会計検査院は、特別会計に関する法律(平成19年法律第23号。以下「法」という。)第19条第2項の規定に基づき、平成30年11月6日に内閣から送付を受けた17府省庁等(注1)が所管する13特別会計(注2)の平成29年度特別会計財務書類について検査した。そして、同年12月25日に、内閣に対して、同書類の検査を行った旨を通知し、同書類を回付した。
内閣に通知した検査結果の概要は、次のとおりである。
平成29年度特別会計財務書類について、正確性、合規性等の観点から、法、特別会計に関する法律施行令(平成19年政令第124号)、特別会計の情報開示に関する省令(平成19年財務省令第30号)、同省令第1条の規定に基づき定められた特別会計財務書類の作成基準(平成20年財務省告示第59号。以下「作成基準」という。)等に従った適切なものとなっているかなどに着眼して検査した結果、作成基準等と異なる処理をしていて、特別会計財務書類の計上金額等の表示が適切とは認められないものが、表のとおり、17府省庁等が所管する4特別会計において9事項見受けられた。
なお、上記の9事項については、全て6省(注3)において所要の訂正が行われた。
表 特別会計財務書類の計上金額等の表示が適切とは認められないもの
番号 | 特別会計名(勘定名等) | 所管 | 財務書類の科目等 |
事項 | ||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
計上金額 (単位:百万円) |
適切な計上金額 (単位:百万円) |
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1 | 財政投融資 (財政融資資金) |
財務省及び国土交通省 | 区分別収支計算書
I 業務収支
1 財源 |
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貸付金の回収による収入 | 本会計年度 |
23,545,834 | 23,609,757 | ① | ||||||||
有価証券の償還による収入 | 本会計年度 |
63,922 | ― | |||||||||
サービサー業務による回収金額 | 本会計年度 |
9,464 | 410,579 | ② | ||||||||
財源合計 |
本会計年度 |
28,479,628 | 28,880,743 | |||||||||
2 業務支出
(1) 業務支出(施設整備支出を除く) |
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サービサー業務による回収金引渡額 | 本会計年度 |
△9,464 | △410,579 | ② | ||||||||
業務支出(施設整備支出を除く)合計 | 本会計年度 |
△21,161,759 | △21,562,874 | |||||||||
業務支出合計 |
本会計年度 |
△21,161,759 | △21,562,874 | |||||||||
〈表示が適切とは認められない事項の説明〉
事項① 貸付金債権を信託会社に信託したことにより保有した信託受益権の償還による収入は、作成基準等により、区分別収支計算書の「貸付金の回収による収入」に計上することとなっているのに、誤って「有価証券の償還による収入」に計上していたもの(財務省)
事項② 信託した貸付金債権に係る元利金を回収する業務(サービサー業務)を信託会社から受託して、当該貸付金債権の元金の回収を行ったことによる収入及び当該回収金を信託会社に引き渡したことによる支出は、作成基準等により、区分別収支計算書の「サービサー業務による回収金額」及び「サービサー業務による回収金引渡額」に計上することとなっているのに、誤って、これを計上していなかったもの(財務省)
なお、上記に連動して、合算区分別収支計算書の関連箇所に誤りが生じていた。 |
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2 | エネルギー対策 (エネルギー需給) |
内閣府、文部科学省、経済産業省及び環境省 | 附属明細書
1 貸借対照表の内容に関する明細
(1) 資産項目の明細
② 有価証券の明細
オ 市場価格のない有価証券(満期保有目的以外、株式)の純資産額等の明細 |
|||||||||
国際石油開発帝石(株)(種類株式) | 資本金 |
131,461 | 1,314,612 | ③ | ||||||||
純資産額による算出額 | 8 | 0 | ||||||||||
〈表示が適切とは認められない事項の説明〉
事項③ 附属明細書の「有価証券の明細」において、本特別会計が出資している国際石油開発帝石株式会社の資本金の金額を計上するに当たり、計上する金額の桁数を誤っていたもの(経済産業省) |
