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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • (第2 内閣府(内閣府本府)、第3 総務省)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

中活ソフト特別交付税が過大に交付されている事態について、総務省において減額調整を行うよう適宜の処置を要求し、及び中活ソフト事業に係る一般財源所要額として認められない経費を明確に示すなどするよう是正改善の処置を求めるとともに、内閣府において総務省と連携して申請マニュアルを見直すなどするよう改善の処置を要求し、中活ソフト特別交付税の減額調整が行われていない事態について、総務省において中活ソフト事業に実際に要した経費について都道府県及び市町村に対して報告を求めるなどして把握し、減額調整を行う必要性について検討するよう改善の処置を要求したもの


所管、会計名及び科目
内閣府、総務省及び財務省所管
交付税及び譲与税配付金特別会計 (項)地方交付税交付金
部局等
内閣府本府、総務本省
交付の根拠
中心市街地の活性化に関する法律(平成10年法律第92号)、地方交付税法(昭和25年法律第211号)
中活ソフト特別交付税の概要
市町村が中心市街地活性化のために実施するソフト事業に要する経費の一部について、中心市街地の活性化に関する法律等に基づく特例措置として交付している特別交付税
中活ソフト特別交付税の交付先、算定の対象となった事業数及び交付額
60市 1,332事業 77億8143万余円(平成26年度~29年度)
中活ソフト事業に該当しない事業を中活ソフト特別交付税の算定の対象とするなどしていて過大に交付されている中活ソフト特別交付税の交付先、事業数及び交付額(1)
47市 387事業 13億5049万円(平成26年度~29年度)
中活ソフト事業に実際に要した経費が報告額を著しく下回っているのに減額調整が行われていない中活ソフト特別交付税の交付先、事業数及び交付額(2)
30市 100事業 2億1516万円(平成26年度~29年度)
(1)及び(2)の純計
56市 487事業 15億6565万円

【適宜の処置を要求し及び是正改善の処置を求め並びに改善の処置を要求したものの全文】

中心市街地活性化のために実施するソフト事業を対象とした特別交付税の算定等について

(令和元年10月24日付け
内閣総理大臣
総務大臣
宛て)

標記について、下記のとおり、会計検査院法第34条の規定により是正の処置を要求し及び是正改善の処置を求め、並びに同法第36条の規定により改善の処置を要求する。

1 中心市街地活性化のために実施するソフト事業を対象とした特別交付税の概要

(1) 中心市街地活性化法に基づく基本計画の認定等の概要

ア 中心市街地活性化法に基づく基本計画の認定

中心市街地の活性化に関する法律(平成10年法律第92号。以下「中心市街地活性化法」という。)によれば、市町村は、「中心市街地の活性化を図るための基本的な方針」(平成18年9月閣議決定。以下「基本方針」という。)に基づき、当該市町村の区域内の中心市街地について、中心市街地の活性化に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための基本計画(以下「基本計画」という。)を作成し、内閣総理大臣の認定を申請することができることとされており、基本計画には、中心市街地の位置や区域のほか、計画期間等を定めるものとされている。そして、内閣総理大臣は、市町村から認定の申請があった場合、基本計画の内容が、基本方針に適合するものであることなどの基準(以下「認定基準」という。)に適合すると認めるときは、当該基本計画の認定をすることとされている(以下、認定を受けた基本計画を「認定基本計画」という。)。

また、内閣府は、中心市街地の活性化に関する施策で重要なものの企画及び立案並びに総合調整に関する事務等を処理することになっており、基本計画の内容を認定基準に照らして審査するとともに、各府省の縦割りを排し、ワンストップで施策を推進するために、基本計画の作成から認定基本計画の実施までを一元的に支援している。

イ 基本計画の認定と連携した支援措置

基本方針によれば、国は、中心市街地の活性化を効果的かつ効率的に推進するために、認定基本計画に基づく取組に対して、重点的な支援を実施することとされている。そして、その支援を実施するに当たり、基本計画の認定と連携した支援措置の創設に努めることとされており、基本計画の認定を支援の対象の要件とするなどの措置(以下「特例措置」という。)が設けられている。

