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  • 平成30年度|
  • 第4章 国会及び内閣に対する報告並びに国会からの検査要請事項に関する報告等|
  • 第2節 国会からの検査要請事項に関する報告

<参考:報告書はこちら>

第1 中心市街地の活性化に関する施策について


要請を受諾した年月日
平成29年6月6日
検査の対象
内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省
検査の内容
中心市街地の活性化に関する施策についての検査要請事項
報告を行った年月日
平成30年12月21日

1 検査の背景及び実施状況

(1) 検査の要請の内容

本院は、平成29年6月5日、参議院から、国会法第105条の規定に基づき下記事項について会計検査を行いその結果を報告することを求める要請を受けた。これに対し同月6日検査官会議において、会計検査院法第30条の3の規定により検査を実施してその検査の結果を報告することを決定した。

一、会計検査及びその結果の報告を求める事項

  • (一) 検査の対象

    内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省

  • (二) 検査の内容

    中心市街地の活性化に関する施策に係る次の各事項

    • ① 中心市街地の活性化に関する施策の実施体制及び実施状況
    • ② 中心市街地の活性化に関する施策の有効性

(2) 検査の観点、着眼点、対象及び方法

本院は、9府省庁等(注1)、都道府県及び市町村における中心市街地の活性化に関する施策の実施体制及び実施状況、施策の有効性等について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次のような点に着眼して検査を実施した。

(注1)
9府省庁等  内閣官房、内閣府、警察庁、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省

ア 中心市街地の活性化に関する施策の実施体制及び実施状況

(ア) 施策を確実に実施するための事業推進体制の整備や充実が図られ、国、都道府県、市町村、中心市街地活性化協議会(以下「協議会」という。)等の連携や調整は適切に行われているか。

(イ) 市町村が作成して、認定された中心市街地の活性化に関する施策を総合的かつ一体的に推進するための基本的な計画(以下、市町村が作成する計画を「基本計画」といい、認定された基本計画を「認定基本計画」という。)に記載された事業(以下「認定事業」という。)は、認定基本計画期間中に円滑に実施されているか、認定基本計画期間終了後においても、継続して実施されているか。

(ウ) 大型店(大規模集客施設(注2)又は大規模小売店舗(注3)のことをいう。以下同じ。)の立地抑制や誘導を図るために、特別用途地区の設定や大規模小売店舗立地法(平成10年法律第91号。以下「大店立地法」という。)の特例措置を活用した対策は適切に行われているか。

(エ) 評価のための指標は、適切に設定され、測定されているか、認定基本計画は適切に見直されているか。

(注2)
大規模集客施設  劇場、映画館、店舗、飲食店等の用途に供する建築物でその用途に供する部分の床面積の合計が10,000m2を超えるもの
(注3)
大規模小売店舗  一の建物であって、その建物内の小売業を行うための店舗の用に供される床面積の合計が1,000m2を超えるもの

イ 中心市街地の活性化に関する施策の有効性

(ア) 国の支援措置は、市町村が活用しやすいように設定され、認定基本計画に適切に位置付けられて有効に活用されているか。

(イ) 中心市街地の活性化に関する施策の実施は、都市機能の増進及び経済活力の向上に関する指標の改善に寄与しているか。

(ウ) 認定基本計画の評価の結果は、中心市街地の活性化の状況を適切に反映した有効なものとなっているか。

本院は、18年8月の中心市街地の活性化に関する法律(平成10年法律第92号。以下「中心市街地活性化法」という。)の施行から28年度末までの間に認定を受けた141市の211計画に基づく中心市街地の活性化に関する施策の取組(事業費3兆0847億余円。うち国庫負担額8700億余円)を対象として検査を実施した。

検査に当たっては、9府省庁等、24道県及び90市(6政令指定都市、30中核市(特例市を含む。以下同じ。)及びその他54市(注4))において436人日を要して会計実地検査を行い、認定に当たっての各種申請書や実績報告書等の提出を受けて、それらの内容等を確認するとともに、担当者等から説明を聴取したり、現地の状況を確認したりするなどしたほか、公表されている資料を活用して分析した。また、上記以外の22都府県及び51市(3政令指定都市、14中核市及びその他34市)から中心市街地の活性化に係る認定事業の実施状況に関する調書を徴するなどして把握した内容を精査し、分析した。

(注4)
政令指定都市、中核市及びその他の市の区分は、平成28年度末時点で整理している(以下同じ。)。

2 検査の結果

(1) 中心市街地の活性化に関する施策の実施体制及び実施状況

ア 中心市街地の活性化に資する施策の実施体制

(ア) 国における施策の実施及び支援の体制
a 中心市街地活性化本部の会議の開催状況等

中心市街地活性化本部の会議及び地域活性化統合本部会合の28年度末までの開催状況は、計11回となっている。

b 内閣府地方創生推進事務局

28年度においては、内閣府地方創生推進事務局の職員のうち、10人が中心市街地の活性化に係る業務を行っている。

c 国の支援措置

支援措置は、①中心市街地活性化法に定める特別の措置(以下「法定措置」という。)、②中心市街地再活性化対策に要する経費の一部に特別交付税を措置するなど、基本計画の認定を要件として支援の対象、支援対象項目の拡大又は支援要件が緩和されるなどの認定と連携した特例措置(以下「拡大支援措置」という。)、③社会資本整備総合交付金(道路事業)等、中心市街地の活性化以外にも活用が可能な支援措置(以下「通常支援措置」という。)、④拡大支援措置や通常支援措置以外の中心市街地の活性化に資するその他の支援措置(以下「その他の措置」という。)に区分される。

市町村が計画的かつ効果的に支援措置を活用しやすいように、各府省庁の支援措置が継続して、中心市街地活性化法第8条第1項の規定に基づき定められた「中心市街地の活性化を図るための基本的な方針」(平成18年9月閣議決定。以下「基本方針」という。)等に設定されているかみたところ、所管府省の事業の見直しや予算上の制約等により、単年度のみの実施となり継続して設定されていない支援措置が4府省で10措置見受けられた。

(イ) 都道府県における施策の実施及び支援の体制

会計実地検査を行った24道県の市町村に対する助言の実施状況をみたところ、8道県においては、協議会の協議の場とは別に、基本計画に関する市からの相談に対応したり、道県の要望等について意見を述べたりなどして、市が基本計画の認定を申請する前に助言を行っていた。一方、中心市街地活性化法に基づいて認定基本計画の送付を市から受けた後に認定基本計画の円滑かつ確実な実施に関して助言を行っていた道県は見受けられなかった。