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エネルギー対策 (電源開発促進(連結)) |
連結業務費用計算書 | 減損損失 |
本会計年度 |
43,837 | 36,437 | ④ | ||||||
本年度業務費用合計 |
本会計年度 |
460,574 | 453,174 | |||||||||
連結資産・負債差額増減計算書 | II 本年度業務費用合計 |
本会計年度 |
△460,574 | △453,174 | ||||||||
VI その他資産・負債差額の増減 |
本会計年度 |
7,448 | 48 | ④ | ||||||||
附属明細書
2 連結対象法人別の業務費用の明細 |
||||||||||||
減損損失 |
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 | 43,837 | 36,437 | ④ | ||||||||
3 連結対象法人別の資産・負債差額の増減の明細 |
||||||||||||
VI その他資産・負債差額の増減 |
国立研究開発法人日本原子力研究開発機構 | 7,448 | 48 | ④ | ||||||||
〈表示が適切とは認められない事項の説明〉
事項④ 連結業務費用計算書の「減損損失」については、作成基準等により、連結対象法人の行政サービス実施コスト計算書における損益外減損損失相当額を計上することとなっているのに、損益外減損損失相当額の一部を二重に計上していたため計上金額が誤っており、また、このことに伴い、連結資産・負債差額増減計算書の「その他資産・負債差額の増減」の計上金額が誤っていたもの(文部科学省) |
||||||||||||
3 | 食料安定供給(業務) | 農林水産省 | 貸借対照表 | 無形固定資産 |
本会計年度 |
1,115 | 437 | ⑤ | ||||
資産合計 |
本会計年度 |
3,593 | 2,914 | |||||||||
資産・負債差額 |
本会計年度 |
△45,870 | △46,549 | |||||||||
負債及び資産・負債差額合計 | 本会計年度 |
3,593 | 2,914 | |||||||||
業務費用計算書 | 庁費等 |
本会計年度 |
7,760 | 8,439 | ⑤ | |||||||
本年度業務費用合計 |
本会計年度 |
9,773 | 10,451 | |||||||||
資産・負債差額増減計算書 | II 本年度業務費用合計 |
本会計年度 |
△9,773 | △10,451 | ||||||||
VI 本年度末資産・負債差額 |
本会計年
度 |
△45,870 | △46,549 | |||||||||
附属明細書
1 貸借対照表の内容に関する明細
(1) 資産項目の明細
④ 固定資産の明細 |
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ソフトウェア |
本年度増加額 |
1,057 | 0 | ⑤ | ||||||||
ソフトウェア仮勘定 |
本年度増加額 |
(記載なし) | 378 | |||||||||
〈表示が適切とは認められない事項の説明〉
事項⑤ ソフトウェアの取得費用は、作成基準等により、附属明細書の「固定資産の明細」における無形固定資産の内訳として、制作途中の場合は「ソフトウェア仮勘定」に、取得後は「ソフトウェア」に、それぞれ支出済歳出額を計上することとなっているのに、制作途中のソフトウェアの制作費に係る当該年度の支出済歳出額及び翌年度の支出予定額を「ソフトウェア」に計上していたため、「ソフトウェア」及び「ソフトウェア仮勘定」の計上金額が誤っており、また、このことに伴い、貸借対照表の「無形固定資産」及び業務費用計算書の「庁費等」の計上金額が誤っていたもの(農林水産省)
なお、上記に連動して、合算貸借対照表、合算業務費用計算書及び合算資産・負債差額増減計算書の関連箇所に誤りが生じていた。 |
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4 | 東日本大震災復興 | 国会、裁判所、会計検査院、内閣、内閣府、復興庁、総務省、法務省、外務省、財務省、 文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省及び防衛省 |
業務費用計算書 | 装備品等購入費 |
本会計年度 |
273 | 215 | ⑥ | ||||
修理費等 |
本会計年度 |
7,923 | 9,279 | |||||||||
庁費等 |
本会計年度 |
490,314 | 489,094 | |||||||||
注記