また、基本方針及び「中心市街地活性化基本計画認定申請マニュアル」(内閣府地方創生推進事務局作成。以下「申請マニュアル」という。)によると、市町村は、特例措置を活用しようとする場合には、特例措置を活用する取組について基本計画に記載することなどが必要とされている。そして、内閣総理大臣は、基本計画の認定に当たり、中心市街地活性化法に基づいて、関係行政機関の長の同意を得なければならないこととされており、関係行政機関である各特例措置を所管する省は、同意に当たり所管する法令等への適合性等の観点から特例措置を活用する取組の内容について確認を行うなどしている(以下、関係行政機関における確認と内閣府における審査とを合わせて「認定審査」という。)。

(2) 中活ソフト特別交付税の概要

ア 特別交付税の概要

総務省は、地方交付税法(昭和25年法律第211号。以下「交付税法」という。)に基づき、地方団体(注1)の財源の均衡化を図り、交付基準の設定を通じて地方行政の計画的な運営を保障することにより、地方団体の独立性を強化することを目的として、地方交付税交付金(以下「地方交付税」という。)を交付している。地方交付税には、普通交付税及び特別交付税があり、このうち、特別交付税は、普通交付税の算定方法によっては捕捉されなかった特別の財政需要があることなどにより、普通交付税の額が財政需要に比して過少であると認められる地方団体に交付されている。

(注1)
地方団体  交付税法上の概念で、都道府県及び市町村をいう。

イ 中活ソフト特別交付税の算定対象等

総務省は、市町村が中心市街地活性化のために実施するイベント事業等のソフト事業に要する経費を対象として、中心市街地活性化法等に基づく特例措置として、特別交付税(以下「中活ソフト特別交付税」という。)を交付している。

総務省が毎年度発出している「中心市街地再活性化対策のために実施するイベント等のソフト事業の実施状況について」(以下「中活ソフト通知」という。)によれば、中活ソフト特別交付税の算定の対象となる事業(以下「中活ソフト事業」という。)は、認定基本計画に位置付けられたソフト事業であることとされている。そして、前記のとおり、特例措置を活用しようとする場合には、基本計画に特例措置を活用する取組について記載することが必要とされていることから、市町村が特例措置として中活ソフト特別交付税の交付を受けようとする事業については、中活ソフト事業として基本計画に位置付けて内閣総理大臣の認定を受ける必要があり、中活ソフト事業として実施する旨を明記した中活ソフト特別交付税を活用する取組を記載しなければならないこととなっている。また、中活ソフト事業は、中活ソフト事業を実施するために市町村が負担する経費(以下「一般財源所要額」という。)が100万円を超える事業であること、国から交付される国庫補助金等(以下「補助金等」という。)を伴う事業は該当しないことなどとされている。さらに、一般財源所要額の算定に当たっては、国以外の公的機関から交付を受ける助成金等は、事業費から控除することとなっている。

そして、特別交付税に関する省令(昭和51年自治省令第35号。以下「省令」という。)によれば、中活ソフト特別交付税は、中活ソフト事業に要する経費のうち、特別交付税の算定の基礎とすべきものとして総務大臣が調査した額に0.5を乗じて得た額を市町村に交付することとされている。

ウ 中活ソフト特別交付税の算定等の手続

中活ソフト特別交付税の算定等の手続は、おおむね次のとおりとなっている。

① 総務省は、毎年度8月に、都道府県を通じて市町村に対して中活ソフト通知を発して、中活ソフト事業の範囲、一般財源所要額に基づく財政需要を把握するための基礎資料の様式及びその記載要領を示す。

