日本郵便株式会社(平成24年9月30日以前は郵便事業株式会社及び郵便局株式会社。以下「日本郵便」という。)は、日本郵便株式会社法(平成17年法律第100号)等に基づき、郵便業務、窓口業務等を実施しており、これらの業務を実施するために、全国に13の支社と支社管内に計2万を超える郵便局を設置している。
そして、郵便局には、平日の一般的な営業時間帯に切手、はがきなどの販売、郵便物、荷物の引受けなどの業務を行う窓口(以下「郵便窓口」という。)並びに銀行及び保険の業務を行う窓口がある。また、郵便局のうち1,000を超える郵便局は、郵便物等の取集、配達等の業務を行う部門(以下「集配部門」という。)が設置されている郵便局(以下「集配局」という。)となっており、多くの集配局には、平日の郵便窓口の営業時間帯以外及び休日の一部の時間帯に、郵便窓口で行っている業務を行う窓口が設置されている。
日本郵便は、顧客との取引のために切手、はがきなどを販売した際に領収書を発行したり、別後納郵便物等を引き受けた際に、重量等を計測して適正な料金を決定(以下「重量換算」という。)するとともに、その結果として作成される帳票を出力したりするなどの機能を有する郵便窓口端末機(以下「窓口端末機」という。)を各郵便局の郵便窓口及び集配部門に、最低でも各1台配備して運用しており、その総数は、26,117台となっている。日本郵便本社は、27、28両年度に窓口端末機を総額109億7304万余円(1台当たりの平均単価420,149円)で調達し更新しており、それらの各郵便局への配備に関する権限を有している。
そして、29年度末における窓口端末機の用途ごとの内訳は、郵便窓口で運用しているものが23,440台、集配部門(集配業務を廃止したものを含む。以下同じ。)が2,038台、訓練専門機、予備機等が639台となっており、30年度末では、それぞれ、23,666台、1,991台、460台となっている。
(検査の観点、着眼点、対象及び方法)
日本郵便は、近年、郵便物等の引受数が減少傾向となっていることを踏まえ、窓口業務等の効率化を推進していくこととしており、このため、各郵便局における窓口端末機を利用状況に応じて効率的に配備して、最大限有効活用することが重要である。
そこで、本院は、経済性、効率性等の観点から、日本郵便本社は、窓口端末機について、郵便窓口及び集配部門それぞれの利用状況に応じて適切に調達したり、配備したりしているかなどに着眼して検査した。
検査に当たっては、前記の窓口端末機26,117台を対象として、日本郵便本社並びに11支社管内の181集配局及び8郵便局において、関係書類により窓口端末機の利用状況を確認するなどして会計実地検査を行うとともに、日本郵便本社から、29、30両年度の窓口端末機の使用実績が確認できる資料の提出を受け、これを集計し、分析するなどして検査した。
(検査の結果)
日本郵便本社は、18年7月から28年12月までの間に使用していた窓口端末機(以下「従前機」という。)を更新するために、24年7月及び27年6月に現行の窓口端末機の調達に係る契約を締結し、仕様書に基づいた機器の詳細な設計、製作等を行い、その後、28年2月から同年12月までの間に現行の窓口端末機への更新を順次行っていた。当該更新に当たっては、単に全郵便局で使用していた従前機の全てについて、これを更新するために必要となる台数を調達していた。
前記の窓口端末機26,117台は、多くの郵便窓口において1台のみの配備としていた一方、多くの集配部門において複数台を配備していたことから、集配部門の配備状況をみたところ、29年度末時点で1,086局に2,038台が配備されていた。このうち窓口端末機が複数台配備されていた集配局は832局の1,773台(集配業務を廃止したなどの14局の25台を除く。)となっていた。
そして、それらの使用実績を確認するために、全ての窓口端末機における領収書の発行枚数(以下「取扱件数」という。)に係るデータが蓄積されているシステム(以下「窓口端末システム」という。)の29年度分のデータを基に分析したところ、次のとおりとなっていた。
各郵便局において、窓口端末機は、顧客対応のために最低限1台は必要であることから、前記の複数台配備されていた集配局の窓口端末機1,773台から取扱件数が多い窓口端末機832台を最低限必要な1台目として除くことにして、残りの941台の取扱件数についてみると、表のとおり、日本郵便本社が、2台目配備の目安としている1か月当たり平均取扱件数3,500件/台以下のものが大半を占めている状況となっていた。このうち、1年間で取扱件数が全くない窓口端末機は244台となっており、重量換算等の使用状況についてみても、121台(調達価格相当額5083万余円)については、使用実績が全くないものとなっていた。
表 窓口端末システムのデータによる窓口端末機の平成29年度における取扱件数の状況
1か月当たりの平均取扱件数 | 台数 | 計に占める割合(%) |
---|---|---|
0件 | 244 | 25.9 |
0件超500件以下 | 245 | 26.0 |
500件超1,000件以下 | 121 | 12.8 |
1,000件超1,500件以下 | 89 | 9.4 |
1,500件超2,000件以下 | 73 | 7.7 |
2,000件超2,500件以下 | 72 | 7.6 |
2,500件超3,000件以下 | 48 | 5.1 |
3,000件超3,500件以下 | 24 | 2.5 |
3,500件超 | 25 | 2.6 |
計 | 941 | 100.0 |
(注) 割合は、端数処理のため数値を集計しても計と一致しない。
一方で、29年度末時点で郵便窓口に窓口端末機を配備している郵便局は20,059局あり、このうち、上記の1か月当たり平均取扱件数3,500件/台を超える取扱件数がある郵便局は248局となっていた。そして、郵便窓口数より窓口端末機の台数が少ない郵便局では、窓口端末機1台で複数の窓口での顧客対応を行うなどしていることから、集配部門に配備されていて使用実績が全くないなどの2台目以降の窓口端末機については、取扱件数が多い郵便局へ移設することにより、郵便窓口の業務の効率化に寄与するものとなる。
このように、日本郵便本社は、窓口端末システムのデータにより、窓口端末機ごとの取扱件数を把握して、これを基に調達台数を決定することが可能であるのに、単に従前機の全てを更新するとして、これに必要な台数を調達していた結果、前記の121台は使用実績が全くない状況となっていた事態は適切ではなく、改善の必要があると認められた。
(発生原因)
このような事態が生じていたのは、日本郵便本社において、窓口端末システムのデータにより窓口端末機ごとの取扱件数を確認し、これを活用するなどして使用実績に応じて窓口端末機を調達することなどについての認識が欠けていたことによると認められた。
上記についての本院の指摘に基づき、日本郵便本社は、使用実績が全くない窓口端末機の移設に着手するとともに、令和元年度から、年1回、全国の郵便局の窓口端末機の取扱件数を窓口端末システムより抽出し、各支社へ情報提供をすることとし、これに基づき、使用実績が全くないなどの窓口端末機がある場合には、取扱件数の多い郵便局に積極的に移設するよう各支社に対して、元年9月に通知を発して、次世代機の調達に当たって、適切な配備台数となるよう、窓口端末システムのデータを活用することとする処置を講じた。