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私立大学等経常費補助金の経理が不当と認められるもの[日本私立学校振興・共済事業団](235)―(246)


科目
(助成勘定)補助金経理 (項)交付補助金
部局等
日本私立学校振興・共済事業団
補助の根拠
私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)
事業主体
12学校法人
補助の対象
私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費
上記に対する事業団の補助金交付額
11,894,488,000円(平成25年度~29年度)
不当と認める事業団の補助金交付額
278,401,000円(平成25年度~29年度)

1 補助金の概要

(1) 補助金交付の目的

日本私立学校振興・共済事業団(以下「事業団」という。)は、私立学校振興助成法(昭和50年法律第61号)に基づき、国の補助金を財源として、私立大学等(注)を設置する学校法人に私立大学等経常費補助金(以下「補助金」という。)を交付している。補助金は、私立大学等の教育条件の維持及び向上並びに学生の修学上の経済的負担の軽減を図るとともに私立大学等の経営の健全性を高め、もって私立大学等の健全な発達に資することを目的として、私立大学等における専任教職員の給与等教育又は研究に要する経常的経費に充てるために交付されるものである。

(注)
私立大学等  私立の大学、短期大学及び高等専門学校

(2) 補助金の額の算定

事業団は、私立大学等経常費補助金交付要綱(昭和52年文部大臣裁定)等に基づき、補助金の額を算定する資料(以下「算定資料」という。)として、各学校法人に補助金交付申請書とともに次の資料等を提出させている。

  • ア 申請年度の5月1日現在の専任教員等の数、専任職員数及び学生数に関する資料
  • イ 学校法人会計基準(昭和46年文部省令第18号)に基づき作成した前年度決算の学生納付金収入、教育研究経費支出、設備関係支出等に関する資料

そして、事業団は、算定資料に基づき、私立大学等経常費補助金配分基準(平成10年日本私立学校振興・共済事業団理事長裁定)に定める方法により、補助金の額を算定している。

(3) 一般補助

事業団は、次のアからウまでの方法により、私立大学等における経常的経費に対する一般補助の額を算定することとなっている。

ア 経常的経費を専任教員等給与費、専任職員給与費、教育研究経常費等の経費に区分して、経費区分ごとに専任教員等の数、専任職員数、学生数、教育研究補助者の数、障害のある学生に対する具体的配慮の取組数等に所定の補助単価を乗ずるなどして補助金の基準額を算定する。

そして、上記のうち学生数については、補助金申請年度の5月1日現在の学則で定めた収容定員(在学している学生の数が当該収容定員に満たない場合には、在学している学生の数)とするとされ、通信教育部等及び通信教育を行う修士課程及び博士課程の学生にあっては、補助金申請年度の5月分の学費を当該年度の5月1日までに納付した者であることが補助金の算定対象となる要件となっている。また、教育研究補助者の数については、ポスト・ドクター、研究支援者、リサーチ・アシスタント及びティーチング・アシスタントの4区分ごとに、職務内容、資格、従事期間等の要件が定められている。このうち、ティーチング・アシスタントの要件は、私立大学の修士課程の学生や学部学生に対する実験、実習、演習等の教育的補助業務に従事する者で、私立大学の大学院研究科に在籍している学生であり、補助金申請年度の教育的補助業務に15時間以上従事する者となっている。このほか、障害のある学生に対する具体的配慮の取組数については、「授業等の支援の実施」、「教員に対する配慮事項の周知及び徹底」等の八つの取組内容について、いずれかの取組内容を補助金申請年度において、9月30日現在で既に行っている、又は、9月30日現在で行うことが確実であることが要件となっている。

イ 各私立大学等の教育研究条件の整備状況等を勘案して、補助金の重点的な配分を行うために、収容定員に対する在籍学生数の割合、専任教員等の数に対する在籍学生数の割合、学生納付金収入に対する教育研究経費支出と設備関係支出との合計額の割合等に基づいて増減率を算定する。

ウ アで算定した経費区分ごとの基準額に、イで算定した増減率を乗ずるなどの方法により得られた金額を合計して、一般補助の額とする。

(4) 特別補助

上記のほか、私立大学における学術の振興及び私立大学等における特定の分野、課程等に係る教育の振興のために特に必要があると認められるときは、補助金を増額して交付すること(以下「特別補助」という。)ができることとなっている。

