ページトップ
  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 環境省|
  • 不当事項|
  • 工事

国立公園内の園地整備工事の実施に当たり、設計が適切でなかったため、橋りょう上部工等の所要の安全度が確保されておらず、工事の目的を達していなかったもの[東北地方環境事務所](215)


会計名及び科目
東日本大震災復興特別会計 (組織)環境本省
(項)東日本大震災復興事業費
部局等
東北地方環境事務所
工事名
平成28年度月浜園地整備工事
工事の概要
三陸復興国立公園内において園地を整備するために、敷地造成工、園路広場整備工、橋りょう工等を実施するもの
工事費
288,360,000円
請負人
丸か建設株式会社
契約
平成28年12月 一般競争契約
しゅん功検査
平成30年3月
支払
平成29年2月、30年4月
不適切な設計となっていた橋りょうの築造等に係る工事費
36,077,494円(平成28、29両年度)

1 工事の概要

この工事は、東北地方環境事務所(以下「事務所」という。)が、平成28、29両年度に、三陸復興国立公園内において、月浜園地(以下「園地」という。)を整備するために、敷地造成工、園路広場整備工、橋りょう工等を工事費288,360,000円で実施したものである。

このうち、橋りょう工は、来園者や管理用車両等の通行のために、園地内の月浜沢川に架かる月見橋及び育洋橋(いずれも、橋長12.7m、幅員2.8m。以下、これらを合わせて「本件2橋りょう」という。)を築造するものであり、下部工として重力式橋台各2基計4基の築造、上部工として鋼桁各2本計4本の架設を実施するなどしたものである。

事務所は、本件2橋りょうの設計を「道路橋示方書・同解説」(社団法人日本道路協会編。以下「示方書」という。)等に基づいて行っており、示方書によれば、地震時に橋桁が落下することを防止する対策として落橋防止システムを設置することとされている。この落橋防止システムは、桁かかり長(注1)、落橋防止構造(注2)等の中から適切なものを選定して設計することとされている。そして、これらのうち、桁かかり長は、支承部が破壊したときに、上部構造が下部構造の頂部から逸脱して落下するのを防止するために必要な長さ(以下、この必要な長さを「最小値」という。)を算出し、これ以上の長さを確保することによって落橋防止機能を発揮するものである(以下、桁かかり長を最小値以上とすることを「桁かかり長の確保」という。)。

事務所は、落橋防止システムの設計を含む本件2橋りょうの設計業務を設計コンサルタントに委託し、当該設計業務の設計図面等の成果品の提出を受けている。そして、事務所は、この成果品に基づくなどして、本件2橋りょうが、両端が橋台に支持された一連の上部構造を有していることなどから橋軸方向に大きな変位が生じにくい橋りょうであり、桁かかり長の確保及び落橋防止構造を省略しても橋りょうの所要の安全度が確保されるとして、これにより施工していた。

(注1)
桁かかり長  橋桁の端部から橋座部の縁端までの長さ
(注2)
落橋防止構造  桁と橋台の胸壁をPC鋼材で連結するなどして、上下部構造間に予期しない大きな相対変位が生じた場合に、これが桁かかり長を超えないように機能するもの

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、本件2橋りょうの設計が示方書に基づき適切に行われているかなどに着眼して、事務所において、本件工事を対象に、設計図面、設計計算書、施工写真等の書類及び現地の状況を確認するなどして会計実地検査を行ったところ、本件2橋りょうの橋台の設計が、次のとおり適切でなかった。

示方書によれば、橋軸方向に大きな変位が生じにくい橋りょうについて、落橋防止システムのうち省略することができるのは落橋防止構造のみとされており、桁かかり長の確保を省略することができるとはされていない。しかし、事務所は、本件2橋りょうの設計に当たり、前記のとおり、誤って落橋防止構造のほか桁かかり長の確保についても省略することとしたため、桁かかり長の最小値を算出していなかった。

そこで、示方書に基づいて、本件2橋りょうにおける桁かかり長の最小値を算出すると76.1cmとなり、施工された本件2橋りょうの現況の桁かかり長67.0cmから68.0cm(月見橋67.5cm及び68.0cm、育洋橋67.0cm及び67.5cm)はこれに比べて長さが不足しており、落橋防止機能が確保されていない状況となっていた。

したがって、本件2橋りょうは、橋台の設計が適切でなかったため、上部工等の所要の安全度が確保されていない状態になっていて、工事の目的を達しておらず、これに係る工事費相当額36,077,494円が不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、事務所において、示方書についての理解が十分でなかったこと、委託した設計業務の成果品に誤りがあったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。

(参考図)

橋りょうの概念図

橋りょうの概念図 画像