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(1) 地域経済循環創造事業交付金事業の実施に当たり、地方公共団体に対して、地域事業者、地域金融機関等の関係者との連携を密にさせて、事業効果等に係る定期的な検証を実施させることとしたり、交付金事業の事業効果が十分に発現していない事業がある場合には、具体的な改善策等を検討させたりするとともに、今後の交付金事業の実施に当たり、販路や地域の人材、資源の確保の収支計画の達成に重要な要素等について、綿密に検討させた上で、その結果を事業計画書に反映させるなどの方策を検討することにより事業効果が十分に発現するよう改善の処置を要求したもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)総務本省 (項)地域振興費
部局等
総務本省
交付の根拠
予算補助
補助事業者
4県、49市町村
地域経済循環創造事業交付金の概要
地域での経済循環を創造することを目的として、地方公共団体が、地域金融機関から融資を受けて事業化に取り組む民間事業者等に事業化段階で必要となる経費の助成を行う場合に、その実施に要する経費に対して地方公共団体へ国が交付するもの
検査の対象とした地域経済循環創造事業交付金事業の事業数及び交付額
83事業 26億5168万余円(平成25年度~28年度)
平成31年3月末現在において交付金事業が中断等している事業数及び交付額(1)
6事業 1億4931万円(平成25年度~27年度)
軌道年度の売上高計画実績比、人材計画実績比及び資源計画実績比がいずれも50%未満と低調となっている事業数及び交付額(2)
22事業 6億5810万円(平成25年度~28年度)
(1)及び(2)の計
28事業 8億0741万円(平成25年度~28年度)

【改善の処置を要求したものの全文】

地域経済循環創造事業交付金事業の効果の発現状況について

(令和元年10月29日付け 総務大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 制度の概要

(1) 地域経済循環創造事業交付金の概要

貴省は、景気の底割れを回避し、民間投資を喚起し持続的成長を生み出す成長戦略につなげていくために、「日本経済再生に向けた緊急経済対策」(平成25年1月閣議決定)に基づき、地域資源を活かした先進的で持続可能な事業化の取組を促進し、地域での経済循環を創造することを目的として、平成24年度から地域経済循環創造事業交付金事業(以下「交付金事業」という。)を実施している。地域経済循環創造事業交付金交付要綱(平成25年総行政第29号。以下「交付要綱」という。)等によれば、交付金事業は、都道府県及び市町村(以下「地方公共団体」という。)が、地域金融機関から融資を受けて事業化に取り組む民間事業者等(以下「地域事業者」という。)に、事業化段階で必要となる経費の助成を行う場合に、国が、その実施に要する経費に対して地方公共団体へ地域経済循環創造事業交付金(以下「交付金」という。)を交付するものとされている。また、地域の特色ある資源と地域の資金とを結びつけて、「あと一歩」で実現できるような地域活性化に資する事業を起こし、地域雇用創出のほか、農地、山林の再生、廃棄物等の有効活用等の本来であれば公的事業として対応する必要があると考えられる地域の課題(以下「地域課題」という。)を解決するものなどとされている。

また、交付金事業は、地域住民の資金を原資とする地域金融機関の融資を伴い、当該地域金融機関による事業採算性の審査を経ること、原則として、事業に係る人件費や原材料費等の経常支出において、地域の人材及び資源を活用することとされている。そして、地域事業者に助成を行う地方公共団体は、地域における経済循環を創造する際の中心的な役割が期待されるとして、地域事業者の経営能力及び事業計画の妥当性について、地域金融機関等と連携して十分な調査を行うこと、事業の立ち上げ及び継続について十分に支援することとされている。

(2) 事業計画書の作成等

交付要綱等によれば、交付金の交付を受けようとする地方公共団体は、地域経済循環創造事業交付金実施計画書(以下「事業計画書」という。)を地域事業者とともに作成し、地域金融機関による事業採算性の審査を経るなどして貴省に提出することとされている。事業計画書には、事業の目的、地域課題とその対応、関係機関の連携を模式化した事業実施体制図、事業の立ち上げ年度(以下「開始年度」という。)から当該事業が軌道に乗ると想定する年度(以下「軌道年度」という。)までの収支計画、地域事業者の経営能力及び事業計画の妥当性、事業計画に係る地域金融機関の意見等を記載することとされている。そして、これらのうち収支計画には、開始年度から軌道年度までの間の売上高、地域の人材の活用に係る経費(以下「地域人材活用費」という。)、地域の資源の活用に係る経費(以下「地域資源活用費」という。)、その他の経常的支出等を記載することとされている。

