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国勢調査の調査票等の調達数量の算定に当たり、予備率を重複して設定したり、設定する必要のない予備率を誤って設定したりしていたため、用紙購入及び印刷に係る調達数量が過大となっていたもの[総務本省](12)


会計名及び科目
一般会計 (組織)総務本省 (項)統計調査費
部局等
総務本省
契約名
平成27年国勢調査 再生上質紙の購入等6契約
契約の概要
国勢調査に係るネット調査の導入に伴い調達する調査票等の製造のために再生上質紙を購入するなどのもの
契約の相手方
5会社
契約
平成26年12月、27年1月 一般競争契約(単価契約)
調達枚数及び部数
調査票 74,012,610枚、調査票の記入のしかた 61,983,880部
支払額
740,942,414円(平成26、27両年度)
過大となっていた調達枚数及び部数
調査票 4,589,670枚、調査票の記入のしかた 2,156,470部
上記に係る支払額
36,106,373円(平成26、27両年度)

1 国勢調査の概要等

(1) 国勢調査の概要

総務省統計局(以下「統計局」という。)は、統計法(平成19年法律第53号)、国勢調査令(昭和55年政令第98号)等に基づき、人及び世帯に関する全数調査(以下、調査の対象となる世帯を「対象世帯」という。)を行い、この全数調査に基づく国勢統計を作成するために、平成27年に国勢調査を実施している(以下、同年に実施した国勢調査を「27年国勢調査」という。)。

統計局は、国勢調査の調査事項に係る回答を、紙面による調査票で受ける方法に加えて、インターネット経由で受ける方法(以下「ネット調査」という。)を27年国勢調査において初めて全国規模で導入することとし、このため、24年度から26年度までの間に3次にわたる試験調査を実施している。そして、第1次から第3次までの試験調査において、病院等で生活している対象世帯を除いた対象世帯(以下「一般世帯」という。)のうち、ネット調査で調査事項を回答した一般世帯の割合(以下「ネット回答率」という。)は、それぞれ25.3%、23.3%及び34.0%となっている。

(2) 調査票等の調達の概要

統計局は、27年国勢調査の実施に当たり、紙面により回答を受ける調査票及び調査票と合わせて1世帯に1部配布される「調査票の記入のしかた」(以下、これらを「調査票等」という。)の調達を行っている。その調達数量の算定方法については、明文化された規定はないとしている。一方、従来、担当課では、調達数量の算定の基礎となる要素を記載する様式(以下「算出票」という。)を使用して、調査票等ごとに、調達数量の算定を行っている。

そして、27年国勢調査に使用する調査票等に係る算出票において、統計局は、次の手順により、調査票の調達数量を算定していた(図参照)。

図 調査票の調達数量の算定手順

調査票の調達数量の算定手順 画像

図のうち、①「一般世帯に必要な枚数」、②「ネット回答率」及び③「予備率」の算定方法は、それぞれ次のとおりとなっていた。

① 「一般世帯に必要な枚数」については、前回の22年に実施した国勢調査(以下「22年国勢調査」という。)の結果等により一般世帯の世帯数を算定するとともに、調査票1枚に記入することができる回答は4名分であることから、人員数が5人から8人までの一般世帯については調査票2枚が必要になることなど(以下「世帯人員のばらつき」という。)を踏まえ、22年国勢調査の結果等により世帯人員のばらつきに係る追加枚数を見積り、これを一般世帯の世帯数に加算して算定する。

② 「ネット回答率」については、27年国勢調査の際は、調査票を配布する前にネット調査による回答期間を設け、その期間内にネット回答を行った世帯を除いた一般世帯に調査票を配布することとしていることから、試験調査の結果を踏まえるなどして20%とする。

③ 「予備率」については、のとおり、調査票の配布から回収までの間に紛失、破損等、世帯人員のばらつき、27年国勢調査に使用されるシステムに障害が発生するおそれなどを考慮して、その想定される発生割合とする。

表 予備率の内訳

(単位:%)
予備率の内訳
調査票等
調査票回答世帯における紛失、破損等 都道府県、市町村での調査の際に天災等が発生するおそれ 統計局等における検査時の汚れ、折れなどによる書き直しが発生するおそれ 調査票回答世帯の世帯人員のばらつき 27年国勢調査に使用されるシステムに障害が発生するおそれ
a b c d e f=a+b+c+d+e
調査票 10 5 6 5 3 29
調査票の記入のしかた 10 5   5   20

