ページトップ
  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣府(内閣府本府)|
  • 不当事項|
  • 補助金|
  • (1) 補助金の交付額の算定が適切でなかったもの

子ども・子育て支援交付金(放課後児童健全育成事業に係る分)を過大に交付していたもの


(3件 不当と認める国庫補助金 65,977,000円)

放課後児童健全育成事業は、児童福祉法(昭和22年法律第164号)等に基づき、市町村(特別区及び一部事務組合を含む。)が実施主体となり、保護者が労働等により昼間家庭にいない小学校に就学している児童等に対して、放課後等に安心して生活できる居場所を確保するとともに、次代を担う児童の健全な育成を支援することを目的とするものである。児童福祉法等に定める本件事業には、同じ名称であり、放課後児童クラブにおいて児童に適切な遊び及び生活の場を与える放課後児童健全育成事業(以下「健全育成事業」という。)のほか、健全育成事業を実施するために既存の小学校の余裕教室等の改修や必要な設備の整備等を行う放課後子ども環境整備事業(以下「環境整備事業」という。)等の複数の種類の事業がある。

そして、国は、市町村(特別区を含む。)に対して、子ども・子育て支援交付金(放課後児童健全育成事業に係る分)(以下「交付金」という。)を交付して、放課後児童健全育成事業に要する費用の一部を補助している。

 「「放課後児童健全育成事業」の実施について」(平成27年雇児発0521第8号)等によれば、健全育成事業における支援の提供が同時に一人又は複数の利用者に対して一体的に行われるものを一つの単位(以下、この単位を「支援単位」という。)とし、一つの支援単位を構成する児童の数は、おおむね40人以下とすることとされている。そして、一定の研修を受けた放課後児童支援員等(以下「支援員等」という。)を、一つの支援単位ごとに2人以上配置することなどが実施要件とされている。また、環境整備事業は、健全育成事業を新たに実施するために必要な小学校の余裕教室等の既存施設の改修の有無等により複数の事業に区分されている。

また、「平成27年度子ども・子育て支援交付金の交付について」(平成27年府子本第277号内閣総理大臣通知。以下「交付要綱」という。)等によれば、交付金の額は、各事業の区分ごとに定められた方法により算定するなどした基準額を合算した額と対象経費の実支出額を比較して少ない方の額と、総事業費から寄附金その他の収入額を控除した額とを比較して、少ない方の額(以下「基本額」という。)に国の負担割合3分の1を乗ずるなどして得た額とすることとされている。そして、健全育成事業に係る基準額は、支援単位を構成する児童の数により算定される一支援単位当たりの年額と年間開所日数により算定される開所日数加算額等を合算して算定することとされている。

本院が、24都道府県の157市区町村において会計実地検査を行ったところ、3県の3市町において、交付金の交付額の算定に当たり、年間開所日数に含まれている土曜日の中には一つの支援単位に支援員等を2人以上配置していない日が含まれていたのに、これらの日を年間開所日数に含めていたり、既存施設の改修を行っていないのに改修を伴う事業の基準額を選定していたりしていた。このため、交付金計65,977,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、3市町において交付要綱等の理解が十分でなかったこと、3県において事業実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1> 実施要件を満たしていない日を年間開所日数に含めて基本額を過大に算定していた事態

福岡市は、平成27、28両年度に、27年度283支援単位、28年度312支援単位において、土曜日も含めて支援員等を2人以上配置して健全育成事業を実施したなどとして、放課後児童健全育成事業に係る基本額を計3,386,220,250円として福岡県に事業実績報告書を提出して、これにより交付金計1,120,437,000円の交付を受けていた。

しかし、上記支援単位のうち27年度270支援単位、28年度301支援単位において、放課後児童クラブ内の複数の支援単位は土曜日に合同で健全育成事業を実施していたことから、これらの支援単位ごとにみた場合、支援員等が2人以上配置されておらず実施要件を満たしていない日もあったのに、同市は、交付金の交付額の算定に当たり、これらの実施要件を満たしていない日を年間開所日数に含めて基準額を算定していたため、基本額が過大に算定されていた。

したがって、27、28両年度の適正な基本額を算定すると計3,189,178,410円となることから、前記の基本額3,386,220,250円との差額197,041,840円が過大となっており、これに係る交付金57,378,000円が過大に交付されていた。

<事例2> 実施した事業の基準額の選定を誤っていた事態

千葉県四街道市は、平成28、29両年度に、28年度3か所、29年度1か所の放課後児童クラブにおいて、環境整備事業の実施に当たり、小学校の余裕教室等の既存施設の改修等を伴う放課後児童クラブ設置促進事業に係る一放課後児童クラブ当たりの基準額(1200万円)を選定していた。そして、同市は、上記環境整備事業の基準額のほか健全育成事業等の基準額を合算するなどして、放課後児童健全育成事業に係る基本額を計165,953,157円として千葉県に事業実績報告書を提出して、これにより交付金計55,316,000円の交付を受けていた。

しかし、同市が実施した環境整備事業は備品の購入(28年度の実支出額1,776,133円、29年度の実支出額997,920円)のみであることから、環境整備事業のうち既存施設の改修を伴わない放課後児童クラブ環境改善事業に係る一放課後児童クラブ当たりの基準額(100万円)を選定するなどして基本額を算定すべきであった。

したがって、28、29両年度の適正な基本額を算定すると計148,520,460円となることから、前記の基本額165,953,157円との差額17,432,697円が過大となっており、これに係る交付金5,811,000円が過大に交付されていた。

前記の事態を態様別・部局等別に示すと次のとおりである。

ア 実施要件を満たしていない日を年間開所日数に含めて基本額を過大に算定していた事態

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(2)
山梨県
西八代郡市川三郷町
子ども・子育て支援交付金(放課後児童健全育成) 27、28 56,099 18,669 8,454 2,788
(3)
福岡県
福岡市
27、28 3,386,220 1,120,437 197,041 57,378

イ 実施した事業の基準額の選定を誤っていた事態

(4)
千葉県
四街道市
子ども・子育て支援交付金(放課後児童健全育成)
28、29 165,953 55,316 17,432 5,811
(2)―(4)の計 3,608,272 1,194,422 222,928 65,977