障害児通所支援は、児童福祉法(昭和22年法律第164号。以下「法」という。)に基づき、障害児に対して児童発達支援(注1)、放課後等デイサービス(注2)等を行うものであり、市町村(特別区を含む。以下同じ。)は、これに要する費用について障害児通所給付費を支給している。
そして、障害児の保護者が障害児通所支援を受けようとする場合の手続は、次のとおりとなっている。
① 障害児の保護者は、居住地等の市町村から障害児通所給付費を支給する旨の通所給付決定を受ける。
② 通所給付決定を受けた障害児の保護者(以下「通所給付決定保護者」という。)は、通所給付決定の有効期間内に都道府県知事又は政令指定都市等の市長の指定を受けた指定障害児通所支援事業者(以下「事業者」という。)の事業所において、障害児通所支援を受ける。
また、都道府県知事又は政令指定都市等の市長は、必要があると認めるときは事業者に対する指導等を行うことができることとなっている。
事業者が障害児通所支援を提供して請求することができる費用の額は、「児童福祉法に基づく指定通所支援及び基準該当通所支援に要する費用の額の算定に関する基準」(平成24年厚生労働省告示第122号。以下「算定基準」という。)等に基づき、障害児通所支援の種類ごとに定められた基本報酬の単位数に各種加算の単位数を合算し、これに単価(10円から11.52円)を乗じて算定することとなっている。
そして、児童発達支援及び放課後等デイサービスに要する費用の額は、算定基準等に基づき、所定の研修を修了した者であることなどの要件を満たす児童発達支援管理責任者(以下「管理責任者」という。)を事業所に専任で配置している場合には、障害児の障害種別及び当該事業所の利用定員に応じた児童発達支援管理責任者専任加算(以下「管理責任者専任加算」という。)の単位数を基本報酬の単位数に合算した単位数により算定することとなっている。また、事業所に配置すべき人員の欠如を未然に防止して、適正な障害児通所支援の提供をするために、管理責任者を事業所に配置していない場合には、配置しなくなった月の翌々月から配置することになった月まで、児童発達支援管理責任者欠如減算(以下「管理責任者欠如減算」という。)として、基本報酬の単位数に100分の70を乗じて得た単位数を基に算定することなどとなっている。
市町村は、法に基づき、通所給付決定保護者が事業者から障害児通所支援の提供を受けたときは、これに係る障害児通所給付費を事業者に支払うこととなっており、障害児通所給付費は、障害児通所支援に要した費用の額から当該通所給付決定保護者の家計の負担能力その他の事情をしんしゃくして政令で定める負担の上限額等を控除して得た額となっている。
障害児通所給付費の支払手続については、①事業者は、障害児通所給付費を記載した障害児通所給付費・入所給付費等請求書等(以下「請求書等」という。)を、市町村から障害児通所給付費に係る支払に関する事務の委託を受けた国民健康保険団体連合会に送付し、②同連合会は、事業者から送付された請求書等の点検を行い、障害児通所給付費を市町村に請求して、③請求を受けた市町村は、金額等を算定基準等に照らして審査した上で、同連合会を通じて事業者に障害児通所給付費を支払うことになっている。
そして、国は、障害児通所支援に要した費用について市町村が支弁した障害児通所給付費の2分の1を負担している。
本院は、合規性等の観点から、障害児通所給付費の算定が適正に行われているかに着眼して、25都道府県及び15市(政令指定都市等)において、障害児通所支援の提供を行う事業所を設置する814事業者に対する障害児通所給付費の支払について、障害児通所給付費の請求に係る関係書類等により会計実地検査を行った。そして、障害児通所給付費の支払について疑義のある事態が見受けられた場合には、更に都道府県等に事態の詳細な報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。
検査したところ、4都県に所在する4事業者は、事業所に管理責任者として配置された者が所定の要件を満たしていなかったなどしていたのに、管理責任者専任加算の単位数を算定したり、管理責任者欠如減算として基本報酬の単位数に100分の70を乗ずることなく算定したりなどしていた。このため、平成26年度から29年度までの間に、上記の4事業者に対して12市町村が行った障害児通所給付費の支払が計824件、計16,890,325円過大となっていて、これに対する国の負担額8,445,162円は負担の必要がなかったものであり、不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、事業者において算定基準等を十分に理解していなかったことにもよるが、市町村において障害児通所給付費の算定について審査が十分でなかったこと、都県において事業者に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
長崎県に所在する事業者Aは、放課後等デイサービスの提供を行った事業所において、管理責任者として配置された者が所定の研修を修了した者であることの要件を満たしていなかったのに、管理責任者専任加算の単位数を算定したり、管理責任者欠如減算として基本報酬の単位数に100分の70を乗ずることなく算定したりなどしていた。
このため、上記の事態に係る平成28年4月から30年1月までの22か月間における532件の請求に対して1市が支払った障害児通所給付費が計12,082,326円過大となっていて、これに対する国の負担額6,041,163円は負担の必要がなかった。
以上を事業者の所在する都県別に示すと、次のとおりである。
都県名 |
実施主体
(
事業者数 ) |
年度 |
過大に支払われた障害児通所給付費の件数 | 過大に支払われた障害児通所給付費 | 不当と認める国の負担額 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|---|
件 | 千円 | 千円 | ||||
栃木県 |
3市町(1) | 28、29 | 64 | 1,182 | 591 | 児童発達支援、放課後等デイサービス |
千葉県 |
4市町村(1) | 26、27 | 97 | 2,057 | 1,028 | 放課後等デイサービス |
東京都 |
4市(1) | 27~29 | 131 | 1,567 | 783 | 同 |
長崎県 |
1市(1) | 28、29 | 532 | 12,082 | 6,041 | 同 |
計 | 12市町村(4) | 26~29 | 824 | 16,890 | 8,445 |