ページトップ
  • 令和元年度|
  • 第3章 個別の検査結果|
  • 第1節 省庁別の検査結果|
  • 第2 内閣府(内閣府本府)|
  • 意見を表示し又は処置を要求した事項

企業主導型保育助成事業により病児保育室等を整備するに当たり、補助事業者に対して、事業主体から病児保育等の実施体制等に係る計画を提出させて審査を適切に行うことができる体制を整備させるとともに、病児保育室等の利用実態の把握を十分に行い、病児保育室等を整備したのに病児保育等を全く実施していないなどの事業主体に、病児保育室等を病児保育等に利用させるように指導する仕組みを整備させることなどにより、病児保育等の実施体制が確保され、病児保育室等が有効に利用されるよう改善の処置を要求したもの


所管、会計名及び科目
内閣府及び厚生労働省所管
年金特別会計(子ども・子育て支援勘定)
(項)地域子ども・子育て支援及仕事・子育て両立支援事業費
部局等
内閣府本府
補助の根拠
予算補助
補助事業者
公益財団法人児童育成協会
間接補助事業者
(事業主体)
25事業主体
補助事業
企業主導型保育助成事業
補助事業の概要
多様な就労形態に対応する保育サービスの拡大を行い、待機児童の解消を図り、仕事と子育てとの両立に資することを目的として、企業主導型保育事業を実施する一般事業主等に対して企業主導型保育施設の整備費等の助成を行うもの
検査の対象とした事業主体数、整備した企業主導型保育施設の施設数及び整備費
25事業主体 25施設 22億4017万余円(平成28年度~30年度)
上記の整備費に係る助成金交付額
16億1612万円
上記に係る国庫補助金相当額
16億1612万円
病児保育室等を整備したのに、病児保育等を全く実施していない企業主導型保育施設に係る事業主体数、施設数及び整備費
8事業主体 8施設 6億7733万余円(平成28年度~30年度)
上記整備のうち病児保育室等の整備に係る助成金相当額
4772万余円
上記に係る国庫補助金相当額(1)
4772万円
病児保育室等を整備したのに、病児保育等の実施を中止していて再開する予定がない企業主導型保育施設に係る事業主体数、施設数及び整備費
3事業主体 3施設 3億3007万余円(平成28、29両年度)
上記整備のうち病児保育室等の整備に係る助成金相当額
1708万余円
上記に係る国庫補助金相当額(2)
1708万円
(1)及び(2)の計
6481万円(平成28年度~30年度)

【改善の処置を要求したものの全文】

企業主導型保育事業における整備費に係る助成金の交付を受けて整備された病児保育室等における病児保育等の実施状況について

(令和2年10月22日付け 内閣総理大臣宛て)

標記について、会計検査院法第36条の規定により、下記のとおり改善の処置を要求する。

1 企業主導型保育事業の概要等

(1) 企業主導型保育事業の概要

貴府は、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)に基づき、仕事と子育てとの両立に資する子ども・子育て支援の提供体制の充実を図るため、その一環として、平成28年度に企業主導型保育事業費補助金(以下「国庫補助金」という。)を創設し、同年度から、「平成28年度企業主導型保育事業費補助金の国庫補助について」(平成28年府子本第442号。以下「交付要綱」という。)等に基づき、企業主導型保育事業に対する国庫補助を実施している。

企業主導型保育事業は、上記の目的を達成するとともに、都市部を中心に深刻な問題となっている保育所等の待機児童の解消を図るために、「平成28年度企業主導型保育事業等の実施について」(平成28年府子本第305号、雇児発0502第1号)、「平成29年度企業主導型保育事業等の実施について」(平成29年府子本第370号、雇児発0427第2号。平成30年3月及び同年6月一部改正)(以下、これらを合わせて「実施要綱」という。)等に基づき、厚生年金保険法(昭和29年法律第115号)第82条第1項に規定する事業主等(以下「一般事業主」という。)に雇用されている従業員(以下「従業員」という。)等が監護する乳児又は幼児(以下「乳幼児」という。)の保育等を行うものである。

貴府は、国庫補助金の交付に当たり公募により選定した団体を補助事業者とすることなどとしており、28年度から30年度までにおいて公益財団法人児童育成協会(以下「協会」という。)を補助事業者として選定するなどし、交付要綱等に基づき協会に対して国庫補助金を交付している。

