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  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

届け書等の配送業務について、事務センターに回付する届け書等の種類が異なっていても1個のケースにまとめたり、事務センター内の配送先を集約したりすることなどにより、配送に係る費用の節減を図るよう是正改善の処置を求めたもの


科目
業務経費
部局等
日本年金機構本部
契約の概要
被保険者等から提出された届け書等を回付等するために、定期便により年金事務所と事務センターとの間を配送するなどのもの
契約の相手方
10会社
契約
平成28年3月ほか 一般競争契約、随意契約
検査の対象とした契約件数及び配送に係る支払額(1)
56件 6億4947万余円(平成29、30両年度)
(1)のうち積合せ輸送において届け書等の種類別にケースを分けるなどして発送していた事態について費用が節減できたと認められる契約件数及び節減額(2)
19件 3459万円
(1)のうち貸切り輸送において経済的な輸送方法となっていない事態について費用が節減できたと認められる契約件数及び節減額(3)
4件 3215万円
(2)及び(3)の計
23件 6674万円

【是正改善の処置を求めたものの全文】

届け書等の配送業務について

(令和元年10月29日付け 日本年金機構理事長宛て)

標記について、会計検査院法第34条の規定により、下記のとおり是正改善の処置を求める。

1 届け書等の配送業務等の概要

(1) 事務センター及び年金事務所の業務の概要

貴機構は、日本年金機構法(平成19年法律第109号)、国民年金法(昭和34年法律第141号)、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)等に基づき、厚生労働省から委任又は委託を受けた各種年金の支給等に係る業務を行うため、16事務センター(注1)及び312年金事務所を設置している。

そして、日本年金機構組織規程(平成22年規程第2号)等に基づき、事務センターは、事業主又は被保険者等から提出された厚生年金保険、国民年金及び健康保険に関する各種の届け書や申請書等(以下「届け書等」という。)の審査、入力、通知書等の作成、発送並びに編てつ及び保管に関する事務等の業務を行うこととなっており、取り扱う届け書等の種類別に、厚生年金適用グループ、国民年金グループ、年金給付グループ、記録審査グループ等のグループが設けられている。また、年金事務所は、①厚生年金保険及び健康保険の事業所の適用、被保険者の資格及び標準報酬並びに健康保険の被扶養者認定、②国民年金の被保険者の資格並びに国民年金保険料の免除、前納、追納、徴収及び還付、③厚生年金保険及び国民年金の給付等に関して、届け書等を事務センターに回付する業務等を行うこととなっている。

(注1)
16事務センター  北海道、仙台広域、高崎広域、埼玉広域、新潟、東京広域、神奈川、金沢広域、名古屋広域、京都、大阪広域、兵庫、岡山広域、広島広域、高松広域、福岡広域各事務センター(平成31年3月末現在)

(2) 事務センター及び年金事務所における届け書等の業務処理の概要

年金事務所は、貴機構の業務処理要領によると、事業主又は被保険者等から窓口で届け書等の提出を受け付ける場合、記載内容や添付書類の点検・確認等を行い、事務センターに回付することとなっている。そして、事務センターは、回付された届け書等を点検・確認等した後、届け書等に不備がある場合には、年金事務所に返戻することとなっている(図参照)。

図 届け書等の業務処理の概念図

図 届け書等の業務処理の概念図 画像

(3) 配送契約の概要

貴機構は、届け書等の回付等に係る配送業務を配送業者に委託しており、年金事務所から管轄している事務センターへ回付する届け書等及び事務センターから管内の年金事務所へ返戻する届け書等は、年金事務所又は事務センターの職員が配送用のケースに入れて施錠等をした状態で配送業者に引き渡し、毎日決まった時間に、定期便により集荷され、配送されている。また、事務センター及び年金事務所が市町村等に送付する届け書等の用紙等は、必要な都度、不定期便により配送されている(図参照)。

届け書等の配送業務委託契約(以下「配送契約」という。)における定期便による輸送方法は、他の荷主の荷物と積み合わせて事務センターと年金事務所との間を輸送する方法(以下「積合せ輸送」という。)と、配送車両を貸し切って事務センターと年金事務所との間を輸送する方法(以下「貸切り輸送」という。)とがあり、積合せ輸送は配送する荷物1個当たりの単価契約、貸切り輸送は車両1台当たりの単価契約となっている。そして、貴機構本部は、事務センター及び年金事務所の所在する地域ごとに、積合せ輸送又は貸切り輸送による配送契約を配送業者と締結している。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

本院は、経済性等の観点から、届け書等の配送に係る費用の節減が図られているかなどに着眼して、平成29、30両年度における16事務センターと312年金事務所との間の配送について、貴機構本部が配送業者10会社と締結した配送契約計56件、契約額計8億7907万余円(29、30両年度の配送に係る支払額計6億4947万余円)を対象として、貴機構本部において、契約書、仕様書等により配送の実績等を確認したり、15事務センター及び113年金事務所において、届け書等の配送状況を確認したりなどして会計実地検査を行った。

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 積合せ輸送において届け書等を1個のケースにまとめるなどせずに種類別にケースを分けるなどして発送していた事態

貴機構本部は、東京広域事務センターを除く15事務センターと250年金事務所との間の定期便の配送について、配送業者と積合せ輸送による配送契約計48件を締結している。

ア 年金事務所において届け書等の種類別にケースを分けて発送していた事態

上記250年金事務所のうち、仙台広域、高崎広域及び福岡広域の3事務センター管内の計32年金事務所(注2)は、事務センターに回付する届け書等について、年金給付関係の届け書等とそれ以外の届け書等の種類別にケースを分けて発送していた。

