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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第7 文部科学省|
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  • 補助金

(10) 学校施設環境改善交付金が過大に交付されていたもの[3県](42)―(44)


3件 不当と認める国庫補助金 20,835,000円

学校施設環境改善交付金(以下「交付金」という。)は、「義務教育諸学校等の施設費の国庫負担等に関する法律」(昭和33年法律第81号)等に基づき、地方公共団体が作成する公立の義務教育諸学校等の施設の整備に関する施設整備計画によって実施される施設整備事業に要する経費に充てるために、国が地方公共団体に対して交付するものである。

交付金の交付額は、学校施設環境改善交付金交付要綱(平成23年文部科学大臣裁定。以下「交付要綱」という。)等によれば、当該地方公共団体の施設整備計画に記載された事業のうち、算定の対象となる事業(以下「交付対象事業」という。)ごとに文部科学大臣が定める方法により算出した配分基礎額に交付対象事業の種別に応じて同大臣が定める割合(以下「算定割合」という。)を乗ずるなどして得た額の合計額と、交付対象事業に要する経費の額に算定割合を乗じて得た額の合計額のうち、いずれか少ない額を基礎として算定することとされている。

交付要綱によれば、交付対象事業は、小学校、中学校等の建物で構造上危険な状態にあるもの(危険建物)の改築事業(以下「危険改築事業」という。)、教育を行うのに著しく不適当な小学校、中学校等の建物で特別の事情のあるもの(不適格建物)の改築事業(以下「不適格改築事業」という。)、地域・学校連携施設の新築、増築又は改築事業(校舎又は屋内運動場の新築、増築又は改築と同時に行われるものに限る。以下「地域・学校連携施設整備事業」という。)等とされている。

交付対象事業のうち、危険改築事業及び不適格改築事業(以下「危険改築事業等」という。)について、「学校施設環境改善交付金の配分基礎額の算定方法等について」(平成28年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知)等によると、改築事業等に併せて施設の解体及び撤去事業を実施する場合には、都道府県等において公共工事等に使用されている積算基準を参考として事業箇所の実情に即して算定した施設の解体及び撤去費を配分基礎額に加算することとなっている。そして、交付申請時に配分基礎額に加算した施設の解体及び撤去費については、実績報告時に契約後の金額に応じて再計算することとなっている。また、危険改築事業等を複数年度にわたって実施する場合には、施設の解体及び撤去事業を実施する年度にのみ施設の解体及び撤去費を配分基礎額に加算することができることになっている。

また、交付対象事業のうち、地域・学校連携施設整備事業について、「平成26年度学校施設環境改善交付金の事業概要について」(平成26年文部科学省大臣官房文教施設企画部施設助成課長通知。以下「26年通知」という。)によると、当該事業の整備内容は、学校施設の複合化を促進するとともに、地域の生涯学習活動等の拠点となるよう、学校施設とは別の、社会教育施設、文化施設・文化財保護施設等の他の文教施設等(以下「複合化対象施設」という。)が学校施設と有機的な連携を図るために必要な施設の整備となっている。そして、当該事業の対象経費は、26年通知によれば、複合化対象施設と学校施設との複合化を図ることに伴い必要となる多目的ホール、展示ホール等の地域・学校連携施設の整備等に必要な経費とされている。

本院が、22都道県及び157市区町村等、計179地方公共団体において会計実地検査を行ったところ、3県の3市村において、施設の解体及び撤去費を契約後の金額に応じて再計算せずに危険改築事業等の配分基礎額を算定したり、施設の解体及び撤去事業を実施していない年度に解体及び撤去費を加算して危険改築事業等の配分基礎額を算定したり、複合化対象施設と学校施設との複合化に伴う施設の整備に要する経費に該当しない経費を対象経費として地域・学校連携施設整備事業の配分基礎額を算定したりしていたため、配分基礎額が過大に算定されており、交付金計20,835,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、3市村において交付金の交付額の算定方法についての理解が十分でなかったこと、3県において3市村から提出された実績報告書等に対する審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、部局等別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
交付対象事業の種別
年度
交付金の交付額 不当と認める交付金の交付額
摘要
          千円 千円  
(42)
青森県
下北郡風間浦村 地域・学校連携施設整備事業 26、27 4,116 2,058 複合化対象施設と学校施設との複合化に伴う施設の整備に要する経費に該当しない経費を対象経費としていたもの

