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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • 第10 経済産業省|
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  • (5) 補助の目的外に使用していたもの

資金供給円滑化信用保証協会等補助金等により造成した基金を補助の目的外に使用していたもの[東北経済産業局](188)


(1件 不当と認める国庫補助金 4,551,362円)

 
部局等
補助事業者
(事業主体)
補助事業
年度
基金使用額 左に対する国庫補助金交付額 不当と認める基金使用額 不当と認める国庫補助金相当額
          千円 千円 千円 千円
(188) 東北経済産業局 福島県信用保証協会 制度改革促進基金造成 29 162,265 162,265 4,551 4,551

この補助事業は、中小企業が必要とする事業資金の融通を円滑にするために信用保証協会(以下「協会」という。)の経営基盤を強化することなどを目的として、協会が、国から資金供給円滑化信用保証協会等補助金(平成17年度は資金供給円滑化信用保証協会基金補助金)等の交付を受けて、金融機関が融資額の一定のリスクを負担する責任共有制度による保証を行ったことにより生じた協会の損失等を優先的に処理するための制度改革促進基金(以下「促進基金」という。)を造成したものである。

協会は、中小企業者が金融機関から受ける融資について、信用保証協会法(昭和28年法律第196号)に基づきその債務を保証する信用保証を行っており、信用保証付融資を受けた中小企業者が債務不履行に陥った場合、協会は当該中小企業者に代わって金融機関に債務を弁済(以下「代位弁済」という。)することにより中小企業者に対して求償権を取得することとなる。そして、協会は、代位弁済により取得した求償権の回収を行うが、求償権のうち回収不能と認められるものなどについては、各協会の求償権の償却基準に基づき償却している。

前記の責任共有制度は、信用保証付融資において、従来、金融機関の行う融資の全額を保証することで協会が原則100%負担していた信用リスク(注1)について、金融機関が一定のリスクを負担することとした制度であり、金融機関が部分保証方式と負担金方式のいずれかを選択することになっている。このうち負担金方式が選択された場合、協会は金融機関の行う融資の全額を保証するが、金融機関が過去の代位弁済率等に基づき協会に一定の負担金を支払うことにより、金融機関が信用リスクの一部を負担することになっている。

中小企業庁が定めた制度改革促進基金事務取扱要領(平成23・02・22財中第1号)によれば、協会は、19年10月1日以降に行った負担金方式による責任共有制度による保証から生じた求償権(求償権補てん金(注2)の額等を控除したもの。以下「負担金方式の求償権」という。)の償却を行った総額の2分の1の額を限度として、協会の損失を補塡するために、促進基金を取り崩すことなどとされている。

また、「補助金等の交付により造成した基金等に関する基準」(平成18年8月閣議決定)によれば、補助金等の交付により造成した基金等を保有する法人が当該基金等により実施している事業に関し、補助金等を交付した府省は、必要がある場合には、当該事業に対し指導監督を行うこととされている。そして、中小企業庁は、信用保証協会法に基づき協会から各事業年度の事業報告書の提出を受け、必要に応じて促進基金に関する事業に対し指導監督を行っている。

事業主体は、17年度から27年度までの間に、東北経済産業局から資金供給円滑化信用保証協会等補助金等計1,004,026,000円の交付を受けて促進基金を造成し、19年度以降毎年度、負担金方式の求償権の償却に伴う損失を補塡するなどのために促進基金を取り崩していた。

事業主体は、29年度に162,265,056円を促進基金から取り崩しており、このうち158,543,865円は、負担金方式の求償権の償却202件(償却額計317,087,730円)に係る取崩しであるとしていた。

しかし、事業主体は、負担金方式の求償権の償却額を集計する際に、事業主体の信用リスクの負担割合が100%であって負担金方式による責任共有制度による保証に該当せず、取崩しの対象とならない保証から生じた求償権の償却5件(償却額計9,102,723円)を誤って含めていた。

したがって、前記の償却202件から促進基金の取崩しの対象とはならない5件を除いた197件(償却額計307,985,007円)に係る適正な促進基金の取崩額を算定すると153,992,503円となり、前記促進基金の取崩額158,543,865円との差額4,551,362円が、促進基金から過大に取り崩されて、補助の目的外に使用されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事業主体において促進基金の取崩しに当たっての調査確認が十分でなかったこと、中小企業庁において事業主体に対する指導監督が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
信用リスク  融資先の信用力の悪化等に伴い、資産の価値が減少し又は消滅することにより損失を被るリスク
(注2)
求償権補てん金  協会と株式会社日本政策金融公庫との間で締結された保険契約に基づき、代位弁済が発生した場合に協会が同公庫から受領した保険金等