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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (3) 補助金により造成した基金の使用が適切でなかったもの

漁業経営安定対策事業費補助金(競争力強化型機器等導入緊急対策事業に係る分)により造成した基金を用いて実施した事業において、助成対象経費を過大に精算するなどしていたもの[水産庁](153)―(156)


(4件 不当と認める国庫補助金  4,099,000円)

 
部局等
補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等
年度
事業費
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(153)
水産庁
特定非営利活動法人水産業・漁村活性化推進機構 丸栄水産株式会社
(事業主体)
競争力強化型機器等導入緊急対策 28 5,238 2,425 1,455 728
(154) A
(事業主体)
28 16,200 7,500 1,000 500
(155) B
(事業主体)
28、29 17,280 8,000 3,240 1,621
(156) C
(事業主体)
28、29 11,772 5,450 2,500 1,250
(153)―(156)の計 50,490 23,375 8,195 4,099

(注) 事業主体名のアルファベットは、個人事業者を示している。

漁業経営安定対策事業費補助金(競争力強化型機器等導入緊急対策事業に係る分)は、水産物の安定供給の確保及び水産業の健全な発展の実現を図ることを目的として、「水産関係民間団体事業実施要領」(平成10年10水漁第944号農林水産事務次官依命通知)等に基づき、水産庁が、特定非営利活動法人水産業・漁村活性化推進機構(以下「機構」という。)に対して基金を造成させるために交付するものである。そして、基金を造成した機構は、意欲ある漁業者が将来にわたり希望をもって漁業経営に取り組むことができるよう水産業の体質強化を図ることを目的として、競争力強化型機器等導入緊急対策事業(以下「機器等導入事業」という。)を実施する事業主体に対して、この基金を取り崩して助成金を交付している。

 「水産関係民間団体事業実施要領の運用について」(平成22年21水港第2597号水産庁長官通知)等(以下「運用通知等」という。)によれば、機構は、助成金の交付事業を円滑に実施するために必要がある場合には、助成金の交付事業の一部を第三者に委託して実施することができるとされており、委託を行う場合には、あらかじめ水産庁長官と協議することとされている。そして、機構は、これに基づき一般社団法人漁業経営安定化推進協会(以下「漁安協」という。)に助成金の交付事業を委託して実施しており、漁安協を通じて事業主体に対して助成金を交付している。

運用通知等によれば、機構は、事業主体がコスト競争に耐えうる操業体制を確立するための漁業用機器(以下「機器」という。)等を導入する際の費用を対象に、事業主体に2分の1以内の金額を助成することとされており、導入する機器等の本体価格(下取価額を控除し、消費税を除いたものをいう。以下同じ。)以外の経費は助成金交付の対象となる経費(以下「助成対象経費」という。)として認めないこととされている。また、機構が定めた「水産業競争力強化緊急事業業務要領」(平成28年3月施行)等によれば、助成の対象となる機器等は、導入した機器等に代替される既設の機器(以下「被代替機器」という。)等と比較して生産性の向上や省力・省コスト化に資する機器等であることとされており、事業主体は、事業終了後、実績報告書等のほか、証拠書類を添えて機構に提出することとされている。なお、機構と漁安協との委託契約書により、実績報告書の審査等は漁安協において行われている。

4事業主体は、機器等導入事業を事業費計50,490,000円、助成対象経費計46,750,000円で実施したとして、助成金計23,375,000円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。

しかし、4事業主体が実施した機器等導入事業において、丸栄水産株式会社、A及びB(以下「3事業主体」という。)は実質的な値引きを受けていたり、虚偽の領収書を提出していたりしていて、助成対象経費が過大に精算されていた。また、Cは助成の対象とならない経費を助成対象経費に含めていた。これらの結果、4事業主体に対する助成金が過大に交付されていた。

したがって、適正な助成対象経費を算定すると、計38,554,259円となり、前記の助成対象経費46,750,000円との差額8,195,741円が過大に精算されるなどしており、取り崩された基金計4,099,000円(国庫補助金相当額同額)の使用が適切ではなく、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、3事業主体において補助事業の適正な執行に対する認識が著しく欠けていたこと、Cにおいて助成対象経費の算定についての理解が十分でなかったこと、機構において実績報告書等の審査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

Bは、平成28、29両年度に、被代替機器と比較して生産性の向上に資する漁船の機器(エンジン)の導入を事業費17,280,000円で実施したとして、助成対象経費を機器の本体価格16,000,000円とする実績報告書を機構に提出し、助成金8,000,000円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。

しかし、Bの機器の購入代金の支払状況等を確認したところ、Bは、実績報告書を提出した後に、機器を購入した会社から機器の本体価格3,240,741円の返金を受けて実質的な値引きを受けており、実際に要した費用は実績報告書に計上された本体価格よりも低額となっていた。

したがって、適正な助成対象経費を算定すると12,759,259円となり、前記の助成対象経費16,000,000円との差額3,240,741円が過大に精算されており、これに係る助成金1,621,000円(国庫補助金相当額同額)の使用が適切でなかった。

<事例2>

Cは、平成28、29両年度に、燃油消費量の多い漁船の機器(エンジン)の更新を事業費11,772,000円で実施したとして、助成対象経費を機器の本体価格12,000,000円から被代替機器の下取価額1,100,000円を控除した10,900,000円とする実績報告書を機構に提出し、助成金5,450,000円(国庫補助金相当額同額)の交付を受けていた。

しかし、助成対象経費10,900,000円には、助成の対象とは認められない機器の改造に伴う費用2,500,000円が含まれていた。

したがって、機器の改造に伴う費用2,500,000円は助成の対象とは認められず、これに係る助成金1,250,000円(国庫補助金相当額同額)の使用が適切でなかった。