② 市町村は、予算額に基づく見込額等を記載した基礎資料を、認定基本計画のうち中活ソフト事業として実施する旨が明記された箇所の写しなどとともに、都道府県に提出する(以下、これらの資料を「算定資料等」という。)。算定資料等は、一般的に、市町村において特別交付税に関する業務を担当する課が、中心市街地活性化に係る事業を担当する関係部局を統括して基本計画の作成や認定の申請等の業務を行う課や中活ソフト事業の実施を担当する課に対して、認定基本計画や中活ソフト事業の内容等を必要に応じて照会するなどして作成している。

③ 都道府県は、算定資料等の審査を行い、毎年度9月に総務省に対して送付する(以下、都道府県の審査を経て総務省に送付された算定資料等における一般財源所要額を「報告額」という。)。

④ 総務省は、都道府県の審査を経て送付された算定資料等の内容を確認し、報告額をもって特別交付税の算定の基礎とすべきものとして総務大臣が調査した額として中活ソフト特別交付税の額を算定して決定し、毎年度12月に市町村に交付する。

エ 総務省及び都道府県による交付税検査

総務省及び都道府県は、交付税法に基づき、地方交付税の算定の正確性を確保して、その配分の公正を期することを目的として、地方交付税の交付後に、地方交付税の算定に用いた資料に関する検査(以下「交付税検査」という。)を行うことになっている。

オ 特別交付税に係る減額調整

省令によれば、前年度以前の算定額について、必要な経費の見込額等により算定した額が実際に要した経費を著しく上回ったことなどにより特別交付税の額が過大に算定されたと認められるときは、当該年度の特別交付税の算定額から総務大臣が調査した額を控除(以下「減額調整」という。)することとされている。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、合規性、経済性等の観点から、中活ソフト特別交付税が適切に算定されているか、中活ソフト事業に実際に要した経費と中活ソフト特別交付税の算定の基礎となる報告額とがかい離して著しい開差が生じていないかなどに着眼して、24道県(注2)及び管内の60市において、平成26年度から29年度までの間に1,332事業を算定の対象として交付された中活ソフト特別交付税計77億8143万余円を対象として、認定基本計画、算定資料等、中活ソフト事業に係る予算決算関係資料等を確認するなどして会計実地検査を行った。そして、内閣府本府及び総務本省において認定審査の方法等について、総務本省において中活ソフト特別交付税の算定方法等についてそれぞれ聴取するなどして会計実地検査を行った。

(注2)
24道県  北海道、青森、山形、茨城、栃木、群馬、埼玉、新潟、富山、石川、福井、長野、静岡、愛知、滋賀、兵庫、島根、山口、香川、愛媛、高知、福岡、長崎、宮崎各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 中活ソフト事業に該当しない事業を中活ソフト特別交付税の算定の対象とするなどしていて中活ソフト特別交付税が過大に交付されている事態

申請マニュアルについてみると、内閣府は、市町村が中活ソフト特別交付税の交付を受けようとする事業について、中活ソフト事業として基本計画に位置付けて認定を受けなければならないことや中活ソフト事業として基本計画に位置付けるための記載方法を具体的に示していなかった。また、中活ソフト通知についてみると、総務省は、中活ソフト事業は認定基本計画に中活ソフト事業として位置付けられたものでなければならないことや一般財源所要額として認められない経費を確実に事業費から控除することなどについて明確に示していなかった。

そこで、前記60市の認定基本計画及び算定資料等をみたところ、39市の285事業については、認定基本計画に中活ソフト事業として位置付けられておらず、当該事業を中活ソフト事業として実施することについて関係行政機関の長である総務大臣の同意が得られていないことから、中活ソフト事業に該当しないものであったのに中活ソフト事業として算定資料等が作成されていた。

また、12市の47事業については、認定基本計画の計画期間外に実施されていたり、補助金等の交付を受けて実施することとされていたり、一般財源所要額が100万円以下の事業として実施することとされていたりしていて中活ソフト事業に該当しないのに、中活ソフト事業として算定資料等が作成されていた。

