(1件 不当と認める国庫補助金 9,735,367円)
部局等 |
補助事業者等 | 間接補助事業者等 | 補助事業等 | 年度 |
事業費 |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | ||||||
(167) | 東北農政局 |
福島県
(事業主体) |
― | 農業用施設災害復旧 | 27~29 | 494,348 | 491,815 | 9,745 | 9,735 |
この補助事業は、福島県が、南相馬市金沢第一地区において、平成23年3月の東日本大震災により被災した排水機場の機能回復を図るために、本体工、護岸復旧工等を実施したものであり、このうち護岸復旧工は、排水機場に隣接する河岸にL型擁壁(高さ1.2m、盛土高1.5m~1.6m、延長50m)を築造するなどしたものである。
同県は、本件L型擁壁の設計を「道路土工 擁壁工指針」(社団法人日本道路協会編。以下「指針」という。)等に基づいて行っている。
指針等によれば、擁壁の設計に当たっては、滑動等に対する擁壁の安定性の照査を行うこととされている。そして、滑動に対する安定計算については、滑動に対する抵抗力を土圧等による滑動力で除して算定した安全率が、常時では1.5を下回ってはならないことなどとされている。また、指針等によれば、河川の水際に設置される擁壁のように壁の前後で水位差が生ずる場合には、水位差による擁壁に対する水圧(以下「残留水圧」という。)と浮力を考慮する必要があるとされている。
同県は、L型擁壁の滑動に対する安定について、L型擁壁の自重等により算出した滑動に対する抵抗力を、L型擁壁背面に生ずる土圧による滑動力で除した安全率が許容値である1.5を上回ることから、安定計算上安全であるとして、これにより施工していた(参考図1参照)。
しかし、同県は、L型擁壁の安定計算において、L型擁壁の前面は河川であることから残留水圧及び浮力を考慮する必要があったのに、これらを考慮していなかった(参考図2参照)。
そこで、指針等に基づき、残留水圧及び浮力を考慮して、改めて滑動に対する安定計算を行ったところ、安全率は、本件擁壁の背面の盛土勾配に応じて0.94及び0.99となり、いずれも許容値である1.5を大幅に下回っており、安定計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。
したがって、本件L型擁壁(工事費相当額9,745,113円)は、設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態となっており、これに係る国庫補助金相当額9,735,367円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
(参考図1)
当局の安定計算によるL型擁壁の概念図
(参考図2)
適切な安定計算によるL型擁壁の概念図