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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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(8) 生活扶助費等負担金等が過大に交付されていたもの[7道県](107)―(114)


8件 不当と認める国庫補助金 12,920,232円

生活扶助費等負担金、医療扶助費等負担金及び介護扶助費等負担金(平成25年度以前はこれらを合わせて生活保護費等負担金。以下「負担金」という。)は、生活保護法(昭和25年法律第144号)等に基づき、都道府県、市(特別区を含む。)又は福祉事務所を管理する町村(以下、これらを合わせて「事業主体」という。)が、生活に困窮する者に対して、最低限度の生活を保障するために、その困窮の程度に応じて必要な保護に要する費用(以下「保護費」という。)等を支弁する場合に、その一部を国が負担するものである。保護は、原則として世帯を単位としてその要否及び程度を定めることとなっている。そして、保護は、生活に困窮する者が、その利用し得る資産や能力等あらゆるものを活用することを要件としており、被保護者は、収入、支出その他生計の状況について変動があったときは、速やかに、事業主体にその旨を届け出なければならないこととなっている。

また、事業主体は、急迫の場合等において資力があるにもかかわらず保護を受けた者から事業主体の定める額を返還させたり、不実の申請等により保護を受けるなどした者からその費用の額の全部又は一部を徴収したりすることなどができることとなっている(以下、これらの返還させ、又は徴収する金銭を「返還金等」という。)。

生活扶助等に係る保護費は、原則として保護を受ける世帯を単位として、保護を必要とする状態にある者の年齢、世帯構成、所在地域等の別により算定される基準生活費に、健康状態等による個人又は世帯の特別の需要のある者に対する各種加算の額を加えるなどして算定される最低生活費から、当該世帯における就労収入、年金の受給額等を基に収入として認定される額を控除するなどして決定されることとなっている。そして、各種加算のうち障害者加算は、障害を有することによって生ずる特別な需要に対応するもので、次のア又はイの程度の障害を有する者を対象として、当該障害の区分等に対応した加算額が認定されることとなっている。また、加算額は、アの障害に係る加算額の方が、イの障害に係る加算額よりも高い額となっている。

  • ア 身体障害者福祉法施行規則(昭和25年厚生省令第15号)に定める身体障害者障害程度等級表の1級若しくは2級又は国民年金法施行令(昭和34年政令第184号)に定める障害等級の1級(障害基礎年金1級)のいずれかに該当する障害
  • イ 身体障害者障害程度等級表の3級又は国民年金法施行令に定める障害等級の2級(障害基礎年金2級)のいずれかに該当する障害

負担金のうち保護費に係る交付額は、次のとおり算定することとなっている。

負担金のうち保護費に係る交付額の算定の式 画像

この費用の額及び返還金等の調定額は、それぞれ次のとおり算定することとなっている。

ア 費用の額は、次の①及び②の合計額とする。

  • ① 生活扶助等に係る保護費の額
  • ② 被保護者が医療機関で診察、治療等の診療を受けるなどの場合の費用について、その範囲内で決定された医療扶助及び介護扶助に係る保護費の額

イ 返還金等の調定額は、事業主体において、当該年度に調定した返還金等の額とする。

本院が、28都道府県の208事業主体において会計実地検査を行ったところ、7道県の8事業主体において、生活扶助等に係る保護費の額の算定に当たり、誤って障害者加算の対象となる障害を有しない者に障害者加算を認定していたり、誤った障害の区分等による加算額を認定していたりなどしていた。このため、負担金計12,920,232円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主体において保護費の支給決定に当たり障害者加算の対象とすべき障害の認定に係る確認が十分でなかったこと、道県において適正な生活保護の実施に関する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

静岡市は、世帯Aの保護を平成13年2月に開始しており、25年6月から30年5月までの世帯Aに対する保護費の支給に当たり、世帯主B及び世帯員Cについて、障害者加算の対象となる障害を有する者としてその区分に対応する障害者加算を認定した上で、保護費の額を決定していた。

しかし、世帯主Bは、厚生年金法施行令(昭和29年政令第110号)に定める障害等級の3級(障害厚生年金3級)に該当する障害を有する者であり、障害者加算の対象とならないのに、同市は、誤って障害者加算を認定していた。また、世帯員Cは、障害基礎年金2級に該当する障害を有する者であるのに、同市は、誤って加算額の高い障害基礎年金1級に該当する障害の区分による障害者加算を認定していた。このため、世帯Aに対して支給された保護費4,927,326円のうち障害者加算に係る1,474,920円が過大に支給されており、これに係る負担金1,106,190円が過大に交付されていた。

以上を部局等別・事業主体別に示すと、次のとおりである。

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
年度
国庫負担対象事業費 左に対する国庫負担金交付額 不当と認める国庫負担対象事業費 不当と認める国庫負担金交付額
摘要
        千円 千円 千円 千円  
(107)
北海道
函館市
24~29 21,722 16,291 1,566 1,174 障害者加算の認定を誤っていたもの
(108) 神奈川県
小田原市
24~29 7,907 5,930 1,622 1,217 障害者加算の認定を誤っていたものなど
(109)
大和市
24~29 18,639 13,979 1,471 1,103 障害者加算の認定を誤っていたもの
(110)
静岡県
静岡市
24~30 12,305 9,229 2,460 1,845
(111)
三重県
尾鷲市
26~29 2,962 2,222 2,093 1,569 返還決定又は徴収決定を行っていなかったもの
(112)
岡山県
高梁市
25~29 14,503 10,877 2,058 1,543 障害者加算の認定を誤っていたもの
(113)
佐賀県
佐賀市
24~29 26,507 19,880 3,008 2,256
(114)
長崎県
長崎市
25~29 25,115 18,836 2,946 2,209
(107)―(114)の計 129,663 97,247 17,226 12,920