(ウ) 市町村における施策の実施体制
a 市町村の推進体制の整備

(a) 中活課室の設置状況等

90市の134計画(同一の市が複数期に実施している認定基本計画については、それぞれ1計画と整理している。以下同じ。)に係る市町村の中心市街地活性化に係る事業を担当する関係部局を統括する組織(以下「中活課室」という。)の設置状況をみたところ、認定時点で中心市街地の活性化を専門に担当する組織(以下「専担課室」という。)を設置していたのは、44市の61計画となっており、54市の73計画では人的体制を整えることなどが困難であるなどとして設置されていなかった(注5)

(注5)
複数期の認定基本計画を実施している市では、I期計画では専担課室を設置していないが、II期計画では専担課室を設置している場合があるため、専担課室を設置している市と設置していない市の合計は90市とならない。

基本計画の認定時点で専担課室を設置していた44市の61計画について、28年度末における専担課室の存続状況をみたところ、11市の11計画では認定基本計画期間中に廃止していた。

(b) 中活課室の職員数

中活課室には、専担課室と中心市街地の活性化に係る業務以外の業務を兼務する組織(以下「兼務課室」という。)があることから、90市の134計画について認定時点の1計画当たりの専担課室と兼務課室のそれぞれの職員数をみたところ、44市の61計画に係る専担課室では、平均すると1計画当たり6.0人となっていたのに対して、54市の73計画に係る兼務課室では、平均すると1計画当たり3.9人となっていた。

(c) 事業実施課室の課室数及び職員数

90市の134計画の認定時点の1計画当たりの認定事業の実施を担当する課室(以下「事業実施課室」という。)数や職員数をみたところ、認定事業に関わった課室数は、平均すると1計画当たり13.1課室となっていた。認定事業に携わった職員数は、平均すると1計画当たり41.0人となっていた。

b 協議会の人的体制等

協議会は、市町村が作成しようとする基本計画や認定基本計画に基づく事業の実施に関して必要な事項その他中心市街地の活性化の総合的かつ一体的な推進に関して必要な事項を協議する重要な場であることから、都市機能の増進を総合的に推進するための調整を図るまちづくり会社(注6)等、経済活力の向上を総合的に推進するための調整を図る商工会議所等、認定事業を実施する事業者等、認定基本計画に基づく事業の実施に関して密接な関係を有する者、当該中心市街地をその区域に含む市町村等の多様な主体が構成員として参加している。

(注6)
まちづくり会社  良好な市街地を形成するためのまちづくりの推進を図る事業活動を行うことなどを目的として設立された会社

(a) 人的体制

90市の134計画に係る協議会の構成員数をみたところ、最多51者、最少10者、平均すると25.4者となっており、構成員の種類ごとの参加状況は、まちづくり会社や商工会又は商工会議所以外に、市もほとんどが協議会に参加していて、最も多い商工会又は商工会議所は90市の134計画、市は89市の133計画に係る協議会に参加していた。

タウンマネージャーを配置している39市の51計画に係る協議会の中には、認定基本計画期間中に、タウンマネージャーの配置を取りやめていて、タウンマネージャーの配置による組織の強化が十分図られていない状況が見受けられた。

また、18年度から28年度末までの間に破綻したまちづくり会社が3社あり、このうち2まちづくり会社は認定基本計画期間中に破綻していた。

(b) 協議会の開催状況

90市の134計画に係る協議会の1計画ごとの期間別平均開催回数をみたところ、基本計画の作成期間中は4.4回、認定基本計画期間中は8.2回であるのに対して、認定基本計画期間終了後は2.9回と活動実績に減少傾向が見受けられた。

c 市連絡調整会議の設置及び開催状況

90市の134計画に係る市町村の中心市街地活性化を担当する関係部局で構成される庁内の連絡調整のための会議等(以下「市連絡調整会議」という。)の設置状況をみたところ、67市の99計画(134計画に占める割合73.8%)において基本計画認定時点で設置していたが、24市の35計画(同26.1%)においては設置されていなかった。

基本計画認定時点で市連絡調整会議を設置していた67市の99計画について、1計画当たりの期間別の平均開催回数をみたところ、基本計画の作成期間中は平均6.6回、認定基本計画期間中は平均5.1回、認定基本計画期間終了後は平均0.7回と減少傾向が見受けられた。

(エ) 国、都道府県及び市町村間の連携状況

市町村が「高齢者、障害者等の移動等の円滑化の促進に関する法律」(平成18年法律第91号)に基づき、旅客施設を中心とした地区や高齢者、障害者等が利用する施設が集まった地区について作成している「移動等円滑化に係る事業の重点的かつ一体的な推進に関する基本的な構想」(以下「バリアフリー基本構想」という。)に関して、また、支援措置のうち、①中心市街地活性化法第37条において、大規模小売店舗の立地のための手続を実質的に適用除外する特例(以下「大店立地法の特例措置」という。)及び②特別交付税に関する省令(昭和51年自治省令第35号)等に基づき、認定基本計画に位置付けられた空き店舗対策、お祭りその他のイベント等のソフト事業(商店街振興組合、市民団体、第三セクター等が実施するものを含む。)に対して交付する特別交付税(以下「中活ソフト特別交付税」という。)に関して、関係部局間における連携状況をみたところ、次のとおりとなっていた。

a バリアフリー化に係る連携状況

市町村は、バリアフリー基本構想を作成し、高齢者等が日常生活等において利用する公共施設、商業施設等の生活関連施設間の道路等(以下「生活関連道路等」という。)のバリアフリー化を図ることにより、高齢者等の移動等の円滑化を通じて誰もが暮らしやすいまちづくりに資することとしている。

