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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 補助金

(12) 義務教育費国庫負担金が過大に交付されていたもの[11県](46)―(56)


11件 不当と認める国庫補助金 193,693,623円

義務教育費国庫負担金(以下「負担金」という。)は、義務教育費国庫負担法(昭和27年法律第303号)に基づき、義務教育について、義務教育無償の原則にのっとり、国が必要な経費を負担することによって教育の機会均等とその水準の維持向上とを図ることを目的として、国が都道府県に対して交付するものである。また、負担金により国が負担する経費は、公立の義務教育諸学校(小学校、中学校、義務教育学校及び中等教育学校の前期課程(以下、これらを合わせて「小中学校」という。)並びに特別支援学校の小学部及び中学部)に勤務する教職員の給与及び報酬等に要する経費となっており、その額は、都道府県の実支出額と「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令」(平成16年政令第157号。以下「限度政令」という。)に基づいて都道府県ごとに算定した額(以下「算定総額」という。)とのいずれか低い額の3分の1となっている。

算定総額は、限度政令に基づき、小中学校の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額と、特別支援学校の小学部及び中学部(以下「小中学部」という。)の教職員に係る基礎給料月額等に同教職員に係る算定基礎定数を乗ずるなどして得た額とを合算して算定することとなっている。

このうち、基礎給料月額等は、教職員一人当たりの給料の月額及び諸手当の単価について、「義務教育費国庫負担法第二条ただし書の規定に基づき教職員の給与及び報酬等に要する経費の国庫負担額の最高限度を定める政令施行規則」(平成16年文部科学省令第28号。以下「限度規則」という。)等に基づき、都道府県ごとに当該年度の5月1日に在職する教職員を対象として算定することとなっている。そして、算定基礎定数は、当該年度の5月1日現在において、「公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律」(昭和33年法律第116号。以下「標準法」という。)等に基づき、標準学級数(注1)等を基礎として教職員の定数(以下「標準定数」という。)を算定し、更に「女子教職員の出産に際しての補助教職員の確保に関する法律」(昭和30年法律第125号)により臨時的に任用される者等の実数を加えるなどして算定することとなっている。

また、特別支援学校については、義務教育である小中学部のほかに幼稚部と高等部を置く学校があるため、特別支援学校に勤務する全ての教職員の給与及び報酬等に要する経費を算定し、これに義務制率(注2)を乗ずるなどして小中学部に係る実支出額を算定することとなっている。

(注1)
標準学級数  標準法に規定する学級編制の標準により算定した学級数
(注2)
義務制率  「小中学部の標準学級数の合計」を「小中学部の標準学級数並びに幼稚部及び高等部の実学級数の合計」で除して求めた率

本院が、25都道県において会計実地検査を行ったところ、11県において、算定総額の算定に当たり基礎給料月額等又は算定基礎定数の算定が過大となっていたり、実支出額の算定が過大となっていたりしていた。これらの結果、負担金計193,693,623円が過大に交付されていて、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、11県において、基礎給料月額等及び算定基礎定数の算定方法についての理解並びに基礎給料月額等及び算定基礎定数の確認が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、態様別に示すと次のとおりである。なお、同一の県が複数の事態に該当している場合がある。

ア 基礎給料月額等の算定が過大となっていたもの

基礎給料月額等のうち、基礎給料月額は、都道府県の規則等で定めるところにより算定した一般教職員として在職した年数(以下「経験年数」という。)に応じて、職種ごとに、限度規則で定められた月額単価に当該経験年数の教職員の実数を乗じた額の合計額を、教職員の実数で除して得た額とすることとなっている。そして、教員の経験年数に応じた月額単価は、大学4年卒を基準として設定されているため、大学4年卒以外の教員については必要な修学年数を加算する調整を行うこととされている。

また、諸手当のうち、小中学校の教員に係る給料の調整額の算定月額は、役職ごとの単価に役職ごとの支給対象人員数を乗じて得た額の合計額を教員数(別途算定することとなっている栄養教諭等の数を除く。)で除して算定することとなっている。そして、この支給対象人員は、学校教育法(昭和22年法律第26号)第81条に規定する特別支援学級を担当するなどしている教員とされている。

