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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第6 財務省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(3) コンテナ貨物大型X線検査装置の附帯施設等の賃貸借契約について、国庫債務負担行為に基づく賃貸借契約を行っていない国の債務に対して国庫債務負担行為に基づく賃貸借契約を締結することとするよう、また、支出負担行為に関する手続を行うに当たり、会計法令を遵守することを徹底するよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)税関 (項)税関業務費
(平成19年度以前は、(項)税関)
部局等
財務本省、6税関
契約の概要
コンテナ貨物の内容物の検査を行うための検査装置を設置する施設及びコンテナ貨物の検査を行う貨物検査場を賃貸借するもの
検査の対象とした契約件数及び契約金額
71件 144億7446万余円(平成14年度~34年度)
契約締結の際に覚書を取り交わした件数及び国庫債務負担行為に基づく契約を締結していなかった額
11件 146億4509万円(平成14年度~36年度)

1 附帯施設等の賃貸借契約の概要等

(1) コンテナ貨物大型X線検査装置の附帯施設及び貨物検査場の概要

財務省は、コンテナで輸出入される貨物に対して、効果的かつ効率的な取締り及び物流の円滑化の両立を図るために、コンテナ貨物をトラックに搭載したままX線を照射し、コンテナ貨物を開披することなく内容物の検査を行うための検査機器であるコンテナ貨物大型X線検査装置を、コンテナ貨物の取扱量が多い全国の港湾に配備している。そして、同装置が配備されている6税関(注1)は、同装置を設置するための建屋(以下「附帯施設」という。)を設置し、また、一部の附帯施設では、附帯施設に隣接して、同装置によるコンテナ貨物の内容物の検査の結果、異常が確認されたコンテナ貨物の検査を行うための建屋(以下「貨物検査場」という。)を設置している。

(注1)
6税関  函館、東京、横浜、名古屋、神戸、門司各税関

(2) 附帯施設等の賃貸借契約の概要

6税関は、平成14年度から18年度に、リース会社と建設会社等との間で三者契約等(以下、リース会社等と当初に締結した契約を「当初契約」という。)を締結し、建設会社に附帯施設9施設及び貨物検査場3施設、計12附帯施設等を建設させ、当該附帯施設等をリース会社から賃借することとしていた。そして、当初契約締結の翌年度以降15年度から19年度までは、毎年度、単年度契約により、また、20年度以降は、5か年度までの国庫債務負担行為により、リース会社等との間で附帯施設等の賃貸借契約を締結している。

(3) 税関における支出負担行為に関する事務の概要等

財政法(昭和22年法律第34号)第34条の2第1項によれば、支出負担行為とは、「国の支出の原因となる契約その他の行為をいう」とされており、また、会計法(昭和22年法律第35号)第11条によれば、「支出負担行為は、法令又は予算の定めるところに従い、これをしなければならない」とされている。同法第10条によれば、この支出負担行為に関する事務は、各省各庁の長が管理することとされているが、各省各庁の長は、同法第13条によれば、当該各省各庁所属の職員に、その所掌に係る支出負担行為に関する事務を委任することができることとされており、この委任を受けた職員が支出負担行為担当官とされている。

6税関においては、総務部長が財務大臣から支出負担行為に関する事務の委任を受けて支出負担行為担当官となっているが、6税関の会計課長は同事務の委任は受けていない。

また、支出負担行為に関する事務における「契約」とは、「一定の法律効果の発生を目的とする二以上の相対立する当事者の意思の合致により成立する法律行為」であると解されている。

(4) 国庫債務負担行為の概要

国庫債務負担行為とは、複数年度にわたって国が支出の義務を負担することであり、国庫債務負担行為を行うに当たっては、財政法第15条第1項によれば、「予め予算を以て、国会の議決を経なければならない」とされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性等の観点から、附帯施設等の賃貸借契約に係る会計経理が会計法令に基づき適正に行われているかなどに着眼して、6税関が14年度から30年度までに締結した附帯施設等の賃貸借契約71件(契約期間は14年度から34年度まで)、契約金額計144億7446万余円を対象として、財務本省及び6税関において契約書等の契約手続に関する関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

6税関は、当初契約の契約手続に当たり、支出負担行為担当官である各税関の総務部長(支出負担行為担当官代理である総務部次長を含む。以下同じ。)がリース会社等と契約書を作成して賃貸借契約を締結していた。

一方、支出負担行為担当官ではない6税関の会計課長は、当初契約の締結日と同時期に、総務部長がリース会社等との間で別途確認したとする次の事項についてリース会社等と覚書11件を取り交わしていた。

① 附帯施設及び貨物検査場の賃貸借期間は、それぞれ14年間又は18年間とする(覚書の対象期間は14年度から36年度まで)。

② 税関が当該賃貸借期間の途中で契約を更新しないときなどの中途解約をしたときは、リース会社等は残存期間の賃借料全額から附帯施設等に係る未経過金利に相当する金額等を除いた金額の支払を税関に請求できるものとする。

しかし、上記の覚書は、6税関の支出負担行為担当官である総務部長と支出負担行為担当官ではない会計課長が同じ認識をもって、税関が組織としてリース会社等と取り交わしたものであり、6税関とリース会社等との間で附帯施設等を14年間又は18年間賃貸借するという意思が合致している。このため、6税関は、リース会社等と覚書を取り交わした時点で、12附帯施設等に係る14年間又は18年間の賃借料総額計146億4509万余円を、国庫債務負担行為に基づくことなく国の債務として実質的に負担していた。

そして、14年度以降は順次、単年度契約又は国庫債務負担行為に基づく契約が締結されているが、会計実地検査時点において、国庫債務負担行為に基づく契約が締結されていない国の債務が、2税関(注2)の3貨物検査場に係る令和5年度以降の賃借料相当額計2億0396万余円見受けられた。

(注2)
2税関  横浜、神戸両税関

このように、6税関において、附帯施設等の賃貸借契約に当たり、支出負担行為担当官ではない会計課長が覚書を取り交わすことで、国庫債務負担行為に基づくことなく実質的に国が複数年度にわたる債務146億4509万余円を負担していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、6税関において、会計法令に基づき、国庫債務負担行為や支出負担行為を適切に行うべきであるという認識が欠けていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、2税関は、会計実地検査時点で国庫債務負担行為に基づく契約を行っていない国の債務2億0396万余円について、現在の契約を解約し6年度までの国庫債務負担行為に基づく賃貸借契約を締結することとし、また、財務本省は、元年8月に税関及び沖縄地区税関に対して事務連絡を発して、支出負担行為に関する手続を行うに当たり、会計法令を遵守するよう周知徹底するなどの処置を講じた。