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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

受水槽の設計が適切でなかったもの[北海道経済産業局](177)


(1件 不当と認める国庫補助金 19,668,048円)

 
部局等
補助事業者等(所在地)
間接補助事業者等
(所在地)
補助事業等
年度
事業費
補助対象事業費等
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める補助対象事業費等 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(177) 北海道経済産業局
北海道
岩内郡岩内町
〈事業主体〉
電源立地地域対策交付金 29 77,166
(77,158)
74,000 20,507 19,668

この交付金事業は、岩内町が、岩内町立岩内第二中学校において、昭和54年度に設置された給水設備等について、老朽化した既設の受水槽や配水管等を更新するなどの工事を実施したものである。

同町は、これらの設備の設計を「建築設備耐震設計・施工指針2014年版」(独立行政法人建築研究所監修。以下「耐震設計指針」という。)等に基づいて行っている。耐震設計指針によれば、設備機器を据え付けるために鉄骨架台等の支持構造部材を用いる場合は、支持構造部材をアンカーボルトで鉄筋コンクリートの床等に緊結することとされており、アンカーボルトは、設備機器と鉄骨架台を一体と考えて、地震時に作用する引抜力(注)が許容引抜力(注)を上回らないようにすることとされている。そして、設備機器と鉄骨架台を緊結する取付ボルトについても、アンカーボルトに準じて設計することとされている。

同町は、受水槽の設計に当たり、鉄筋コンクリートの床の上に径8mmのアンカーボルト4本で緊結されている既設の鉄骨架台(以下「既設架台」という。)を利用して新しい受水槽を設置することとしたが、既設架台と受水槽本体との取付ボルトの位置が合わないことから、既設架台の上に新設の鉄骨架台(以下「新設架台」という。)を設置して、既設架台と新設架台及び新設架台と受水槽本体をそれぞれ8本の取付ボルトで緊結することとした(参考図参照)。そして、当該取付ボルトについては、耐震設計指針に基づく耐震設計計算を行って、径16mmとすれば安全であるとして、これにより施工していた。

しかし、耐震基準や設備機器の状況が既設の給水設備の設置当時と異なっているにもかかわらず、同町は、鉄筋コンクリートの床と既設架台とを緊結する既設のアンカーボルトについて、本件工事に際して耐震設計計算を行っていなかった。

そこで、当該アンカーボルトについて耐震設計指針に基づき耐震設計計算を行ったところ、地震時に当該アンカーボルトに作用する引抜力24.92kN/本は、許容引抜力3.00kN/本を大幅に上回っていて、耐震設計計算上安全とされる範囲に収まっていなかった。

したがって、本件工事により整備した受水槽は、アンカーボルトの設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されておらず、地震時に転倒するなどして破損するおそれがあり、受水槽及び受水槽に接続している配水管等の給水設備(工事費相当額20,507,541円)は、地震時における機能の維持が確保されていない状態となっていて、これに係る交付金相当額19,668,048円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同町において、設備の更新に当たり既設の支持構造部材を利用する場合であっても、既設の設備の設置当時と状況が異なっているときは、耐震設計指針に基づき改めて耐震設計計算を行うことが必要であることの認識が欠けていたこと、北海道において同町に対する指導が十分でなかったことなどによると認められる。

(注)
引抜力・許容引抜力  「引抜力」とは、機器等に地震力が作用する場合に、ボルトを引き抜こうとする力が作用するが、このときのボルト1本当たりに作用する力をいう。また、当該ボルトに作用することが許容される引抜力の上限を「許容引抜力」という。

(参考図)

受水槽の概念図

受水槽の概念図 画像