また、貴省は、事業を交付金事業として採択する際には、複数の有識者から構成される地域経済循環創造事業交付金審査会による審査を実施している。そして、当該審査に当たっては、地域金融機関からの融資を受けて事業化に取り組む地域事業者の事業であるか、地方公共団体が地域事業者とともに作成した事業計画書の内容が、地域資源を活かした先進的で持続可能な事業であって、地域での経済循環を創出する事業であるかなど、地域での取組を総合的に審査することにより決定しているとしている。

(3) 交付金事業の事業効果

交付金事業の事業効果については、交付要綱等によれば、公費交付額と融資額の合計額、売上高、地域人材活用費及び地域資源活用費の各項目のそれぞれの累計額を分子とし、公費交付額を分母とし、それぞれ算出した四つの指標(以下、それぞれ「資金循環創出効果」「経済循環創造効果」「地元雇用創出効果」及び「地元産業直接効果」という。)を検証・研究するものであるなどとされている(以下、資金循環創出効果を除く三つの指標を合わせて「3指標」といい、算定結果を「効果倍率」という。)。

他方で、27年11月に「行政事業レビューの実施等について」(平成25年4月閣議決定)に基づき実施された行政改革推進会議の秋の年次公開検証において、交付金事業の効果を厳格に検証し、制度設計の在り方等について見直しを行うべきとの指摘事項が貴省に示されている。これを踏まえて、貴省は、毎年度、交付金事業の効果を厳格に検証し、公開するとしており、28年度以降、地方公共団体に、地域経済循環創造事業交付金フォローアップ調査票(以下「調査票」という。)の作成を依頼し、四つの指標の効果倍率、交付金事業の進捗状況、収支の実績が収支計画を達成していない要因や解決策、今後の見通しなどを報告させている。

そして、貴省は、31年4月に、調査票の結果を取りまとめて、交付金事業の事業効果について貴省のウェブサイトで公表している。これによれば、30年3月31日時点において事業を実施中の交付金事業345事業について、公費交付額の累計額106億円の1.3倍に相当する地域金融機関からの融資額計143億円が誘発されて各地域における資金循環に寄与したなどとされている。また、上記345事業のうち30年7月31日時点で決算期を3回以上迎えた200事業について、経済循環創造効果、地元雇用創出効果及び地元産業直接効果の効果倍率は、同時点での直近の事業年度でみると、それぞれ7.07倍、1.31倍及び3.09倍となっているとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

交付金事業は、日本経済再生に向けた経済対策の一環として、地域の特色を生かして地域経済の活性化に取り組むものである。

そこで、本院は、有効性等の観点から、交付金事業の目的を踏まえた事業効果を十分に把握した上で検証を行い、改善に向けた取組が十分に行われているか、収支計画の達成に重要な要素等について十分な検討が行われ、その結果が事業計画等に反映されているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、15道県及び46都道府県の214市町村が24年度から30年度までの間に実施した交付金事業358事業のうち、31年3月末現在において軌道年度の決算期を迎えた4県及び49市町村が実施した83事業(注1)(交付額計26億5168万余円。以下「83事業」という。)を対象に、地方公共団体等において、事業計画書、調査票等を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、地域事業者等に対してアンケート調査を実施した。

(注1)
83事業  交付金事業の中には、2地域事業者が1事業として交付金申請をしているものがあり、後述の分析をするために便宜上2事業として計上した。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 中断等している交付金事業の状況

83事業を検査したところ、31年3月末現在において、地域事業者が、今後の方策を検討するとして中断しているものが2事業、今後の見通しが立たないとして中止しているものが2事業、破産しているもの(手続中のものを含む。)が2事業あり、計6事業(交付額計1億4931万余円。以下「6事業」という。)で事業が中断等していた。

そこで、6事業について、前記のとおり、会計実地検査及びアンケート調査により中断等の要因を確認したところ、中断している2事業は、当初予定していた供給先の需要が増えなかったり、人材が確保できず実施体制が構築できなかったりしたことによるとしていた。また、中止している2事業は、商品化のための生産技術を確立できなかったり、競合する他事業者の影響を受けたりしたことによるとしており、破産している2事業は、設備の故障が相次いだことにより生産体制を確立できなかったり、人材が確保できず実施体制が構築できなかったりしたことによるとしていた。これらの要因は、いずれも事業を実施する上で容易に想定され、また、事業の立ち上げや、その後の継続に重大な影響を及ぼしうるものであることから、事業に内在するリスクとして捉えて、回避策を十分に検討することが重要であるのに、6事業の地域事業者は、当該リスクを十分に捉えて回避することができなかった。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

