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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第12 環境省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(1) オンサイトラボに係る賃貸借契約について、金利情勢等を踏まえた協議を行うことにより、賃借料が適切なものとなるよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)原子力規制委員会
(項)原子力安全確保費
部局等
原子力規制委員会
契約名
六ヶ所保障措置分析所施設賃貸借
契約の概要
六ヶ所再処理施設に係る検査で採取した試料を分析するために、六ヶ所再処理施設の敷地内の建物の一部及びそこに備えられた設備を賃借するもの
契約の相手方
日本原燃株式会社
契約
平成29年4月、30年4月 随意契約
賃借料
6609万余円(平成29、30両年度)
上記のうち節減できた賃借料
2060万円

1 オンサイトラボに係る賃貸借契約の概要等

原子力規制委員会(平成25年3月31日以前は文部科学省。以下「委員会」という。)は、国際原子力機関による保障措置(注)の一環として、国内における核物質の計量及び管理の状況を確認するために、原子力事業者等に対して、事務所等への立入り、帳簿等の検査、試料の採取、監視装置の取付けなどの検査を定期的に行ったり、検査で採取した試料の分析を行ったりするなどの業務を実施している。

(注)
保障措置  核物質が平和目的だけに利用され、核兵器等に転用されないことを担保するために行われる検認活動

委員会は、日本原燃株式会社(以下「日本原燃」という。)が整備を進めている六ヶ所再処理施設(青森県上北郡六ヶ所村所在。以下「再処理施設」という。)に係る検査で採取した試料を高精度かつ迅速に分析するために、六ヶ所保障措置分析所(以下「オンサイトラボ」という。)を再処理施設の敷地内に設置することとし、16年12月以降、再処理施設の敷地内の建物の一部及びそこに備えられた設備(以下「分析建屋等」という。)を日本原燃から賃借してオンサイトラボとして使用している。

委員会は、分析建屋等の賃借に当たり、16年度以降の毎年度、日本原燃との間で賃貸借契約を締結して賃借料を支払っており、当該賃借料については、16年度に最初の賃貸借契約を締結する際に行った委員会と日本原燃との協議により、日本原燃が分析建屋等の整備のために借り入れた資金を一定の期間、一定の利率で利子を支払いながら回収していくとした考え方に基づくなどして算出することとなっている。

また、賃貸借契約においては、経済事情の変動、施設の改造その他の負担の増減により、賃借料の改定の必要が生じた場合には、両者で協議の上、賃借料を改定することとなっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、オンサイトラボに係る賃貸借契約について、賃借料が適切に算定されているかなどに着眼して、29、30両年度に、委員会が日本原燃との間で締結した賃貸借契約(賃借料は両年度とも3304万余円、計6609万余円)を対象として、委員会において、賃貸借契約書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

日本原燃は、建屋等ごとに資金の借入れを行っておらず、分析建屋等の整備のために借り入れた資金の利率を特定できないことから、委員会及び日本原燃は、賃借料の算出に当たり、前記協議の時点で把握することができた直近の13年度末時点における日本原燃の借入金全体の平均利率(以下「借入金平均利率」という。)を基に定めた利率を当面用いることとしており、29、30両年度の賃借料についても、同じ利率を用いていた。

しかし、16年度に最初の賃貸借契約を締結してから長期間が経過し、その間、金利情勢がほぼ一貫して低下傾向となっていることから、本院が委員会を通じて借入金平均利率の推移を確認したところ、借入金平均利率は13年度末以降低下し続けており、29、30両年度の契約時点で把握することができた直近の27、28両年度末時点における借入金平均利率をみると、13年度末時点と比較して大幅に低下していた。一方、この間、委員会は、日本原燃との間で分析建屋等の賃借料の改定に係る協議を行っていなかった。

このように、賃貸借契約の締結に当たり、分析建屋等の賃借料の改定に係る協議を行うべき状況にあったにもかかわらず、その協議を行っていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた賃借料)

委員会が、29、30両年度の賃貸借契約について、契約時点で把握することができた直近の27、28両年度末時点における借入金平均利率を用いて賃借料を見直していたとすれば、賃借料は、29年度2304万余円、30年度2243万余円、計4548万余円となり、前記の賃借料29年度3304万余円、30年度3304万余円、計6609万余円との差額、29年度999万余円、30年度1061万余円、計2060万余円が節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、委員会において、賃貸借契約を開始してから長期間が経過し、その間、金利情勢がほぼ一貫して低下傾向となっていたのに、借入金平均利率を確認するなどして賃借料の改定に係る協議を行うことの必要性についての認識が欠けていたことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、委員会は、31年3月に、オンサイトラボに係る賃貸借契約について日本原燃と賃借料の改定に係る協議を行い、31年度の分析建屋等の賃借料の算定においては、契約時点で把握することができた直近の29年度末時点における借入金平均利率を用いることとし、同年4月に当該利率を用いて算定した金額を賃借料とする賃貸借契約を締結する処置を講じた。また、委員会は、令和元年8月に日本原燃との間で覚書を締結して、今後の分析建屋等の賃借料の算定においても、毎年度、契約時点で把握することができる契約年度の前々年度末時点における借入金平均利率を用いることとする処置を講じた。