そして、JPMは、調理指導業務に係る人件費とこれに係る間接経費等を委託費に含めた精算報告書等を作成して内閣府本府へ提出し、内閣府本府は、提出を受けた精算報告書等を審査して、報告された額と同額を委託費の額として確定して支払っていた。

しかし、JPMは、現地への調理指導員の派遣に当たり、日本国内で旅館業を営む会社に調理指導業務を再委託していて、必要に応じて再委託先から現地へ調理指導員を派遣していた。そして、JPMが再委託先に実際に支払った額は26年度から29年度までの間で計13,957,182円となっていたことから、調理指導業務に係る人件費は、JPMが直接雇用している作業員に係る算定方法によるのではなく、JPMが再委託先に実際に支払った額に基づき算定すべきと認められた。

したがって、再委託先に実際に支払った額に基づき適正な委託費の額を算定すると計1,806,987,732円となり、前記の委託費支払額1,854,363,965円との差額47,376,233円が過大に支払われていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、JPMにおいて委託費の算定に関する理解が十分でなかったこと、内閣府本府において委託費の額の確定に係る審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。