3 追加情報
(4) その他特別会計財務書類の内容を理解するために特に必要と考えられる情報 |
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注記の表示 | 注記の適切な表示 | ⑦ | ||||||||||
④「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」に基づき、国が直轄により、又は国庫補助金等を交付して実施した汚染土壌等の除染等、放射性汚染廃棄物処理事業及び中間貯蔵施設検討・整備事業に要した費用に係る東京電力株式会社に対する求償については、一般会計分を含め、平成29年度末までに2,391,793百万円求償し、うち1,502,716百万円について既に支払いを受けている。 | ④「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」に基づき、国が直轄により、又は国庫補助金等を交付して実施した汚染土壌等の除染等、放射性汚染廃棄物処理事業及び中間貯蔵施設検討・整備事業に要した費用に係る東京電力ホールディングス株式会社(平成27年度末までは東京電力株式会社)に対する求償については、一般会計分を含め、平成29年度末までに2,391,793百万円求償し、うち1,597,350百万円について既に支払いを受けている。 | |||||||||||
附属明細書
1 貸借対照表の内容に関する明細
(2) 資産項目の明細
⑧ 固定資産の明細 |
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工作物 |
本年度増加額 |
1,168 | 487 | ⑧ | ||||||||
本年度減少額 |
1,168 | 487 | ||||||||||
物品 |
本年度増加額 |
1,480 | 2,100 | |||||||||
本年度減少額 |
1,554 | 2,174 | ||||||||||
2 業務費用計算書の内容に関する明細
(1) 所管別の業務費用の明細 |
||||||||||||
装備品等購入費 |
防衛省 |
273 | 215 | ⑥ | ||||||||
修理費等 |
防衛省 |
7,923 | 9,279 | |||||||||
庁費等 |
防衛省 |
1,279 | 46 | |||||||||
3 資産・負債差額増減計算書の内容に関する明細
(4) 無償所管換等の明細 |
||||||||||||
財産の無償所管換等(渡) | 防衛省一般会計 | 工作物 | △680 | (記載なし) | ⑧ | |||||||
物品 |
△1,356 | △1,971 | ||||||||||
〈表示が適切とは認められない事項の説明〉
事項⑥ 業務費用計算書に計上する費用について、支出済歳出額から貸借対照表の資産に計上される額を控除するに当たり、「装備品等購入費」及び「庁費等」の支出済歳出額から控除すべき額を誤って「修理費等」から控除していたもの(防衛省)
事項⑦ 東京電力ホールディングス株式会社(平成28年3月31日以前は東京電力株式会社)に対する各府省庁等からの求償に対する同社の支払額については、作成基準等により、その累計額を注記の追加情報として記載することとなっているのに、誤って支払額の一部を除いて記載するなどしていたもの(環境省)
事項⑧ 附属明細書の「固定資産の明細」の計上に当たり、航空機の器材として管理されている物品は「物品」に計上すべきであるのに、誤ってこれを国有財産の「工作物」に計上していたもの(防衛省)
なお、上記に連動して、連結業務費用計算書の関連箇所に誤りが生じていた。 |
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東日本大震災復興 (連結) |
連結貸借対照表 | 未払金 |
本会計年度 |
7,215 | 7,347 | ⑨ | ||||||
その他の債務等 |
本会計年度 |
297 | 164 | |||||||||
附属明細書
1 連結対象法人別の資産及び負債の明細 |
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未払金 |
中間貯蔵・環境安全事業株式会社(中間貯蔵事業勘定) | 4,001 | 4,133 | ⑨ | ||||||||
その他の債務等 |
中間貯蔵・環境安全事業株式会社(中間貯蔵事業勘定) | 139 | 7 | |||||||||
〈表示が適切とは認められない事項の説明〉
事項⑨ 連結対象法人の「未払法人税等」及び「未払消費税等」は、作成基準等により、連結貸借対照表の「未払金」に計上することとなっているのに、誤って「その他の債務等」に計上していたもの(環境省) |