(2件 不当と認める国庫補助金 96,519,600円)
部局等 |
補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 |
事業費 |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
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千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(6) | 内閣府本府 |
北海道 |
原子力発電施設等緊急時安全対策交付金 |
27、28 | 71,463 | 71,463 | 71,463 | 71,463 |
(7) | 同 | 青森県 |
同 | 29 | 25,056 | 25,056 | 25,056 | 25,056 |
(6)(7)の計 | 96,519 | 96,519 | 96,519 | 96,519 |
これらの交付金事業は、2道県が、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金(以下「交付金」という。)の交付を受けて、原子力発電施設からおおむね30km圏内の区域において原子力災害による環境放射線の状況に関する情報収集、防護措置の実施の判断材料の提供等のために行う緊急時モニタリングの体制を整備することを目的として、空間放射線量率を常時測定して伝送する機能を有する簡易型電子線量計(以下「電子線量計」という。)計79台(北海道60台、青森県19台)を整備するとともに、電子線量計により測定された情報を処理するためのデータ収集装置等を整備するなどしたものである。このうち、電子線量計は、電気事業者の電線路から架空引込線により直接又は中継用ポールを介して商用電源を引き込むための受電用ポール(以下、中継用ポールと合わせて「引込柱」という。)と、受電用ポールに固定された空間放射線量率を測定するための検出器、測定データを送信するためのデータ伝送装置等で構成されるものとなっている(参考図参照)。
原子力災害対策指針(平成24年10月原子力規制委員会制定)によれば、放射線の量を計測する設備等の整備に当たっては、地震等の自然災害への頑健性を配慮しなければならないこととされている。
2道県は電子線量計等の整備に係る契約を業者と締結しており、当該契約に係る仕様書によると、強風、積雪、塩害及び地震に対して堅牢(ろう)にして長期間の使用に耐えられるように電子線量計等を設置すること及び引込柱の基礎の一部を地中に埋設して引込柱が倒れることのないよう対策を施して設置すること、又は仕様書に記載のない事項であっても運用上、機能上及び構造上具備しなければならない事項並びに社会通念上必要とされる事項については、受注者の責任の下で充足することなどとなっていた。
そして、2道県は、受注者に電子線量計等の納入、据付けなどを行わせた後、これらに係る検査を実施して合格とした上で実績報告書を内閣府本府に提出し、同府から交付金の交付を受けていた。
しかし、引込柱として用いられた部材は、3か月程度の短い期間に限って設置し、その後撤去される臨時施設専用のポールであり、腐食による倒壊等の原因となることから常時施設用として使用しないこととなっているものであった。
また、受注者が2道県に提出していた強度計算書を確認したところ、引込柱の基礎の安定計算が行われていなかった。そこで、2道県が設置した引込柱計81本(電子線量計の受電用ポール79本、中継用ポール2本)について、取扱説明書等により用いることとなっている内線規程(一般社団法人日本電気協会発行)、電気事業者が電線路の支持物に係る設計を行う際に広く使用されている配電規程(同)等を用いて、所定の風圧荷重等が加わった状態における引込柱の基礎の安定計算を行ったところ、全ての引込柱において、配電規程等により必要とされている安全率を下回っていた。
したがって、本件交付金事業(交付対象事業費計96,519,600円)は、整備した電子線量計等が、堅牢にして長期間の使用に耐えられるように設置することなどの仕様書に示された内容を満たしておらず、空間放射線量率を測定できなくなるなどのおそれのある状態となっていて補助の目的を達しておらず、これに係る交付金計96,519,600円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、2道県において、受注者が電子線量計等を仕様書に基づいて適切に整備していなかったのに、これに対する検査が十分でなかったことなどによると認められる。
前記の事態について、事例を示すと次のとおりである。
<事例>
北海道は、平成27、28両年度に、電子線量計60台を、北海道電力株式会社泊発電所からおおむね30km圏内の区域において整備するとともに、データ収集装置1台及び管理用端末3台を北海道原子力環境センター等に整備するなどしていた。
北海道が業者と締結した電子線量計等の整備に係る契約の仕様書によると、強風、積雪、塩害及び地震に対して堅牢にして長期間の使用に耐えられるように電子線量計等を設置すること、引込柱の基礎の一部を地中に埋設して引込柱が倒れることのないよう対策を施して設置することとなっていた。
そして、北海道は、受注者に電子線量計等の納入、据付けなどを行わせた後、これらに係る検査を実施して合格とした上で実績報告書を内閣府本府に提出し、同府から交付金の交付を受けていた。
しかし、引込柱として用いられた部材について製造メーカーが作成している取扱説明書等を確認したところ、当該部材は、臨時施設専用のポールであり、腐食による倒壊等の原因となることから常時施設用として使用しないこととなっているものであった。
また、受注者から提出された強度計算書を確認したところ、引込柱の基礎の安定計算が行われていなかった。そこで、電子線量計60台に係る引込柱計62本(受電用ポール60本、中継用ポール2本)について、所定の風圧荷重等が加わった状態における引込柱の基礎の安定計算を行ったところ、引込柱の基礎の安全率は0.11から1.87までとなっており、62本の全てにおいて、配電規程等において必要とされている安全率2を下回っていた。
したがって、本件交付金事業(交付対象事業費計71,463,600円)は、引込柱が腐食により倒壊したり、強風時において転倒したりするなどして電子線量計等が破損するおそれがあり、このため、整備した電子線量計等が、堅牢にして長期間の使用に耐えられるように設置することなどの仕様書に示された内容を満たしておらず、空間放射線量率を測定できなくなるなどのおそれのある状態となっていた。
(参考図)
電子線量計の概念図