バリアフリー基本構想が作成されている41市の62計画におけるバリアフリー基本構想に基づく中心市街地内の生活関連道路等においてバリアフリー化を図る事業(以下「バリアフリー事業」という。)の実施状況をみたところ、38市の59計画に係る中心市街地区域内における生活関連道路等716か所のうち、28年度末までに25市の39計画における354か所ではバリアフリー事業が完了しておらず、28年度末時点においても事業実施の予定が具体化していないものが354か所のうち150か所となっていた。そして、認定基本計画に記載されている331か所についても184か所が未完了となっていた。バリアフリー事業を基本計画に位置付けるに当たっては、バリアフリー事業の担当課室と十分連携して、事業の具体的な実施時期等について検討した上で取り組む必要があると認められた。

b 大店立地法の特例措置に係る連携状況

90市の134計画について、大店立地法の特例措置の活用状況をみたところ、25市では活用していたものの、65市では活用していなかった。

大店立地法の特例措置を活用していなかった65市が所在する21道県において、基本計画の作成時に道県が市町村に対して、情報提供を行うなどしているかをみたところ、情報提供等を実施していたのは21道県中6道県となっており、15道県においては情報提供等を実施していなかった。

c 中活ソフト特別交付税の交付に係る連携状況等

(a) 中活ソフト特別交付税の概要

都道府県の交付税担当課は、市町村の財政担当課に算定対象となるソフト事業の有無を照会し、市町村の財政担当課は、中活課室、事業実施課室に中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業の有無、ソフト事業の財源内訳及び認定基本計画における位置付けを確認して、ソフト事業が記載された認定基本計画の写しなどの中活ソフト特別交付税の額の算定に用いる資料と合わせて算定対象となるソフト事業の有無の回答(以下、中活ソフト特別交付税の額の算定に用いる資料とソフト事業の有無の回答を合わせて「算定資料等」という。)を都道府県に提出している。そして、都道府県は、市町村から提出された算定資料等に基づいて中活ソフト特別交付税の額を算定している。

(b) 中活ソフト特別交付税の交付に係る連携状況

90市の134計画において中活ソフト特別交付税が交付されているソフト事業について認定基本計画における位置付けをみたところ、43市の53計画における432事業については、認定基本計画において拡大支援措置である中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業に位置付けられていなかった。

これは、上記の43市において、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業について財政担当課の理解が十分でなく、また、中活ソフト特別交付税について中活課室等の理解が十分でないまま、財政担当課と中活課室等との連携が十分図られていないことによるものと思料された。このため、43市は、上記ソフト事業の認定基本計画における位置付けの確認等をしないまま21道県に対して中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業として回答し、その回答に基づき算定された中活ソフト特別交付税の交付を国から受けていた。

イ 中心市街地の活性化に関する施策の実施状況

(ア) 認定基本計画に係る事業費等の執行及び基本計画の認定状況等
a 18年度以降の認定基本計画の事業費執行額

(a) 事業主体別事業費、府省庁別事業費及び国庫負担額

18年8月の中心市街地活性化法の施行後、28年度末までに認定を受けた141市の211計画に係る18年度から28年度末までの間の総事業費は、3兆0847億余円(国庫負担額8700億余円)(注7)となっていた。

(注7)
事業費及び国庫負担額は、市からの報告を基に集計しており、市において把握していない民間事業者等に係る事業費等や書類が保存されておらず確認ができない事業費等については含めていない(以下同じ。)。

府省庁別に事業費及び国庫負担額をみると、事業費は計2兆6364億余円(国庫負担額8700億余円)となっており、国土交通省に係る事業費2兆2874億余円(国庫負担額7965億余円)が最も多く、次いで総務省に係る事業費1049億余円(国庫負担額46億余円)、経済産業省に係る事業費970億余円(国庫負担額335億余円)の順となっていた。

(b) 事業数並びに事業種別の事業費及び国庫負担額

141市の211計画に係る総事業費3兆0847億余円(総事業数12,703事業、国庫負担額8700億余円)の執行状況を事業種別ごとにみたところ、ハード事業は4,638事業、事業費2兆7142億余円(国庫負担額8445億余円)、ソフト事業は8,364事業、事業費3705億余円(国庫負担額254億余円)となっていた。

b 18年度以降の基本計画の認定状況等

(a) 基本計画の認定状況

141市の211計画に係る認定状況をみたところ、78市の79計画がI期計画のみの認定を受けており、I期計画の実施に伴い浮き彫りとなった新たな課題の解消が必要であるなどとして59市の119計画がII期計画まで、4市の13計画がIII期計画までそれぞれ認定を受けていた。

(b) 基本計画の認定を受けた市町村の人口規模

141市を都市規模別に分類すると、政令指定都市は9市、中核市は44市、その他の市は88市となっており(これらの141市には三大都市圏の19市が含まれている。)、141市の基本計画認定時点の市域全体人口の規模をみると、最大が223.6万人、最小が1.9万人となっていて、10万人以上20万人未満が42市の64計画と最も多く、全体の29.7%となっていた。

(c) 基本計画の認定を受けた市町村の面積規模

141市の基本計画認定時点の市域全体面積の規模をみたところ、最大21.7万ha、最小511haとなっていて、1万ha以上5万ha未満が69市の103計画と最も多く、全体の48.9%となっていた。

(d) 認定基本計画における事業数及び事業費

211計画について、認定事業の事業数をみたところ、総事業数は12,703事業、1計画当たりの平均事業数は60.2事業(1計画当たりの最大事業数:171事業、同最小事業数:16事業)となっていた。

141市の211計画のうち、28年度末までに認定基本計画期間が終了した109市の118計画(事業費2兆2965億余円(国庫負担額6427億余円))について、1計画当たりの事業費をみたところ、10億円未満が1計画、10億円以上50億円未満が18計画、50億円以上100億円未満が27計画、100億円以上500億円未満が66計画、500億円以上が6計画となっていて、100億円以上500億円未満の計画が最も多くなっていた。

(e) 人口1人当たりの事業費及び国庫負担額

118計画について、人口1人当たりの事業費を市域全体人口と中心市街地区域内人口でみたところ、市域全体人口1人当たりの事業費は最大807,332円、最小4,931円で、中心市街地区域内人口1人当たりの事業費は最大1255万余円、最小23万余円となっていた。また、118計画について、人口1人当たりの国庫負担額を市域全体人口と中心市街地区域内人口でみたところ、市域全体人口1人当たりの国庫負担額は最大122,892円、最小1,104円で、中心市街地区域内人口1人当たりの国庫負担額は最大435万余円、最小2万余円となっていた。

