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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(5) 飛行場等の周辺等に騒音調査のために設置された騒音自動測定装置等の保守点検業務に係る予定価格の積算に当たり、既往年度における騒音自動測定装置の定期点検等の作業時間の実績に基づき適切に人件費を算出するよう改善させたもの


会計名及び科目
一般会計 (組織)防衛本省 (項)防衛力基盤整備費
(項)在日米軍等駐留関連諸費
部局等
内部部局、8防衛局等
契約名
航空機騒音自動測定装置の保守点検等業務等22件
契約の概要
飛行場等の周辺等に騒音調査のために設置された騒音自動測定装置等の性能維持及び管理を行うために、保守点検業務を請け負わせて実施するもの
契約金額
1億6245万余円(平成29、30両年度)
契約の相手方
2会社
契約
平成29年4月~30年7月 一般競争契約
騒音自動測定装置の保守点検業務に係る人件費の積算額
7850万余円(平成29、30両年度)
低減できた保守点検業務に係る人件費の積算額
2810万円(平成29、30両年度)

1 騒音自動測定装置等に係る保守点検業務等の概要

(1) 騒音自動測定調査等の概要

防衛省は、自衛隊等が使用する飛行場等の周辺における航空機の離陸、着陸等により生ずる音響(以下「航空機騒音」という。)や演習場の周辺における砲撃を主とする射撃、爆撃その他火薬類の使用の頻繁な実施により生ずる音響(以下「砲撃音等」という。)の強度、発生回数、発生時刻等を継続的に測定し、航空機騒音対策及び砲撃音等対策の基礎資料を得るため、「航空機騒音自動測定調査の実施要領について(通知)」(平成25年防地防第5184号)及び「砲撃音等自動測定調査の実施要領について(通知)」(平成24年地防第9974号。以下、これらを合わせて「実施要領」という。)を定めており、地方防衛局等は、実施要領に基づき航空機騒音自動測定調査等を実施することとなっている。また、一部の地方防衛局は、上記の航空機騒音自動測定調査等以外にも、地元からの要請に基づき、騒音自動測定調査を行っている(以下、実施要領に基づく航空機騒音自動測定調査等及び地元からの要請に基づく騒音自動測定調査を合わせて「測定調査」という。)。

そして、測定調査は、調査対象となる飛行場等の周辺等に騒音自動測定装置を設置するなどして実施されており、9防衛局等(注1)は、平成30年度末現在において、全国に騒音自動測定装置を計217台設置している。

(注1)
9防衛局等  北海道、東北、北関東、南関東、近畿中部、中国四国、九州、沖縄各防衛局、東海防衛支局

(2) 騒音自動測定装置等の保守点検業務について

9防衛局等は、毎年度、騒音自動測定装置等の性能維持及び管理を行うために、一般競争入札により決定した業者に騒音自動測定装置等の保守点検業務(以下「保守点検業務」という。)を請け負わせて実施している。保守点検業務の内容は、仕様書によれば、①騒音自動測定装置の保守点検基準に基づき、沖縄防衛局を除く8防衛局等においては年間3回、沖縄防衛局においては年間4回の定期点検を実施すること、②落雷等により騒音自動測定装置に不具合が発生した場合は直ちに対応すること(以下「臨時対応」という。)などとされている。また、業務完了後、業者は、9防衛局等に対して、蓄電池の電圧やマイクロホンの感度等の定期点検結果が記載された定期点検報告書、不具合の状況や修理内容が記載された臨時対応の報告書等を提出することとされている。そして、9防衛局等が29、30両年度に実施した保守点検業務の契約金額は、29年度計8341万余円、30年度計9115万余円、合計1億7457万余円となっている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、保守点検業務の予定価格の積算は適切に行われているか、特に、騒音自動測定装置の定期点検等に係る人件費(以下「人件費」という。)の額は作業時間の実績を考慮したものとなっているかなどに着眼して、9防衛局等が29、30両年度に締結した保守点検業務契約24件(契約金額1億7457万余円)を対象として、防衛省内部部局及び9防衛局等において、契約書、予定価格の積算内訳書、定期点検報告書等の内容を確認するなどして、会計実地検査を行った。

(検査の結果)

