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  • 平成30年度|
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  • (2) 工事の設計が適切でなかったもの

鋼矢板の防食工の設計が適切でなかったもの[関東地方整備局](207)


(1件 不当と認める国庫補助金 12,751,200円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(207) 関東地方整備局
茨城県
防災・安全交付金(港湾改修) 29、30 95,310
(95,310)
31,770 38,253
(38,253)
12,751

この交付金事業は、茨城県が、昭和51年度から56年度までの間に茨城港日立港区第5ふ頭地区において建設した小型船だまりの計4か所の波除堤(注1)(施工延長計228.0m。以下「波除堤」という。)等について、50年間の延命化を目的として、波除堤等の下部の既設の鋼矢板(施工延長計676.0m)に防食工(注2)を実施したものである。

港湾法(昭和25年法律第218号)によれば、波除堤等の港湾施設は、国土交通省令で定める技術上の基準に適合するように、建設し、改良し、又は維持しなければならないとされている。そして、「港湾の施設の技術上の基準の細目を定める告示」(平成19年国土交通省告示第395号)の参考資料である「港湾の施設の技術上の基準・同解説」(国土交通省港湾局監修。以下「技術基準」という。)によれば、鋼材の防食対策は電気防食工法(注3)、被覆防食工法(注4)等により適切に行うものとされている。また、電気防食工法の適用範囲は平均干潮面(注5)以下とされており、平均干潮面以上については被覆防食工法による防食を行うことが必要であるとされている。また、「港湾鋼構造物防食・補修マニュアル(2009年版)」(一般財団法人沿岸技術研究センター。以下、技術基準と合わせて「技術基準等」という。)によれば、上部コンクリートの下端が平均干潮面以下である場合は電気防食工法のみによる防食対策でよいとされている。

同県は、本件工事の設計に当たり、波除堤の鋼矢板について、電気防食工法による防食のみを行うこととし、平均干潮面以下(5.9m又は10.6m)を電気防食工法の適用範囲として、設計耐用年数50年の電気防食材計75個を取り付けていた。

しかし、波除堤の鋼矢板については、上部コンクリートの下端が平均干潮面を超えていたことから、上部コンクリートの下端から平均干潮面までの間(0.5m又は0.7m)においては、技術基準等に基づき被覆防食工法による防食が必要であったのに、被覆防食工が行われていなかった(参考図参照)。このため、鋼矢板の一部が適切に防食されていない状態となっていて、波除堤を延命化するものとなっていなかった。

したがって、波除堤の鋼矢板の防食工(工事費相当額計38,253,600円)については、設計が適切でなかったため、波除堤の延命化という工事の目的を達しておらず、これらに係る交付金相当額計12,751,200円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、防食工の設計に当たって、技術基準等の理解が十分でなかったことなどによると認められる。

(注1)
波除堤  船舶の係留区域の静穏を保つために、港内の発生波や航行船舶による航跡波等を低減させる補助的防波堤
(注2)
防食工  電気防食工法、被覆防食工法等により鋼材の腐食を防止する対策
(注3)
電気防食工法  腐食を防止するために、鋼材に電気防食材を溶接するなどする工法
(注4)
被覆防食工法  腐食を防止するために、鋼材表面に被覆材料を塗布するなどする工法
(注5)
平均干潮面  全ての干潮時の潮位を平均した水位

(参考図)

波除堤の概念図

波除堤の概念図 画像