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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
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(7) 緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金により造成した基金を活用して実施した事業において基金を補助の目的外に使用していたもの[厚生労働本省](106)


1件 不当と認める国庫補助金 5,200,000円

緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金は、厚生労働本省(以下「本省」という。)が定めた平成21年度緊急人材育成・就職支援事業臨時特例交付金交付要綱(平成21年厚生労働省発能第0605001号)等に基づき、中央職業能力開発協会(以下「協会」という。)が、同交付金を原資として、緊急人材育成・就職支援基金(以下「基金」という。)を造成し、緊急人材育成・就職支援基金事業(以下「基金事業」という。)を実施するために国が交付するものである。

協会は、本省が定めた緊急人材育成・就職支援基金事業実施要領(平成25年厚生労働省発能0306第1号)に基づき、基金事業の一つとして若者育成支援事業を実施している。

上記の若者育成支援事業において支給される若年者人材育成・定着支援奨励金(以下「奨励金」という。)は、若年者人材育成・定着支援奨励金(若者チャレンジ奨励金)業務実施要領(平成25年職発0307第2号、能発0307第1号)等に基づき、若年者の正規雇用労働者としての就職等の雇用の安定化等を図ることを目的として、非正規雇用の若年者に対して職業能力の向上を目指した実践的な職業訓練(以下「訓練」という。)を実施するなどした事業主を助成するものである。

奨励金には訓練奨励金と正社員雇用奨励金がある。このうち、訓練奨励金は、35歳未満の非正規雇用の若年者に対して、事業主が、訓練実施時間数等についてあらかじめ管轄の都道府県労働局(以下「労働局」という。)の確認を受けた訓練実施計画(以下、この確認を受けた訓練実施計画を「計画」という。)に基づいて、労働者に仕事をさせながら行う訓練(以下「OJT」という。)と、通常の業務を離れて行う訓練(以下「OFF―JT」という。)とを組み合わせて実施した場合に、訓練実施期間に訓練受講者1人につき1月当たり15万円を事業主に支給するものである。また、正社員雇用奨励金は、事業主が、訓練を終了した訓練受講者(以下「訓練修了者」という。)を正社員として1年又は2年継続して雇用した場合に、訓練修了者1人につき50万円又は100万円を事業主に支給するものである。

訓練奨励金の支給を受けようとする事業主は、訓練の終了後、訓練実施時間数、実施内容等を記載した実施状況報告書、出勤簿等の関係書類を添えて、支給申請書を労働局に提出することとなっている。また、正社員雇用奨励金の支給を受けようとする事業主は、訓練修了者を正社員として雇用してから1年又は2年経過した後、正社員雇用状況及び訓練受講状況等報告書、訓練修了者に係る雇用契約書等の関係書類を添えて、支給申請書を労働局に提出することとなっている。そして、事業主から支給申請書の提出を受けた労働局は、事業主の申請内容が奨励金の支給要件を満たしているかなどについて審査を行い、その審査結果を協会に送付し、協会は、労働局の審査結果に基づいて奨励金の支給決定を行い、基金から支給決定額を取り崩して奨励金を支給することとなっている。

訓練奨励金の支給要件は、計画に基づき訓練が実施されていることなどとなっており、支給単位期間(注)において、OJTとOFF―JTの両方又はどちらか一方の訓練実施時間数が計画上の訓練実施時間数の8割を下回る場合(以下、この事由を「不支給事由」という。)には、当該支給単位期間については、訓練奨励金が支給されないこととなっている。また、正社員雇用奨励金の支給要件は、訓練修了者を正社員として1年又は2年継続して雇用したことなどとなっている。そして、訓練奨励金の不支給事由に該当する訓練受講者は訓練修了者とはならず、訓練終了後に正社員として1年又は2年継続して雇用した場合であっても、当該訓練受講者は正社員雇用奨励金の支給対象とならないこととなっている。

(注)
支給単位期間  訓練奨励金の支給を受ける単位期間をいい、原則として訓練開始日から1年単位で区分した期間であり、1年に満たない訓練実施期間についても支給単位期間とみなすこととなっている。そして、当該支給単位期間は直前の支給単位期間と合わせて一つの支給単位期間とみなすことができることとなっている。

本院が、1労働局において、平成26年度から28年度までの間に、支給申請書等の記載内容について同労働局が審査を行った奨励金を対象に会計実地検査を行ったところ、次のとおり適正とは認められない事態が見受けられた。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
交付金の交付年度
支給要件確認庁
(労働局)
奨励金の支給年度 不適正な奨励金支給額 不当と認める基金使用額 不当と認める交付金相当額
            千円 千円 千円
(106) 厚生労働本省 中央職業能力開発協会 21、22、24 京都労働局 27、28 5,200 5,200 5,200

京都労働局は、事業主Aから、平成25年5月1日から26年6月30日までの14か月間及び26年9月1日から27年10月31日までの14か月間を各訓練受講者の支給単位期間として、訓練受講者2人に対して、計画に基づき、1人当たりOJT1,240時間、OFF―JT680時間の訓練を実施したとする訓練奨励金の支給申請書及び実施状況報告書、出勤簿等の関係書類の提出を受けていた。また、上記訓練修了者2人のうち1人を正社員として2年間雇用したとする正社員雇用奨励金の支給申請書及び労働条件通知書等の関係書類の提出を受けていた。そして、同労働局は、事業主Aに対する訓練奨励金及び正社員雇用奨励金の支給要件を満たしているとする審査結果を協会に送付し、協会はこの審査結果に基づき、27年度に訓練奨励金4,200,000円、28年度に正社員雇用奨励金1,000,000円を事業主Aに対してそれぞれ支給していた。

しかし、事業主Aが実施した訓練は計画に基づいたものとなっておらず、訓練受講者2人の計画に沿ったOFF―JTの訓練実施時間数は、それぞれ360時間となっていて、いずれも各支給単位期間における計画上の訓練実施時間数680時間の8割である544時間を大幅に下回っていた。

このため、訓練受講者2人は訓練奨励金の不支給事由に該当することから、当該2人に係る訓練奨励金4,200,000円が過大に支給されていた。また、上記のとおり、訓練奨励金の不支給事由に該当する訓練受講者は訓練修了者とはならず、正社員雇用奨励金の支給対象とならないことから、当該1人に係る正社員雇用奨励金1,000,000円が過大に支給されていた。

したがって、事業主Aに対する訓練奨励金4,200,000円、正社員雇用奨励金1,000,000円の支給は適正なものではなく、計5,200,000円(交付金相当額同額)が基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主Aが制度を十分に理解していなかったため、実施状況報告書等の記載内容が事実と相違していたのに、京都労働局において、審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。