(イ) 認定事業の実施状況等

基本方針等によれば、中心市街地の活性化は、地域の創意工夫をいかしながら、地域が必要とする事業等を、総合的かつ一体的に推進することにより、地域が主体となって行われるべきものであるとされている。このような中で、各市は、認定基本計画において、様々な認定事業を実施することを計画している。

a 認定事業の分類等

会計実地検査を行った90市の134計画における認定事業の事業費をみると、次のとおりとなっていた。

  • ① 土地区画整理事業、市街地再開発事業、道路、公園、駐車場等の公共の用に供する施設の整備その他の市街地の整備改善のための事業(以下「市街地整備改善事業」という。)に係る事業費1兆1320億余円(国庫負担額3830億余円)
  • ② 居住者等の共同の福祉又は利便のため必要な施設を整備する事業(以下「都市福利施設整備事業」という。)に係る事業費6394億余円(国庫負担額1184億余円)
  • ③ 公営住宅等を整備する事業、中心市街地共同住宅供給事業その他の住宅の供給のための事業及び当該事業と一体として行う居住環境の向上のための事業(以下「居住環境向上事業」という。)に係る事業費3922億余円(国庫負担額819億余円)
  • ④ 中小小売商業高度化事業、特定商業施設等整備事業、民間中心市街地商業活性化事業その他の中心市街地における経済活力の向上のための事業及び措置(以下「経済活力向上事業」という。)に係る事業費3886億余円(国庫負担額675億余円)
  • ⑤ 市街地整備改善事業、都市福利施設整備事業、居住環境向上事業及び経済活力向上事業と一体的に推進する公共交通機関の利用者の利便の増進を図るためなどの事業に係る事業費2033億余円(国庫負担額621億余円)
b 認定事業の完了又は継続の状況

会計実地検査を行った90市の134計画のうち28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画における4,901事業(ハード事業1,874事業、ソフト事業3,027事業)の認定基本計画期間終了時点の実施状況についてみたところ、実施済(継続して実施するイベント等の事業を含む。)の認定事業が4,270事業、実施中の認定事業が331事業等となっていた。

(a) ハード事業の完了状況

80計画のうち76計画では一部のハード事業が完了していなかった。そして、完了していないハード事業がある76計画をみたところ、60計画において関係者の合意形成が図られていなかったことなどにより、認定基本計画期間終了時点で達成を見込む指標値(以下「目標値」という。)の達成に寄与するとされている事業(以下「主要事業」という。)とされているハード事業の全部又は一部が認定基本計画期間終了時点で完了していなかった。

(b) ソフト事業の継続状況

74市の80計画について、主要事業となっている認定基本計画期間終了後のソフト事業の継続状況をみたところ、53計画においては、市の補助事業等による財政的な支援等の体制が整わないことなどにより主要事業とされたソフト事業の一部が継続されていなかった。

c 都市計画手法の活用及び経済活力向上事業の実施状況

市町村は、中心市街地の商業地域が顧客、住民のニーズに十分対応できていないことが中心市街地の衰退の原因の一つであるとして、中心市街地の商業地域の活性化に取り組んでいる。

(a) 都市計画手法の活用による商業地域の活性化

準工業地域への大型店の立地の制限について、対象面積を10,000m2以下にしたり、近隣商業地域、商業地域等の準工業地域以外の用途地域に設定したりすること(以下「多重制限」という。)等を行っていた市(以下「多重制限市」という。)12市と多重制限等を行っていなかった市(以下「多重制限未実施市」という。)78市について、18年度から28年度までの間に中心市街地区域外に立地した大型店の店舗面積の変化を比較したところ、1,000m2を超える大型店の店舗面積が増加していたのは、多重制限未実施市では74市(78市に占める割合94.8%)、多重制限市では10市(12市に占める割合83.3%)となっていた。また、中心市街地への影響が大きいとされる店舗面積が10,000m2以上の大型店の店舗面積が増加していたのは、多重制限未実施市では24市(78市に占める割合30.7%)、多重制限市では2市(12市に占める割合16.6%)となっていた。

会計実地検査を行った24道県について、基本方針等を踏まえて、大型店の立地に関して広域的な調整を図るための条例等を定めているかをみたところ、広域的な土地利用や地域における商業機能の維持等の見地から、条例等において、大型店を立地できる市町村の地域や店舗面積を定めたり、大型店の立地予定の市町村及び隣接する市町村に店舗面積等を通知して中心市街地の活性化の見地から意見等を聴取したりなどしていたのは、9道県にとどまっていた。

(b) 経済活力向上事業の実施による商業地域の活性化

90市について、認定基本計画における大店立地法の特例措置の活用状況をみたところ、25市は大店立地法の特例措置を活用していたが、65市は活用していなかった。大店立地法の特例措置を活用していた25市と活用していなかった65市について、18年度から28年度までの間に中心市街地区域内に立地した大型店の店舗面積の変化を比較したところ、1,000m2を超える大型店の店舗面積が増加していたのは、大店立地法の特例措置を活用していた市では14市(25市に占める割合56.0%)となっていたのに対して、大店立地法の特例措置を活用していなかった市では22市(65市に占める割合33.8%)にとどまっていた。また、中心市街地への集客効果が大きいと考えられる店舗面積5,000m2以上の大型店の店舗面積は、大店立地法の特例措置を活用していた市では8市(25市に占める割合32.0%)において増加していた一方、大店立地法の特例措置を活用していなかった市で増加していたのは11市(65市に占める割合16.9%)にとどまっていた。

また、90市の134計画について空き店舗対策のための事業の有無をみたところ、84市の126計画において、1計画当たり1事業から16事業、計509事業の空き店舗対策のための事業が位置付けられていた。

84市の126計画について、認定基本計画の開始年度から28年度までの空き店舗数の把握状況をみたところ、空き店舗数を毎年度把握していたのは、61市の79計画となっていて、29市の42計画は、毎年度は把握しておらず、このうち9市の14計画は、空き店舗数について一度も把握していなかった。

中心市街地の空き店舗数を18年度から28年度までの間に複数年で把握していた73市について、空き店舗の増減の状況をみたところ、多重制限等又は大店立地法の特例措置のいずれかを活用していた27市では半数以上の16市において空き店舗数が減少していたのに対して、どちらも活用していなかった46市において減少していたのは13市となっていて、多重制限等又は大店立地法の特例措置の活用が、中心市街地区域内の空き店舗数の減少に寄与している状況が見受けられた。