特別補助の対象となる項目には以下の項目等があり、これらについて、事業団は、算定資料を各学校法人から提出させて、次のアからキまでのように、その額を算定することとなっている。

ア 「海外からの学生の受入れ」については、外国人留学生(以下「留学生」という。)の受入体制の整備、修学支援、就職支援等のいずれかを実施している私立大学等で、次の①及び②に該当することが確認できる留学生、又は外国の大学等との間で締結した協定に基づいた協定校(我が国における大学、短期大学若しくは高等専門学校に相当する学校又はその附置研究所)からの招致学生を受け入れている私立大学等に対して、受入学生数に所定の単価を乗じて得た額を増額する。

  • ① 留学生は、補助金申請年度の5月1日現在で、出入国管理及び難民認定法(昭和26年政令第319号)に定める「留学」の在留資格を保有している者、又は過去6か月の間に「留学」の在留資格を保有していた者で、補助金申請年度の5月1日現在で当該資格の在留期間更新許可申請を行っており、その後在留期間の更新が認められた者
  • ② 補助金申請年度の5月1日現在で、私立大学等の正規課程(学部等及び研究科)又は留学生別科に在籍する者。ただし、補助金申請年度の5月1日現在で、休学中の者の休学期間が継続して1年以上となることが明らかな者や履修登録していない者の未登録期間が継続して1年以上となることが明らかな者は除く。

イ 「留学生に対する授業料減免」については、経済的に修学困難なアの①及び②に該当する留学生を対象とした授業料減免等の給付事業を、選考方法、選考基準等が明記された規程等に基づき実施している私立大学等に対して、授業料減免等の対象者数に所定の単価を乗じた額に、当該私立大学等の授業料減免等の対象者に係る平均の授業料減免率を乗じて得た額を増額する。

ウ 「授業料減免事業等支援」については、経済的に修学困難な学生(留学生を除く。)に対し、次の①から③までの全てに該当する入学料・授業料減免等の給付事業又は次の①及び②に該当する利子負担事業を実施している私立大学等に対して、当該事業に係る所要経費の2分の1以内の額を増額する。

  • ① 経済的に修学困難な学生の授業料等減免等に係る選考基準を明記した規程等が整備されていること
  • ② 学内において、選考委員会等が設置されていること
  • ③ 家計基準(給与所得者841万円以下、給与所得者以外355万円以下)に該当する学生に対する事業であること。また、この家計基準とは、主たる家計支持者(学生本人の父母又はこれに代わって家計を支えている者をいう。)の収入金額で、給与所得者は源泉徴収票の支払金額とし、給与所得者以外は確定申告書等の所得金額とする。

エ 「研究施設運営支援」については、大学院等の機能の高度化を促進するため、専任の教員が配属されているなど複数の要件に該当する組織上独立した研究施設を設置している私立大学等に対して、当該研究施設における所要経費の額に応じて定められた額を増額する。ただし、研究活動の遂行に当たり収入が発生した場合は、その額を所要経費の額から除く。

オ 「社会人の組織的な受入れ」に係る「正規学生としての受入れ」については、補助金申請年度の4月1日現在で25歳以上の者等の要件に該当する社会人学生を正規課程に受け入れている私立大学等を対象に、学部等と通信教育学部等の社会人学生数にそれぞれ所定の単価を乗じた額を算出し、合計額を増額する。ただし、通信教育学部等の学生にあっては、補助金申請年度の5月分の学費を当該年度の5月1日までに納付した者に限る。

カ 「学内ワークスタディ事業支援」については、経済的事情により修学困難な学生に対する支援の一環として、学内における教育支援活動や自身の社会性向上に資する活動に従事する正規課程の学生を対象(大学院研究科に在籍している学生は対象外)に、一定の要件に該当する経済的な支援活動(授業料減免事業及び利子負担事業は除く。)を実施している私立大学等に対して、当該事業に係る所要経費の額を増額する。

キ 「私立大学等経営強化集中支援事業」(以下「経営強化集中支援事業」という。)については、各私立大学等が取組の実施状況を私立大学等経営強化集中支援事業調査票(以下「経営強化集中支援事業調査票」という。)に記載し、これに基づき算定した点数に応じて、定められた額を増額する。