風間浦村は、平成26、27両年度に、風間浦小学校の屋内運動場等の新築に併せて、同小学校の地域・学校連携施設整備事業を実施し、その配分基礎額を12,230,000円と算定するなどして、交付金4,116,000円の交付を受けていた。

同村は、本件事業の実施に当たり、学校施設である屋内運動場を複合化対象施設にも該当すると理解し、管理室及びホールを複合化対象施設と学校施設との複合化を図ることに伴い必要となる施設と位置付けて、管理室及びホールの整備に要した経費を対象経費としていた。

しかし、屋内運動場は学校施設であることから、本件事業における複合化対象施設には該当しないものであり、一方で、管理室は地域住民の参加する行事が開催されることなどから、本件事業における複合化対象施設に該当するものであった。これによりホールは複合化対象施設である管理室と学校施設である屋内運動場との複合化を図ることに伴い必要となる施設になるが、管理室は複合化を図ることに伴い必要となる施設とはならず、これの整備に要した経費は対象経費から除外する必要があった。

したがって、管理室の整備に要した経費を対象経費から除外して算定した適正な配分基礎額6,115,000円により交付金の交付額を算定すると2,058,000円となることから、交付金2,058,000円が過大に交付されていた。

(43)
奈良県
奈良市
危険改築事業 28、29 138,655 6,256 施設の解体及び撤去費を契約後の金額に応じて再計算していなかったもの

奈良市は、平成28、29両年度に、月ヶ瀬小学校の危険改築事業のほか17事業を実施し、同小学校の危険改築事業の配分基礎額を88,000,000円と算定するなどして、交付金138,655,000円の交付を受けていた。

同市は、同小学校の危険改築事業の実施に当たり、施設の解体及び撤去事業を27、28両年度の改築事業に併せて実施することから、交付申請時に予算計上時の単価等を用いて算定した施設の解体及び撤去費88,000,000円を配分基礎額に加算しており、実績報告時も同様としていた。

しかし、配分基礎額に加算した施設の解体及び撤去費については、実績報告時に契約後の金額に応じて再計算する必要があった。

したがって、前記施設の解体及び撤去費を契約後の金額に応じて再計算した適正な同小学校の危険改築事業の配分基礎額46,432,000円により交付金の交付額を算定すると132,399,000円となることから、交付金6,256,000円が過大に交付されていた。

(44)
福岡県
久留米市
危険改築事業、不適格改築事業 26、27 150,369 12,521 施設の解体及び撤去事業を実施していない年度に解体及び撤去費を加算していたなどのもの

久留米市は、平成26、27両年度に、日吉小学校の危険改築事業等(以下「小学校事業」という。)及び屏水中学校の危険改築事業等(以下「中学校事業」という。)計4事業を実施し、4事業の配分基礎額を計446,646,000円と算定するなどして、交付金150,369,000円の交付を受けていた。

同市は、小学校事業の実施に当たり、施設の解体及び撤去費の見積額33,888,000円を配分基礎額に加算していた。また、中学校事業の実施に当たり、交付申請時に近隣の同種工事の実績等を用いて算定した施設の解体及び撤去費25,441,000円を配分基礎額に加算していた。

しかし、実際には、施設の解体及び撤去事業は、26、27両年度の小学校事業においては実施されておらず、28年度以降に実施されていた。また、中学校事業の配分基礎額に加算した施設の解体及び撤去費については、実績報告時に契約後の金額に応じて再計算する必要があった。

したがって、小学校事業の配分基礎額から施設の解体及び撤去費の見積額を除くとともに、中学校事業の配分基礎額に加算する施設の解体及び撤去費を契約後の金額に応じて再計算した適正な配分基礎額計409,455,000円により交付金の交付額を算定すると137,848,000円となることから、交付金12,521,000円が過大に交付されていた。

(42)―(44)の計 293,140 20,835