航空自衛隊は、航空自衛隊物品管理補給規則(昭和43年航空自衛隊達第35号)及び航空自衛隊物品管理補給手続(平成25年補給本部長制定。以下、これらを合わせて「補給規則等」という。)に基づき、物品を装備品と装備品以外に大別して管理している。そして、装備品には、主要装備品と、主要装備品を支援したり補助したりする支援装備品等があり、装備品以外の物品には、装備品の構成品であり、交換等の目的で取得する補用部品等がある。
補給規則等によれば、装備品の部隊等への配分は、原則として、航空自衛隊補給本部(以下「補給本部」という。)等が基地及び分屯基地(以下「基地等」という。)に所在する部隊等ごとに定める装備定数(注1)を充足するように、補給本部が作成する補給計画によることなどとされている。また、部隊等は、装備定数の範囲外の装備品(以下「定数外品」という。)を原則として保有することができないこととされており、自隊に対して定められた装備定数を増加又は削減する必要があると認めた場合は補給本部等に対して申請することとされている。
そして、補給本部等は、装備定数を定めるに当たり、原則として、実際に使用することなく、在庫として保有する装備品の数(以下「予備」という。)を含めないことにしている。
一方、補給規則等によれば、補用部品の配分については、基地等の分任物品管理官において必要とする数量を航空自衛隊の補給処に請求することなどによるとされており、配分された補用部品については、原則として基地等の分任物品管理官が管理することとされている。
航空自衛隊は、我が国とその周辺の上空の警戒監視や航空管制を行うために、航空機と交信するための主要装備品である対空無線機を地上に設置して使用している。
そして、任務の性質上対空無線機を常時運用する必要がある警戒管制任務及び航空管制任務を行う部隊(以下「警戒隊等」という。)では、対空無線機を落雷から保護するために避雷器に接続して使用することにしており、航空自衛隊第3補給処(以下「第3補給処」という。)が警戒隊等の保有する対空無線機に対応した型式の避雷器を取得し、警戒隊等に配分している。
避雷器は、平成26年度までは補用部品として管理されていたが、27年度以降は支援装備品として管理されており、令和元年6月1日時点で46警戒隊等(注2)に計2,404個(物品管理簿価格計3億3178万余円)が配分されている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
本院は、合規性、効率性、有効性等の観点から避雷器は警戒隊等に適時適切に配分され、有効に活用されているかなどに着眼して上記の避雷器計2,404個を対象として検査した。検査に当たっては、17警戒隊等(注3)において避雷器の使用状況等を実地に確認したり、補給本部から上記の17警戒隊等を含む46警戒隊等における避雷器の使用状況等に関する調書の提出を受けて、補給本部及び第3補給処においてその内容を確認したりするなどして会計実地検査を行った。
(検査の結果)
17警戒隊等に対する会計実地検査において、避雷器の使用状況等を確認したところ、一部の警戒隊等で実際に対空無線機に接続して使用している数量よりも多くの避雷器を保有していた事態が見受けられた。
そこで、46警戒隊等について、補給本部から、元年6月1日時点の避雷器計2,404個の使用状況等に関する調書の提出を受けて、その内容を確認したところ、25警戒隊等(注4)において、装備定数に予備が含まれていたり、定数外品を保有していたりしていて、避雷器計237個(物品管理簿価格計3803万余円)が実際に対空無線機に接続して使用されている数量よりも多く保有されている事態が見受けられた。その一方で、会計実地検査において、必要な避雷器が配分されておらず保有していない警戒隊等が見受けられた。
しかし、上記のとおり、一部の警戒隊等において、実際に対空無線機に接続して使用している数量よりも多くの避雷器を保有し又は必要な避雷器を保有していなかったにもかかわらず、装備定数の削減又は増加を補給本部に対して申請するなどの手続をとっていなかったことから、補給本部において、装備定数の見直しを適切に行えなかった。このため、第3補給処において、警戒隊等に再配分できる状況になっていなかった。
このように、避雷器が適時適切に再配分できる状況になっておらず、有効に活用されていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、支援装備品である避雷器について、警戒隊等において、定数外品を原則として保有できないこと、及び自隊に対して定められた装備定数を増加又は削減する必要があると認めた場合は補給本部に対して申請することについての理解が十分でなかったこと、補給本部において、原則として装備定数に予備を含めないことなどについての警戒隊等に対する周知が十分でなかったことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、補給本部は、平成31年3月に、基地等の分任物品管理官等を通じて、警戒隊等に対して、支援装備品である避雷器については、使用している数量と装備定数が同数となるよう増加又は削減の申請をすること、原則として装備定数に予備を含めないことなどを周知徹底するとともに、令和元年8月までに、実際に対空無線機に接続して使用されている数量よりも多く保有されている避雷器計237個について、上記の申請に基づき、避雷器を必要としている警戒隊等に再配分したり、残りの避雷器については、故障等発生時の代替品として補給処で管理させたりするための計画を第3補給処に作成させ、装備定数を変更して避雷器が有効に活用されるよう処置を講じた。