(2) 企業主導型保育助成事業の概要

協会は、実施要綱等に基づき、国庫補助金を原資として、企業主導型保育事業を実施する一般事業主等に対して企業主導型保育事業を行う施設(以下「企業主導型保育施設」という。)の整備に要する費用(以下「整備費」という。)及び企業主導型保育施設における保育の実施に要する経費(以下「運営費」という。)の助成を行う企業主導型保育助成事業を実施している(以下、協会が企業主導型保育助成事業により行う整備費の助成を「助成」、運営費の助成を「運営費助成」といい、整備費の助成のために交付する助成金を「助成金」という。また、助成金の交付を受けて企業主導型保育施設の整備を行う一般事業主等を「事業主体」という。)。

実施要綱等によれば、協会は、貴府と協議するなどした上で企業主導型保育助成事業を実施するために必要な要領を別に定めることとされており、これを受けて協会は、同事業の適切かつ円滑な実施を図るために、「平成28年度企業主導型保育事業助成要領」(平成28年5月制定)、「平成29年度企業主導型保育事業助成要領」(平成29年4月制定)、「企業主導型保育事業助成要領」(平成30年6月制定)等(以下、これらを合わせて「助成要領等」という。)を制定している。

(3) 企業主導型保育事業における事業類型等

企業主導型保育事業においては、企業主導型保育施設において従業員等が監護する乳幼児の保育を行う通常の保育事業(以下「通常保育事業」という。)に加えて、保育を必要とする乳幼児等であって、疾病にかかっているものについて、企業主導型保育施設において保育を行う事業(以下「病児保育事業」という。)、日常生活上の突発的な事情や社会参加等により、家庭において保育を受けることが一時的に困難となった乳幼児について、企業主導型保育施設において一時的に預かり必要な保護を行う事業(以下「一時預かり事業」という。)等も実施できることとなっている。

実施要綱等によると、病児保育事業には、病児対応型、病後児対応型及び体調不良児対応型の事業類型があり、このうち、病児対応型又は病後児対応型(以下「病児・病後児保育」という。)は、専用スペース又は専用施設(以下「病児保育室」という。)を設置し、必要な人数の看護師等及び保育士を常駐させるなどの職員の配置を行って実施することとなっている。一方、体調不良児対応型は、企業主導型保育施設の余裕スペース等で実施することとなっており、必要な人数の看護師等を常駐させる職員の配置を行う必要はあるが、病児・病後児保育のような病児保育室を設置することとはなっていない。

また、一時預かり事業には、一般型及び余裕活用型の事業類型があり、このうち、一般型は、企業主導型保育施設の利用定員の外で専用の一時預かりのための保育室(以下「一時預かり室」という。)を設置し、通常保育事業とは別に必要な人数の保育士等の配置を行って実施することとなっている(以下、このような一時預かりを「一般型一時預かり」という。)。一方、余裕活用型は、通常保育事業の利用乳幼児数が利用定員総数に満たない企業主導型保育施設において、空き定員分に係るスペースを利用するなどして一時預かりを実施することとなっており、一般型のような一時預かり室を設置したり、通常保育事業とは別に必要な人数の保育士等の配置を行ったりすることとはなっていない。

(4) 助成の申込手続及び助成金の交付

事業主体は、企業主導型保育助成事業で企業主導型保育施設の整備工事を実施するに当たり、助成要領等に基づき、協会に提出する助成申込書に、整備する企業主導型保育施設における病児保育事業、一時預かり事業等の実施の有無を記載することなどとなっている。また、実施する事業内容に応じた施設等の整備工事を実施し、整備工事が完了した際に提出する事業完了報告書にも、病児保育事業、一時預かり事業等の実施の有無を記載することなどとなっている。そして、整備した企業主導型保育施設において、病児保育事業、一時預かり事業等を実施することになっている。

助成要領等によれば、助成金交付額は、企業主導型保育施設の利用定員や整備工事の内容等に応じて定められている基準額の合計額と、整備工事に要した実支出額(整備費)等を比較するなどして算出することとされており、助成の申込手続及び助成金の交付については次のとおりとされている。

① 助成を受けようとする者は、助成申込書に、施設の概要、面積等の施設の規模、構造等を記載し、設計図面等を添えて協会に提出する。そして、協会は、これらの内容を審査の上、助成の可否及び助成金交付額を決定する。

