【改善の処置を要求したものの全文】
高架下等の有効活用について
(令和元年10月23日付け 独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構理事長宛て)
標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。
記
貴機構並びに東日本高速道路株式会社、中日本高速道路株式会社、西日本高速道路株式会社、本州四国連絡高速道路株式会社、首都高速道路株式会社及び阪神高速道路株式会社(以下、これらの6会社を総称して「道路会社」という。)は、日本道路公団等民営化関係法施行法(平成16年法律第102号。以下「施行法」という。)、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構法(平成16年法律第100号。以下「機構法」という。)、高速道路株式会社法(平成16年法律第99号。以下「道路会社法」という。)等に基づき、平成17年10月に解散した旧日本道路公団、旧本州四国連絡橋公団、旧首都高速道路公団及び旧阪神高速道路公団(以下、これらの4公団を総称して「公団」という。)の一切の権利及び義務を承継している。
貴機構は、貴機構及び道路会社が公団から承継する資産に関する基本的な事項について、施行法の規定により国土交通大臣が定めた「日本道路公団、首都高速道路公団、阪神高速道路公団及び本州四国連絡橋公団の業務の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する基本方針」(平成17年国土交通省告示第712号)に基づき、原則として、高速道路に係る固定資産(以下「道路資産」という。)とこれに係る債務を承継し、保有している。そして、貴機構は、機構法に基づき、17年10月以降に道路会社が行う高速道路の新設、改築等に要する費用に充てるために負担した債務を引き受け、この債務に係る道路資産を保有している。
また、貴機構は、道路会社が道路会社法に基づく高速道路の新設、改築、維持、修繕その他の管理を行う場合において、道路整備特別措置法(昭和31年法律第7号。以下「特措法」という。)等に基づき、高速道路の道路管理者(国又は地方公共団体。以下同じ。)の権限を代行することとなっている。そして、貴機構は、道路を占用(工作物、駐車場等の施設等を道路に設けて、継続して道路を使用することをいう。以下同じ。)する希望(以下「占用希望」という。)があり占用しようとする者(以下「占用希望者」という。)に対して、道路法(昭和27年法律第180号)に基づき道路管理者が行う占用許可に係る権限についても代行している。
貴機構は、特措法に基づき、道路会社との間で「機構が道路の占用に関して行う権限に係る事務の会社に対する委託に関する契約」(以下「委託契約」という。)を締結している。そして、道路会社は、委託契約に基づき、高架の道路の路面下等(以下「高架下等」という。)について、占用希望者から占用の目的等を記載した占用許可申請書(以下「申請書」という。)が提出された場合、貴機構が定めた占用許可事務実施要領に従って、申請書の記載内容が道路法等に定める要件(以下「許可基準」という。)に適合するかどうかの確認や道路管理上の支障の有無等の調査を行った上で、申請書を貴機構へ送付している。そして、貴機構において、道路会社が確認した申請書の記載内容の審査を行い、高架下等の占用許可を行っている(図参照)。
図 占用許可事務の流れ(概念図)
貴機構は、地方公共団体等に無償で占用させている場合を除き、高架下等の占用許可を受けた者から、道路整備特別措置法施行令(昭和31年政令第319号)及び道路法施行令(昭和27年政令第479号。以下、これらを合わせて「施行令」という。)に基づき、占用面積に近傍類似の土地の時価及び所在地の区分ごとの率を乗じて算定するなどして定めた占用料を徴収し、機構法に基づき、占用料を債務の返済に充てることとしている(以下、申請書を提出した占用希望者に対して占用許可を行い、占用料を徴収するなどの仕組みを「占用制度」という。)。そして、貴機構が有償で占用させている土地は、令和元年7月30日現在、計約991,973m2(占用料の予定年額計14億9973万余円)となっている。
また、平成26年6月に道路法が改正され、高架下等に駐車場等の収益性を有する施設等を設けようとする場合は、占用希望者が競合して、施行令で定められた占用料の額よりも高い額を支払ってでも占用希望することが想定されることから、占用料の多寡等により占用者を選定する入札(以下「占用入札」という。)が導入されている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