A町所在の地域事業者は、平成26年度に、農業残さを固形燃料に加工し、同町が別に整備することとしている住宅地を主な供給先として販売するための製造施設一式の整備等を行う事業について、同町から610万円の助成を受けて、交付金事業を実施している。

そして、同事業の収支計画では、軌道年度である29年度における売上高は280万円、地域人材活用費は224万余円及び地域資源活用費は0円としている。

しかし、製造した固形燃料の主な供給先である住宅地の整備が遅れ、その後も入居者が増加しなかったり、同燃料は、燃やすと煙や悪臭が発生したりしたことなどから、需要が確保できずほとんど販売できなかったため、軌道年度における売上高、地域人材活用費及び地域資源活用費は、いずれも0円となっていた。

そして、交付金事業は、29年4月に中断され、令和元年5月の会計実地検査時点においても中断されたままとなっていた。

(2) 交付金事業の実施による事業効果の状況等

3指標は、前記のとおり、売上高、地域人材活用費及び地域資源活用費の各項目のそれぞれの累計額を分子とし、公費交付額を分母とし、それぞれ算出したものとされているが、分母は一定である一方、分子は累積していく性質のものであることから、交付金事業の継続に伴い、3指標の効果倍率は年々増加することが想定されるものである。貴省は、3指標の効果倍率を公表しており、前記のとおり、経済循環創造効果は7.07倍、地元雇用創出効果は1.31倍、地元産業直接効果は3.09倍となっているとしているものの、これは前記200事業の分子、分母をそれぞれ合計するなどして算出した全体の効果倍率であり、交付金事業ごとの効果倍率の分布を示すものではない。

そこで、本院において、83事業のうち31年3月末現在において交付金事業が中断等している6事業を除く77事業(以下「77事業」という。)について、調査票を用いるなどして3指標の効果倍率を集計したところ、表1及びのとおり、77事業の平均値は、経済循環創造効果で7.66倍、地元雇用創出効果で1.55倍、地元産業直接効果で3.76倍となっており、貴省の公表値とおおむね同様の結果となっていた。

しかし、77事業の3指標の効果倍率について交付金事業ごとの分布を分析したところ、いずれの指標も1.00倍未満の範囲が最頻値(注2)となっていて、1.00倍未満の事業数は、経済循環創造効果で19事業(77事業の24.6%)、地元雇用創出効果で35事業(同45.4%)、地元産業直接効果で49事業(同63.6%)となっていた。

一方、77事業の中には、売上高が大きいことから3指標のうち経済循環創造効果及び地元産業直接効果の効果倍率が100.00倍以上と極めて高く、地元雇用創出効果の効果倍率も5.00倍以上となっているものが1事業あり、この1事業で77事業の売上高の累計額239億0185万余円のうち約4割に当たる97億3172万余円を占めている。その理由をみると、主な販売先が親会社である大手企業となっていることなどから、他の大部分の交付金事業とは異なり事業開始時から大口の販路が確立されているためであると考えられる。

3指標の効果倍率は、達成すべき基準値が設定されているものではないが、個々の交付金事業における3指標の効果倍率が1.00倍未満と低い数値にとどまっているものが多数に上っている状況は、必ずしも交付金事業が順調に進んでいるとはいえないことを示していると認められる。

(注2)
最頻値  資料の中で最も頻度が高い値。他の値より著しく異なる値がある場合、平均値はそれに引きずられて大多数の分布より大きくずれることがあるが、最頻値はそれにほとんど影響されない点が優れているとされている。

表1 77事業における3指標の効果倍率の状況

(単位:倍、事業)
3指標
(分子/公費交付額)
効果倍率
1.00
未満
1.00
以上
2.00
未満
2.00
以上
3.00
未満
3.00
以上
4.00
未満
4.00
以上
5.00
未満
5.00
以上
10.00
未満
10.00
以上
経済循環創造効果
(分子:売上高の累計額)
19 16 3 11 4 11 13 77
地元雇用創出効果
(分子:地域人材活用費の累計額)
35 28 4 3 2 5 0 77
地元産業直接効果
(分子:地域資源活用費の累計額)
49 11 5 5 0 3 4 77

