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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第8 厚生労働省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(2) 介護給付費負担金の審査支払手数料に係る交付額について、審査支払手数料を施設等手数料と居宅等手数料とに区分して、施設等手数料は施設等給付費に係る国の負担割合で、居宅等手数料は居宅等給付費に係る国の負担割合で、それぞれ算定することにより、国の負担が適切なものとなるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)厚生労働本省 (項)介護保険制度運営推進費
部局等
厚生労働本省
交付の根拠
介護保険法(平成9年法律第123号)
交付先(保険者)
市736、区23、町639、村142、一部事務組合14、広域連合26、計1,580市区町村等
介護給付費負担金の概要
市町村が行う介護保険事業運営の安定化を図るため、国が市町村の介護給付等に要する費用の一部を負担するもの
1,580市区町村等が介護給付費負担金の交付額の算定の基礎とした介護給付等に要する費用のうちの審査支払手数料の額
170億7755万余円(平成28、29両年度)
上記に係る介護給付費負担金相当額(1)
34億1551万余円
前記の審査支払手数料の額を施設等手数料と居宅等手数料とに区分した額
施設等手数料 15億3985万余円
居宅等手数料 155億3770万余円
上記に係る介護給付費負担金相当額(2)
施設等手数料に係る分 2億3097万余円
居宅等手数料に係る分 31億0754万余円
計 33億3851万余円
(1)と(2)との開差額
7699万円

1 介護給付費負担金等の概要

(1) 介護保険の概要

介護保険は、介護保険法(平成9年法律第123号)に基づき、市町村(特別区、一部事務組合及び広域連合を含む。以下同じ。)が保険者となって、当該市町村の区域内に住所を有する65歳以上の者等を被保険者として、加齢に伴う疾病等による要介護状態等に関して必要な保健医療サービス及び福祉サービス(以下「介護サービス」という。)に係る保険給付を行うものであり、保険給付には、介護給付、予防給付(以下、これらを合わせて「介護給付等」という。)等がある。被保険者が受ける介護サービスには、居宅サービス(注1)、施設サービス及び地域密着型サービス(注2)並びに居宅介護支援等がある。

(注1)
居宅サービス  居宅サービスには、介護予防サービスを含む。
(注2)
地域密着型サービス  平成18年4月の介護保険法の改正により導入された介護サービスであり、地域密着型サービスには、地域密着型介護予防サービスを含む。

(2) 介護給付費の概要

介護サービスを提供する介護サービス事業者が、市町村から要介護状態等にあるものとして認定を受けた者(以下「要介護者等」という。)に対して介護サービスを提供した場合に請求することのできる報酬の額(以下「介護報酬」という。)は、「指定居宅サービスに要する費用の額の算定に関する基準」(平成12年厚生省告示第19号)等に基づき算定することとなっている。

そして、市町村は、介護保険法に基づき、要介護者等が居宅サービス、施設サービス又は地域密着型サービスの提供を受けたときは、原則として、介護報酬の100分の90に相当する額を、また、居宅介護支援等の提供を受けたときは介護報酬の全額を、それぞれ介護サービス事業者に支払うこととなっている(以下、市町村が支払う介護報酬を「介護給付費」という。)。

介護給付費の支払手続は、次のとおりとなっている。

① 市町村は、各都道府県の国民健康保険団体連合会(以下「国保連合会」という。)との間で、介護給付費に係る審査及び支払に関する事務(以下「審査支払事務」という。)に係る委託契約(以下「事務委託契約」という。)を締結し、国保連合会に審査支払事務を委託する。

② 介護サービス事業者は、要介護者等に提供した介護サービスの内容、金額等を記載した介護給付費請求書、介護給付費明細書等を国保連合会に送付する。

③ 国保連合会は、送付された介護給付費請求書、介護給付費明細書等を審査するなどした後、介護給付費払込請求書に介護給付費等請求額通知書(以下「請求額通知書」という。)等を添えて、介護給付費を市町村に請求する。

④ 請求を受けた市町村は、介護給付費の金額等を確認した上で、国保連合会を通じて介護サービス事業者に介護給付費を支払う。

上記介護給付費明細書の様式は、「介護給付費及び公費負担医療等に関する費用等の請求に関する省令」(平成12年厚生省令第20号)において定められている。そして、平成18年度に導入された地域密着型サービスに係る介護給付費明細書の様式には、様式の簡素化等を図ることで、居宅サービスに係る様式又は施設サービスに係る様式と共通となっているものがある。

(3) 審査支払手数料の概要

市町村は、事務委託契約に基づき、毎月、国保連合会から介護給付費審査支払手数料払込請求書、請求額通知書等の送付を受けて、国保連合会に対して、審査支払事務の実施に要する手数料(以下「審査支払手数料」という。)を支払っている。

審査支払手数料の額は、審査した介護給付費明細書の件数(審査支払件数)に、事務委託契約等で定められた介護給付費明細書1件当たりの審査支払手数料に係る単価(以下「手数料単価(注3)」という。)を乗ずるなどして算定されている。

(注3)
手数料単価  各都道府県の国保連合会が毎年度定めており、平成28、29両年度においては、34円02銭から95円となっている。

(4) 介護給付費負担金の概要

国は、介護保険法に基づき、17年度まで、介護給付等に要する費用の100分の20を負担していた。しかし、18年4月に同法が改正され、国は、同法に基づき、政令で定めるところにより、介護給付等に要する費用のうち、施設サービスである介護福祉施設サービス、介護保健施設サービス及び介護療養施設サービス並びに居宅サービスである特定施設入居者生活介護等(以下、これらの介護サービスを合わせて「施設等サービス」という。)に係る給付に要した費用(以下「施設等給付費」という。)については100分の15を負担し、施設等サービスに該当しない介護サービス(以下「居宅等サービス」という。)に係る給付に要した費用(以下「居宅等給付費」という。)については100分の20を負担することとなった。

