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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第13 防衛省|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

(7) 輸入調達により調達して納入が複数年度にわたる整備用器材等の重要物品について、分任物品管理官に対して物品管理簿への記録に必要な情報を速やかに示すことにより、物品管理簿に必要な情報を記録するよう改善させたもの


会計名
一般会計
部局等
海上自衛隊補給本部、舞鶴弾薬整備補給所
整備用器材の概要
標準型ミサイルの定期整備において使用する試験装置等の器材
物品管理簿への記録が適正となっていなかった整備用器材の品目数及び取得価格
1品目 90億2837万円(平成30年度末)

1 物品の管理等の概要

(1) 輸入調達による防衛装備品等の調達の概要

防衛省は、防衛装備品及びその修理等の役務(以下、これらを合わせて「防衛装備品等」という。)の調達を行っている。防衛装備品等の調達方法には、防衛装備品等について国内製造会社等から調達する国内調達と外国企業等から直接又は商社等を通じて調達する輸入調達の2種類がある。このうち、輸入調達については、商社等を通じるなどした輸入による調達(以下「一般輸入調達」という。)と、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互防衛援助協定」(昭和29年条約第6号)に基づくアメリカ合衆国政府(以下「合衆国政府」という。)からの有償援助(Foreign Military Sales。以下「FMS」という。)による調達(以下「FMS調達」という。)がある。

FMSは、合衆国政府が武器輸出管理法等のアメリカ合衆国の法令等に従って防衛装備品等を諸外国に提供する取引であり、出荷時期は予定であることなどの合衆国政府から示された条件を受諾することにより防衛装備品等の提供を受けることができるものとなっていることから、納入の完了まで長期間にわたる場合がある。

(2) 誘導弾及びその整備用器材等の概要

海上自衛隊は、FMSにより調達した各種誘導弾を保有し護衛艦に搭載して運用しており、舞鶴、横須賀、佐世保各弾薬整備補給所において、その定期整備を実施している。そして、当該定期整備において使用する誘導弾整備用器材については、通電状況を確認するための導通試験に使用する試験装置、誘導弾の組立に使用する架台、工具類等により構成されており(以下、これらの誘導弾整備用器材を構成する各装置等を「各種器材」という。)、防衛装備庁(平成27年9月30日以前は装備施設本部。以下「装備庁」という。)がFMS等により調達している。

(3) 国における物品の管理等

物品管理法(昭和31年法律第113号)等によれば、国の物品については、各省各庁の長がその所管に属する物品の取得、保管、供用及び処分(以下、これらを合わせて「管理」という。)を行い、各省各庁の長から管理に関する事務の委任を受けた職員が物品管理官として当該事務を行うこととされている。

そして、各省各庁の長は、その所管に属する物品について、供用及び処分の目的に従い分類を設けることとされ、物品管理官又は物品管理官の事務の一部を分掌する分任物品管理官(以下、これらを合わせて「物品管理官等」という。)は、その管理する物品の属すべき分類及び細分類を決定しなければならないこととされている。

また、物品管理官等は、物品管理簿を備えて、その管理する物品の分類、細分類及び品目ごとに、物品の増減等の異動数量、現在高その他物品の異動に関する事項及びその他物品の管理上必要な事項を、それぞれ、各省各庁の長の定めるところにより記録しなければならないこととされており、財務大臣が指定する機械、器具等(注1)(以下「重要物品」という。)については、その取得価格も物品管理簿に記録しなければならないこととされている。

(注1)
財務大臣が指定する機械、器具等  取得価格(取得価格がない場合又は取得価格が明らかでない場合は、見積価格。以下同じ。)が50万円以上の機械、器具等。ただし、防衛省所管防衛用品の分類に属する装備訓練に必要な機械及び器具(普通自動車及び小型自動車を除く。)については、当分の間、取得価格が300万円以上の機械及び器具

物品管理法施行規則(昭和31年大蔵省令第85号)によれば、物品管理官等は、財務大臣の定めるところにより、物品管理簿に記録された価格を改定しなければならないこととされ、「物品管理簿に記録された価格の改定について」(昭和36年蔵計第862号)によれば、物品管理官等は、重要物品について、機械又は器具に他の機械又は器具を連結して一個の機械又は器具として管理することとした場合には、価格を改定することとされている。

