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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第11 国土交通省|
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  • (2) 工事の設計が適切でなかったもの

護岸工の設計が適切でなかったもの[三重県](208)


(1件 不当と認める国庫補助金 9,979,654円)

 
部局等
補助事業者等
(事業主体)
補助事業等
年度
事業費
国庫補助対象事業費
左に対する国庫補助金等交付額 不当と認める事業費
国庫補助対象事業費
不当と認める国庫補助金等相当額
          千円 千円 千円 千円
(208)
三重県
三重県
河川等災害復旧 27、28 78,445
(78,119)
52,105 14,962
(14,962)
9,979

この補助事業は、三重県が、三重郡菰野町大字田光(たびか)地内の二級水系朝明川水系田光川において、台風により被災したえん堤、護岸等から構成される砂防設備を復旧するために、護岸工として巨石積護岸(左岸延長43.3m、右岸延長21.3m)等を築造したものである。

同県は、護岸工の設計を「建設省河川砂防技術基準(案)同解説」(社団法人日本河川協会編)等に準拠して同県が制定した「砂防技術指針(案)」(以下「指針」という。)等に基づいて行うこととしている。指針によれば、現況最深河床高から護岸の基礎工の天端までの深さ(以下「根入れ深さ」という。)については、地質に応じて0.5mから1.0mまで確保することとされ、その深さは洪水時に起こると考えられる河床洗掘等を考慮して設定することなどとされている。

そして、同県は、本件護岸工の左岸側の設計に当たり、河床を洗掘から保護する床固工(厚さ0.8m)を指針等に基づき施工しており、この床固工を施工した区間については、床固工が底部まで洗掘されることがないことから床固工の厚さに合わせて根入れ深さを0.8mとし、床固工を施工しない区間については、現場の地質が砂れきであることから根入れ深さを1.0mとそれぞれ決定していた(参考図12及び3参照)。

しかし、図面を作成する際に、左岸側護岸において、被災していない既設護岸の天端位置を考慮した一定の勾配となるよう、復旧させる護岸の天端位置を当初の計画よりも最大1.0m高くすることとし、基礎工の天端位置もそれに合わせて高くしてしまったことから、根入れ深さが、床固工を施工した区間においては0.22mから0.8mまで、床固工を施工していない区間においては0.22mから1.0mまでとなっていた(参考図12及び3参照)。このため、本件護岸工のうち左岸側護岸は、指針等により必要とされる根入れ深さが確保されておらず、河床や床固工の洗掘が進行すると護岸等に損傷が生ずるおそれがある状況となっていた。現に、洗掘が進行したことにより床固工の下流側端部から延長7.5mにわたり護岸の基礎が露出していた。

したがって、本件護岸工のうち左岸延長43.3m(工事費相当額14,962,000円)は、設計が適切でなかったため、河床等の洗掘に対応できない構造となっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る国庫補助金相当額9,979,654円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、同県において、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図1)

左岸側巨石積護岸側面の概念図

左岸側巨石積護岸側面の概念図 画像

(参考図2)

左岸側巨石積護岸(床固工を施工した区間)断面の概念図

左岸側巨石積護岸(床固工を施工した区間)断面の概念図
 画像

(参考図3)

左岸側巨石積護岸(床固工を施工していない区間)断面の概念図

左岸側巨石積護岸(床固工を施工していない区間)断面の概念図 画像