(5) 私立大学等改革総合支援事業の支援対象校に対する補助金の増額

平成25年度以降、事業団及び文部科学省は、教育の質的転換、地域発展、産業界・国内外の大学等との連携等の大学改革に取り組む私立大学等に対する支援を強化するために、私立大学等改革総合支援事業(以下「総合支援事業」という。)を実施している。

総合支援事業の実施に当たり、文部科学省は、各学校法人が大学改革の取組状況を記載して事業団に提出した私立大学等改革総合支援事業調査票(以下「総合支援事業調査票」という。)に基づき算定された点数により、支援対象校を選定している。そして、事業団は、提出された総合支援事業調査票を基に、支援対象校として選定された私立大学等に係る一般補助の額の増額を行うとともに、特別補助による総合支援事業調査票の点数に応じて定められた額の増額を行っている。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、一般補助における学生数等は適切に算定されているか、特別補助の算定対象となる経費等は適切に算定されているか、また、総合支援事業の支援対象校に対する補助金の増額は適切に行われているかなどに着眼して、事業団が25年度から29年度までに補助金を交付している658学校法人のうち24学校法人において、算定資料等の書類により会計実地検査を行った。

検査したところ、12学校法人は、事業団に提出した算定資料に、①一般補助の算定対象とならない者等を含めたり、②特別補助の算定対象とならない経費等を含めるなどしたり、③総合支援事業調査票に実態と異なる大学改革の取組状況を記載したりしていたのに、事業団は、これらの誤った算定資料に基づいて補助金の額を算定していた。このため、補助金計278,401,000円が過大に交付されていて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、12学校法人において補助金の制度を十分に理解していなかったり、算定資料の作成に当たりその内容の確認を十分に行っていなかったりしていたこと、事業団においてこれらの学校法人に対する指導及び調査が十分でなかったことなどによると認められる。

前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

<事例1>

学校法人茶屋四郎次郎記念学園は、一般補助において、事業団に提出した平成25年度から29年度までの算定資料に、東京福祉大学及び東京福祉大学短期大学部における通信教育課程の学生数について、補助金申請年度の5月1日までに5月分の学費を納付した者ではなく、前年度分の学費を納付した者を補助金申請年度の人数として計上するなどしていたため、算定対象となる通信教育課程の学生数が過大となっていた。

また、特別補助において、同学校法人は、事業団に提出した算定資料に、同大学における26年度から28年度までの、同大学短期大学部における27、28両年度の「社会人の組織的な受入れ」に係る「正規学生としての受入れ」の対象となる社会人学生数のうち、通信教育課程の学生数を上記一般補助の事態と同様に計上するなどしていたため、算定対象となる通信教育課程の学生数が過大となっていた。また、同大学における25年度から29年度までの「海外からの学生の受入れ」の対象となる留学生の数について、「留学」の在留資格を保有していないなどしていた留学生を、それぞれ28人、24人、23人、15人、38人含めて計上していた。

したがって、一般補助において、25年度から29年度までの適正な学生数に基づき、また、特別補助において、26年度から28年度までの「社会人の組織的な受入れ」に係る「正規学生としての受入れ」の適正な社会人学生数に基づくとともに、25年度から29年度までの「海外からの学生の受入れ」の算定対象とならない留学生を除外して算定すると、適正な補助金の額は、25年度195,593,000円、26年度412,390,000円、27年度508,192,000円、28年度457,476,000円及び29年度469,816,000円、計2,043,467,000円となり、それぞれ、2,683,000円、8,042,000円、9,164,000円、8,988,000円、9,629,000円、計38,506,000円が過大に交付されていた。

<事例2>

学校法人徳山教育財団は、一般補助において、事業団に提出した平成29年度の算定資料に、徳山大学における障害のある学生に対する具体的配慮の取組数について、29年度内に四つの取組を実施したとして計上していたが、これらの中には、27年度に実施した算定対象とならない取組が一つ含まれていた。