3県において、基礎給料月額等の算定に当たり、次の①及び②の事態により、算定総額が過大に算定されていた。

  • ① 給料の調整額の算定月額の算定において、特別支援学級を担当していない教員を支給対象人員に含めていた事態 2県
  • ② 基礎給料月額の算定において、修士課程等を修了している教員の経験年数に係る必要な修学年数の加算を二重に行うなどしていた事態 1県

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例1(ア②の事態)>

岐阜県は、平成28年度において、小中学校の教員及び特別支援学校の小中学部の教職員に係る基礎給料月額を337,462円及び309,731円とし、これらに算定基礎定数を乗ずるなどして算定した算定総額が実支出額を下回ったことから、算定総額を基に26,817,695,178円の負担金の交付を受けていた。

しかし、同県は、上記基礎給料月額の算定に当たり、修士課程又は博士課程を修了している教員458人の経験年数の算定において、同県の規則に基づく2年又は5年の修学年数の加算を二重に行うなどしていて、誤った経験年数に応じた月額単価を用いて基礎給料月額を算定していた。このため、同県は小中学校の教員に係る基礎給料月額を254円、特別支援学校の小中学部の教職員に係る基礎給料月額を163円高く算定していた。

したがって、適正な小中学校の教員及び特別支援学校の小中学部の教職員に係る基礎給料月額を算定すると337,208円及び309,568円となり、これらに基づき適正な負担金の額を算定すると26,800,332,809円となることから、負担金17,362,369円が過大に交付されていた。

イ 算定基礎定数の算定が過大となっていたもの

前記のとおり、算定基礎定数は当該年度の5月1日現在における標準学級数等を基礎として算定することとなっている。算定基礎定数の算定に必要な特別支援学校の標準学級数の算定に当たり、児童生徒が、文部科学大臣の定める障害(以下「障害」という。)を2以上併せ有しているか否かにより、当該児童生徒を単一障害学級(注3)又は重複障害学級(注4)に編制することとなっている。そして、1学級に編制できる同学年の児童生徒数は、単一障害学級にあっては6人、重複障害学級にあっては3人となっているが、重複障害学級に編制する2以上の学年の児童生徒数の合計数が3人以下である場合は当該複数学年の児童生徒を1学級に編制して算定することとなっている。また、特別支援学校の標準定数の算定に当たっては、寄宿舎に寄宿する児童生徒数に応じて寄宿舎指導員等の定数を算定することとなっている。

さらに、小中学校の事務職員の標準定数は、4学級以上の小中学校の数の合計数に1を乗じて得た数等を合計した数となっているが、同一の設置者が設置する小学校及び中学校で4学級から6学級までの小学校及び4学級又は5学級の中学校が500mの範囲内に存する場合には1校とみなすこととなっている。

8県において、算定基礎定数の算定に当たり、次の①から④までの事態により、算定総額が過大に算定されていた。

  • ① 特別支援学校の重複障害学級の標準学級数の算定において、重複障害学級に編制する2以上の学年の児童生徒数の合計数が3人以下であるのに当該複数学年の児童生徒を1学級に編制しなかったり、同学年の児童生徒数が3人以上であり同学年の児童生徒で学級を編制すべきであるのに一部の児童生徒を他の学年に属するものとして編制したりして、標準学級数を1学級とすべきところを2以上の学級に編制していた事態 7県
  • ② 特別支援学校の標準学級数の算定において、児童生徒が障害を2以上併せ有しているのに単一障害学級の対象児童生徒として整理したり、2以上併せ有しないのに重複障害学級の対象児童生徒として整理したりなどしていた事態 1県
  • ③ 特別支援学校の標準定数の算定において、寄宿舎に寄宿する小中学部の児童生徒が在籍していないのに寄宿舎指導員等の定数を算定していた事態 1県
  • ④ 小中学校の事務職員の標準定数の算定において、6学級の小学校と4学級の中学校とが500mの範囲内に存するのに、1校とみなさずに2校として算定していた事態 1県
(注3)
単一障害学級  障害を2以上併せ有しない児童生徒で編制する学級
(注4)
重複障害学級  障害を2以上併せ有する児童生徒で編制する学級

ウ 実支出額の算定が過大となっていたもの

前記のとおり、特別支援学校については、特別支援学校に勤務する全ての教職員の給与及び報酬等に要する経費を算定し、これに義務制率を乗ずるなどして小中学部に係る実支出額を算定することとなっている。