図 77事業における3指標の効果倍率の最頻値及び平均値の状況

図 77事業における3指標の効果倍率の最頻値及び平均値の状況 画像

(3) 売上高等の収支計画の達成状況

地方公共団体は、交付要綱等に基づき、事業計画書に地域課題とその対応について記載している。また、貴省及び地方公共団体によると、交付金事業を通じて、地域事業者が商品を販売するなどして、収支計画で見込んだ売上高を確保し、地域の人材及び資源を活用することにより、地域課題が解決されるとしている。したがって、特に、交付金事業の実施に当たって、売上高、地域人材活用費及び地域資源活用費の三つの項目の収支計画を達成することは、交付金事業が地域での経済循環の創造に資するための重要な要素となる。

そこで、77事業の軌道年度における売上高の収支計画に対する実績の比率(以下「売上高計画実績比」という。)と、地域人材活用費の収支計画に対する実績の比率(以下「人材計画実績比」という。)及び地域資源活用費の収支計画に対する実績の比率(以下「資源計画実績比」という。)を対比して分析するなどしたところ、次のとおりとなっていた。

ア 売上高の状況

77事業における売上高計画実績比については、表2のとおり、13事業(77事業の16.8%)は100%以上となっていて収支計画を達成していたが、64事業(同83.1%)は収支計画を達成しておらず、このうち39事業(同50.6%)は50%未満となっていた。

表2 77事業の売上高計画実績比の状況

売上高計画実績比 交付金事業の事業数及び交付額
事業数(事業) 構成比(%) 交付額(千円) 構成比(%)
100%以上 13 16.8 438,908 17.5
100%未満 64 83.1 2,063,460 82.4
  50%以上100%未満 25 32.4 853,162 34.0
50%未満 39 50.6 1,210,298 48.3
  10%以上50%未満 26 33.7 818,513 32.7
10%未満 13 16.8 391,785 15.6
77 100.0 2,502,368 100.0

(注) 構成比は、端数処理のため集計しても計と一致しないものがある。

77事業のうち、売上高計画実績比が100%未満となっていた64事業(交付額計20億6346万円、77事業に対する交付額の構成比82.4%)について、地域事業者64者に収支計画を下回る売上高しか達成できなかった要因を確認したところ、販路が確保できていないなど販売面に課題があるとしているものが最も多くを占めており、他に量産化が困難であるなど生産面に課題があるとしているものや、商品開発が進捗していないなど商品化に課題があるとしているものがあった。また、64者の約7割に該当する45者は抱える経営課題が複数あるとしていたほか、約8割に該当する50者は、事業計画どおりに売上高を達成できる時期を具体的に想定できないとしていた。

イ 地域の人材及び資源の活用状況

77事業における地域の人材及び資源の活用状況は、表3のとおり、人材計画実績比については、17事業(77事業の22.0%)は収支計画を達成していたが、60事業(同77.9%)は収支計画を達成しておらず、このうち29事業(同37.6%)は50%未満となっていた。また、資源計画実績比については、13事業(同16.8%)は収支計画を達成していたが、62事業(同80.5%)は収支計画を達成しておらず、このうち42事業(同54.5%)は50%未満となっていた。

表3 77事業の人材計画実績比及び資源計画実績比と売上高計画実績比との対比の状況

(単位:事業、%)
売上高計画実績比
人材計画実績比、
資源計画実績比
100%
以上
50%
以上
100%
未満
50%
未満
  構成比
人材計画実績比
(a)
100%以上 13 8 25 7 39 2 77 17 22.0
50%以上100%未満 5 13 13 31 40.2
50%未満 0 5 24 29 37.6
資源計画実績比
(b)注(1)
100%以上 13 8 25 4 37 1 75 13 16.8
50%以上100%未満 4 13 3 20 25.9
50%未満 1 8 33 42 54.5
(a)(b)いずれも100%以上 4 1 0 5 6.4
(a)(b)いずれも100%未満 1 15 34 50 64.9
  (a)(b)いずれも50%未満 0 0 22 22 28.5
  • 注(1) 地域資源活用費の収支計画が0円の2事業を除く。
  • 注(2) 構成比は、端数処理のため集計しても計と一致しないものがある。