また、特別補助において、同学校法人は、事業団に提出した算定資料に、同大学における29年度の「海外からの学生の受入れ」の対象となる留学生の数について、休学期間が継続して1年以上となることが明らかな休学中の留学生1人を算定対象として計上していたり、同大学における28年度の「留学生に対する授業料減免」の対象者に係る平均の授業料減免率を誤って過大に算出していたりしていた。経営強化集中支援事業においては、28、29両年度の同大学に係る経営強化集中支援事業調査票の提出に当たり、全ての専任教職員を出席対象として案内していることとされている経営・財務状況の説明会等を、両年度とも「法人全体(大学等を含む)で実施している」と記載していたが、実際は、専任教員は出席対象ではなく案内していなかったなどしていて、経営強化集中支援事業調査票の点数が過大となっていた。

さらに、総合支援事業において、同学校法人は、28、29両年度の同大学に係る総合支援事業調査票の提出に当たり、学長裁量の別枠の予算が確保され、教育改革に特化したものとされている予算を、両年度とも「設けている」と記載していた。しかし、実際には、同学校法人が設定したとする予算は同大学の研究所に係る研究経費の予算であって、学長裁量の別枠の予算でも、教育改革に特化したものでもなく、総合支援事業調査票の点数が過大となっていた。

したがって、一般補助において、29年度の算定対象とならない障害のある学生に対する具体的配慮の取組を除外して、また、特別補助において、29年度の「海外からの学生の受入れ」の算定対象とならない留学生を除外して、28年度の「留学生に対する授業料減免」の対象者に係る適正な平均の授業料減免率及び28、29両年度の適正な経営強化集中支援事業調査票の点数に基づいて、さらに、総合支援事業において、28、29両年度の適正な総合支援事業調査票の点数に基づいて算定すると、適正な補助金の額は、28年度269,479,000円及び29年度234,222,000円、計503,701,000円となり、それぞれ、9,443,000円、8,009,000円、計17,452,000円が過大に交付されていた。

以上を事業主体別に示すと次のとおりである。

 
事業主体
(本部所在地)
年度
補助金交付額 不当と認める補助金額
摘要
      千円 千円  
(235) 学校法人日通学園
(茨城県龍ケ崎市)
27 429,306 32,269
(流通経済大学)
    28 463,916 32,813
    29 529,644 4,000
    小計 1,422,866 69,082
(236) 学校法人桜美林学園
(東京都町田市)
29 661,709 1,000
(桜美林大学)
(237) 学校法人東洋大学
(東京都文京区)
29 1,895,254 1,150 ②、③
(東洋大学)
(238) 学校法人東京国際大学
(東京都新宿区)
25 579,536 2,120
(東京国際大学)
    26 638,384 1,092
    27 676,824 2,806
    小計 1,894,744 6,018
(239) 学校法人武蔵野美術大学
(東京都小平市)
28 793,808 1,277
(武蔵野美術大学)
(240) 学校法人目白学園
(東京都新宿区)
28 778,183 1,284 ①、②、③
(目白大学、目白大学短期大学部)
(241) 学校法人茶屋四郎次郎記念学園
(東京都豊島区)
25 198,276 2,683 ①、②
(東京福祉大学、東京福祉大学短期大学部)
    26 420,432 8,042
    27 517,356 9,164
    28 466,464 8,988
    29 479,445 9,629
    小計 2,081,973 38,506
(242) 学校法人中内学園
(神戸市)
26 221,203 1,130
(流通科学大学)
(243) 学校法人吉備学園
(岡山市)
28 200,739 1,257
(岡山商科大学)
(244) 学校法人徳山教育財団
(山口県周南市)
28 278,922 9,443 ①、②、③
(徳山大学)
    29 242,231 8,009
    小計 521,153 17,452
(245) 学校法人萩至誠館
(山口県萩市)
25 136,114 37,316 ①、②注(3)
(至誠館大学)
    26 111,385 39,689
    27 69,846 1,566
    28 130,875 27,545
    29 162,040 31,819
    小計 610,260 137,935
(246) 学校法人別府大学
(大分県別府市)
27 371,550 1,031
(別府大学)
    28 441,046 1,279
    小計 812,596 2,310
(235)―(246)の計 11,894,488 278,401  
  • 注(1) 摘要欄の①、②及び③は、前記の態様に対応している。
  • 注(2) 学校法人萩至誠館  平成26年3月31日以前は学校法人萩学園、31年4月1日以降は学校法人菅原学園
  • 注(3) 至誠館大学  平成26年3月31日以前は山口福祉文化大学