しかし、これらのケースについては、事務センター内の同じ場所に配送するものであり、届け書等の種類別にケースを分けて発送する必要はないことから、異なる種類の届け書等を1個のケースにまとめるなどして発送することとすれば、届け書等の量が少なく配送用のケースの容量に余裕がある場合には異なる種類の届け書等を入れることによって配送個数を少なくすることができたと認められる。

(注2)
32年金事務所  仙台東、仙台南、大河原、仙台北、石巻、古川、山形、寒河江、新庄、鶴岡、米沢、宇都宮東、宇都宮西、大田原、栃木、今市、前橋、桐生、高崎、渋川、太田、東福岡、博多、中福岡、西福岡、南福岡、久留米、小倉南、小倉北、直方、八幡、大牟田各年金事務所

イ 事務センターにおいて配送先を集約していなかった事態

前記15事務センターのうち、北海道、大阪広域及び兵庫の3事務センターは、届け書等の種類別に各グループがそれぞれ別のフロアで業務を行っているため、貴機構本部は、ケースの配送先を、北海道事務センター内については4か所、大阪広域、兵庫両事務センター内についてはそれぞれ2か所とする配送契約を締結していた。そして、北海道、和歌山、兵庫両県内の計29年金事務所は、届け書等の種類別にケースを分けて事務センター内の各フロアに配送していた。

しかし、上記の3事務センター以外の12事務センターは、事務センター内の配送先を1か所に集約していて、配送業者からケースを受領した後に、届け書等を各フロアに届けるなどの作業をしており、3事務センターにおいても、上記と同様の方法により、事務センター内の配送先を1か所に集約することが可能であることから、届け書等を1個のケースにまとめるなどしていれば、届け書等の量に応じて必要となる配送個数を少なくすることができたと認められる。

したがって、届け書等の種類別にケースを分けて発送していたア及びイの計6事務センターと計61年金事務所との間の配送契約計19件(29、30両年度の配送個数計341,600個、支払額計2億2875万余円)について、年金事務所において届け書等を1個のケースにまとめるなどして発送し、事務センター内の配送先も1か所に集約したとして届け書等の量に応じて必要となる配送個数及び支払額を試算すると、計287,645個、計1億9416万余円となることから、支払額を3459万余円節減できたと認められる。

(2) 貸切り輸送において積合せ輸送により実施する方が低額となっていて経済的な輸送方法となっていない事態

貸切り輸送は、車両1台当たりの単価契約であることから、配送個数が多い場合は積合せ輸送と比較して安価となるが、少ない場合は積合せ輸送の方が安価な輸送方法となる。

貴機構本部は、東京広域事務センターと東京都、千葉、山梨両県内の38年金事務所との間並びに大阪広域事務センターと大阪府及び奈良県内の24年金事務所との間の定期便の配送については、配送個数が多く、積合せ輸送より貸切り輸送の方が安価であるなどとして、28年10月から令和元年6月までの間において貸切り輸送により実施する配送契約計8件を締結している。

しかし、東京広域事務センターは、(1)イの3事務センターと同様に、事務センター内の配送先を各フロアに分けていたが、配送先を3か所から2か所に集約することが可能であることから、届け書等を1個のケースにまとめるなどしていれば、配送個数を少なくすることができたと認められる。貸切り輸送により実施している上記の配送契約8件それぞれについて、事務センター内の配送先を集約したとして、平成29、30両年度の配送個数を算出するなどして積合せ輸送により配送した場合の支払額を試算すると、8件のうち6件の配送契約については、積合せ輸送による場合の支払額が貸切り輸送による支払額よりも低額となる。このうち直近の契約期間においては貸切り輸送による支払額の方が低額となるなどの2件を除いた東京広域事務センターと38年金事務所との間の4件の配送契約については、直近の契約期間においても積合せ輸送の方が貸切り輸送の支払額を下回っていることなどから、貴機構本部において、4件の配送契約の締結に当たり、事務センター内の配送先を集約するなどした上で、積合せ輸送により実施することとする配送契約を締結していれば、これら4件の契約に係る支払額は計7947万余円となり、貸切り輸送による場合の支払額計1億1162万余円との差額3215万余円を節減できたと認められる。

(是正改善を必要とする事態)

積合せ輸送において届け書等を1個のケースにまとめるなどせずに種類別にケースを分けるなどして発送していたり、貸切り輸送において積合せ輸送により実施する方が低額となっていて経済的な輸送方法となっていなかったりしている事態は適切ではなく、是正改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、貴機構において、次のことなどによると認められる。

  • ア 年金事務所において、届け書等の種類別にケースを分けずに1個のケースにまとめて発送するなどして配送個数を少なくすることの認識が欠けていること
  • イ 貴機構本部において、事務センター内の配送先を集約することにより配送個数を少なくすることの認識が欠けていること、また、貸切り輸送による配送契約に当たり、積合せ輸送による場合の費用と比較するなどして、より経済的な輸送方法とするための検討を十分に行っていないこと

3 本院が求める是正改善の処置

事務センターと年金事務所との間では、今後も多数の届け書等を回付等することが見込まれており、貴機構は、今後も届け書等の配送業務を配送業者に委託することにしている。

ついては、貴機構において、届け書等の配送個数を少なくするなどして配送に係る費用の節減を図るよう、次のとおり是正改善の処置を求める。

  • ア 年金事務所に対して、事務センターに回付する届け書等について種類が異なっていても1個のケースにまとめるなど少ない個数により発送するよう指示すること
  • イ 事務センターにおける配送業者からケースを受領した後の各フロアで行われている作業を見直すなどして、事務センター内の配送先を集約すること、また、これを踏まえて、貸切り輸送による場合の費用と積合せ輸送による場合の費用とを比較するなどの検討を行い、より経済的な輸送方法とすること