2件 不当と認める国庫補助金 8,972,000円
高年齢者就業機会確保事業費等補助金(シルバー人材センター事業分)及び雇用開発支援事業費等補助金(シルバー人材センター事業分)(以下、雇用開発支援事業費等補助金(シルバー人材センター事業分)を「補助金」という。)は、定年退職後等の高年齢者に対して、地域に密着した仕事を提供し、高年齢者の生きがいの充実や社会参加の促進を図ることなどを目的として、シルバー人材センター連合(注)(以下「シルバー連合」という。)が行う高年齢者就業機会確保事業(以下「補助事業」という。)の実施に必要な経費の一部を国が補助するものである。
「高年齢者就業機会確保事業費等補助金(シルバー人材センター事業分)及び雇用開発支援事業費等補助金(シルバー人材センター事業分)交付要綱」(平成13年厚生労働省発職高第170号)等によれば、この補助は、シルバー連合の運営費に対する補助と、事業費に対する補助に区分されており、このうち事業費に対する補助の種目は、平成27年度は、地域ニーズ対応事業、高齢者活用・現役世代雇用サポート事業(以下「サポート事業」という。)等の4種目に、28年度以降は、サポート事業及び地域就業機会創出・拡大事業(以下「創出事業」という。)の2種目に、それぞれ区分されている。
創出事業は、「高年齢者就業機会確保事業(シルバー人材センター事業分)の実施について」(平成12年職発第430―2号。以下「要領」という。)によれば、シルバー連合の本部及び活動拠点が地域の地方公共団体や商工団体等と連携して、地域企業の雇用問題の解決、地域企業の活性化、地域社会・経済の維持・発展等につながる新たな就業機会を創出する事業を実施するものとされている。
また、要領によれば、創出事業を新規提案事業として実施する場合は、シルバー連合の本部及び活動拠点が新たに行う事業であることなどの要件に該当するものを補助対象事業とすることとされている。
本院が、2シルバー連合において会計実地検査を行ったところ、2シルバー連合において、サポート事業等とは関係のないシルバー人材センターの管理運営業務等にも従事するなどしていた者の給与全額を補助金等の対象となる経費(以下「補助対象経費」という。)に計上するなどして補助対象経費を過大に精算していたり、新規提案事業として実施するとしていた創出事業の実態が、主として従来行われていた業務を継続して実施するものであり、新たに行われた業務はこれに付随して行われたもので、かつ、新たに行われた業務に従事した延べ日数は僅かなものとなっていて、補助の対象とは認められなかったりしていたため、補助金計8,972,000円が過大に交付されていて、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2シルバー連合において補助事業の適正な実施に対する認識が欠けていたこと、厚生労働本省において2シルバー連合から提出された実績報告書等の審査及び確認が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
シルバー連合である公益社団法人大阪府シルバー人材センター協議会(以下「協議会」という。)は、平成27年度から29年度までの間に実施した補助事業について、補助対象経費を計5,377,081,008円であるとして、計1,445,621,000円の補助金等の交付を受けていた。
協議会は、活動拠点である公益社団法人富田林市シルバー人材センター(以下「富田林センター」という。)において、27年度から29年度までの間に実施したサポート事業等の計4事業(補助対象経費計38,219,137円、補助金交付額計18,410,000円)について、実績報告書において、コーディネーターを各事業に配置したとして、補助対象期間中のコーディネーター延べ4名(実人員で計2名)に係る給与計33,412,845円全額を補助対象経費に計上していた。
しかし、実際は、両名とも、補助対象期間中に、各事業とは関係のない富田林センターの管理運営業務等にも従事していた。
したがって、富田林センターが大阪府に提出した書類に記載された職員の管理業務等への従事割合を用いるなどして、適正な補助対象経費を算出すると計31,527,920円となり、前記の補助対象経費計38,219,137円との差額6,691,217円が過大に精算されていて、これに係る補助金2,648,000円が過大に交付されていた。
また、協議会は、富田林センターにおいて、29年度に創出事業として実施した「高齢者日常生活支援事業」(補助対象経費8,707,879円、補助金交付額4,000,000円)について、当該事業は、26年度から28年度までの間に地域ニーズ対応事業等として実施した「富田林市軽度生活援助業務」等を基にしながらも、新たに、地震等に対する家具の転倒防止、避難経路・場所等の確認等の高齢者のための防災防犯対策を実施する新規提案事業であるとして、補助金の交付を受けていた。
しかし、29年度の創出事業の実施状況を記録した書類には同対策を実施した旨の記載がなかった。そこで、富田林センターを介して当該事業の従事者に、同対策に係る従事状況を確認したところ、同対策の業務内容は、上記の「富田林市軽度生活援助業務」等の業務内容と同一の業務内容である高齢者宅の掃除や買い物代行を行った日に、それらの業務に付随してハザードマップの配布等を行うものであり、かつ、同対策に従事した延べ日数は僅かであったことから、当該事業は、要領に定めた「新たに行う事業」には当たらないものであった。
したがって、当該事業は要領に定めた補助対象事業の要件を満たしていないことから、補助の対象とは認められず、前記の補助対象経費8,707,879円に係る補助金4,000,000円が過大に交付されていた。
これらのことから、協議会が富田林センターにおいて実施した計5事業については、補助対象経費が過大に精算されていたり、補助の対象とは認められなかったりしていて、補助対象経費計15,399,096円に係る補助金計6,648,000円が過大に交付されていた。
以上を事業主体別に示すと次のとおりである。
部局等 |
補助事業者 (事業主体) |
年度 |
補助対象経費 | 左に対する国庫補助金交付額 | 不当と認める補助対象経費 | 不当と認める国庫補助金交付額 | 摘要 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(132) | 厚生労働本省 |
公益財団法人東京しごと財団 | 29 | 2,896,737 | 534,924 | 4,926 | 2,324 | 補助対象経費を過大に精算していたもの |
(133) | 同 |
公益社団法人大阪府シルバー人材センター協議会 | 27~29 | 5,377,081 | 1,445,621 | 15,399 | 6,648 | 補助の対象とは認められないものなど |
(132)(133)の計 | 8,273,818 | 1,980,545 | 20,325 | 8,972 |