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  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第3節 不当事項に係る是正措置等の検査の結果

第1 検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況について


検査対象
58省庁等
是正措置の概要
本院が不当事項として検査報告に掲記したものについて、国損を回復するなどのために省庁等が債権等を管理して債務者等から返還させるなどの是正措置を講ずるもの
是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
37省庁等、367件 9,297,693,767円
(検査報告 昭和21年度~平成29年度)
上記のうち金銭を返還させる是正措置が未済となっている省庁等、件数及び金額
37省庁等、360件 9,166,292,139円

1 不当事項に係る是正措置の概要

本院は、会計検査院法第29条第3号の規定に基づき、検査の結果、法律、政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項を不当事項として検査報告に掲記している。

省庁及び団体(以下「省庁等」という。)は、検査報告に掲記された不当事項に対して、省庁等が講じた又は講ずる予定の是正措置について説明する書類を作成しており、この書類は「検査報告に関し国会に対する説明書」として毎年度国会に提出されている。

検査報告に掲記された不当事項に係る是正措置には次の方法がある。

  • ① 補助金、保険給付金等の過大交付、租税、保険料等の徴収不足及び不正行為に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る返還額等を債権として管理して、返還させたり徴収したりなどすることによる是正措置(以下「金銭を返還させる是正措置」という。)
  • ② 租税及び保険料の徴収過大等に係る不当事項に対して、省庁等が指摘に係る還付額を還付等することによる是正措置(以下「金銭を還付する是正措置」という。)
  • ③ 構造物の設計及び施工が不適切となっている事態等に係る不当事項に対して、省庁等が手直し工事、体制整備等を行うことによる是正措置(以下「手直し工事等による是正措置」という。)
  • ④ 会計経理の手続が法令等に違反しているが省庁等に実質的な損害が生じているとは認められないなどの不当事項に対して、同様の事態が生じないよう指導の強化を図るなどの再発防止策を実施することによる是正措置(以下「再発防止策による是正措置」という。)

2 検査の結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

検査報告に掲記した不当事項については、省庁等において速やかに不当な事態の是正が図られるべきであるが、特に金銭を返還させる是正措置を必要とするものについては、金銭債権としての性格上、管理が長期間にわたるものがあることも想定される。

そこで、本院は、合規性等の観点から、適切な債権管理が行われることなどにより、是正措置が適正に講じられているかに着眼して検査した。そして、昭和21年度から平成29年度までの検査報告に掲記した不当事項について、関係する58省庁等における令和元年7月末現在の是正措置の状況を対象として、32省庁等において会計実地検査を行うとともに、残りの26省等については、報告を求めて、その報告内容を確認するなどの方法により検査した。

(検査の結果)

昭和21年度から平成29年度までの検査報告に掲記した不当事項についてみると、是正措置が未済となっているものが37省庁等における367件9,297,693,767円(注1)ある。このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが37省庁等における360件9,166,292,139円、金銭を還付する是正措置を必要とするものが2団体(注2)における3件2,028,550円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが4省(注3)における5件129,373,078円ある。これを、平成29年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る状況と、平成28年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る状況とに分けて記述すると、次のとおりである。

(注1)
367件9,297,693,767円  1件について複数の方法による是正措置が必要なものがあるため、それぞれの是正措置の件数を合計しても367件とは一致しない。また、指摘金額の一部でも是正措置が講じられた場合は、当該金額を是正措置が完了した金額として計上しているが、是正措置が全て講じられるまでは是正措置が完了した件数として計上していない。上記件数及び金額の記載方法は、本文及び表(それぞれの注を含む。)において同じ。
(注2)
2団体  独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター
(注3)
4省  農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省

(1) 平成29年度決算検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置の状況

検査の結果、平成29年度決算検査報告に掲記した不当事項292件(指摘金額の合計7,554,099,884円)のうち、274件7,236,699,875円(注4)については令和元年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの18件317,400,009円については元年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが17件246,284,941円あり、その状況は表1のとおりとなっている。そして、手直し工事等による是正措置を必要とするものが1省(注5)における1件71,115,068円ある。

