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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (4) 工事の設計が適切でなかったもの

防護柵工の設計が適切でなかったもの[内閣府本府](11)


(1件 不当と認める国庫補助金 1,292,305円)

 
部局等
補助事業者等 間接補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(11) 内閣府本府
沖縄県
島尻郡八重瀬町 沖縄振興特別推進交付金 28 44,915 35,932 1,615 1,292

この交付金事業は、八重瀬町が、八重瀬町字具志頭地内において、同町の観光振興機能の導入を図ることなどを目的として観光拠点施設等を整備するに当たり、擁壁工、防護柵工等を実施したものである。

このうち、防護柵工は、観光拠点施設等の用地に隣接する小学校のグラウンド用地からのボールの侵入等を防止するために、グラウンド用地との境界に金網フェンス(高さ3.0m、延長95.7m)を設置したものである。そして、金網フェンスの延長23.7mの区間については、擁壁工で設置したプレキャスト製L型擁壁の背面に2.0m間隔でコンクリート基礎ブロック(縦45.0cm、横45.0cm、高さ80.0cm。以下「基礎ブロック」という。)を設置し、これに支柱を取り付けて、金網フェンスを固定していた(参考図参照)。

同町は、本件工事の実施に当たり、平成27年度に、設計業務等を設計コンサルタントに委託して実施し、設計報告書、工事設計書、土質調査報告書等(以下、これらを「設計報告書等」という。)を受領しており、設計報告書等によれば、基礎ブロックを設置する地盤面の設計条件である長期許容地耐力(注1)は100kN/m2、基礎地盤面の土質は粘土(注2)とされていた。

建築基準法施行令(昭和25年政令第338号。以下「施行令」という。)によれば、粘土質地盤の長期許容地耐力(注3)は20kN/m2とされている。また、「道路土工 盛土工指針」(公益社団法人日本道路協会編)によれば、土質が粘性土である発生土を工作物の埋戻し土として使用する場合は、当該発生土について適切な土質の改良を行えば使用することが可能であるとされている。

しかし、同町は、前記の設計報告書等に基づき設計図書を作成する際に、基礎ブロックの埋戻し土について、土質の改良等について具体的な検討を行わず、擁壁工で生じた粘土である発生土をそのまま使用することとして、本件工事を施工業者に施工させていた。

このため、基礎ブロックを設置した地盤面の土質は、施行令において長期許容地耐力20kN/m2とされている粘土であり、基礎ブロックを設置する地盤面の設計条件である長期許容地耐力100kN/m2を下回っていることから、基礎ブロックは沈下するおそれがあり、現に、基礎ブロックが1cmから2cm程度沈下していたり、L型擁壁背面側に数cm傾いていたりしていた。

したがって、本件防護柵工(工事費相当額1,615,382円)は基礎ブロックの設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額1,292,305円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同町が設計図書を作成するに当たって設計コンサルタントから受領した設計報告書等についての理解が十分でなかったこと、沖縄県において同町に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
長期許容地耐力  地盤に対し鉛直方向に長期に働く力を地盤が支えることができ、かつ有害な地盤の沈下を生じさせない設計上許される上限値
(注2)
粘土  土質材料の工学的分類によれば粘性土の一種
(注3)
施行令では「地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度」と規定されているが、同様の概念であることから、「長期許容地耐力」と表記を統一している。

(参考図)

支柱の設置等の概念図

支柱の設置等の概念図 画像