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  • 平成30年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第2節 団体別の検査結果|
  • 第17 独立行政法人国立病院機構|
  • 不当事項|
  • 予算経理

設計変更工事の実施による増額分の支払に当たり、既に終了した設計変更工事について、随意契約による新規発注の工事であるかのように実際と異なる工期を記載するなどした契約関係書類により支払っていて、会計規程等に違反していたもの[独立行政法人国立病院機構佐賀病院](251)


科目
建物、消耗器具備品費、修繕費、固定資産除却費
部局等
独立行政法人国立病院機構佐賀病院
契約名
(1) 外来管理棟等建替整備工事
(2) 各科受付シャッター取付工事等17契約
契約の概要
(1) 既存の外来管理棟を解体し、その跡地に外来管理棟を新築するとともに、病棟の改修を行うなどの工事を実施するもの
(2) 新築する外来管理棟等において外来窓口にシャッターを取り付けるなどの工事を実施するもの
契約の相手方
東洋建設株式会社
契約
(1) 平成25年9月 一般競争契約
(2) 平成29年7月、8月、9月 随意契約
契約金額
(1) 3,886,753,905円(平成25年度~29年度)
(2) 35,828,752円(平成29年度)
不適正な会計経理により支払われた契約金額
(2) 35,828,752円

1 建替整備工事等に係る契約事務の概要

(1) 建替整備工事の概要

独立行政法人国立病院機構(以下「機構」という。)が設置した独立行政法人国立病院機構佐賀病院(以下「病院」という。)は、平成25年度から29年度までの間に、既存の外来管理棟を解体し、その跡地に外来管理棟を新築するとともに、病棟の改修を行うなどの工事(以下「建替整備工事」という。)を実施することとした。そして、病院は、一般競争入札により、24年8月に、建替整備工事に係る設計業務及び工事監理業務を株式会社梓設計(以下「設計監理会社」という。)に委託している。また、建替整備工事の施工については、一般競争入札を行った上で、25年9月に、建替整備工事の施工を請け負わせる契約を東洋建設株式会社(以下「建設会社」という。)と契約金額3,478,650,000円で締結し、その後、ヘリポートを追加するなどの設計変更に係る契約変更を行っている(契約変更後の契約金額3,886,753,905円)。病院は、建替整備工事の実施に当たっては、工事全体を既存の外来管理棟の解体、外来管理棟の新築、病棟の改修等に区分して、区分ごとに完成期限を設定して、建設会社は区分ごとに設定された完成期限までに工事を完成させ(以下、区分ごとに工事を完成させることを「部分完成」という。)、病院は、部分完成した建物の引渡しを受け、引渡しに係る契約金額を支払うこととなっている。

(2) 機構の契約事務及び施設整備業務の概要

機構の業務の適正かつ効率的な運営を図ることなどを目的とした独立行政法人国立病院機構会計規程(平成16年規程第34号。以下「会計規程」という。)等によれば、経理責任者(病院にあっては院長)は、契約を締結するときは、契約の目的、契約金額、履行期限、契約代金の支払の時期等を記載した契約書を作成しなければならないこととされている。そして、経理責任者は、施設整備について、設計変更に伴い契約変更手続の必要が生じたときは、その都度、遅滞なく、変更契約書を請負者と取り交わすこととされている。また、請負契約等を締結する場合には、原則として、競争契約によることとされている。ただし、予定価格が250万円を超えない工事をさせる場合等には、例外として、「独立行政法人の契約状況の点検・見直しについて」(平成21年11月17日閣議決定)に基づき、機構における競争性のない随意契約等について点検、見直しを行うために機構に設置された契約監視委員会(以下「監視委」という。)の事前点検を受けずに随意契約によることができることとされている。

(3) 設計変更工事の実施

病院は、前記のヘリポートを追加するなどの設計変更のほか、建替整備工事のうち外来管理棟の新築工事(当該区分の完成期限:平成29年2月)において、外来窓口にシャッターを設置するなどの工事を、また、病棟の改修工事(当該区分の完成期限:平成29年7月)において、売店を改修するなどの工事(以下、これらを合わせて「設計変更工事」という。)を設計変更を行って実施している。

2 検査の結果

本院は、合規性等の観点から、建替整備工事に係る契約及び支払が会計規程等に基づいて適正に行われているかなどに着眼して、建替整備工事及び設計変更工事を対象として、病院及び機構本部において、契約関係書類等を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

設計監理会社は、病院から設計変更工事に係る設計変更の指示を受けたが、建設会社と仕様、金額等について調整して設計変更案を作成して病院に報告すべきところ、当該設計変更について金額の計算に時間を要することから、病院に金額を除いた設計変更案を報告した。病院は、この設計変更案を承諾し、建設会社に指示して設計変更工事を実施していた。そして、病院は、29年3月に外来管理棟の新築工事の、また、同年7月に病棟の改修工事の引渡しを受け、同月に設計変更工事に係る増額分が計35,828,752円となることを認識した。しかし、病院は、その後においても、契約変更の手続を行っておらず、変更契約書を建設会社と取り交わしていなかった。

そして、病院は、実際は設計変更工事に基づく支払であるのに、既に終了した設計変更工事の増額分について、監視委の事前点検の対象とならない1契約当たりの契約金額が250万円を超えない随意契約により支払うこととして、建設会社に対して、上記の増額分を分割した契約関係書類を作成するよう指示した。建設会社は、増額分を17契約に分割して、それぞれの契約について、新規発注の工事であるかのように実際と異なる工期を記載するなどした契約関係書類を作成し、病院は、この契約関係書類により随意契約を締結した。その後、病院は、増額分について、これらの契約関係書類に基づき、29年9月に3契約分計6,030,487円、同年10月に5契約分計10,836,894円、同年11月に5契約分計10,371,852円、同年12月に4契約分計8,589,519円、合計35,828,752円を建設会社に対して支払っていた。

したがって、上記のとおり、病院が、契約変更の手続を行わず、既に終了した設計変更工事について、随意契約による新規発注の工事であるかのように実際と異なる工期を記載するなどした契約関係書類を作成させ、これらに基づき支払を行っていた事態は、業務の適正かつ効率的な運営を図ることなどを目的とした会計規程等に違反していて不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、病院において、適正な会計経理を行うことについての認識が著しく欠けていたことなどによると認められる。