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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (1) 工事の設計が適切でなかったもの

街路灯の設計が適切でなかったもの[東北経済産業局](178)


(1件 不当と認める国庫補助金 5,852,825円)

 
部局等
補助事業者等
(所在地)
間接補助事業者等
(所在地)
補助事業等
年度
事業費
補助対象事業費等
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める補助対象事業費等 不当と認める国庫補助金等相当額
            千円 千円 千円 千円
(178) 東北経済産業局
福島県
〈事業主体〉
福島特定原子力施設地域振興交付金 29 17,705
(17,705)
17,705 5,852 5,852

この交付金事業は、福島県が、あづま総合運動公園において、夜間にも利用される体育館及び野球場周辺に、太陽光発電及び風力発電を併用して給電を行うLED街路灯(以下「街路灯」という。)2基を新設するなどしたものである。

本件工事に係る請負契約書等によれば、本件工事は、同県の指示に基づき請負人が詳細な設計を行うなどした上で施工することとされている。また、街路灯については、「照明用ポール強度計算基準JIL1003」(社団法人日本照明器具工業会編。以下「強度計算基準」という。)による速度圧(注1)を用いて設計することとなっている。

強度計算基準において街路灯等の基礎の安定計算に用いられている「ポール基礎の安定計算法」(昭和50年建設省土木研究所)によれば、街路灯等の基礎は、速度圧に基づいて算定する風荷重等から求められる基礎の前面地盤における水平地盤反力度(注2)が地盤の受働土圧強度を上回らないよう基礎の前面幅、側面幅及び根入れ長を設計することにより、安定するとされている。

本件工事の請負人は、街路灯の設計について、速度圧を1,341.6N/m2と算定した上で、これに基づいて算定した風荷重等を強度計算基準における換算表(注3)に当てはめて、基礎コンクリートの前面幅及び側面幅をいずれも1.0m、高さを1.3mとし、この1.3mを根入れ長とすれば安定するとした強度計算書と、当該強度計算書を踏まえて作成したとする設計図面とを同県に提出して承認を受け、これにより施工することとしていた。

(注1)
速度圧  流体の密度と流速により生じた圧力の単位面積当たりの大きさをいう。
(注2)
水平地盤反力度  構造物を介して地盤に水平方向の力を加えたとき、地盤に発生する単位面積当たりの抵抗力をいう。
(注3)
強度計算基準における換算表  基礎幅の寸法、風荷重等を設定することにより、必要となる根入れ長を算出する表

しかし、上記の速度圧は、強度計算基準によるものではなく、本件街路灯が適用対象とならない建築基準法施行令(昭和25年政令第338号)の規定に基づいて算定されたものであり、強度計算基準による速度圧2,210.0N/m2に基づき算定される風荷重等を上記の換算表に当てはめると、基礎コンクリートの前面幅及び側面側がいずれも1.0mである場合の必要となる根入れ長は1.6mとなっていた。また、請負人が設計図面の記載を誤っていたり、設置場所が斜面であったりしていたため、実際に施工された街路灯2基は、斜面下部の基礎の前面における根入れ長が1.1mしか確保されていなかった(参考図参照)。

そこで、街路灯2基の基礎について、実際の施工状況に基づき改めて安定計算を行ったところ、いずれについても、斜面下部の基礎の前面地盤における水平地盤反力度51.9kN/m2は、受働土圧強度22.8kN/m2を大幅に上回っていた。

したがって、街路灯2基(工事費相当額5,852,825円)は、基礎の設計が適切でなかったため、所要の安全度が確保されていない状態になっており、これに係る交付金相当額5,852,825円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、工事の請負人が提出した強度計算書及び設計図面の確認が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図)

街路灯の基礎の概念図

街路灯の基礎の概念図 画像