② 助成の決定を受けた者は、企業主導型保育施設の整備工事を実施し、所定の期限までに事業完了報告書に整備工事に係る関係書類等を添えて協会に提出する。

③ 協会は、事業完了報告書等を速やかに審査し、必要と認める場合には実地調査を行い、助成金の額を確定し、助成の決定を受けた者に助成金を交付する。

2 本院の検査結果

(検査の観点、着眼点、対象及び方法)

貴府は、企業主導型保育助成事業を実施する協会に対して多額の国庫補助金を交付しており、協会が国庫補助金を原資として事業主体に対して交付した助成金交付額は、28年度170億余円、29年度548億余円、30年度393億余円、計1112億余円に上っている。

そして、貴府は、保護者が就労している場合等において、乳幼児等が病気の際に自宅での保育が困難になる場合や、保育所等を利用していない家庭においても、日常生活上の突発的な事情や社会参加等により、乳幼児が一時的に家庭での保育が困難になる場合があるなどのため、企業主導型保育事業では、通常保育事業だけではなく、これら様々な需要に対応した事業展開が必要となっているとしている。

そこで、本院は、有効性等の観点から、病児・病後児保育又は一般型一時預かり(以下「病児保育等」という。)を実施するとして、助成金の交付を受けて企業主導型保育施設内に整備した病児保育室又は一時預かり室(以下「病児保育室等」という。)が有効に利用されているか、病児保育室等の整備に当たり病児保育等の実施体制等に対する協会の審査はどのように行われているかなどに着眼して検査した。

検査に当たっては、28年度から30年度までに助成金の交付対象となった企業主導型保育施設3,533施設のうち、事業完了報告書において病児保育等を実施するとして病児保育室等を整備するなどとしていた1,116施設の中から、所在地域や利用定員等の企業主導型保育施設の規模に偏りがないように考慮するなどして、14都道府県(注1)に所在する25事業主体の25施設(整備費計22億4017万余円、助成金交付額計16億1612万円(国庫補助金相当額同額))を選定した。そして、これらを対象として、貴府及び25事業主体において、病児保育室等の整備工事の状況を事業完了報告書等により検査するとともに、現地に赴き病児保育等の実施状況を確認するなどして会計実地検査を行った。また、助成申込書に対する協会の審査状況については、協会の担当者から具体的な審査手順の説明を聴取するなどして検査した。

(注1)
14都道府県  東京都、北海道、大阪府、神奈川、富山、愛知、三重、兵庫、岡山、福岡、佐賀、長崎、熊本、鹿児島各県

(検査の結果)

検査したところ、次のような事態が見受けられた。

(1) 病児保育等の実施状況

ア 病児保育室等を整備したのに、病児保育等を全く実施していない事態

事業完了報告書に病児保育等を実施するとして病児保育室等を整備したのに、令和2年4月1日時点で企業主導型保育施設の開設後1年以上が経過しているにもかかわらず、病児保育等の実施に必要な職員の配置を行って病児保育等を実施する体制がとられておらず、病児保育等を全く実施していない事態が、8事業主体の8施設(整備費計6億7733万余円、病児保育室等の整備に係る助成金相当額計4772万余円(国庫補助金相当額同額))において見受けられた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例1>

A法人は、平成28年度に、三重県に新築平屋建ての企業主導型保育施設を整備費1億4437万余円(整備費の対象面積296.46m2)で整備し、病児対応型の病児保育事業を実施するための病児保育室(病児保育室に係る整備費の対象面積27.33m2、助成金相当額752万余円)を整備するなどして、企業主導型保育施設の整備に係る事業完了報告書を提出し、助成金8161万余円(国庫補助金相当額同額)の交付を受け、29年4月から開設していた。

しかし、同法人は、職員の確保についての計画が十分でなく、病児対応型の病児保育事業を実施するために必要な人数の看護師等を確保できなかったとして、令和2年4月1日時点において、病児保育事業を実施しておらず、平成29年4月の企業主導型保育施設の開設以来、病児保育室は全く利用されていない状態となっていた。

