(1件 不当と認める国庫補助金 15,444,000円)
部局等 |
補助事業者等 (事業主体) |
補助事業等 | 年度 |
事業費 |
左に対する国庫補助金等交付額 | 不当と認める事業費 | 不当と認める国庫補助金等相当額 | |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
千円 | 千円 | 千円 | 千円 | |||||
(10) | 内閣府本府 |
富山県 |
原子力発電施設等緊急時安全対策交付金 |
29 | 15,444 | 15,444 | 15,444 | 15,444 |
この交付金事業は、富山県が、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金交付規則(昭和55年科学技術庁・通商産業省告示第3号。以下「交付規則」という。)に基づき、原子力発電施設等緊急時安全対策交付金(以下「交付金」という。)の交付を受けて、原子力発電施設等による災害が発生した場合等の緊急時において必要となる医療に用いられる物品の整備を目的として、富山県立中央病院(以下「中央病院」という。)に救急車1台を整備したものである。
原子力災害対策指針(平成24年10月原子力規制委員会制定)によれば、汚染や被ばくの可能性のある傷病者や避難者に対応するための救急・災害医療については、住民の生命及び身体の安全を確保する観点から、多数の被災者に対して迅速に措置を施す必要があるとされており、原子力発電施設等が立地している道府県のみならず、原子力災害対策重点区域(注)内に所在するその他の府県(以下、原子力発電施設等が立地している道府県と合わせて「立地道府県等」という。)も含めた広域の医療機関が、原子力災害時には連携して対応できるようにしておくことが重要とされている。そして、立地道府県等は、原子力災害時において汚染の有無にかかわらず傷病者等を受け入れ、被ばくがある場合には適切な診療等を行う原子力災害拠点病院(以下「拠点病院」という。)について、国が示す施設要件に基づき整備し、あらかじめ指定を行っておくこととされている。また、原子力災害拠点病院等の施設要件(平成27年5月原子力規制庁制定)等によれば、拠点病院は、原子力災害が発生した立地道府県等に出動するなどして救急医療等を行う原子力災害医療派遣チームを配置するとともに、原子力災害医療派遣チームの派遣に必要な車両を有していることが望ましいとされており、原子力規制庁は、当該車両について、原子力災害医療派遣チームの派遣に必要なときに確実に使用できる状態にあることが重要であるとしている。
そして、交付規則によれば、交付金の交付対象は、原子力発電施設等による災害が発生した場合等の緊急時において必要となる医療に用いられる物品の整備等に係る事業に要する費用とされており、内閣府本府は、交付金により原子力災害医療派遣チームの活動用車両を整備する場合は、原子力災害時に使用することを前提として配備するものであり、人道的な理由から一時的に使用する場合等を除いて、他の用途との兼用を前提とした交付申請に対しては交付決定を行わないとしている。
また、補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律(昭和30年法律第179号)第22条の規定等によると、補助事業者等は、補助事業等により取得した財産を補助金等の交付の目的に反して使用したり、貸し付けたりなどするときは、当該補助事業等を所掌する各省各庁の長の承認を受けなければならないことなどとなっている。
同県が内閣府本府に提出した交付申請書等によると、同県が拠点病院に指定しようとしている中央病院は、転院のために他の医療機関に患者を搬送するなどの通常の用途に使用している救急車を1台保有しているものの、原子力災害医療派遣チーム専用の車両を有していないことから、中央病院に原子力災害医療派遣チームの活動用の救急車を整備するとしていた。そして、内閣府本府は、当該交付申請書等に基づいて交付決定を行っていた。
しかし、同県において交付金に係る交付申請書の作成等を行っていた部局は本件救急車が原子力災害医療派遣チーム専用のものであると認識していたものの、実際に本件救急車を管理する中央病院は認識していなかったため、中央病院は、平成30年2月に本件救急車が納入された後、不具合が生じていた既存の救急車の代わりに本件救急車を通常の用途にも使用することとし、同月に既存の救急車を同県の他部局に管理換していた。それ以降、中央病院の救急車は、本件救急車1台のみとなっていた。このため、本件救急車は、納入された直後から既存の救急車が担っていた通常の用途に使用されていて、原子力災害時に原子力災害医療派遣チームの活動に速やかに使用できないおそれがある状態となっていた。
したがって、本件救急車は、原子力災害医療派遣チームの活動用車両として整備されたにもかかわらず、承認を受けることなく補助の目的外に使用されており、原子力災害時に原子力災害医療派遣チームの活動に速やかに使用できないおそれがある状態となっていて、これに係る交付金15,444,000円が不当と認められる。
このような事態が生じていたのは、同県において交付金に係る交付申請書の作成等を行っていた部局と中央病院との連携が十分でなく、中央病院において本件交付金事業の目的について理解が十分でなかったことなどによると認められる。