77事業のうち、人材計画実績比及び資源計画実績比がいずれも100%未満となっていた50事業について、地域事業者50者に収支計画を下回る地域の人材及び資源しか活用できなかった要因を確認したところ、人材計画実績比については、売上が十分でないことから給与等を支払う余裕がなかったり、求人しても応募がなかったりするなど資金難又は人材難により雇用を確保できないことに要因があるとしているものが多くなっていた。また、資源計画実績比については、売上が十分でないことから商品を生産するための仕入れを拡大できないことなどに要因があるとしていた。

このように、売上高計画実績比が50%未満の39事業において、人材計画実績比及び資源計画実績比がいずれも50%未満となっている事業が22事業(交付額計6億5810万余円)で見受けられた。その要因を確認したところ、売上高が低調となっていることに起因して、人材計画実績比及び資源計画実績比が低調となっているとしているものが多かった。そして、販路や地域の人材、資源の確保の収支計画の達成に重要な要素について、これらに対応した事業に内在するリスクを事前に適切に把握して、その回避策を綿密に検討しておくことが必要であった。

(4) 貴省によるフォローアップの状況

貴省は、前記のとおり、28年度以降、地方公共団体から提出させている調査票において、四つの指標の効果倍率、交付金事業の進捗状況、収支の実績が収支計画を達成していない要因等を記載させるなどしており、(1)から(3)までのように、売上高が低調となっているなどして、地域の人材及び資源の活用が十分に図られておらず、事業効果が十分に発現していない事態が報告されていた。

しかし、貴省は、こうした事態を把握するなどした上で、地方公共団体に対して、地域事業者、地域金融機関等の関係者との連携を密にさせて交付金事業の事業効果等に係る定期的な検証を実施させることとしたり、地域の人材及び資源を十分に活用しておらず、交付金事業の実施による事業効果が十分に発現していない事業について、具体的な改善策等を検討させることとしたりしていなかった。また、販路や地域の人材、資源の確保の収支計画の達成に重要な要素等について、地方公共団体に対して、地域事業者、地域金融機関等の関係者と綿密に検討させた上で、その結果を事業計画等に反映させていなかった。

(改善を必要とする事態)

貴省において、地方公共団体に対して、地域事業者、地域金融機関等の関係者との連携を密にさせて交付金事業の事業効果等に係る定期的な検証を実施させていなかったり、地域の人材及び資源を十分に活用しておらず、交付金事業の事業効果が十分に発現していない事業について具体的な改善策等を検討させていなかったりしている事態、販路や地域の人材、資源の確保の収支計画の達成に重要な要素等について、地方公共団体に対して、地域事業者、地域金融機関等の関係者と綿密に検討させた上で、その結果を事業計画書に反映させていない事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴省において、次のことなどによると認められる。

  • ア 事業効果が十分に発現していない事態を改善するための方策を検討することの重要性についての認識が欠けていたこと
  • イ 販路や地域の人材、資源の確保の収支計画の達成に重要な要素等について、地方公共団体に対して、地域事業者、地域金融機関等の関係者と綿密に検討させた上で、その結果を事業計画書に反映させるなどの方策を検討することの重要性についての理解が十分でなかったこと

3 本院が要求する改善の処置

貴省は、日本経済再生に向けた経済対策の一環として、地域の特色を生かして地域経済を活性化するための取組を支援する交付金事業は重要な事業であり、引き続き実施していくこととしている。

ついては、貴省において、交付金事業の事業効果が十分に発現するよう、次のとおり改善の処置を要求する。

  • ア 既存の交付金事業の実施に当たり、地方公共団体に対して、事業効果を把握した上で事業実施の参考となる情報を提供するなどして、地域事業者、地域金融機関等の関係者と交付金事業の状況について幅広く共有・協議する場を設けさせて、より一層関係者との連携を密にさせて交付金事業の事業効果等に係る定期的な検証を実施させることとしたり、売上高が低調となっているなどのため地域の人材及び資源を十分に活用しておらず、交付金事業の事業効果が十分に発現していない事業がある場合には、地方公共団体に対して、地域事業者、地域金融機関等の関係者と具体的な改善策等を検討させたりすること
  • イ 今後の交付金事業の実施に当たり、販路や地域の人材、資源の確保の収支計画の達成に重要な要素や、事業に内在するリスクとその回避策について、地方公共団体に対して、地域事業者、地域金融機関等の関係者と綿密に検討させた上で、その結果を事業計画書に反映させるなどの方策を検討すること