財務本省は、株式会社QUICK(以下「QUICK」という。)と金融市場の動向等に関する情報の提供(注)を受ける契約(QUICKが平成14年から「QUICK VisCast」の名称で実施しているサービスの提供を受ける契約。以下「情報提供契約」という。)を、17年度から、毎年度、随意契約により締結している。情報提供契約に基づき提供される情報は、財務本省の庁舎内にQUICKから提供されて設置される大型の液晶ディスプレイに常時更新されて表示されるものとなっている。
情報提供契約の経費は、QUICKから受ける情報の提供に係る料金(以下「情報提供料」という。)及び当該情報を表示するのに必要な液晶ディスプレイ等の機器の提供、利用等に係る料金(以下「機器利用料」という。)によって構成されている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
近年、一般的に液晶ディスプレイの価格が技術の向上、大量生産による量産効果、国内外の企業同士の競争等に伴い下落する傾向が見受けられることから、本院は、経済性等の観点から、情報提供契約の締結に当たり機器利用料の節減が図られているかなどに着眼して、29、30両年度に財務本省が締結した情報提供契約(契約金額計5828万余円)を対象として、財務本省において、契約書、見積書等の関係書類を確認するとともに、QUICKにおいて、機器利用料の内容等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。
(検査の結果)
財務本省は、情報提供契約について、前記の情報の提供及び機器の提供のうち、17年度当初の契約から30年度の契約までの長期間にわたって、QUICKから提供を受ける情報を表示するための液晶ディスプレイ等の機器の提供をQUICKから受けていたが、毎年度のQUICKとの情報提供契約の更新時に、QUICKから機器の提供を受けること以外に機器の経済的な調達方法があるかどうかについて検討を行っておらず、情報提供契約の見直しを行っていなかった。そして、機器利用料を含めた支払総額として、29年度2898万余円、30年度2930万余円、計5828万余円(うち機器利用料29年度1315万余円、30年度1332万余円、計2647万余円)をQUICKに支払っていた。
そこで、QUICKに機器利用料の推移等について確認したところ、機器利用料は約10年間変わらず同一のままとのことであり、一般的な液晶ディスプレイの価格の下落傾向が反映されているものではないことが判明した。また、QUICKによれば、顧客側において市販されている液晶ディスプレイ等の機器を調達して情報の提供を受けることは可能であり、実際、現在、QUICKと同種の契約を締結している顧客の大半は、QUICKから機器の提供を受けていないとのことであった。
このように、情報提供契約の更新時に、同一の契約相手方から液晶ディスプレイ等の機器の提供を受けること以外に機器の経済的な調達方法があるかどうかについて検討して、経済的な調達を図るよう見直しを行っていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(節減できた支払額)
情報提供契約について、情報提供料のみを支払う契約とし、現在設置している機器と同仕様の市販品を別途購入して耐用年数の間利用すると仮定した場合に見込まれる単年度当たりの支払総額を試算したところ、29年度2305万余円、30年度2322万余円、計4628万余円(うち市販品の調達費用29年度253万余円、30年度255万余円、計509万余円)となり、前記の支払総額29年度2898万余円、30年度2930万余円、計5828万余円(うち機器利用料29年度1315万余円、30年度1332万余円、計2647万余円)を、29年度593万余円、30年度607万余円、計1200万余円節減できたと認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、財務本省において、情報提供契約の締結に当たり、情報の提供と液晶ディスプレイ等の機器の提供が可分なものであるかどうかについて確認することなく、経済的な調達を図るための検討が十分でなかったことなどによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、財務本省は、令和元年8月に、2年度以降のQUICKとの情報提供契約の締結に当たり、液晶ディスプレイ等の機器の提供については、QUICKとは別の契約相手方から購入するなど、経済的な調達となるよう見直しを行い、機器利用料に係る2年度の予算要求を行わないこととするとともに、元年9月に、2年度の情報提供契約については、従来どおり液晶ディスプレイ等の機器の提供を受けることを予定していないことをQUICKに対して通知するなどの処置を講じた。