そして、上記の算定手順のうち③の調査票の予備率については、表のとおり、紛失、破損等に係る10%、天災等の発生に係る5%、回答後に発見される調査票の折れなどによる書き直しに係る6%(表のa、b及びc欄)としていた。また、これらに加えて、前記①の22年国勢調査の結果等に基づき一般世帯に必要な枚数として見積もった世帯人員のばらつきに係る追加枚数のほかに、別途世帯人員のばらつきに係る5%(表のd欄)、27年国勢調査において初めて全国規模でのネット調査が実施されることから、システムに障害が発生するおそれとして3%(表のe欄。以下「システム障害に係る予備率」という。)を更に上乗せして、合計29%としていた。

また、「調査票の記入のしかた」の予備率については、上記の調査票の予備率の設定に当たり考慮した事項のうち、考慮する必要のない調査票の折れによる書き直しに係る6%及びシステム障害に係る3%を除いて合計20%としていた。

これらを踏まえて、調査票の調達枚数については、対象世帯に必要な枚数に8,586,103枚を加えた57,370,784枚に予備率29%を乗じて得るなどした74,008,312枚に報道用等の4,300枚を加えるなどして74,012,610枚と算定していた。また、「調査票の記入のしかた」の調達部数については、一般世帯に必要な部数からネット回答率に基づき算定した部数を控除した43,129,464部に予備率20%を乗じて得るなどした51,755,357部に、病院等で生活している対象世帯用等の10,228,530部を加えるなどして61,983,880部と算定していた。

そして、統計局は、調査票等に係る用紙購入及び印刷を行うために、算出票により算定された調達数量等に基づき、26年度に一般競争入札を実施し、用紙購入については、1会社との間で2契約、印刷については、4会社との間で4契約をそれぞれ締結している。これらの6契約に基づく支払額は用紙購入426,206,284円、印刷314,736,130円、計740,942,414円となっている。

2 検査の結果

本院は、経済性等の観点から、令和2年に実施される国勢調査に向け、総務省において調査票等の調達等の準備が進められていることを踏まえ、27年国勢調査における調査票等の調達に当たり、予備率は適切に設定されているかなどに着眼して、統計局において、上記の6契約を対象として、契約書等の関係書類を確認したり、算出票の考え方を聴取したりするなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

(1) システム障害に係る予備率及びネット回答率の設定

統計局は、前記のとおり、予備率の算定に当たり、システム障害に係る予備率として3%(表のe欄)を設定していた(これに係る調査票の枚数は、対象世帯に必要な枚数に8,586,103枚を加えた57,370,784枚に3%を乗じて得るなどした1,721,130枚)。

しかし、統計局は、前記のネット回答率の算定に当たって、調達手続の開始時期が近接していて利用することが困難であった第3次試験調査のネット回答率を除いて、第1次、第2次両試験調査のネット回答率である25.3%及び23.3%の単純平均値24.3%から、システム障害の影響等によりネット回答率が更に低下することを想定して4.3%引き下げて20%(これにより増加した調達数量3,754,270枚)としていた。したがって、システム障害に係る予備率3%を想定して見込んだ調査票1,721,130枚は調達する必要がなかったものである。

(2) 世帯人員のばらつきに係る予備率及び一般世帯に必要な枚数の算定

統計局は、前記のとおり、予備率の算定に当たり、世帯人員のばらつきに係る予備率として5%(表のd欄)を設定していた。そして、これに係る調査票の枚数は、対象世帯に必要な枚数に8,586,103枚を加えた57,370,784枚に5%を乗じて得るなどした2,868,540枚となる。また、これに係る「調査票の記入のしかた」の部数は、一般世帯に必要な部数からネット回答率に基づき算定した部数を控除した43,129,464部に5%を乗じて得るなどした2,156,470部となる。

しかし、統計局は、調査票の調達数量の算定に係る手順①の一般世帯に必要な枚数の算定に当たって、上記の5%とは別に世帯人員のばらつきを踏まえて、追加の調査票4,417,760枚を見積り、既にこれを加算していたことから、世帯人員のばらつきに係る予備率5%を想定して見込んだ上記の調査票2,868,540枚は調達する必要がなかったものである。また、「調査票の記入のしかた」については、1世帯に1部のみを配布することから、世帯人員のばらつきに係る予備率5%を想定して見込んだ上記の「調査票の記入のしかた」2,156,470部は調達する必要がなかったものである。

したがって、本件6契約で調達した調査票74,012,610枚のうち(1)の1,721,130枚及び(2)の2,868,540枚の計4,589,670枚並びに「調査票の記入のしかた」61,983,880部のうち(2)の2,156,470部が過大に調達されており、これに係る支払額である用紙購入費18,917,062円及び印刷費17,189,311円、計36,106,373円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、統計局において、調査票等の調達数量の算定に当たり、予備率を重複して設定したり、設定する必要のない予備率を誤って設定したりしていて、予備率の内容の確認が十分でなかったことなどによると認められる。