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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (11) 計画が適切でなかったもの

ため池廃止工事の実施に当たり、計画が適切でなかったため、工事実施後も浸水被害の発生を防止できない状態となっていたもの[九州農政局](176)


(1件 不当と認める国庫補助金 3,978,551円)

 
部局等
補助事業者等 間接補助事業者等 補助事業等
年度
事業費
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(176)
九州農政局
大分県
(事業主体)
農村地域防災減災 29 23,801 23,800 3,978 3,978

この補助事業は、大分県が、国東市第1地区において、農地の遊休化により水需要がなくなるとともに老朽化が進むなど管理が困難となっていて、決壊した場合に下流の家屋等へ被害が生ずるおそれのあるため池4か所について、国東市からの要望に基づき、堤体が決壊した場合の浸水被害を防止することを目的として、ため池としての機能を廃止する工事(以下「廃止工事」という。)を実施したものである。

そして、上記4か所のため池のうち新池(貯水量29,600m3)の廃止工事は、ため池に水が貯留しないように、堤体の一部を開削するなどして、そこにU型水路(内空断面の幅0.45m、高さ0.45m)と張コンクリート等から成る排水路(延長33.5m)を設置するものである(参考図参照)。

同県は、新池の廃止工事の実施に当たり、農村地域防災減災事業実施要領(平成25年24農振第2118号)等に基づき事業計画を策定している。そして、同県は、事業計画の策定に当たり、国東市から、新池には、堤頂から4.25m下方の水位(以下「現況水位」という。)まで水が残留しているが、取水孔(注1)を開けて可能な限り水位を下げているとの報告を受けたことから、実際の池底の位置を確認しないまま、現況水位において残留している水量は下流に被害を与えるほど多いものではないと想定して、U型水路の天端が現況水位に一致するように排水路の設置高さを決定していた。

しかし、ため池の管理台帳によると、新池の堤高は10.5mとされており、池底の位置によっては、池底から現況水位までには相当程度の水量が残留していることも考えられることから、上記の国東市からの報告のみにより残留している水量を想定したのは適切ではなく、実際の池底の位置を確認して、排水路の設置高さを決定すべきであった。

そこで、実際の池底の位置を深浅測量(注2)により確認したところ、泥状の堆積土を考慮しても、池底(最深部)は現況水位より4.88m低い位置となっていた。そして、流量計算及び氾濫解析により、堤体が決壊した場合の下流の家屋等への影響を検討したところ、豪雨時において、ため池には17,200m3の水量が貯留され、堤体の決壊により下流域に浸水被害が生ずるおそれがある状況となっていた。

したがって、本件工事のうち新池の廃止工事(工事費相当額3,978,725円)は、計画が適切でなかったため、堤体の決壊による浸水被害の発生を防止できない状態となっていて、補助の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額3,978,551円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、本件工事の計画に当たり、排水路の設置高さを適切に決定するための検討が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
取水孔  ため池に貯留されている水を取水するための施設の一部であり、水位に応じて取水が行えるように、堤体の法面に沿って埋設されている斜樋(ひ)に、複数の孔と開閉栓を上下方向に設置したもの
(注2)
深浅測量  測深器具等を使用して、池底、河床等の深さを求める測量

(参考図)

ため池廃止工事の概念図

堤体縦断図(事業計画策定時の想定)

ため池廃止工事の概念図 画像

堤体縦断図(深浅測量による実際の池底の状況)

ため池廃止工事の概念図 画像