さらに、21市の85事業については、中活ソフト事業には該当するものの、一般財源所要額の算定に当たり、国以外の公的機関から交付の決定を受けた助成金の額等が事業費から控除されずに算定資料等が作成されていた。

そして、算定資料等についての道県の審査及び総務省の確認の際には、これらの事態が見過ごされるなどしていた。このため、47市の387事業に係る中活ソフト特別交付税計13億5049万余円が過大に交付されていた(市数、事業数及び中活ソフト特別交付税交付額は純計である。表参照)。

表 中活ソフト特別交付税に係る事態別過大交付額

道県名 ア 認定基本計画に中活ソフト事業として位置付けられておらず、当該事業を中活ソフト事業として実施することについて関係行政機関の長である総務大臣の同意が得られていないもの イ 中活ソフト事業に該当しないのに、中活ソフト事業としていたもの ウ 中活ソフト事業には該当するものの、一般財源所要額の算定に当たり、国以外の公的機関から交付の決定を受けた助成金の額等が事業費から控除されていなかったもの ア、イ及びウの計
(純計)
  うち認定基本計画の計画期間外に実施されていたもの うち補助金等の交付を受けて実施することとされていたもの うち一般財源所要額が100万円以下の事業として実施することとされていたもの
市数 事業数 特別交付税交付額
(千円)
市数 事業数 特別交付税交付額
(千円)
市数 事業数 特別交付税交付額
(千円)
市数 事業数 特別交付税交付額
(千円)
市数 事業数 特別交付税交付額
(千円)
市数 事業数 特別交付税交付額
(千円)
市数 事業数 特別交付税交付額
(千円)
北海道 4 25 87,420 1 2 3,850 0 0 1 2 3,850 0 0 1 1 164 4 25 87,420
青森県 3 21 54,628 2 5 15,608 1 2 9,425 1 3 6,183 0 0 0 0 3 21 54,628
山形県 2 31 162,649 1 8 11,959 0 0 1 2 11,299 1 6 660 1 1 1,500 2 35 163,189
茨城県 2 9 23,715 0 0 0 0 0 0 0 0 3 15 43,813 3 21 65,200
栃木県 1 2 6,000 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 6,000
群馬県 1 3 13,220 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 3 13,220
埼玉県 1 2 2,400 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 2,400
新潟県 2 62 426,363 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 5,250 2 63 431,613
富山県 1 14 101,717 1 21 6,351 0 0 0 0 1 21 6,351 2 17 7,511 2 50 115,401
石川県 1 3 3,387 0 0 0 0 0 0 0 0 1 17 43,030 1 20 46,417
福井県 1 4 6,600 0 0 0 0 0 0 0 0 1 8 16,955 1 12 23,555
長野県 2 9 37,708 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 2 9 37,708
静岡県 0 0 1 3 2,118 0 0 1 3 2,118 0 0 1 2 2,000 2 5 4,118
愛知県 1 5 9,096 1 1 1,350 0 0 1 1 1,350 0 0 1 1 1,439 1 5 9,096
滋賀県 3 11 36,982 0 0 0 0 0 0 0 0 2 8 3,984 3 17 40,158
兵庫県 5 36 81,091 2 3 1,350 0 0 0 0 2 3 1,350 1 5 8,273 5 39 86,564
山口県 3 11 53,830 2 2 1,715 1 1 1,215 0 0 1 1 500 0 0 4 13 55,545
香川県 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 425 1 1 425
愛媛県 0 0 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 500 1 1 500
高知県 1 11 18,880 0 0 0 0 0 0 0 0 1 3 4,359 1 14 23,239
福岡県 2 19 72,797 1 2 10,900 0 0 1 2 10,900 0 0 1 1 4,300 2 19 72,797
長崎県 2 4 4,542 0 0 0 0 0 0 0 0 1 2 1,410 3 6 5,952
宮崎県 1 3 4,600 0 0 0 0 0 0 0 0 1 1 750 1 4 5,350
39 285 1,207,625 12 47 55,201 2 3 10,640 6 13 35,700 5 31 8,861 21 85 145,663 47 387 1,350,495
  • 注(1) ア及びイ並びにア及びウの事態には、重複しているものがある。
  • 注(2) イの市数並びに道県ごとの市数、事業数及び特別交付税交付額の計は、純計である。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

