独立行政法人国立美術館国立西洋美術館(以下「美術館」という。)は、平成28、29両年度に、「国立西洋美術館建築設備改修工事」を一般競争契約により清水建設株式会社と契約額70,200,000円で締結して施行している。
本件工事は、美術館の設備の経年劣化や動作不良を解消するために、本館、新館及び企画展示館に設置しているシャッター及び自動扉の部品交換、新館に設置している電動式軽量シャッターの更新並びに企画展示館に設置しているエレベータ及び5tクレーンの更新を行うものである。
美術館は、本件工事の予定価格の積算を、シャッター等の機器ごとに専門業者から徴した見積書の価格に基づくなどして行っており、シャッター及び自動扉の部品交換費並びにエレベータ及び5tクレーンの更新費の合計額に消費税(地方消費税を含む。)を加えて72,118,840円と算定していた。
本院は、経済性等の観点から、予定価格の積算が適切に行われているかなどに着眼して、本件工事を対象として、美術館において、契約書、仕様書、予定価格の算出内訳明細書等の書類を確認するなどして会計実地検査を行った。
検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。
美術館は、仕様書において、シャッターの部品交換に伴う開閉器交換の施工箇所を15か所としており、これに適合する内容で予定価格の積算時に徴していた見積書の価格を用いてシャッターの部品交換費を算定するなどすべきであるのに、誤って、予算要求時に開閉器交換の施工箇所を30か所とする想定で徴していた見積書の価格を用いてこれを算定するなどしていた。
したがって、シャッターの部品交換費について予定価格の積算時に徴していた見積書の価格を用いるなどして本件工事の予定価格を修正計算すると、他の項目において積算過小となっていた費用を考慮しても、適正な予定価格は64,802,537円となることから、本件契約額70,200,000円はこれに比べて約530万円割高となっていて不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、美術館において、本件工事の予定価格の積算に対する確認が十分でなかったことなどによると認められる。