(ウ) 評価の実施状況

基本方針等によれば、市町村は、フォローアップの実施に当たっては、認定基本計画の目標の達成状況について、定量的に評価することが望ましいとされ、最終フォローアップにおいては、認定事業が予定どおり進捗して完了したか評価を行い、中心市街地の活性化が図られたかについても評価を行うこととなっている。そして、最終フォローアップに係る報告書には、市町村による評価に加え、協議会の意見や市民意識の変化を記載することとなっている。

a 認定基本計画における指標の設定状況

会計実地検査を行った90市の134計画のうち、1回以上フォローアップが実施された88市の129計画について目標及び指標の設定状況をみたところ、「にぎわいの創出」等4種類の目標分類で計354目標が設定されており、これらの目標の達成状況を把握するために「通行量」等7種類の指標分類で計404指標が設定されていた。

88市の129計画に係る404指標のうち、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標について、目標値の達成状況をみたところ、168指標(239指標に占める割合70.2%)が目標値を達成しておらず、このうち114指標(168指標に占める割合67.8%)については、認定基本計画の開始時点での指標値(以下「基準値」という。)に達していない状況となっていた。

b フォローアップにおける実績の評価状況

フォローアップの実施に関して、市町村は、実績値を測定して当該実績値を評価することとなっている。そして、市町村は、フォローアップにおいて、主要事業の効果を事業単位で評価して、認定基本計画期間中又は認定基本計画期間終了後に、当該事業の実施方法を変更したり、必要に応じて新規事業を追加したりすることで、評価の結果を中心市街地の活性化に係る取組に反映することとしている。

(a) 実績値の評価

28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標について、最終フォローアップの直前の定期フォローアップ(注8)における認定基本計画期間終了時点での目標達成の見通しの選択状況と目標値の達成状況をみたところ、認定基本計画期間終了時点での目標達成が可能であるとされていた152指標のうち、81指標(152指標に占める割合53.2%)は、最終フォローアップにおいて目標値が達成されていなかった。

(注8)
定期フォローアップには、市が独自に実施してその結果を内閣府に報告しなかったものを含む。

(b) 主要事業の評価

目標値の達成に寄与する全ての主要事業に係る指標値の改善量の見込み(以下「見込み改善量」という。)が1事業単位で算定されている主要事業のうち、定期フォローアップの実施時点で完了していた1,135事業及び最終フォローアップの実施時点で完了していた494事業について、実績改善量と見込み改善量の比較が基本方針等に基づいて実施されているかをみたところ、定期フォローアップにおいては814事業(1,135事業に占める割合71.7%)で、最終フォローアップにおいては161事業(494事業に占める割合32.5%)で比較が実施されておらず、これらの主要事業は、その効果が事業単位で十分に評価されていない状況となっていた。

また、見込み改善量が複数事業を総合して算定されている主要事業について、市によるイベントの実施回数や来場者数等の実績(以下「直接的事業実績」という。)の把握状況をみたところ、市が直接的事業実績を把握していなかった主要事業が全体に占める割合は、定期フォローアップで79.3%(1,217事業)、最終フォローアップで72.5%(570事業)となっており、これらの主要事業については、直接的事業実績が把握されておらず、その効果が事業単位で十分に評価されていない状況となっていた。

c 中心市街地の活性化に係る取組における評価結果の反映状況

28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標のうち、全ての定期フォローアップにおいて認定基本計画期間終了時点での目標達成が困難であるとされていた50指標について、定期フォローアップの評価結果の反映状況をみたところ、26指標については、市が認定基本計画の変更に相当程度の時間を要すると判断したり、適当な改善策がないと判断したりするなどしていて、認定基本計画の見直しが実施されていなかった。

また、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標のうち、II期の認定基本計画で継続して測定することとしているなどの指標116指標を除いた123指標について、市による最終フォローアップ後の実績値の測定状況及び測定されている場合の実績値の状況をみたところ、43指標については、最終フォローアップ後に実績値の測定が実施されておらず、実績値の評価に基づく主要事業の評価や、評価結果を中心市街地の活性化に係る取組に反映することができなくなっていた。

d 内閣府における中心市街地活性化施策に対する評価の実施状況

内閣府による評価については、定期的な評価の一つとして、「行政機関が行う政策の評価に関する法律」(平成13年法律第86号)に基づく政策の評価(以下「政策評価」という。)が実施されている。

政策評価の測定指標は、実績値が基準値よりも改善された認定基本計画の指標の割合となっている。このため、市町村が実施した認定基本計画で設定されている目標値が達成されていない指標が多数あった場合でも、実績値が基準値よりも改善された指標が60%を超えた場合には国として目標達成という評価結果になる。そして、内閣府の28年度の実施施策に係る政策評価では、測定指標に基づく目標達成度合の測定結果は70%となっていて目標を達成したと評価されていた。一方、市町村が行う認定基本計画の最終フォローアップでは、実績値が目標値を超えた場合に目標値を達成したと評価することとなっている。また、認定基本計画に位置付けられた取組の実績額については公表されていなかった。

(2) 中心市街地の活性化に関する施策の有効性

国は、中心市街地における都市機能の増進及び経済活力の向上を総合的かつ一体的に推進するために、認定基本計画に基づく取組に対する支援として認定と連携した支援措置の創設に努め、市町村は、効果的に都市機能の増進及び経済活力の向上を推進するよう所要の施策を策定したり、実施したりする責務を有するとされている。

そこで、90市の認定基本計画における活用実績により国の支援措置の活用状況を分析した。そして、中心市街地の活性化の状況について、市の取組により都市機能の増進及び経済活力の向上が図られているか、中心市街地区域内人口、固定資産税収入額等の市において容易に把握可能な中心市街地の活性化に関する一般的な指標(以下「活性化関連一般指標」という。)及び中心市街地区域内の空き店舗数等の市が独自に把握可能な中心市街地の活性化に関連する指標(以下「活性化関連独自指標」という。)の推移を分析するとともに、都市機能の増進及び経済活力の向上の状況について、本院は、17、27両年度の国勢調査及び18、28両年度に総務省が公表している市町村別決算状況に基づき分析した。

ア 国の支援措置の活用状況

18年度から28年度までの間の各年度に、国が基本方針等で示している支援措置の数は、法定措置225措置、拡大支援措置193措置、通常支援措置265措置、その他の措置380措置、計1,063措置となっていた。