北海道函館市は、中心市街地の空き店舗を活用して出店する中小企業者等に対して経費の一部を助成する「中心市街地出店促進事業」(報告額計770万円)を実施することとし、当該事業を中活ソフト事業として算定資料等を作成して、平成27、28両年度に中活ソフト特別交付税計385万円の交付を受けていた。

しかし、同市は、当該事業について、特例措置として国土交通省が所管する社会資本整備総合交付金を活用する取組を基本計画に記載して認定を受ける一方で、中活ソフト事業として位置付けていなかった。また、当該事業は算定資料等を作成する時点で既に同交付金の交付決定を受けており、算定資料等には、財源の一部に補助金等を活用することが分かる記載があったのに、算定資料等についての北海道の審査及び総務省の確認の際には、それらのことが見過ごされていた。このため、中活ソフト特別交付税計385万円が過大に交付されていた。

(2) 中活ソフト事業に実際に要した経費が報告額を著しく下回っているのに減額調整が行われていない事態

前記のとおり、市町村から都道府県を通じて総務省に送付される算定資料等における報告額は、予算額に基づく見込額等となっている。

検査を実施した24道県の60市において26年度から29年度までの間に中活ソフト特別交付税の算定の対象となった1,332事業から(1)に該当する47市の387事業を除いた51市の945事業のうち、予算決算関係資料において事業費等を確認することができた51市の797事業について、各市が中活ソフト事業に実際に要した経費と報告額とを比較したところ、45市の422事業については、算定資料等を作成した際に想定していた事業規模を見直して縮小したことなどにより、実際に要した経費が報告額を下回っていた(報告額と実際に要した経費の差額7億0840万余円)。このうち30市の100事業では、実際に要した経費が報告額の3分の2以下となっており、当該100事業の中には、事業が実施されていないなどのために、実際に要した経費が0円となっている事業も見受けられた。

しかし、前記のとおり、減額調整に係る規定が省令に設けられているものの、総務省は、中活ソフト特別交付税について道県及び市に対して実際に要した経費の報告を求めることとしておらず、実際に要した経費が報告額を著しく下回っている上記の事態を把握していなかった。

このため、前記の30市の100事業について、報告額と実際に要した経費との差額4億3103万余円に係る中活ソフト特別交付税2億1516万余円(うち実際に要した経費が0円となっている8市12事業に係る中活ソフト特別交付税2005万円)については、中活ソフト特別交付税が過大に算定されたことになると認められるのに、減額調整が行われないままとなっていた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例2>

滋賀県長浜市は、中心市街地の空き店舗を活用して新規に出店する事業者等に対して助成を行う「空き店舗対策事業」(報告額計700万円)を中活ソフト事業として実施することとして、平成26、27両年度に中活ソフト特別交付税計350万円の交付を受けていた。

しかし、同市において、当該事業を利用して新規に出店しようとする事業者等を募集したところ希望者がいなかったことから、当該事業は実施されず、実際に要した経費は0円となっていた。そして、総務省は、滋賀県及び長浜市に対して実際に要した経費について報告を求めていないことから、このような事態について把握していなかった。

このため、中活ソフト特別交付税計350万円は過大に算定されたことになると認められるのに、減額調整が行われないままとなっていた。

(3) 交付税検査が実質的に行われていない事態

前記のとおり、総務省及び都道府県は、交付税法に基づき、交付税検査を行うことになっているが、中活ソフト特別交付税については、総務省が具体的な検査項目や確認事項等を示した検査要領等を定めていないことなどから実質的に検査が行われていない状況であり、総務省及び道県は、(1)及び(2)の事態を把握していなかった。