(注4)
274件7,236,699,875円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが245件6,216,614,093円あり、このうち、不納欠損等として整理したものが1,402,000円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが2件51,468,862円、手直し工事等による是正措置が完了したものが25件730,437,593円、再発防止策による是正措置が講じられたものが7件238,179,327円ある。
(注5)
1省  環境省

表1 平成29年度決算検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの  
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
内閣府(内閣府本府) 26 308,719,747 26 308,719,747
総務省 46 1,922,432,069 46 1,922,432,069
法務省 1 4,510,180 1 4,510,180
財務省 1 262,736,100 0 259,983,200 1 2,752,900 1 2,752,900
文部科学省 30 1,049,743,521 29 994,700,521 1 55,043,000 1 55,043,000
厚生労働省 87 2,134,628,388 77 2,012,289,999 10 122,338,389 10 122,338,389
農林水産省 17 172,107,942 17 172,107,942
経済産業省 4 26,060,694 4 26,060,694
国土交通省 21 190,325,332 21 190,325,332
環境省 11 154,467,350 8 103,497,000 3 50,970,350 3 50,970,350
防衛省 1 13,838,825 1 13,838,825
省庁計 245 6,239,570,148 230 6,008,465,509 15 231,104,639 14 228,351,739 1 2,752,900
日本私立学校振興・共済事業団 9 188,051,000 9 188,051,000
日本銀行 1 3,750,000 1 3,750,000
全国健康保険協会 1 14,782,088 0 4,469,361 1 10,312,727 1 10,312,727
独立行政法人福祉医療機構 1 8,056,000 1 8,056,000
国立大学法人東京大学 1 4,867,575 1 4,867,575 1 4,867,575
株式会社商工組合中央金庫 4 3,822,223 4 3,822,223
団体計 17 223,328,886 15 208,148,584 2 15,180,302 2 15,180,302
合計 262 6,462,899,034 245 6,216,614,093 17 246,284,941 16 243,532,041 1 2,752,900

(注) 令和元年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、同日現在の名称としている。

(2) 平成28年度以前の検査報告に掲記した不当事項に係る是正措置等の状況

ア 是正措置の状況

検査の結果、昭和21年度から平成28年度までの検査報告に掲記した不当事項において、30年7月末現在で是正措置が未済となっていた411件10,213,970,889円のうち、62件1,233,677,131円(注6)については令和元年7月末までに是正措置が完了している。

一方、残りの349件8,980,293,758円については元年7月末現在で是正措置が未済となっていて、このうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするものが343件8,920,007,198円あり、その状況は表2のとおりとなっている。そして、金銭を還付する是正措置を必要とするものが2団体(注7)における3件2,028,550円、手直し工事等による是正措置を必要とするものが3省(注8)における4件58,258,010円ある。

(注6)
62件1,233,677,131円  金銭を返還させる是正措置が完了したものが55件878,069,964円あり、このうち、不納欠損等として整理したものが24件532,489,244円ある。このほか、金銭を還付する是正措置が完了したものが2件55,117円、手直し工事等による是正措置が完了したものが5件261,648,032円、再発防止策による是正措置が講じられたものが12件93,904,018円ある。
(注7)
2団体  独立行政法人国立病院機構、国立研究開発法人国立がん研究センター
(注8)
3省  農林水産省、国土交通省、防衛省