90市の134計画で、18年度から28年度までの間の各年度に上記の1,063措置がどの程度活用されているかをみたところ、活用されていたのは法定措置26措置(支援措置として活用されていた割合11.5%)、拡大支援措置136措置(同70.4%)、通常支援措置180措置(同67.9%)、その他の措置102措置(同26.8%)となっていた。

一方、活用されていなかった支援措置は1,063措置のうち619措置となっていて、このうち法定措置は199措置(活用されていなかった支援措置に占める割合32.1%)に上っていた。そして、各支援措置のうち、法定措置については、大店立地法の特例措置の活用のための情報提供が15道県において十分でなかったことなどから、65市において大店立地法による特例措置が活用されていなかった。また、拡大支援措置については、中活ソフト特別交付税の算定対象となるソフト事業について、留意事項の周知が十分でなく、中活課室等の理解も十分でなかったことなどから、43市において認定基本計画に適切に位置付けられていない状況となっていた。

イ 中心市街地及び地域の活性化の状況

(ア) 市町村における中心市街地の活性化関連施策の実施状況

市町村は、認定基本計画に基づく中心市街地の活性化に取り組むとともに、都市のコンパクト化と地域の交通ネットワークの形成に取り組んでおり、立地適正化計画や都市再生整備計画、「地域公共交通の活性化及び再生に関する法律」(平成19年法律第59号)に基づく地域公共交通網形成計画、総務大臣が各都道府県知事宛てに発した「公共施設等の総合的かつ計画的な管理の推進について」(平成26年4月総財第74号)に基づく公共施設等総合管理計画等に基づき、人口減少、高齢者の増加、拡散した市街地、公共施設等に対応した各種公共的サービスの効率性の向上等に取り組み、都市におけるコンパクト・プラス・ネットワークを実現することとしており、都市のコンパクト化は都市機能の増進に資するものとされている。

また、市町村は、都市計画法(昭和43年法律第100号)に基づき、市町村の都市計画に関する基本的な方針を作成していて、上記の各種計画は、都市計画に関する基本的な方針と調和を図るよう作成することとされており、さらに、基本方針等によれば、認定基本計画は、上記の各種計画と適合又は調和を図ることとされている。

a 立地適正化計画

会計実地検査を行った90市のうち、立地適正化計画を作成していたのは34市となっており、34市の立地適正化計画における中心拠点区域と中心市街地区域の両区域の設定状況をみたところ、全て同一区域で設定していたのは4市、中心市街地区域が中心拠点区域を全て含む設定をしていたのは1市、中心市街地区域の一部又は全部が中心拠点区域に含まれる設定をしていたのは29市と、区域設定が区々となっていた。

b 公共施設の増減状況等

90市における公共施設の数は、認定基本計画実施前は市域全体で32,859施設、中心市街地区域内で1,869施設(全体の5.6%)であったものが、28年度末では、市域全体で37,393施設、中心市街地区域内で2,188施設(同5.8%)となっていた。市域全体では32,859施設から37,393施設へと13.7%増加しているのに対して、中心市街地区域内では1,869施設から2,188施設へと17.0%の増加となっていて、公共施設数の増加率は、中心市街地区域内の方が市域全体よりも大きくなっていた。

(イ) 活性化関連一般指標の推移等

28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画について、活性化関連一般指標である中心市街地区域内人口、都道府県地価調査価格、固定資産税収入額等の指標の推移等をみたところ、次のような状況となっていた。

a 人口の推移

74市の市域全体人口は、18年度2026万人、28年度2014万人と18年度から28年度までの間の推移は微減となっていた。一方、74市の中心市街地区域内人口の合計は、18年度75万人、28年度77万人と微増となっていた。

74市それぞれの中心市街地区域内人口について、18年度と比較して28年度に中心市街地区域内人口が増加しているのは29市(74市に占める割合39.1%)、減少しているのは45市(同60.8%)となっており、29市においては、認定基本計画の実施の効果が一定程度発現していることが認められる状況となっていた。

b 都道府県地価調査価格の推移

74市内の217地点の都道府県地価調査価格の平均価格の推移は、18年度205,129円/m2、28年度182,433円/m2となっており、18年度から28年度までの推移は増減を繰り返しつつ、18年度と比較して28年度は下落している。

18年度と比較して28年度に中心市街地区域内の都道府県地価調査価格が上昇しているのは10市(74市に占める割合13.5%)、下落しているのは64市(同86.4%)であり、認定基本計画の実施の効果が一定程度発現していることが認められるのは10市にとどまっていた。

c 固定資産税収入額の推移

74市の固定資産税収入額の合計額の推移は、18年度の1兆3326億円から23年度の1兆3934億円まで増加した後、24年度に1兆3278億円に減少し、28年度に1兆3628億円となっており、回復基調となっている。

74市それぞれの住民1人当たりの固定資産税収入額について、18年度と比較して28年度に住民1人当たり固定資産税収入額が増加しているのは39市(74市に占める割合52.7%)、減少しているのは35市(同47.2%)であり、39市においては、認定基本計画の実施の効果が一定程度発現していることが認められる状況となっていた。

上記のとおり、活性化関連一般指標の数値が増加し、又は上昇している市においては、認定基本計画の実施が中心市街地の活性化に一定程度寄与していると思料される状況が見受けられる一方、指標ごとに数値が増加し、又は上昇している市は区々となっていて、特定の指標だけで中心市街地の活性化の状況を評価することは困難であり、多様な指標による評価を検討することが必要であると思料された。

(ウ) 都市機能の増進及び経済活力の向上に関する指標の状況

本院は、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画における都市機能の増進及び経済活力の向上の状況について、都市機能の増進の状況に関する指標(以下「都市コンパクト化指標」という。)及び経済活力の向上の状況に影響する指標(以下「経済活力向上指標」という。)により分析した。

a 都市コンパクト化指標の区分

国勢調査が実施された17年度と27年度との間の74市の人口集中地区の人口密度の増減率が全国及び当該市所在道県の増減率の両方を上回っている13市を都市コンパクト化指標の上位群、全国又は当該市所在道県の増減率のいずれかを上回っている20市を都市コンパクト化指標の中位群、全国及び当該市所在道県の増減率の両方を下回っている41市を都市コンパクト化指標の下位群として区分して人口集中地区の人口密度増減率を分析した。

