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固定資産の減損額に係る会計処理に当たり、適正な科目に減損額が計上されていなかったことから、財務諸表の表示が適正を欠いていたもの[国立大学法人山梨大学](253)


科目
貸借対照表
資本剰余金
損益外減損損失累計額
損益計算書
臨時損失
減損損失
部局等
国立大学法人山梨大学
減損処理の概要
固定資産のサービス提供能力が当該資産の取得時の想定に比べ著しく減少しその回復が見込めないなどの場合に、当該資産の帳簿価額を適正な金額まで減額するもの
減損処理した資産
附属病院の診療用の建物等
上記に対する減損額
455,543,411円(平成27年度)
上記の減損額について、財務諸表において過大又は過小に表示されていた額
貸借対照表(平成27年度)
資本剰余金
損益外減損損失累計額 (過大)455,543,411円
損益計算書(平成27年度)
臨時損失
減損損失 (過小)455,543,411円

1 財務諸表の作成

(1) 財務諸表の作成の概要

国立大学法人等は、国立大学法人法(平成15年法律第112号)によれば、毎事業年度(以下、事業年度を「年度」という。)、貸借対照表、損益計算書、利益の処分又は損失の処理に関する書類その他文部科学省令で定める書類及びこれらの附属明細書(以下「財務諸表」という。)を作成し、当該年度の終了後3月以内に文部科学大臣に提出し、その承認を受けなければならないとされている。

また、国立大学法人等の会計については、国立大学法人法及び国立大学法人法施行規則(平成15年文部科学省令第57号)に基づき、国立大学法人会計基準(平成16年文部科学省告示第37号。以下「会計基準」という。)等に従うものとされ、会計基準等に定められていない事項については一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従うものとされている。

国立大学法人等が作成した財務諸表は、会計基準等に基づき、国民その他の利害関係者に対し、国立大学法人等の財政状態及び運営状況に関する説明責任を果たし、自己の状況を客観的に把握する観点から、その作成及び公表が義務付けられており、国立大学法人法に基づく国立大学法人評価にも利用されている。

(2) 固定資産の減損の概要

会計基準等によれば、国立大学法人等が保有する固定資産については、固定資産に現在期待されるサービス提供能力が当該資産の取得時に想定されたサービス提供能力に比べ著しく減少し将来にわたりその回復が見込めないなどの場合は、貸借対照表に計上される固定資産の過大な帳簿価額を適正な金額まで減額すること及び国立大学法人等の業務運営状況を明らかにすることを目的として、減損処理を行うこととされている。

国立大学法人等が保有する固定資産の減損処理に係る取扱いについては、「固定資産の減損に係る国立大学法人会計基準」及び「固定資産の減損に係る国立大学法人会計基準注解」(平成17年12月22日設定。以下「減損会計基準」という。)等を適用することとなっており、減損会計基準によれば、固定資産が使用されている業務の実績が、中期計画等の想定に照らし、著しく低下していたり、国立大学法人等自らが、固定資産の全部又は一部につき、使用しないという決定を行ったりしているなど、固定資産に減損が生じている可能性を示す事象の有無を把握した上で、減損を認識した場合は、当該固定資産の帳簿価額を固定資産の時価から処分費用見込額を控除して算定される額等まで減額する会計処理を行わなければならないこととされている。

また、国立大学法人等が保有する固定資産のうち、その減価に対応すべき収益の獲得が予定されないものとして特定された償却資産(以下「特定償却資産」という。)とそれ以外の償却資産(以下「非特定償却資産」という。)に係る減損額の会計処理は、それぞれ次のとおり行うこととされている。

① 特定償却資産については、減損が国立大学法人等が中期計画等で想定した業務運営を行ったにもかかわらず生じたものである場合には、当該減損額を貸借対照表の損益外減損損失累計額の科目により資本剰余金の控除項目として計上する。

② 非特定償却資産については、当該減損額を損益計算書の減損損失の科目により当期の臨時損失として計上する。なお、貸借対照表の資産見返負債(注)を計上している非特定償却資産については、減損が国立大学法人等が中期計画等で想定した業務運営を行ったにもかかわらず生じたものである場合には、上記によらず資産見返負債を減額する。

(注)
資産見返負債  国立大学法人等が固定資産を取得した際、取得した固定資産が運営費交付金等により支出された場合で、当該資産が償却資産等であるときに、その金額を運営費交付金債務等から貸借対照表の資産見返運営費交付金等として振り替えた負債

2 検査の結果

本院は、正確性等の観点から、固定資産の減損額に係る会計処理は減損会計基準等に沿って行われ、財務諸表に適正に表示されているかなどに着眼して、国立大学法人山梨大学(以下「山梨大学」という。)において、減損額の会計処理に関する書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

検査したところ、次のとおり適切とは認められない事態が見受けられた。

山梨大学は、病院再開発整備計画に基づき、平成27年度に、附属病院の診療用の建物等の一部について使用しないという決定を行ったことから、減損を認識し、表1の左欄のとおり、同年度の貸借対照表の損益外減損損失累計額に減損額455,543,411円を計上するなどしていた。

しかし、当該建物等は、山梨大学において、非特定償却資産として管理されており、また、資産見返負債を計上している非特定償却資産にも該当しないため、前記の非特定償却資産についての減損額の会計処理のとおり当期の臨時損失として計上すべきであり、正しくは表2の右欄のとおり、損益計算書の減損損失に455,543,411円を計上しなければならないものであった。

このため、表1の左欄のとおり、27年度の貸借対照表の損益外減損損失累計額が455,543,411円過大に表示され、表2の左欄のとおり、損益計算書に減損損失が表示されておらず、同額過小となっていた。

表1 貸借対照表

(単位:千円)
山梨大学が行った表示
減損会計基準等に準拠した表示
II 資本剰余金   II 資本剰余金  
資本剰余金
12,948,061
資本剰余金
12,948,061
損益外減価償却累計額(-)
11,441,130
損益外減価償却累計額(-)
11,441,130
損益外減損損失累計額(-)
456,871(注)
損益外減損損失累計額(-)
1,328

(注) 他の損益外減損損失累計額1,328千円を含む。

表2 損益計算書

(単位:千円)
山梨大学が行った表示
減損会計基準等に準拠した表示
臨時損失 臨時損失
固定資産除却損
11,992
固定資産除却損
11,992
固定資産売却損
10,935
固定資産売却損
10,935
   
減損損失
455,543

したがって、山梨大学の27年度の財務諸表は、貸借対照表の損益外減損損失累計額及び損益計算書の減損損失が適正に表示されておらず、不当と認められる。

このような事態が生じていたのは、山梨大学において、減損会計基準等に対する理解が十分でなかったことなどによると認められる。