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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
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  • (1) 補助金の交付額の算定が適切でなかったもの

建物の移転に係る補償費の算定が適切でなかったもの[3県](199)―(201)


(3件 不当と認める国庫補助金 5,569,336円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
摘要
          千円 千円 千円 千円  
(199)
静岡県
富士市
社会資本整備総合交付金
(土地区画整理)
28、29 79,714
(79,714)
43,843 2,421
(2,421)
1,331 鉄骨の肉厚区分による標準耐用年数を誤っていたもの
(200)
鳥取県
鳥取県
防災・安全交付金(道路) 27、28 48,561
(48,561)
33,993 3,292
(3,292)
2,304 一体の建物として設計監理費に係る業務量を算出していなかったもの
(201)
徳島県
阿波市
29、30 40,002
(40,002)
23,541 3,285
(3,285)
1,933 移転工法の認定が適切でなかったもの
(199)―(201)の計 168,279
(168,279)
101,378 8,998
(8,998)
5,569  

これらの交付金事業は、土地区画整理事業又は道路事業において、事業を行う上で支障となる建物等の所有者に対し、移転に要する費用を補償するものである(以下、補償する費用を「移転補償費」という。)。

事業主体は、公共事業の施行に伴う損失補償を、「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」(昭和37年閣議決定)等に準じて用地対策連絡協議会等が制定した損失補償の標準書(以下「標準書」という。)等に基づき行うこととしている。

標準書等によれば、移転補償費のうち建物移転料は、通常妥当と認められる移転先を認定した上で、当該移転先に建物を移転するのに通常妥当と認められる再築、曳家(ひきや)、改造等の移転工法を認定して算出することとされている。これらの移転工法のうち、再築工法の場合は、従前の建物の推定再建築費に建物の標準耐用年数等により算出した再築補償率を乗ずるなどして建物移転料を算出することとされている。そして、鉄骨造り建物の標準耐用年数は、鉄骨の肉厚区分等により異なっている。

また、移転補償費のうち移転する建物の設計・工事監理等に要する費用(以下「設計監理費」という。)は、増築した建物のように建築物が接合している場合、一体の建物として全体の延床面積を対象に設計・工事監理等に要する業務量(以下「業務量」という。)を算出した上で算定することとされている。そして、業務量は、構造計算等の必要の有無等により区分された建物の類別に応じて算出することとされており、建物が2以上の類別に利用されている場合においては、最も延床面積が大きい類別を適用することとされている。

しかし、1県及び2市において、移転補償費の算定に当たり、鉄骨の肉厚区分による標準耐用年数を誤っていたり、一体の建物として設計監理費に係る業務量を算出していなかったり、移転工法の認定が適切でなかったりしていたため、移転補償費が計8,998,275円過大に算定されていて、これらに係る交付金相当額計5,569,336円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、1県及び2市において、標準書等における移転補償費の算定方法について理解が十分でなかったこと、移転工法の認定に当たり検討が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例>

鳥取県は、県道米子丸山線の歩道を拡幅するために支障となる店舗併用住宅(木造一部鉄骨2階建て)1棟等の所有者に対し、移転補償費48,561,926円を支払っている。

同県は、本件建物が木造の店舗併用住宅(延床面積150.39m2)に鉄骨造りの住宅(同85.53m2)を増築したものであることから、移転補償費のうち設計監理費については、本件建物の木造又は非木造の区分ごとに算定することとした。そして、本件建物の各区分の延床面積や構造計算等の必要の有無等により区分された類別に応じて業務量を算出した上で算定した設計監理費を合算して計6,269,616円と算定していた。

しかし、増築した建物のように建築物が接合している場合に係る設計監理費は、前記のとおり、一体の建物として全体の延床面積を対象にして、最も延床面積が大きい類別に応じて業務量を算出した上で算定することとされている。

したがって、本件建物を一体の建物として全体の延床面積を対象にして、全体の延床面積のうち最も延床面積が大きい類別を適用して設計監理費を算定すると2,977,560円となり、これにより適正な移転補償費を算定すると45,269,870円となることから、本件移転補償費48,561,926円はこれに比べて3,292,056円(交付金相当額2,304,439円)過大となっていた。