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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (6) 補助対象事業費を過大に精算していたもの

農業界と経済界の連携による生産性向上モデル農業確立実証事業等の事業費を過大に精算していたもの[農林水産本省](168)―(170)


(3件 不当と認める国庫補助金  8,861,547円)

農業界と経済界の連携による生産性向上モデル農業確立実証事業(平成28年度以前は農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業)は、農業法人等と農業以外の業種の企業等が連携して行う農業経営全体に係るコストの低減や収益向上等を目的とした先端技術・ノウハウ等の実証(以下「連携プロジェクト」といい、連携プロジェクトを実施する者を「連携プロジェクト実施主体」という。)及び連携プロジェクト全体の統括・運営に関する業務(以下「事業統括業務」といい、事業統括業務を実施する者を「事業統括業務実施主体」という。)を行うものである。そして、農林水産本省は、連携プロジェクト実施主体に対して助成を行った事業統括業務実施主体に対して国庫補助金を交付している(図参照)。

図 事業の概要(概念図)

図 事業の概要(概念図) 画像

農業界と経済界の連携による生産性向上モデル農業確立実証事業実施要綱(平成26年25経営第3709号農林水産事務次官依命通知。28年度以前は農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証事業実施要綱。以下「実施要綱」という。)等によれば、連携プロジェクトの補助対象経費は、機械・施設等導入費、技術者人件費、農業生産費等とされている。また、事業統括業務の補助対象経費は、当該業務を行うために必要な人件費、旅費、委託費等とされている。そして、これらの補助対象経費のうち技術者人件費及び人件費は、連携プロジェクト実施主体及び事業統括業務実施主体のそれぞれの構成員の正規職員について、事業従事者ごとに、給与等の年間支給実績等に基づき算定した時間単価に補助事業に従事した実績時間を乗じて算定することとされている。

本院が、41連携プロジェクト実施主体及び3事業統括業務実施主体において会計実地検査を行ったところ、ソーラーファームポータル実証コンソーシアム及び農業ICTの活用による果樹生産性向上・伝承推進コンソーシアムが実施した連携プロジェクト並びに先端農業連携創造機構が実施した事業統括業務において、技術者人件費及び人件費の算定に当たり実施要綱等に基づかずに間接経費を含めた時間単価を用いているなどしており、事業費計18,131,346円(補助対象事業費同額)が過大に精算されていて、これに係る国庫補助金相当額計8,861,547円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、連携プロジェクトについては、2連携プロジェクト実施主体において本件補助事業の補助対象経費に対する理解が十分でなかったこと、同機構において本件補助事業に係る審査及び2連携プロジェクト実施主体に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。また、事業統括業務については、同機構において本件補助事業の補助対象経費に対する理解が十分でなかったこと、農林水産本省において本件補助事業に係る審査及び同機構に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

 
部局等
補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等
年度
事業費
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(168)
農林水産本省
先端農業連携創造機構 ソーラーファームポータル実証コンソーシアム
(事業主体)
農業界と経済界の連携による先端モデル農業確立実証
(連携プロジェクト)
28 31,783 15,891 4,854 2,427
(169)
農業ICT
の活用による果樹生産性向上・伝承推進コンソーシアム(事業主体)
農業界と経済界の連携による生産性向上モデル農業確立実証
(連携プロジェクト)
29 31,254 14,179 10,790 3,947

2連携プロジェクト実施主体は、平成28年度にほ場の遠隔モニタリング等により野菜の水耕栽培等に係る管理コスト等の削減を実証したり、29年度に営農アプリケーションの開発等による果樹栽培に係る技術等の早期習得を実証したりする連携プロジェクトを事業費計63,038,119円(補助対象事業費同額)で実施したとして、先端農業連携創造機構に実績報告書を提出して、これにより国庫補助金計30,071,391円の交付を受けていた。

しかし、2連携プロジェクト実施主体は、連携プロジェクトに従事した各連携プロジェクト実施主体の構成員(注)である法人の技術者人件費の算定に当たり、時間単価を、実施要綱等によれば事業従事者ごとに給与等の年間支給実績等に基づき算定し、間接経費を含めないこととされているのに、人件費単価に職階別の間接経費の率を乗じた額を平均するなどして算定したり、正規職員の給与に旅費等を加えた額を基に算定したりしていた。また、ソーラーファームポータル実証コンソーシアムは、補助対象経費に計上した技術者人件費を重複して機械・施設等導入費にも計上するなどしていた。

したがって、実施要綱等に基づいた時間単価により技術者人件費を算定したり、技術者人件費と重複して計上するなどしていた機械・施設等導入費を除いたりなどして適正な補助対象事業費を算定すると、計47,393,858円となり、前記の補助対象事業費63,038,119円との差額15,644,261円(国庫補助金相当額計6,374,462円)が過大に精算されていた。

(注)
各連携プロジェクト実施主体の構成員  連携プロジェクト実施主体であるコンソーシアムを構成する農業法人や企業等
(170)
農林水産本省
先端農業連携創造機構
(事業主体)
農業界と経済界の連携による生産性向上モデル農業確立実証
(事業統括業務)
28、29 66,413 66,413 2,487 2,487

先端農業連携創造機構は、事業統括業務実施主体として、平成28、29両年度に事業統括業務を事業費計66,413,276円(補助対象事業費同額)で実施したとして、農林水産本省に実績報告書を提出して、これにより同額の国庫補助金の交付を受けていた。

しかし、同機構は、事業統括業務に従事した同機構を構成する1法人の人件費の算定に当たり、時間単価を、実施要綱等によれば事業従事者ごとに給与等の年間支給実績等に基づき算定し、間接経費を含めないこととされているのに、同法人の職階別の人件費単価に間接経費を加えた額等としていた。

したがって、実施要綱等に基づいた時間単価により人件費を算定するなどして適正な補助対象事業費を算定すると、計63,926,191円となり、前記の補助対象事業費66,413,276円との差額2,487,085円(国庫補助金相当額同額)が過大に精算されていた。

(168)―(170)の計 129,451 96,484 18,131 8,861