表2 平成28年度以前の検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置の状況

(単位:件、円)
省庁等名 金銭を返還させる是正措置を必要とするもの 是正措置が完了しているもの 是正措置が未済となっているもの  
返還させる必要があるもの 徴収不足のため徴収すべきもの(租税、保険料等)
不正行為 左以外のもの(補助金、保険給付金等)
件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額 件数 金額
裁判所 1 350,000 1 350,000 1 350,000
内閣府(警察庁) 1 2,214,000 1 2,214,000 1 2,214,000
総務省 5 34,920,520 4 33,823,320 1 1,097,200 1 1,097,200
法務省 10 820,030,112 1 19,090,000 9 800,940,112 8 800,613,112 1 327,000
外務省 2 22,844,049 2 22,844,049 1 11,914,499 1 10,929,550
財務省 12 365,629,122 1 6,548,739 11 359,080,383 6 319,414,082 5 39,666,301
厚生労働省 140 2,077,685,499 18 233,648,496 122 1,844,037,003 10 134,982,149 105 1,536,935,419 7 172,119,435
農林水産省 14 303,476,874 5 195,218,638 9 108,258,236 7 101,682,363 2 6,575,873
経済産業省 9 99,729,706 0 693,299 9 99,036,407 1 11,919,284 7 85,660,332 1 1,456,791
国土交通省 6 90,884,237 6 90,884,237 5 86,971,927 1 3,912,310
環境省 3 210,377,000 1 18,556,000 2 191,821,000 2 191,821,000
防衛省 9 75,410,783 1 1,448,941 8 73,961,842 6 69,639,367 2 4,322,475
省庁計 212 4,103,551,902 31 509,027,433 181 3,594,524,469 39 1,438,018,420 126 1,936,360,649 16 220,145,400
株式会社日本政策金融公庫 1 4,759,000 1 4,759,000
独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門 1 8,362,535 1 8,362,535 1 8,362,535
東日本高速道路株式会社 1 4,402,008 1 4,402,008 1 4,402,008
中日本高速道路株式会社 1 191,940,481 1 191,940,481
全国健康保険協会 2 10,270,679 0 2,687,591 2 7,583,088 2 7,583,088
独立行政法人造幣局 1 83,444,600 1 83,444,600 1 83,444,600
独立行政法人国際交流基金 1 3,709,227 0 90,380 1 3,618,847 1 3,618,847
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構 1 5,475,000 1 5,475,000
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 1 374,000 0 20,000 1 354,000 1 354,000
独立行政法人自動車事故対策機構 1 4,798,754 1 4,798,754 1 4,798,754
独立行政法人国立病院機構 2 26,280,519 0 64,414 2 26,216,105 1 791,994 1 25,424,111
独立行政法人中小企業基盤整備機構 1 578,061 1 578,061 1 578,061
国立研究開発法人国立がん研究センター 3 31,423,181 3 31,423,181 3 31,423,181
国立研究開発法人国立国際医療研究センター 1 30,838,541 0 7,595,899 1 23,242,642 1 23,242,642
国立研究開発法人国立長寿医療研究センター 1 500,000 1 500,000
国立大学法人弘前大学 1 129,122 1 129,122
国立大学法人岩手大学 1 344,737 1 344,737
国立大学法人筑波大学 2 10,436,563 1 125,484 1 10,311,079 1 10,311,079
国立大学法人埼玉大学 1 22,395 1 22,395
国立大学法人東京医科歯科大学 1 210,981 1 210,981
国立大学法人金沢大学 1 182,868 1 182,868
国立大学法人浜松医科大学 1 502,272 1 502,272
国立大学法人三重大学 1 127,008 1 127,008
国立大学法人京都大学 1 17,168,650 0 720,000 1 16,448,650 1 16,448,650
国立大学法人大阪大学 1 200,000 1 200,000 1 200,000
国立大学法人奈良教育大学 1 8,124,000 0 108,000 1 8,016,000 1 8,016,000
国立大学法人広島大学 1 4,622,926 1 4,622,926
国立大学法人山口大学 1 120,179,462 1 120,179,462 1 120,179,462
国立大学法人佐賀大学 1 5,415,150 0 141 1 5,415,009 1 5,415,009
国立大学法人長崎大学 1 13,201 1 13,201
国立大学法人宮崎大学 1 82,395 1 82,395
日本放送協会 1 44,546,640 1 44,546,640 1 44,546,640
東日本電信電話株式会社 1 34,903,995 0 60,000 1 34,843,995 1 34,843,995
日本郵便株式会社 6 784,052,527 0 840,000 6 783,212,527 4 710,188,940 2 73,023,587
株式会社ゆうちょ銀行 97 3,263,150,858 3 22,874,580 94 3,240,276,278 94 3,240,276,278
株式会社かんぽ生命保険 65 990,111,124 11 124,633,656 54 865,477,468 54 865,477,468
独立行政法人農業者年金基金 3 2,841,800 0 310,000 3 2,531,800 3 2,531,800
団体計 186 5,694,525,260 24 369,042,531 162 5,325,482,729 144 5,031,316,947 12 164,294,903 6 129,870,879
合計 398 9,798,077,162 55 878,069,964 343 8,920,007,198 183 6,469,335,367 138 2,100,655,552 22 350,016,279
  • 注(1) 平成30年8月1日から令和元年7月31日までの是正措置の状況を記載しており、省庁等名は、元年7月31日現在の名称としている。
  • 注(2) 日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険に係る債権は、日本郵政公社が平成19年10月1日に解散したことに伴い日本郵政公社が管理していた不当事項に係る債権を承継したものである。同債権については、複数の会社に承継されているものがあるため、各欄の団体の件数を合計しても、団体計には一致しない。
  • 注(3) 是正措置が未済となっているもののうち、独立行政法人国際協力機構有償資金協力部門、独立行政法人国際交流基金、独立行政法人中小企業基盤整備機構、東日本電信電話株式会社、日本郵便株式会社、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険の全件に係る債権については、償却等により資産計上から除外されているが、これらの団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