(是正及び是正改善並びに改善を必要とする事態)

中活ソフト事業に該当しない事業を中活ソフト特別交付税の算定の対象とするなどしていて中活ソフト特別交付税が過大に交付されている事態は適切ではなく、総務省において是正及び是正改善を図り、内閣府において改善を図る要があると認められる。また、地方交付税は、各地方団体における財政需要に応じて交付されるものであり、支出の実績等を用いて交付しなければならないものではないことを考慮しても、中活ソフト事業に実際に要した経費が報告額を著しく下回っているのに減額調整が行われていない事態は適切ではなく、総務省において改善を図る要があると認められる。さらに、交付税検査が実質的に行われていない事態は適切ではなく、総務省において是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、市及び道県において、中活ソフト事業についての理解が十分でなかったこと、また、市において、関係部局間の連携が十分でなかったことなどにもよるが、主として次のことなどによると認められる。

  • ア 中活ソフト特別交付税が過大に交付されている事態については、内閣府において、市に対して、基本計画については総務省と事前に内容を調整するなどして適切に作成すること、中活ソフト特別交付税の交付を受けようとする事業については中活ソフト事業として基本計画に位置付けて認定を受けることなどについての周知徹底が十分でないことや、市町村が、中活ソフト特別交付税の交付を受けようとする事業について基本計画に中活ソフト事業として位置付けるための記載方法を具体的に示していないこと、
    また、総務省において、算定資料等の内容の確認が十分でないこと、また、市に対して、算定資料等の作成を適切に行うこと、及び道県に対して、算定資料等の審査を適切に行うことについての周知徹底が十分でないこと
  • イ 減額調整が行われていない事態については、総務省において、道県及び市に対して中活ソフト事業に実際に要した経費について報告を求めるなどして把握していないこと
  • ウ 交付税検査が実質的に行われていない事態については、総務省において、交付税検査に関して、中活ソフト特別交付税についての具体的な検査項目や確認事項等を示した検査要領等を定めていないこと

3 本院が要求する是正の処置及び求める是正改善の処置並びに要求する改善の処置

中活ソフト特別交付税は、中心市街地の活性化に取り組む市町村において幅広く活用されている。

ついては、中活ソフト事業に該当しない事業を中活ソフト特別交付税の算定の対象とするなどしていて中活ソフト特別交付税が過大に交付されている事態について総務省において速やかに減額調整を行うよう是正の処置を要求するとともに、次のとおり、是正改善の処置を求め、及び改善の処置を要求する。

  • ア 内閣府において、①市町村に対して、基本計画については総務省と事前に内容を調整するなどして適切に作成すること、中活ソフト特別交付税の交付を受けようとする事業については中活ソフト事業として基本計画に位置付けて認定を受けることなどについて周知徹底すること、②市町村が、中活ソフト特別交付税の交付を受けようとする事業について中活ソフト事業として基本計画に適切に位置付けることができるよう総務省と連携して申請マニュアルを見直すなどすること(会計検査院法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)
    また、総務省において、算定資料等の内容の確認を適切に行えるようにするとともに、市町村に対して、算定誤りの事例や中活ソフト事業に係る一般財源所要額として認められない経費を明確に示して、算定資料等の作成を適切に行うよう、また、都道府県に対して、算定資料等の審査を適切に行うよう周知徹底すること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)
  • イ 総務省において、都道府県及び市町村に対して中活ソフト事業に実際に要した経費について報告を求めるなどして把握し、減額調整を行う必要性について検討すること(同法第36条の規定により改善の処置を要求するもの)
  • ウ 総務省において、交付税検査が適切に行われるよう中活ソフト特別交付税についての具体的な検査項目や確認事項等を示した検査要領等を定めること(同法第34条の規定により是正改善の処置を求めるもの)