国勢調査が実施された17年度と27年度との間の74市の人口集中地区の人口密度の増減率は、上位群、中位群及び下位群の別にみると、上位群の平均は8.2%、最大は31.0%、最小は3.5%となっており、増加しているのは13市となっていた。また、中位群の平均は0.0%、最大は4.1%、最小は△6.1%となっており、増加しているのは12市、減少しているのは8市となっていた。これに対して、下位群の平均は△4.5%、最大は2.6%、最小は△17.4%となっており、増加しているのは7市にとどまっている一方、減少しているのは33市となっていた。

b 経済活力向上指標の区分

74市の18、28両年度の市町村の地方税において主要な固定資産税収入額、市町村法人税収入額及び市町村住民税収入額の合算額(以下「主要地方税」という。)の増減率が全国及び当該市所在道県の増減率の両方を上回っている15市を経済活力向上指標の上位群、全国又は当該市所在道県の増減率のいずれかを上回っている18市を経済活力向上指標の中位群、全国及び当該市所在道県の増減率の両方を下回っている41市を経済活力向上指標の下位群として区分して主要地方税の増減率を分析した。

18年度と28年度との間の74市の主要地方税の増減率は、上位群、中位群及び下位群の別にみると、上位群の平均は16.3%、最大は56.1%、最小は6.1%となっており、増加しているのは15市となっていた。また、中位群の平均は5.2%、最大は12.8%、最小は2.4%となっており、増加しているのは18市となっていた。これに対して、下位群の平均は△0.6%、最大は5.8%、最小は△8.2%となっており、増加しているのは19市にとどまり、減少しているのは22市となっていた。

c 都市コンパクト化指標と経済活力向上指標の比較

都市コンパクト化指標の区分で上位群となっていた13市のうち、6市は経済活力向上指標の区分が上位群、3市は中位群となっていた一方、4市は下位群となっていた。また、経済活力向上指標の区分で上位群となっていた15市のうち、6市は都市コンパクト化指標の区分が上位群、4市は中位群となっていた一方、5市は下位群となっていた。

都市コンパクト化指標及び経済活力向上指標がいずれも上位群となっている6市については、都市機能の増進と経済活力の向上がバランスよく推進されており、認定基本計画の実施の効果が一定程度発現していることが認められると思料された。また、都市コンパクト化指標又は経済活力向上指標の上位群のうち、いずれか一方が中位群となっていた7市(都市コンパクト化指標が上位群の3市、経済活力向上指標が上位群の4市)についても、都市機能の増進と経済活力の向上が一定程度推進されており、今後、中心市街地の活性化に向けた取組を継続的に行うことが重要であると思料された。一方、都市コンパクト化指標及び経済活力向上指標がいずれも下位群となっている24市については、認定基本計画の実施の効果は限定的と考えられ、今後、中心市街地の活性化に向けた取組の新たな展開が必要となっていると思料された。

74市が設定した指標の評価と都市コンパクト化指標及び経済活力向上指標の区分についてみたところ、74市が設定した指標の評価については、最終フォローアップにおいて行う中心市街地の活性化に係る総合的な判断(以下「最終評価」という。)が「かなり活性化が図られた」及び「若干の活性化が図られた」となっている64市のうち、最終フォローアップにおける評価が基準値以上となっているのは9市、基準値未満となっているのは9市となっていた。そして、基準値以上となっている9市のうち、都市コンパクト化指標の上位群となっているのは4市、このうち3市については経済活力向上指標も上位群となっていた。また、基準値未満となっている9市のうち、都市コンパクト化指標の上位群となっている市は該当がなく、下位群となっているのは8市、経済活力向上指標の上位群となっているのは2市、下位群となっているのは4市となっていた。

都市コンパクト化指標については、下位群12市のうち、4市では、指標の評価において基準値以上となっていて認定基本計画の実施の効果が一定程度発現しているものの、8市においては、指標の評価において基準値未満となっており、今後、中心市街地の活性化に向けた取組の新たな展開が必要となっていると思料された。

経済活力向上指標については、下位群9市のうち、5市では、指標の評価において基準値以上となっていて認定基本計画の実施の効果が一定程度発現しているものの、4市においては、指標の評価において基準値未満となっており、今後、中心市街地の活性化に向けた取組の新たな展開が必要となっていると思料された。

ウ 評価結果と活性化関連一般指標等との関係

28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画における評価結果と74市の活性化関連一般指標及び74市が把握している活性化関連独自指標である中心市街地区域内の公共施設利用者数、鉄道駅乗降客数及び空き店舗数との関係について、分析した。

(ア) 認定基本計画の目標の達成状況

28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市の80計画に係る239指標について、目標値の達成状況をみたところ、168指標(239指標に占める割合70.2%)が目標値を達成しておらず、114指標(168指標に占める割合67.8%)については、基準値に達していなかった。

74市が設定した指標の評価については、最終フォローアップ時点で、全ての指標が目標値を達成しているのは6市、全ての指標が基準値未満となっているのは13市となっていた。また、基準値以上となっている指標が過半数となっているのは33市となっていた。そして、活性化関連一般指標の4指標の数値についてみたところ、活性化関連一般指標ごとに10市から39市がそれぞれ増加し、又は上昇しているが、28年度末時点で3指標又は4指標が向上しているのは8市となっており、指標の数値が増加し、又は上昇している市は指標ごとに区々となっていた。

また、活性化関連独自指標である中心市街地区域内の公共施設利用者数、鉄道駅乗降客数及び空き店舗の増減数についてみると、次のような状況となっていた。

① 74市のうち、認定基本計画実施前と28年度の中心市街地区域内の公共施設利用者数を把握していた43市の中心市街地区域内の公共施設利用者数について、認定基本計画実施前より28年度の方が中心市街地区域内の公共施設利用者数が増加しているのは19市(43市に占める割合44.1%)、減少しているのは24市(同55.8%)となっていた。

② 74市のうち、認定基本計画実施前と28年度の中心市街地区域内の鉄道駅乗降客数を把握していた52市の中心市街地区域内の鉄道駅乗降客数について、認定基本計画実施前より28年度の方が中心市街地区域内の鉄道駅乗降客数が増加しているのは27市(52市に占める割合51.9%)、減少しているのは25市(同48.0%)となっていた。

③ 74市のうち、18年度と28年度の空き店舗数を把握していた43市の空き店舗数について、18年度より28年度の方が空き店舗数が減少しているのは22市(43市に占める割合51.1%)、増加しているのは20市(同46.5%)となっていた。