そして、各省各庁の長は、重要物品について、毎会計年度末の物品管理簿の記録内容に基づいて、物品増減及び現在額報告書(以下、各省各庁の長が作成する物品増減及び現在額報告書を「物品報告書」という。)を作成し、翌年度の7月31日までに財務大臣に送付しなければならないこととされており、物品報告書に基づいて財務大臣が作成した物品増減及び現在額総計算書により、毎会計年度末における物品の現在額等が、内閣から国会に報告されている。

(4) 海上自衛隊における物品の管理等

海上自衛隊に属する物品の管理については、防衛省所管物品管理取扱規則(平成18年防衛庁訓令第115号)により、海上幕僚長が物品管理官に、弾薬整備補給所長等が分任物品管理官にそれぞれ指定されており、防衛大臣から物品の管理に関する事務が委任されている。

海上自衛隊物品管理補給規則(昭和56年海上自衛隊達第42号)等によれば、分任物品管理官が備える物品管理簿には、価格、性質区分、異動数量、現在高等を記入することとされている。

FMSにより調達された物品の価格については、受領した物品に添付されている出荷証書に記載された米ドル建ての価格を当該物品取得時の支出官レートにより邦貨額に換算した価格を記録することとされている。性質区分については、需給統制機関の長又は補給部隊の長が決定する消耗品、非消耗品又は重要物品の区分を示す記号を記録することとされていて、誘導弾整備用器材については補給本部長が性質区分を決定することになっている。

また、海上自衛隊における物品報告書に関する資料の作成に係る手続は次のとおりとされている。

① 分任物品管理官は、報告対象年度に受払のある重要物品の増減等についての資料を作成し、補給本部長へ送付する。

② 補給本部長は、重要物品の毎会計年度間における増減等を記入した資料である物品増減及び現在額報告総括表及び同内訳表(以下、これらを合わせて「総括書等」という。)を作成して、海上幕僚長に提出する。

③ 海上幕僚長は、総括書等を基に物品報告書に関する資料を作成した上で、防衛大臣に提出する。

そして、海上幕僚長をはじめとした防衛省各機関の物品管理官から提出を受けた上記の資料を基に、防衛大臣は、物品報告書を作成することとされている。

また、補給本部は、分任物品管理官の監督指導に関することなどについての事務を行うこととされている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、防衛省におけるFMSによる防衛装備品等の調達について、30年6月に参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条の規定に基づく検査要請を受け、その検査結果を令和元年10月に会計検査院長から参議院議長に対して報告している(「有償援助(FMS)による防衛装備品等の調達に関する会計検査の結果について」)。そして、当該要請に係る会計検査の一環として、正確性、合規性等の観点から、FMS等により調達した誘導弾整備用器材の物品管理簿への記録は適正に行われているか、重要物品として物品報告書に適正に計上されているかなどに着眼して検査した。検査に当たっては、FMS等により調達した誘導弾整備用器材を対象として、補給本部、舞鶴、横須賀、佐世保各弾薬整備補給所及び装備庁において、契約関係書類、受領検査に係る資料、物品管理簿及び物品報告書に関する資料を確認するなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

舞鶴弾薬整備補給所(以下「舞鶴弾補所」という。)は、FMSにより調達した誘導弾である標準型ミサイルの定期整備を実施しており、当該整備において使用する誘導弾整備用器材(以下、標準型ミサイルの誘導弾整備用器材を「整備用器材」という。)については、装備庁が平成20年度から22年度までの間に締結したFMS調達2ケース(注2)(当初契約金額計35億5827万余円)及び一般輸入調達3契約(当初契約金額計93億3813万余円)により調達していた。

(注2)
ケース  FMS調達における日本及びアメリカ合衆国の両政府の代表者が署名した引合受諾書(Letter of Offer and A㏄eptance(LOA))に基づく個々の契約

上記の2ケース及び3契約により調達した各種器材について、舞鶴弾補所における受領状況を確認したところ、のとおり、24年度から30年度までの間に全ての各種器材(取得価格計91億0871万余円)の納入が完了していた。そして、舞鶴弾補所は受領の都度、各種器材を使用部隊へ供用しており、使用部隊では25年11月以降、一部の各種器材について組立設置等を行った上でこれを使用して標準型ミサイルの整備業務を実施していた。