イ 金銭を返還させる是正措置が未済となっているものの現状

昭和21年度から平成28年度までの検査報告に掲記した不当事項のうち、金銭を返還させる是正措置を必要とするもので令和元年7月末現在で是正措置が未済となっているものが、2(2)アのとおり、343件8,920,007,198円ある。これらに対する直近1年間(平成30年8月1日から令和元年7月31日まで)の是正措置の進捗状況及び債務者等の状況を態様別に示すと、次のとおりである(注9)

(注9)
債務者等が複数存在するため1件に複数の態様がある場合は、それぞれの態様に件数を計上しており、また、株式会社ゆうちょ銀行及び株式会社かんぽ生命保険については各社ごとに件数を計上しているため態様別の件数の計は343件と一致しない。
(ア) 債務者等が分割納付等を実施中であるもの省庁

118件 2,588,870,671円
団体 121件 3,546,901,543円

これらは、分割納付等が行われているものであるが、債務者等の資力により是正措置の進捗の度合いは区々となっている。また、これらに係る直近1年間の返還額(注10)は、省庁101,812,211円、団体22,922,615円となっている。

(注10)
直近1年間の返還額  元本に充当された額のみを含めており、延滞金等に充当された額は含めていない。
(イ) 債務者等に対する督促、資産調査等が行われているものの是正措置が進捗していないもの

省庁 77件 874,824,724円
団体 59件 1,688,047,616円

これらは、是正措置の完了に向けて督促、資産調査等が行われているものの、是正措置が進捗していないものである。

このうち、団体における49件1,474,218,623円に係る債権は、償却等により資産計上から除外されているが、団体は、当該債権の請求権を放棄しておらず、債権自体を引き続き管理している。

(ウ) 債務者等が行方不明であるなどのため納付等の是正措置が進捗していないもの

省庁 18件 130,829,074円
団体 5件 90,533,570円

これらは、債務者等が行方不明又は収監中であるなどの理由により、是正措置が進捗していないものである。

3 本院の所見

2(2)イのとおり、是正措置が未済となっているものの中には、債務者等の資力が十分でなかったり、債務者等が行方不明であったりなどしているため、その回収が困難となっているものも存在するが、省庁等において、引き続き適切な債権管理を行うことなどにより、是正措置が適正かつ円滑に講じられることが肝要である。

本院は、是正措置が未済となっているものの状況について今後とも引き続き検査していくこととする。