そして、国が負担する額は、18年度以降、「介護保険の国庫負担金の算定等に関する政令」(平成10年政令第413号)において、施設等給付費の100分の15に相当する額と居宅等給付費の100分の20に相当する額との合算額とされており、厚生労働省は、「介護給付費等負担金交付要綱」(平成15年厚生労働省発老第0328005号別紙。以下「交付要綱」という。)に基づき、この合算額を介護給付費負担金(以下「負担金」という。)として、市町村に交付することとなっている。

一方、交付要綱によれば、市町村が国保連合会に支払う審査支払手数料については、「審査支払件数に95円以内の額を乗じて得た額の100分の20に相当する額とする」こととされている。

また、交付要綱によれば、負担金の交付を受けようとする市町村は、都道府県を通じて、交付申請書及び事業実績報告書を厚生労働省に提出することとされており、同省は、これに基づき負担金の交付決定及び交付額の確定を行っている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、介護給付等に要する費用のうち、審査支払手数料に係る国の負担は介護保険法を踏まえた適切なものとなっているかなどに着眼して、28、29両年度に負担金の交付を受けていた47都道府県の1,580市区町村等が、負担金の交付額の算定の基礎とした介護給付等に要する費用のうち、審査支払手数料計170億7755万余円(負担金相当額計34億1551万余円)を対象として検査した。

検査に当たっては、厚生労働本省及び10府県の50市町村等において、負担金の審査支払手数料に係る交付額の算定方法について説明を聴取したり、事業実績報告書、請求額通知書等の関係書類を確認したりするなどして会計実地検査を行うとともに、残りの47都道府県の1,530市区町村等については、厚生労働省から請求額通知書等の提出を受けて、その内容を確認するなどして検査した。

(検査の結果)

前記のとおり、介護保険法において、施設等給付費に係る国の負担割合が100分の15、居宅等給付費に係る国の負担割合が100分の20とそれぞれ定められているのに対して、厚生労働省は、審査支払手数料については、施設等サービスに係る介護給付費の審査に要した審査支払手数料(以下「施設等手数料」という。)と居宅等サービスに係る介護給付費の審査に要した審査支払手数料(以下「居宅等手数料」という。)とに区分することなく、交付要綱において、国の負担割合を一律に100分の20としていた。

厚生労働省は、上記の取扱いとした理由について、前記18年4月の介護保険法の改正において地域密着型サービスが導入されたことにより、1件の介護給付費明細書の中に、施設等サービスに係る介護給付費と居宅等サービス(地域密着型サービス)に係る介護給付費とが混在する場合が生じ、この場合に審査支払手数料を施設等手数料と居宅等手数料とに区分して算定することとすれば、市町村に多大な事務負担が生ずることになるためであるなどとしていた。

しかし、実際には、次のとおり、市町村に多大な事務負担が生ずることなく、施設等手数料と居宅等手数料とを区分して算定することが可能であると認められた。

ア 国保連合会は、介護サービス事業者から送付されてきた介護給付費明細書のうち、施設等サービスを提供した実績と居宅等サービスを提供した実績とが混在して記載されているものについては、審査において、記載内容に誤りがある介護給付費明細書であると判定して、介護サービス事業者に返戻する取扱いとしていた。そのため、1件の介護給付費明細書の中に、施設等サービスに係る介護給付費と居宅等サービスに係る介護給付費とが混在することはない状況となっていた。

イ 請求額通知書に記載されている施設等サービスの種類ごとの介護サービスの件数の合計は、国保連合会が審査した施設等サービスに係る介護給付費明細書の件数と一致していた。

ウ ア及びイにより、審査支払手数料のうち、施設等手数料は、請求額通知書に記載されている施設等サービスの種類ごとの介護サービスの件数の合計に手数料単価を乗ずるなどすることにより、また、居宅等手数料は、請求額通知書に記載されている審査した介護給付費明細書の件数から施設等サービスの種類ごとの介護サービスの件数の合計を差し引いた件数に手数料単価を乗ずるなどすることにより、それぞれ算定することができることとなっていた。

そこで、上記の方法により、47都道府県の1,580市区町村等に係る前記の28、29両年度の審査支払手数料計170億7755万余円を施設等手数料と居宅等手数料とに区分すると、それぞれ計15億3985万余円、計155億3770万余円となることから、前記の介護保険法に定めるそれぞれの国の負担割合により負担金相当額を計算すると、合計33億3851万余円(施設等手数料に係る額計2億3097万余円、居宅等手数料に係る額計31億0754万余円)となり、前記の審査支払手数料に係る負担金相当額計34億1551万余円と比べて7699万余円の開差が生じていたと認められた。

このように、毎月、国保連合会から市町村に送付される請求額通知書上の情報に基づいて、審査支払手数料を施設等手数料と居宅等手数料とに区分して算定することが可能であったのに、厚生労働省において、審査支払手数料の全額について国の負担割合を一律に100分の20とした取扱いを交付要綱で定めていたことにより、負担金が過大に交付されていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、厚生労働省において、国保連合会における審査支払事務及び市町村に対する審査支払手数料の請求事務の実施状況について十分に確認し把握していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、厚生労働省は、31年4月に交付要綱を改正し、負担金の審査支払手数料に係る交付額について、審査支払手数料を施設等手数料と居宅等手数料とに区分して、施設等手数料は介護保険法に定める施設等給付費に係る国の負担割合で、また、居宅等手数料は同法に定める居宅等給付費に係る国の負担割合でそれぞれ算定することとし、国の負担が適切なものとなるようにする処置を講じた。