貴機構は、前記のとおり、高架下等の占用許可を受けた者から徴収した占用料を債務の返済に充てることとしており、また、30年度に策定した第4期中期計画において、占用入札を積極的に実施して高架下等の有効活用に努めることとしている。
そこで、本院は、有効性等の観点から、貴機構が占用させることができる未利用の高架下等の情報を得て有効活用するための方策を講じているかなどに着眼して、貴機構が保有している高架下等のうち、平成27年国勢調査(総務省統計局)の結果に基づく人口集中地区に所在し、面積が1区画当たり300m2以上で28年度から30年度までの間に道路会社が工事等の資材置場等として使用していないなどの条件に該当する高架下等1,328か所(面積計約204万m2)を対象として検査した。
検査に当たっては、貴機構及び道路会社において、高架下等の利用状況について、管理用図面等の関係書類及び現地の状況を確認するなどの方法により会計実地検査を行うとともに、道路会社に対して調書の作成及び提出を求めて、その内容を確認するなどの方法により検査した。
(検査の結果)
検査したところ、次のような事態が見受けられた。
貴機構は、30年度に道路会社から高架下等の占用に係る新規の申請書の送付を15件受け、このうち、地方公共団体に無償で占用させるなどとした12件を除いた3件について占用入札を実施していた。そして、上記の申請書について確認したところ、道路会社が貴機構に送付していたのは、道路会社が確認・調査の結果、許可基準に適合して道路管理上の支障がないと判断した高架下等に係る申請書のみとなっていた。
このように、貴機構は、道路会社から申請書が送付された場合には、高架下等の占用希望があることを把握しているものの、申請書の送付に至らなかった高架下等に関しては、道路会社に対して報告を求めていないことなどから、道路会社から未利用の高架下等の情報を十分得られていない状況となっていた。
そこで、本院は、検査の対象とした高架下等1,328か所のうち、周辺の交通量等からみて、隣接する道路からの出入りが容易であり、高架下等の近隣に企業が所在していたり、高架下等の近隣で駐車場等が運営されていたりして、有効活用が期待できる311か所(1か所当たり300m2~11,100m2、面積計484,134m2、東日本高速道路株式会社38か所、中日本高速道路株式会社108か所、西日本高速道路株式会社132か所、本州四国連絡高速道路株式会社3か所、首都高速道路株式会社1か所、阪神高速道路株式会社29か所)を対象(注1)として、当該高架下等の近隣に所在する企業、高架下等の近隣で駐車場を運営する会社等計177社に対して、占用希望の有無等についてアンケート調査を実施した(注2)。
アンケート調査の結果、81社から回答があり、表1のとおり、調査対象の高架下等311か所のうち占用希望がある箇所が137か所と4割を超える状況となっており(311か所に占める割合は44.0%、面積計200,061m2)、このうち23か所は複数社が占用希望していた。また、現時点で予定はないが将来的に希望するかもしれないとの回答があった高架下等が51か所(同16.3%、面積計84,073m2)となっていた。会社別の状況は、表2のとおり、各社が管理する高架下等において占用希望がある状況となっていた。
表1 高架下等311か所の占用希望状況
希望あり | 将来希望するかもしれない | 希望なし | 未回答 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|
箇所数 | 137 (44.0%) |
51 (16.3%) |
65 (20.9%) |
58 (18.6%) |
311 (100.0%) |
面積(m2) | 200,061 | 84,073 | 94,351 | 105,649 | 484,134 |
表2 高架下等311か所のうち占用希望がある高架下等の会社別状況
東日本 高速道路 株式会社 |
中日本 高速道路 株式会社 |
西日本 高速道路 株式会社 |
本州四国連絡 高速道路 株式会社 |
首都 高速道路 株式会社 |
阪神 高速道路 株式会社 |
計 | |||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
箇所数 | 調査対象 | 38 | 108 | 132 | 3 | 1 | 29 | 311 | |
うち希望あり | 19 | 37 | 53 | 2 | 1 | 25 | 137 | ||
面積(m2) | 調査対象 | 74,920 | 154,994 | 211,710 | 11,400 | 400 | 30,710 | 484,134 | |