イ 病児保育室等を整備したのに、病児保育等の実施を中止していて再開する予定がない事態

事業完了報告書に病児保育等を実施するとして病児保育室等を整備して病児保育等を実施していたものの、2年4月1日時点において、やむを得ない理由がないにもかかわらず、病児保育等の実施を中止していて再開する予定がない事態が、3事業主体の3施設(整備費計3億3007万余円、病児保育室等の整備に係る助成金相当額計1708万余円(国庫補助金相当額同額))において見受けられた。

上記の事態について、事例を示すと次のとおりである。

事例2

B法人は、平成28年度に、鹿児島県に新築2階建ての企業主導型保育施設を整備費1億2952万余円(整備費の対象面積338.90m2)で整備し、一般型一時預かりを実施するための一時預かり室(一時預かり室に係る整備費の対象面積33.12m2、助成金相当額931万余円)を整備するなどして、企業主導型保育施設の整備に係る事業完了報告書を提出し、助成金9528万余円(国庫補助金相当額同額)の交付を受け、29年4月から開設していた。

しかし、同法人は、必要な人数の保育士等の職員を配置して一般型一時預かりを実施していたものの、当初の見込みより一般型一時預かりを利用する乳幼児が少なく、一般型一時預かりの運営を継続することが不可能であると判断したため、30年4月から一般型一時預かりの実施を中止していて、令和2年4月1日時点で一般型一時預かりを再開する予定がないとしていた。

(2) 病児保育等を実施していない理由等

(1)の事態が見受けられたことから、該当する11事業主体の11施設(整備費計10億0740万余円、病児保育室等の整備に係る助成金相当額計6481万余円(国庫補助金相当額同額))において、病児保育等を実施していない理由及び今後の病児保育等の実施予定について確認したところ、次のとおりとなっていた)。

すなわち、11事業主体の11施設のうち、病児保育室等を整備したのに、病児保育等を全く実施していない8事業主体の8施設の理由は、職員の確保についての計画が十分でなく必要な人数の看護師等の確保ができなかったためとしたものが4事業主体の4施設、通常保育事業とは別に必要な人数の保育士等の配置が必要な一般型一時預かりとそれらの配置が必要ない余裕活用型の一時預かり事業との違いなどの制度の理解が十分でなかったためとしたものが3事業主体の3施設等となっていた。そして、上記8事業主体の8施設のうち、5事業主体の5施設(注2)は、病児保育等を実施する予定がないとしていて、4事業主体の4施設(注2)は、今後、病児保育等を実施する予定があるとしていた。

また、病児保育室等を整備したのに、病児保育等の実施を中止していて再開する予定がない3事業主体の3施設の理由は、当初の採算の見込みが甘く、運営が不可能であると判断したためとしたものが2事業主体の2施設、病児保育等を実施するのに必要としていた医師と継続して連携することができなかったためとしたものが1事業主体の1施設となっていた。そして、上記3事業主体の3施設全てが、今後、病児保育等を実施する予定がないとしていた。

(注2)
これらのうち、1事業主体の1施設は、病児対応型及び病後児対応型それぞれの病児保育室を整備していて、令和2年4月1日時点で、病後児対応型の病児保育事業は今後実施する予定とし、病児対応型の病児保育事業は今後も実施しない予定としているため、今後、病児保育等を実施する予定があるものと、病児保育等を実施する予定がないものの両方に計上していることから、両者の数を合計しても事業主体(施設)の数(8事業主体の8施設)と一致しない。

(3) 病児保育室等に係る審査及び周知の状況

前記の病児保育等を全く実施していない理由等を踏まえて、助成申込書の病児保育室等に係る審査、事業主体に対する各事業類型の実施要件等の周知の状況について、貴府の方針及び協会の対応を確認したところ、次のとおりとなっていた。

ア 助成申込書の病児保育室等に係る審査の状況

貴府は、協会に、病児保育室等を整備するとしている助成申込書の審査に対する方針を示していなかった。そのため、協会は、病児保育室等が助成申込書の添付書類である設計図面に記載されているかなどの審査を行っていたが、事業主体に病児保育等の実施体制等に係る計画の提出を求めておらず、病児保育等を実施するために必要な職員の確保が可能であるかなどの審査を行っていなかった。

イ 事業主体に対する各事業類型の実施要件等の周知の状況

協会は、協会のホームページに実施要綱等を掲載するなどの方法により病児保育等の実施要件等を説明していたが、一般型一時預かりには通常保育事業とは別に必要な人数の保育士等の配置が必要で、余裕活用型の一時預かり事業にはそれらの配置が必要ないといった保育士等の配置に係る違いなどの各事業類型の実施要件等を十分に周知していなかった。