3県において、実支出額の算定に当たり、特別支援学校の小中学部の標準学級数の算定を誤ったり、幼稚部及び高等部の実学級数に含めるべき学級を含めなかったりしていたため、義務制率が過大に算定され、実支出額が過大に算定されていた。

イ及びウの事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例2(イ②及びウの事態)>

宮崎県は、平成27年度において、教職員の算定基礎定数を小中学校7,120人、特別支援学校の小中学部635人とし、これらに基礎給料月額等を乗ずるなどして算定した算定総額が実支出額を下回ったことから、算定総額を基に16,726,137,498円の負担金の交付を受けていた。

しかし、同県は、上記算定基礎定数の算定に当たり、特別支援学校の小中学部の標準学級数の算定を259学級とすべきところ、児童生徒が障害を2以上併せ有しているのに単一障害学級の対象児童生徒として整理したり、2以上併せ有しないのに重複障害学級の対象児童生徒として整理したりなどしていたため、270学級と算定していた。

したがって、適正な標準学級数により適正な算定基礎定数を算定すると特別支援学校の小中学部618人となり、これに基づき適正な負担金の額を算定すると16,691,546,162円となることから、34,591,336円が過大に交付されていた。(イ②の事態)

また、同県は、24、26両年度において、実支出額が算定総額を下回ったことから、実支出額を基に24年度16,819,678,151円、26年度16,777,426,275円の交付を受けていた。

しかし、同県は、27年度の算定基礎定数の算定と同様に、24、26両年度においても児童生徒が障害を2以上併せ有しているのに単一障害学級の対象児童生徒として整理したり、2以上併せ有しないのに重複障害学級の対象児童生徒として整理したりなどしていた。このため、特別支援学校の小中学部の標準学級数を24年度245学級、26年度248学級とすべきところ24年度247学級、26年度258学級として義務制率を算定して、この率を用いて実支出額を算定していた。

したがって、適正な義務制率により適正な負担金の額を算定すると、24年度16,815,975,242円、26年度16,758,466,893円となることから、24年度3,702,909円、26年度18,959,382円が過大に交付されていた。(ウの事態)

以上を部局等別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
算定総額又は実支出額 左に対する負担金交付額 不当と認める算定総額又は実支出額 不当と認める負担金交付額
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(46)
山形県
山形県
28 48,203,611 16,067,870 38,252 12,750 算定基礎定数の算定が過大となっていたもの(イ①の事態)
(47)
石川県
石川県
27、28 86,657,225 28,885,741 28,438 9,479 算定基礎定数の算定が過大となっていたなどのもの(ア①及びイ①の事態)
(48)
岐阜県
岐阜県
28 80,453,280 26,817,695 52,087 17,362 基礎給料月額等の算定が過大となっていたもの(ア②の事態)
(49)
静岡県
静岡県
24~28 628,984,915 209,661,638 17,525 5,841 基礎給料月額等の算定が過大となっていたなどのもの(ア①及びイ①の事態)
(50)
奈良県
奈良県
28 49,562,467 16,518,314 84,432 28,147 実支出額の算定が過大となっていたもの(ウの事態)
(51)
和歌山県
和歌山県
26、27 85,740,285 28,580,095 146,542 48,847 算定基礎定数の算定が過大となっていたもの(イ①及びイ③の事態)
(52)
徳島県
徳島県
27 35,846,268 11,947,699 6,304 2,101 同(イ①の事態)
(53)
高知県
高知県
27 36,401,842 12,133,947 16,448 5,482 実支出額の算定が過大となっていたもの(ウの事態)
(54)
長崎県
長崎県
27、28 133,963,506 44,654,502 12,814 4,271 算定基礎定数の算定が過大となっていたもの(イ①の事態)
(55)
大分県
大分県
28 50,871,684 16,957,228 6,464 2,154 同(イ①及びイ④の事態)
(56)
宮崎県
宮崎県
24、
26、27
150,967,282 50,323,241 171,762 57,253 算定基礎定数の算定が過大となっていたなどのもの(イ②及びウの事態)
(46)―(56)の計 1,387,652,370 462,547,975 581,073 193,693