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  • 国会及び内閣に対する報告(随時報告)|
  • 会計検査院法第30条の2の規定に基づく報告書|
  • 平成31年4月|

年金特別会計及び年金積立金管理運用独立行政法人で管理運用する年金積立金の状況等について


2 検査の観点、着眼点、対象及び方法

(1) 検査の観点及び着眼点

年金積立金は、前記のとおり、29年度末における残高が164兆1609億余円に上っており、専ら国民年金及び厚生年金保険の被保険者の利益のために、長期的な観点から、安全かつ効率的に管理運用を行うこととされている。

会計検査院は、23年12月に参議院から国会法(昭和22年法律第79号)第105条の規定に基づく会計検査の要請を受けて、その検査結果を24年10月に「年金積立金(厚生年金及び国民年金)の管理運用に係る契約の状況等に関する会計検査の結果について」として報告し、年金積立金の管理運用に係る業務の状況等について所見を記述している(以下、この報告を「24年報告」という。)。

そして、前記のとおり、25年改正法、被用者年金一元化法及び28年改正法が施行されたり、日本銀行において25年4月及び28年2月に、それぞれ量的・質的金融緩和及びマイナス金利政策が導入されたりなどしていて、24年報告以降、年金積立金の管理運用に係る環境は大きく変化している。

そこで、厚生労働省及びGPIFにおける24年報告の所見に対する対応に留意しつつ、年金積立金の運用状況等について、合規性、経済性、効率性、有効性等の観点から、次の点に着眼して検査した。

ア 年金積立金の運用状況等は、どのようになっているか。運用に係る基本ポートフォリオ等は、どのように策定又は変更され、運用にどのような影響・効果を及ぼしているか。

イ 厚生年金基金の解散等、低金利政策の継続及びマイナス金利政策の導入等の運用環境の変化は、年金積立金の運用にどのような影響を及ぼしているか。

ウ 委託運用及び自家運用におけるファンドの運用実績は、どのようになっているか。また、管理運用業務の委託先の評価等は適切に行われているか。

エ GPIFにおけるガバナンスは組織改編後、どのようになっているか。

(2) 検査の対象及び方法

会計検査院は、厚生労働本省及びGPIFにおいて、24年度から29年度までの間の年金積立金の管理運用に係る業務を対象として、年金特別会計の決算及び26年の財政検証のデータ並びに年金積立金の管理運用方針、管理運用に係る業務委託契約書等の関係書類を確認するなどして会計実地検査を行った。

そして、年金積立金の運用状況等の実態を把握するために、資産管理機関である4信託銀行(注12)全てと、運用受託機関である34機関のうち運用資産額が多額となるなどしている8運用受託機関(注13)の計12法人において、当該法人が受託している年金積立金の管理運用に係る契約を対象として、運用手法、運用体制等の実態を確認するなどして会計実地検査を行った。また、GPIFが自家運用により投資しているオルタナティブ投資に係る投資信託の運用者であるニッセイアセットマネジメント株式会社の担当者から、投資信託の管理運用の実態を聴取するなどして調査した。

さらに、厚生年金保険事業の実施機関のうちKKR及び私学事業団において、積立金のうち厚生年金保険に係る分の管理運用に係る業務を対象として、業務の実態を聴取するなどして会計実地検査を行うとともに、地共連等の担当者から年金基金の管理運用の実態を聴取するなどして調査した。

(注12)
4信託銀行  資産管理サービス信託銀行、日本トラスティ・サービス信託銀行、ステート・ストリート信託銀行、日本マスタートラスト信託銀行各株式会社
(注13)
8運用受託機関  アセットマネジメントOne、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント、野村アセットマネジメント、ブラックロック・ジャパン、三井住友信託銀行、三菱UFJ信託銀行、BNYメロン・アセット・マネジメント・ジャパン、JPモルガン・アセット・マネジメント各株式会社

(以下、各株式会社の名称中、「株式会社」は記載を省略する。)