9防衛局等は、予定価格の積算に当たり、人件費を29年度計3928万余円、30年度計4325万余円、合計8253万余円と算出していた。そして、それぞれの契約における人件費の額の算出方法について確認したところ、9防衛局等全てにおいて、防衛省の積算基準等に同種の業務の積算単価、歩掛かり等が明示されていないことから、複数の業者から見積書を徴して、見積総額が最も安価な見積書の内容を採用するなどしており、騒音自動測定装置1台当たり年3回又は4回の定期点検の分と、臨時対応の分を合わせたものとなっていた。そして、見積書には人件費の額の算出内訳が明記されていなかったことから、本院において見積書の内容を精査したり、9防衛局等を通して業者に確認したりしたところ、1時間当たりの作業単価は8,700円となっており、これにより騒音自動測定装置1台当たりの年間の作業時間を算出したところ、沖縄防衛局を除く8防衛局等においては20.49時間から31.73時間、沖縄防衛局においては22.87時間から28.58時間となっていた(以下、この方法により算出された作業時間を「見積書等により算出された作業時間」という。)。

しかし、9防衛局等における定期点検の作業時間の実績を確認したところ、5防衛局等(注2)に業者から提出された29、30両年度の定期点検報告書に記載されていた作業時間の実績によれば、騒音自動測定装置1台の1回当たりの作業時間の実績の平均は、騒音自動測定装置間の移動時間等を含めて作業員1名当たり約2時間、作業員2名で計約4時間となっていた。また、残りの4防衛局(注3)に業者から提出された29、30両年度の定期点検報告書には作業時間の実績が記載されていなかったことから、定期点検時に4防衛局の担当者が現場に立ち会った際の作業時間の実績について聞き取り調査を行ったところ、冬期期間に除雪作業を行う場合があるなどの特殊な事情が認められた北海道防衛局を除く3防衛局における作業時間の実績の平均は、上記の5防衛局等における実績とおおむね同様となっていた。

また、北海道防衛局を除く8防衛局等における臨時対応の実績を29、30両年度の臨時対応の報告書等により確認したところ、騒音自動測定装置1台当たりの年間の対応回数は、平均で0.1回程度となっていた。また、臨時対応の報告書には作業時間の実績が記載されていなかったことから、臨時対応時に8防衛局等の担当者が現場に立ち会った際の作業時間の実績について8防衛局等に聞き取り調査を行ったところ、大半は作業員1名で約2時間となっていた。したがって、騒音自動測定装置1台当たり年間1回の臨時対応が行われたとしても、その作業時間は約2時間となる。

これらのことから、上記の8防衛局等のうち沖縄防衛局を除く7防衛局等における作業時間の実績は、定期点検を年3回行うことから約14時間(定期点検約12時間、臨時対応約2時間)と算出され、これを7防衛局等における見積書等により算出された作業時間20.49時間から25.75時間と比較すると、約6.49時間から約11.75時間下回っていた。また、沖縄防衛局における作業時間の実績は、定期点検を年4回行うことから約18時間(定期点検約16時間、臨時対応約2時間)と算出され、これを沖縄防衛局における見積書等により算出された作業時間22.87時間から28.58時間と比較すると、約4.87時間から約10.58時間下回っていた。

このように、見積書等により算出された作業時間は作業時間の実績とかい離しているのに、作業時間の実績に基づくことなく人件費を算出していた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(注2)
5防衛局等  東北、北関東、南関東、九州各防衛局、東海防衛支局
(注3)
4防衛局  北海道、近畿中部、中国四国、沖縄各防衛局

(低減できた積算額)

北海道防衛局を除く8防衛局等の人件費の積算額計7850万余円について、29、30両年度の作業時間の実績(約14時間及び約18時間)を用いて修正計算すると、計5032万余円となり、積算額を約2810万円低減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、地方防衛局等において既往年度における騒音自動測定装置の定期点検等の作業時間の実績に基づき人件費を算出することの必要性についての理解が十分でなかったこと、防衛省内部部局において地方防衛局等における積算の実態を十分把握しておらず、上記の必要性に関する地方防衛局等への周知が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、防衛省内部部局は、令和元年8月に地方防衛局等に対し通知を発して、保守点検業務における騒音自動測定装置の定期点検等の作業時間の実績について定期点検報告書等により把握し、同通知の発出以降契約を締結する保守点検業務の予定価格の積算に当たっては、既往年度における騒音自動測定装置の定期点検等の作業時間の実績に基づき適切に人件費を算出することなどについて周知する処置を講じた。