うち希望あり | 46,460 | 51,541 | 68,670 | 5,500 | 400 | 27,490 | 200,061 |
さらに、前記アンケート調査の対象とした高架下等311か所のうち近隣の高架下等が占用許可を受け駐車場や公園等として既に有効活用されている193か所についてみると、表3のとおり、占用希望がある高架下等が100か所と5割を超えている状況となっていた(193か所に占める割合は51.8%、面積計124,205m2)。
表3 既に有効活用されている高架下等の近隣に係る占用希望状況
希望あり | 将来希望するかもしれない | 希望なし | 未回答 | 計 | |
---|---|---|---|---|---|
箇所数 | 100 (51.8%) |
32 (16.5%) |
38 (19.6%) |
23 (11.9%) |
193 (100.0%) |
面積(m2) | 124,205 | 49,444 | 52,485 | 34,576 | 260,710 |
このように、占用希望がある高架下等が多数見受けられているのに、貴機構は、前記のように、道路会社から未利用の高架下等の情報を十分得られていなかった。
そして、前記のとおり、貴機構が高架下等の占用を許可するためには、道路会社において道路管理上の支障の有無等を調査する必要があるため、占用希望者からの申請書の提出後、必ずしも直ちに占用許可できるものではないものの、前記の占用希望のある137か所について、占用許可した場合の年間の占用料を近隣の路線価を基に試算してみると、占用料試算年額(注3)は計約9910万円となる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
福岡県小郡市に所在する大分自動車道の小郡高架橋には、既に貴機構が占用を許可して駐輪場として有効活用されている高架下等のほかに未利用となっている高架下等(高架下等の面積2,580m2、占用料試算年額計約51万円)があり、近隣に駐車場が立地している。当該未利用となっている高架下等について、近隣に立地している駐車場を運営する会社2社にアンケート調査を実施したところ、うち1社から占用希望があり、貴機構が占用入札を行って落札者に占用許可を与えることによって占用料を徴することができると思料された。しかし、貴機構は道路会社から未利用の当該高架下等の情報を得るなどしていなかった。
貴機構は、自身のホームページに占用入札に付す箇所の高架下等に係る情報等を掲載しているものの、占用制度全般に係る広報や未利用の高架下等についての情報提供等を積極的に行っておらず、貴機構における占用希望を誘引するための取組は十分なものとなっていなかった。
現に、前記アンケート調査の結果をみると、前記の高架下等137か所に対して占用希望がある会社は、回答のあった81社のうち、51社(81社に占める割合は62.9%)であったが、このうち高架下等を有償で使用できる制度があることを知らなかった会社が表4のとおり、24社(51社に占める割合は47.0%)となっており、中には申請するための連絡先がわからないとの意見も見受けられた。
表4 高架下等を使用できる制度の周知状況
回答 |
未回答 | 計 | ||||
---|---|---|---|---|---|---|
希望する 高架下等あり |
将来希望するかもしれない 高架下等あり |
希望する 高架下等なし |
||||
知っている | 40 | 24 | 6 | 10 | 96 | 177 |
知らなかった | 37 | 24 | 3 | 10 | ||
未記入 | 4 | 3 | 1 | 0 | ||
計 | 81 | 51 | 10 | 20 |
(注) 「希望する高架下等あり」「将来希望するかもしれない高架下等あり」「希望する高架下等なし」の回答が重複した会社があった場合、「希望する高架下等あり」の社数に計上し、「将来希望するかもしれない高架下等あり」「希望する高架下等なし」の回答が重複した会社があった場合、「将来希望するかもしれない高架下等あり」の社数に計上した。
(改善を必要とする事態)
未利用の高架下等の情報を得られていない事態及び占用制度全般に係る広報や未利用の高架下等についての情報提供等の積極的な高架下等の有効活用のための方策を講じていないなどの事態は適切ではなく、改善を図る要があると認められる。
(発生原因)
このような事態が生じているのは、貴機構において、次のことなどによると認められる。
貴機構は、第4期中期計画において、占用入札を積極的に実施して高架下等の有効活用に努めることとしている。ついては、貴機構において、高架下等の有効活用をより推進するよう、次のとおり改善の処置を要求する。