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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第2 日本銀行|
  • 本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項

情報提供契約の締結に当たり、構成品のうち情報を表示するための液晶ディスプレイ等の機器について、別途市販品を調達することなどにより、経済的な調達を図るよう改善させたもの


科目
交通通信費
部局等
日本銀行本店
契約名
QUICK VisCast提供契約
契約の概要
国内外の株式、債券、金融、外国為替及び商品市場に関する一覧性を持ったリアルタイム情報の提供を受けるもの
契約の相手方
株式会社QUICK
契約
平成17年12月、18年2月、29年1月 随意契約
支払額
2596万余円(平成29、30両事業年度)
上記のうち節減できた支払額(試算額)
970万円

1 情報提供契約の概要等

(1) 情報提供契約の概要

日本銀行本店は、株式会社QUICK(以下「QUICK」という。)と金融市場の動向等に関する情報の提供(注)を受ける契約(QUICKが平成14年から「QUICK VisCast」の名称で実施しているサービスの提供を受ける契約。以下「情報提供契約」という。)を、17年12月に随意契約により締結している。情報提供契約は翌年12月に契約期間が終了し、その後は毎年延長されることとなっている。情報提供契約に基づき提供される情報は、日本銀行本店の店舗内にQUICKから提供されて設置される大型の液晶ディスプレイに常時更新されて表示されるものとなっている。

(注)
情報の提供  株式会社市況情報センター(現QUICK)が、昭和49年9月に、専用端末により、国内で初めて東京証券取引所等の現在株価等を顧客向けに提供するサービスを導入した。現在は、国内外の株式、債券、金融、外国為替及び商品市場に関する一覧性を持ったリアルタイムの情報を提供するサービスとなっている。

(2) 情報提供契約の経費の構成

情報提供契約の経費は、QUICKから受ける情報の提供に係る料金(以下「情報提供料」という。)及び当該情報を表示するのに必要な液晶ディスプレイ等の機器の提供、利用等に係る料金(以下「機器利用料」という。)によって構成されている。

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

近年、一般的に液晶ディスプレイの価格が技術の向上、大量生産による量産効果、国内外の企業同士の競争等に伴い下落する傾向が見受けられることから、本院は、経済性等の観点から、情報提供契約の締結に当たり機器利用料の節減が図られているかなどに着眼して、日本銀行本店が締結している情報提供契約(29、30両事業年度の支払額計2596万余円)を対象として、日本銀行本店において、契約書、見積書等の関係書類を確認するとともに、QUICKにおいて、機器利用料の内容等を確認するなどの方法により会計実地検査を行った。

(検査の結果)

日本銀行本店は、情報提供契約について、前記の情報の提供及び機器の提供のうち、17年12月の当初の契約締結時から30事業年度までの長期間にわたって、QUICKから提供を受ける情報を表示するための液晶ディスプレイ等の機器の提供をQUICKから受けていたが、毎年のQUICKとの情報提供契約の延長時に、QUICKから機器の提供を受けること以外に機器の経済的な調達方法があるかどうかについて検討を行っておらず、情報提供契約の見直しを行っていなかった。そして、機器利用料を含めた支払総額として、29事業年度1298万余円、30事業年度1298万余円、計2596万余円(うち機器利用料29事業年度636万余円、30事業年度636万余円、計1272万余円)をQUICKに支払っていた。

そこで、QUICKに機器利用料の推移等について確認したところ、機器利用料は約10年間変わらず同一のままとのことであり、一般的な液晶ディスプレイの価格の下落傾向が反映されているものではないことが判明した。また、QUICKによれば、顧客側において市販されている液晶ディスプレイ等の機器を調達して情報の提供を受けることは可能であり、実際、現在、QUICKと同種の契約を締結している顧客の大半は、QUICKから機器の提供を受けていないとのことであった。

このように、情報提供契約の延長時に、同一の契約相手方から液晶ディスプレイ等の機器の提供を受けること以外に機器の経済的な調達方法があるかどうかについて検討して、経済的な調達を図るよう見直しを行っていなかった事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。

(節減できた支払額)

情報提供契約について、情報提供料のみを支払う契約とし、現在設置している機器と同仕様の市販品を別途購入して耐用年数の間利用すると仮定した場合に見込まれる単年度当たりの支払総額を試算したところ、29事業年度812万余円、30事業年度812万余円、計1625万余円(うち市販品の調達費用29事業年度150万余円、30事業年度150万余円、計301万余円)となり、前記の支払総額29事業年度1298万余円、30事業年度1298万余円、計2596万余円(うち機器利用料29事業年度636万余円、30事業年度636万余円、計1272万余円)を、29事業年度485万余円、30事業年度485万余円、計970万余円節減できたと認められた。

(発生原因)

このような事態が生じていたのは、日本銀行本店において、情報提供契約の締結に当たり、情報の提供と液晶ディスプレイ等の機器の提供が可分なものであるかどうかについて確認することなく、経済的な調達を図るための検討が十分でなかったことなどによると認められた。

3 当局が講じた改善の処置

上記についての本院の指摘に基づき、日本銀行本店は、液晶ディスプレイ等の機器の調達方法について見直しを行い、令和元年6月に、QUICKに対して、2年3月までに情報提供契約について液晶ディスプレイ等の機器の提供を除外して情報の提供のみに係る契約とする旨を通知した。そして、元年9月に、QUICKとは別の契約相手方と契約を締結して、2年2月末までにこれらの機器を別途購入する処置を講じた。