(イ) 達成状況と最終評価の関係

最終評価に当たっては、25年3月の評価方法の改正により「かなり活性化が図られた」「若干の活性化が図られた」「活性化に至らなかった(計画策定時と変化なし)」又は「活性化に至らなかった(計画策定時より悪化)」の4種類の評価から選択することとされた。また、基本方針等によれば、最終評価に当たっては、当該市町村だけではなく、協議会の意見及び市民意識の変化を記載することとされている。

そこで、28年度末までに認定基本計画期間が終了した74市のうち、25年3月の評価の方法の改正以降に最終フォローアップを行った69市(改正前のため選択肢による選択を行っていない5市を除いた市)の最終評価をみたところ、市による最終評価では64市(69市に占める割合92.7%)が、協議会による最終評価では65市(同94.2%)が、「活性化が図られた」としていた。一方、市民による最終評価では、57市(同82.6%)が「活性化が図られた」としていた。

最終フォローアップにおける市の最終評価と指標の達成状況をみたところ、64市が「かなり活性化が図られた」又は「若干の活性化が図られた」を選択して「活性化が図られた」としているが、指標の達成状況をみると、このうち24市は、目標値に達していなかった。そして、これら24市のうち9市は指標の達成状況が目標値及び基準値に達していないなど、最終評価と指標の達成状況にかい離が生じている状況となっていた。

一方、「活性化に至らなかった」と評価している5市の中には、認定基本計画期間終了後の中心市街地の活性化への取組等により、複数の指標の数値が向上している市も見受けられた。

3 検査の結果に対する所見

我が国の社会経済情勢は、人口減少、少子高齢化の進展、公共公益施設等の郊外立地の増加、IT技術を活用した電子商取引の普及拡大等、大きく変化している。

このような状況の下、国は、中心市街地の活性化は地方都市全体の活力の向上を図るための一環として捉えていくことが重要であり、地域全体の居住環境の向上、医療及び福祉機能の確保といった都市構造の再構築の取組、地域公共交通の充実、地域活性化の取組等と一体となって、各施策と密接に連携して、地域活性化全体の観点から取り組むことが必要であるとしており、各府省庁における地方創生等の取組と有機的に連携しながら、国を挙げて総合的な支援をすることとしている。

上記を踏まえ、国は、中心市街地における市街地の整備改善及び商業等の活性化の一体的推進に関する法律(平成10年法律第92号)を18年に改正するなどして、中心市街地の活性化に取り組んでいる。

中心市街地の活性化に関する施策の実施体制及び実施状況について、国は、中心市街地活性化本部を設置し、支援措置の整備を行い、市では、中活課室等を設置するなどして、実施体制の充実が図られてきているが、基本計画の作成や認定事業の実施に当たって、国、道県、市等における連携等が十分に図られていない状況となっていた。また、国は、28年度末までに141市の211計画を認定して、認定基本計画に基づく中心市街地の活性化の取組を支援(国庫負担額8700億余円)し、各市においては、新たな評価制度の下、定期フォローアップや最終フォローアップにより認定基本計画の評価を行ってきているが、認定基本計画期間終了時に認定事業が完了していなかったり、評価結果が中心市街地の活性化に係る取組に十分反映できていなかったりしている状況となっていた。

そして、中心市街地の活性化に関する施策の有効性について、認定基本計画に基づく中心市街地の活性化に取り組み、設定した目標値を全て達成している市がある一方で、全て達成できていない市もあり、また、各種指標の数値においても増加したり、上昇したりしているものと減少したり、下落したりしているものが混在していて、一部の市では認定基本計画の実施の効果が推定できるものの、その効果が確認できない市も多数見受けられた。

このように、認定基本計画実施の効果の発現状況は区々となっており、今後の中心市街地の活性化に関する施策の展開の課題となっている。

ついては、国として、社会経済情勢が大きく変化している中にあって、国民生活の向上と健全な発展に向けて、中心市街地の活性化を図るために、内閣府において、関係府省庁等、都道府県、市町村等と十分に連携して、今後、次の点に留意して、中心市街地の活性化に関する施策の実施に適切に取り組む必要がある。

(1) 中心市街地の活性化に関する施策の実施体制及び実施状況について

  • ア 市町村に対して、基本計画の作成及び認定事業の実施に当たって、国、都道府県、市町村、協議会等の関係部局間における連携や調整を綿密に行うことの重要性を明確に示すこと、また、国としてそれらを実施するための体制の整備及び充実に努めること
  • イ 市町村に対して、市町村が基本計画を作成するに当たり、事業が円滑に実施できるよう、都道府県、市町村、民間事業者等の様々な利害関係者間で協議及び調整を十分に行うことを周知徹底するとともに、認定基本計画期間終了後も認定事業を継続して行うことの重要性を明確に示すこと
  • ウ 市町村に対して、市町村が基本計画を作成するに当たり、中心市街地の活性化を図るために、大型店の立地の抑制や誘導の対策の検討を行うよう留意事項を明確に示すこと
  • エ 市町村に対して、主要事業との関係が明確でPDCAサイクルの運用が可能な指標の設定及び測定に努めること及び評価結果に応じて事業の追加や見直しを含めた認定基本計画の変更等を適時適切に実施することを周知徹底すること
  • オ 都道府県に対して、アからエまでについて、市町村がより効果的に中心市街地の活性化を推進できるよう、市町村に適時適切に助言するとともに、広域的な観点から関係市町村の効果的な調整を図るよう努めることを周知徹底すること

(2) 中心市街地の活性化に関する施策の有効性について

  • ア 市町村に対して、基本計画を作成するに当たり地域に合った支援措置を適切に選択して活用して、中心市街地の活性化に資することが可能となるよう各支援措置の活用事例や留意事項を明確に示すこと
  • イ 市町村に対して、中心市街地の活性化に関する施策は、地域全体の都市機能の増進や経済活力の向上を図るためのものであることに留意して多様な指標による評価を広く検討して施策の実施に取り組むことの重要性を明確に示すこと
  • ウ 市町村に対して、認定基本計画の最終フォローアップにおける評価を適切に行うことの重要性を明確に示すこと

本院としては、中心市街地が地域の経済及び社会の発展に重要な役割を果たすものであり、その活性化が我が国における地域活性化の重要な施策の一つであることから、国、地方公共団体の中心市街地の活性化に関する施策の実施状況等について、今後も引き続き検査していくこととする。