表 各種器材の受領状況

年度 取得価格(円)
平成24年度 8,086,772,736
(7,807,620,000)
25年度 1,006,021,198
26年度 2,824,699
27年度 427,020
28年度 465,840
29年度
30年度 12,208,000
9,108,719,493
(7,807,620,000)

(注) 括弧書きは一般輸入調達により調達して受領した分であり、内数である。

そこで、受領した各種器材の物品管理簿への記録状況を確認したところ、補給本部は、受領した各種器材により構成される整備用器材全体を1品目の物品として物品管理簿へ記録して管理することにしていた。そして、補給本部は、各種器材は24年度以降順次納入されているものの全ての組立設置等が完了していないこと、また、FMSにより調達した各種器材については各々の性能、品質、用途等の特性や、価格、性質区分等の情報が確定していないことから、整備用器材を物品管理簿に記録することができないと判断し、舞鶴弾補所に対して物品管理簿への記録に必要な情報を示していなかった。

そのため、舞鶴弾補所は、整備用器材全体を1品目の物品として物品管理簿へ記録するのではなく、FMS調達2ケースにより調達して受領した各種器材をまとめて1品目、また、一般輸入調達3契約により調達して受領した各種器材を契約ごとにまとめて3品目として、これら4品目について物品管理簿を作成して記録していた。そして、FMS調達2ケース(取得価格計13億0109万余円)については物品管理簿に受領した際の外装木箱等の数量のみを記録して、価格及び性質区分を記録せず、また一般輸入調達3契約(取得価格計78億0762万円)については物品管理簿に重要物品であることを示す性質区分を記録していなかった。一方、受領した各種器材のうち、試験用ミサイル1品目(取得価格8034万余円)については、他の弾薬整備補給所において整備業務に使用するために管理換を行う必要があったことから、30年9月に個別に物品管理簿を作成して、価格及び重要物品を示す性質区分を記録していた。

その結果、整備用器材は、舞鶴弾補所が補給本部へ送付した重要物品の増減等についての資料に計上されていないことから、30年度の物品報告書には、上記管理換のため物品管理簿に記録されていた1品目を除き、整備用器材1品目(取得価格計90億2837万余円)が計上されていなかった。

しかし、各種器材で構成される整備用器材の取得価格は重要物品として取り扱う際の基準とされている300万円以上であることから、整備用器材は重要物品として管理すべきものであり、また、前記のとおり各種器材の中には組立設置等を行い既に使用部隊において標準型ミサイルの整備業務に使用しているものもある状況となっていた。したがって、管理する物品の現況を明らかにするとともに、紛失等を未然に防止し、その適切な管理を図るためには、舞鶴弾補所において各種器材を受領した後に、速やかに物品管理簿へ価格及び性質区分を記録したり、価格を改定したりできるよう、補給本部は速やかに価格及び性質区分を決定し、当該情報を舞鶴弾補所に対して示す必要があったと認められた。

このように、舞鶴弾補所において受領している整備用器材について、物品管理簿に価格及び性質区分が適正に記録されておらず、その結果、物品報告書が管理する重要物品の現況を反映したものとなっていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、補給本部において、輸入調達により調達してから納入の完了まで長期間にわたる重要物品を分任物品管理官が受領した場合に、これを構成する物品全ての組立設置等が完了していないことなどから物品管理簿へ記録することができないと判断して、分任物品管理官に対して物品管理簿への記録に必要な情報を速やかに示していなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、補給本部は舞鶴弾補所に対して整備用器材の物品管理簿への記録に必要な情報を示し、舞鶴弾補所は、当該情報に基づき令和元年8月に整備用器材を1品目として物品管理簿に価格や重要物品であることを示す性質区分を記録するなどして、整備用器材の物品管理簿の記録内容を適正なものとした。そして、補給本部は同月に整備用器材等を管理する分任物品管理官に対して事務連絡を発して、分任物品管理官は、輸入調達により調達して納入が複数年度にわたる整備用器材等について、出荷証書等の価格や性質区分が確認できる資料を受領した都度、補給本部に対して送付するとともに、補給本部が当該資料に基づき速やかに決定して示した価格及び性質区分に基づき、物品管理簿に必要な情報を記録するよう周知徹底する処置を講じた。