(4) 病児保育室等の利用実態の把握及び指導の状況

前記11事業主体の11施設における病児保育室等の利用状況を確認したところ、9事業主体の9施設は、病児保育室等を通常保育事業の保育室等として利用していた。また、残りの2事業主体の2施設については整備した病児保育室等を全く利用していなかった。

このため、病児保育室等に係る利用実態の把握や病児保育等を全く実施していない事業主体に対する指導について、貴府の方針及び協会の対応を確認したところ、次のとおりとなっていた。

貴府は、協会に、病児保育室等の利用実態を把握して、病児保育等が実施されていない場合には、事業主体に病児保育室等を病児保育等に利用させるように指導することを指示するなどの、整備した病児保育室等の利用実態の把握等について方針を示していなかった。また、協会は、運営費助成の審査を行う際に、事業主体が提出する月次の報告において、前月まで行われていた病児保育等に係る報告が当月にないことを確認し、中止した企業主導型保育施設を把握するなどして、当該施設の事業主体に対して病児保育室等を病児保育等に利用するよう指導を行っていたとしている。

しかし、協会は、整備費により病児保育室等を整備した企業主導型保育施設を一覧できるようにして管理するなどの病児保育室等の利用実態を把握し、必要に応じて指導を行う仕組みを整備しておらず、前記の病児保育等を全く実施していない8事業主体の8施設のうち2事業主体の2施設については、利用実態を十分に把握していなかったため、必要な指導が行われていなかった。

(改善を必要とする事態)

助成金の交付を受けて病児保育室等を整備しているのに、事業主体において、病児保育等の実施に必要な職員の配置を行って病児保育等を実施する体制がとられておらず、病児保育等を全く実施していなかったり、病児保育等の実施を中止していて再開する予定がなかったりしている事態や、補助事業者である協会において、整備した病児保育室等の利用実態を十分に把握して指導していない事態は、企業主導型保育助成事業の効果が十分に発現していないことから適切ではなく、改善を図る要があると認められる。

(発生原因)

このような事態が生じているのは、企業主導型保育施設を整備するに当たり、事業主体において、看護師等の必要な職員の確保についての計画が十分でないこと、病児保育等の制度の理解が十分でないこと、補助事業者である協会において、事業主体における病児保育等の実施体制等に係る計画の審査を行う必要があることについての理解が十分でないこと、事業主体に対する各事業類型の実施要件等の周知が十分でないこと、病児保育室等を整備した事業主体における病児保育室等の利用実態の把握を十分に行っていないことなどにもよるが、貴府において、次のことなどによると認められる。

  • ア 補助事業者である協会に対して、各事業類型の実施要件等を事業主体に十分に周知させておらず、事業主体における病児保育等の実施体制等に係る計画の審査を行う必要があることについての指導が十分でないこと
  • イ 補助事業者である協会に対して、病児保育室等を整備した事業主体における病児保育室等の利用実態の把握を十分に行い、病児保育室等を整備したのに病児保育等を全く実施していないなどの事業主体に、病児保育室等を病児保育等に利用させるように指導する仕組みを整備することについて示していないこと

3 本院が要求する改善の処置

貴府は、仕事と子育てとの両立に資する子ども・子育て支援の提供体制の充実を図るため、引き続き企業主導型保育事業を実施することとしている。

ついては、貴府において、助成金の交付を受けて整備される企業主導型保育施設について、病児保育等の実施体制が確保され、病児保育室等が有効に利用されて、企業主導型保育助成事業の効果が十分に発現されるよう、次のとおり改善の処置を要求する。

  • ア 補助事業者に対して、各事業類型の実施要件等を事業主体に十分に周知させるとともに、助成申込書の審査を行う際に、事業主体から病児保育等の実施体制等に係る計画を提出させて審査を適切に行うことができる体制を整備させること
  • イ 補助事業者に対して、病児保育室等を整備した事業主体における病児保育室等の利用実態の把握を十分に行い、病児保育室等を整備したのに病児保育等を全く実施していないなどの事業主体に、病児保育室等を病児保育等に利用させるように指導する仕組みを整備させること